昨日はとんでもなくすごいことを知らされた。 蓮華や哲也先輩たちの過去に関係する事や、蓮華の存在についてなど、色々な事を。 あたしは絶対にそれを公言しないと誓ったから、今日からはまた、普通にポケモン協会の特別委員として、蓮華の親友として、 渦巻きアクアカップを楽しみ、昨日聞いたことは頭の中から一時シャットアウトしておこうと思った。 それは悠也先輩と志穂ちゃんも、いつも行っている事のようだし、多分、風で噂話を聞き取れる哲也先輩や、音の能力者の 鈴香ちゃんが偶然聞いた可能性もあると思われるけど、それも知らないふりをしておこうと思う。 さてと、今日のバトルは…綾香から始まるのね。 大丈夫かなぁ…。 渦巻き編 6.白熱の大バトル!2日目も大波乱?! アナウンス:「さぁ、やってまいりました!渦巻きアクアカップ2日目!昨日に引き続き、今日からは1回戦Bブロックの バトルが始まります!さて、最初のバトル、出場トレーナーは、綾香選手、そしてタケル選手です!」 あたしは本来は水タイプのトレーナーじゃない。 それにトレーナーになって、ポケモンは6体持ってるけど、でも、ちゃんとしたトレーナーになっても間もない。 だから、本当に強い人、コタロウとか、清香先輩たちにはあまり太刀打ちできない。 だけど、あたしが出場したのは経験を積むため、そして、戦いとかのバトルじゃなくて、本当のポケモンバトルを大会に出て 経験したかったから。 だから、あたしはできるだけのことをしようと思う。相手がどんなポケモンを使ってきたとしても、負けない意地を見せてやらなきゃね。 そういう決意でフィールドに出たあたしが見た相手は、結構年上そうな青年だった。 タケル:「1回戦の相手は君だね、よろしく頼むよ。」 綾香:「こちらこそ。」 年齢差は多分5〜6歳くらいだと思う。 でも、ポケモンバトルに年齢差はあまり関係ないよ。 だから頑張ろうっと。 タケル:「どうやらやる気だね、それじゃ僕も負けてはいられないな。出て来い、ゴルダック!」 綾香:「あたしのポケモンはペリッパーよ!ペリッパー、お願いね!」 審判:「それでは、試合開始!」 タケル:「飛行タイプで特性が鋭い目か。これは厄介だな。ゴルダック、スピードスターでけん制するんだ!」 ペリッパーは空にいるために攻撃がかわされやすいと思ったのだろう。 確実に当たるスピードスターで様子を見ようとしているようだった。 綾香:「ペリッパー、鋼の翼で弾き返すのよ!」 ペリッパーは両翼を鋼のように硬くしてスピードスターに突っ込み、スピードスターを弾いた。 綾香:「さらに超音波よ!」 タケル:「だったら嫌な音を出して超音波を相殺するんだ!」 ペリッパーの口から放出された超音波は、ゴルダックの出した嫌な音によって相殺されていった。 綾香:「それならペリッパー、竜巻よ!」 ペリッパーは空中と海面の境界線近くをぐるぐると回り、風を起こして竜巻を作り出していた。 竜巻は、フィールドの水を引き寄せて大きくなり、ゴルダックに向かっていった。 タケル:「ゴルダック、念力で竜巻を逆回転させるんだ!」 しかし、ゴルダックは竜巻に引き込まれていった。 竜巻の中を回り続け、もがくゴルダック。 綾香:「ペリッパー、今よ!ゴルダックに追い討ちをかけて!」 竜巻の中にいるゴルダックに向かって口ばしを突き出し、ゴルダックを突付き、竜巻に巻き込まれないようにUターンし、 再びゴルダックを攻撃するペリッパー。 だが、追い討ちが長く続くわけでもなかった。 タケル:「ゴルダック、竜巻の中心にハイドロポンプだ!」 ゴルダックの攻撃が竜巻の中心の空白部分に当たり、竜巻の威力を弱め、波を起こして竜巻を徐々に消したのだった。 ゴルダックも竜巻が消えた事で落下しかけていたが、柱の上に見事に着地していた。 しかし、竜巻に巻き込まれたことと、態勢の取りにくい状態で追い討ちをかけられたことによるダメージは、しっかりと蓄積されていた。 タケル:「あの竜巻が再び来てもハイドロポンプで消し去る事は可能だな。しかし、ゴルダックのダメージは大きそうだ。 ここは…、ゴルダック、金縛りでペリッパーの動きを封じるんだ!」 綾香:「ペリッパー、逃げて!」 あたしは叫んだけど、ゴルダックの金縛りからは逃れられず、しかも念力によって、空中からゴルダックの目の前まで移動させられていた。 タケル:「ゴルダック、今だ!乱れ引っ掻きだ!」 ゴルダックが攻撃に移ったことで念力と金縛りが外れたが、ペリッパーは至近距離からの乱れ引っ掻きを受けていた。 逃げようにも、ゴルダックの右手がペリッパーの羽を掴んでいるために逃げられず、攻撃を避ける事が出来ない。 それに、本当なら高速移動や影分身も使えるけど、自己暗示をコダックやゴルダックが使えることを昨日のバトルで見た以上、 容易に行う事は出来なくなっていたのだ。 タケル:「さて、どうするかな?」 綾香:「…」 一応手がないことはない。 でも、至近距離で行えば、ゴルダックに翼を握られているペリッパーもダメージを受けてしまう可能性が高く、そうなった場合の方が、 ゴルダックよりもペリッパーの受けるダメージは大きい。 だから使えないでいた。 でも、このままだったらペリッパーは戦えないし…。 ゴルダックが動揺するような攻撃を与えるしか方法はないけど…、どんなことをすれば…あっ! 綾香:「ペリッパー、ゴルダックの額に冷凍ビームよ!無理だったら超音波を放って!」 ゴルダックはあたしの言葉を聞き、ペリッパーを自分から遠ざけようと動きかけた。 でも、ペリッパーは仕事をしてくれた。 冷凍ビームをゴルダックの足に放ち、そこにゴルダックの視線が向いた隙を狙って額にもう一度、冷凍ビームを放ったのだ。 足場と額を凍らされたことで、ゴルダックの動きと、特殊な攻撃を行うためのエネルギーを溜める額の宝石が封じられた。 それにより、あたしが行いたかった、ゴルダックを動揺させる行為は成功していた。 タケル:「ゴルダック、メガトンパンチで氷を割るんだ!」 しかし、なかなか思うようには指示通りにできないゴルダック。 コダックの場合、頭痛が頂点に達した時に念力などが使えるのだが、ゴルダックは頭痛などもあのエネルギーの宝石で 抑えていたのかもしれない。 それが冷凍ビームによって封じられたことで、コダック時代の頭痛の痛みを感じているのかもしれない。 あたしはそう思った。 そうだとすると、頭痛の状態で痛みを堪えての攻撃はつらいのかもしれない。 でも、チャンスは今しかなかった。 綾香:「ペリッパー、一気に決めるわよ!電撃波よ!」 何故か知らないけど、キャモメとペリッパーはこの技を覚えられた。 水・飛行タイプという、最もこの技が弱点になるはずのポケモンが、である。 そして、ペリッパーの放った電撃波はゴルダックに落下し、その拍子に氷は割れたのだが、ゴルダックはそのまま倒れていった。 頭痛の痛みや電撃のダメージもあって、ついに倒れたのだ。 審判:「ゴルダック戦闘不能!よってこの勝負、ペリッパーの勝利!」 タケル:「ゴルダックが負けたとは…、完敗だな。」 綾香:「ふふふ、ペリッパー、やったね!」 何とか1回戦目を突破できた。 次の2回戦も頑張りたいな。 ヒカリ:「1回戦目からすごいわね。」 ヤツデ:「綾香…、かっこいいよ。」 来美:「でも、まだちょっと頼りない気もするわね。」 清香:「確かに。あたしが教えられる事は教えたし、後は先輩に頼んでもいいですか?」 来美:「そうね…、いいわよ。ところで、今日はまだみんな来てないわね。」 ヒカリ:「蓮華ちゃんと希さんはバトル前なので控え室だし、そっちにいるんじゃないですか?今日でしたよね? 他の美香ちゃんたちも来るのは。」 来美:「ええ。」 ヒカリの予想通り、蓮華の控え室と、希の控え室に、何人かが揃っていた。 それに、実は次はアヤネの試合だったため、哲也や涼治がアヤネの控え室にいたりもした。 そして、アヤネの試合が行われた。 ハリゾウ:「ハリーセン、ミサイル針だ!」 ハリーセンが水を吸って大きく膨らみ、体の針を大量に飛ばしていた。 しかし、対するのはアヤネのオクタン。 すでにオクタン砲を受け、命中率を下げていたハリーセンは、オクタンにミサイル針を一度も当てられず、萎んでいった。 そこをアヤネは突いた。 アヤネ:「オクタン、サイケ光線よ!」 オクタンのサイケ光線がハリーセンを貫いた。 審判:「ハリーセン、戦闘不能!よってこの勝負、オクタンの勝利!」 アナウンス:「おおっと!渦巻きアクアカップの常連、ハリゾウ選手、今年も1回戦目で敗退のようだ!」 アロハシャツみたいなものを着た年季のあるトレーナーがアヤネ(アクアリウス)に負けていった。 アヤネの次のバトルには、アクアカップの優勝候補といわれているトレーナーが出ていた。 ツリオ:「キングドラ、竜巻でギャラドスを包み込め!そして龍の息吹だ!」 眼鏡をかけた釣り人の格好をした少年、ツリオがキングドラでギャラドスを攻めていた。 竜巻をギャラドスが包み込む。 しかし。 タカミ:「ギャラドス、ハイドロポンプよ!」 ツリオの対戦相手、髪の長い女性トレーナー、タカミのギャラドスは竜巻に包まれても全く動揺せず、ハイドロポンプを勢いよく放出した。 そして、竜巻を突き破って出てきたハイドロポンプが、龍の息吹も押し返してキングドラを軽く吹っ飛ばしていた。 審判:「キングドラ戦闘不能!よってこの勝負、ギャラドスの勝利!」 ツリオ:「そんなぁ…、キングドラが負けるなんて…。トホホ…」 キングドラが敗れたことで眼鏡がずり落ち、へこむ少年の姿があった。 そして、希のバトルの時がやってきた。 久美:「電撃ガールズ左の砦の力を見せ付けてきてよね!」 応援しに来た久美が、激励を兼ねて言ってくれた。 あたしと久美は、一時期クチバシティで電撃ガールズと名乗ってジムトレーナーを行い、たくさんの挑戦者を撃破してきた。 ジムに挑戦しても、地面タイプで楽勝と思っていたトレーナーが多くなり、バッジを受け取るのに見合うトレーナーが少なくなっていたからだった。 それであたしたちがお手伝いをしたのだ。 初めは電撃シスターズって名乗っていたけど、噂によって、あたしたちは電撃ガールズと呼ばれるように変わっていた。 地面タイプに対してダブルバトルで草タイプを併用していたのが、右の砦、一撃必殺の電撃姫こと久美ちゃん。 そしてあたしは、水・地面タイプのヌオーかナマズンを、サンダースと併用してダブルバトルで使っていた。 名前は左の砦、作戦必殺の電撃女神だったかな。 応援に来てくれた久美や、天知、刹那や小麦ちゃんの応援を体にいっぱい受けて、頑張ってこようと思う。 女神様の実力、多大な雷の恩恵を受け、水タイプの大会で見せ付けてあげないとね。 アナウンス:「さて、バトルも盛り上がってきました!次のバトルは、希選手対タイヤ選手です!」 あたしの相手は背が低い子供のようなトレーナーだった。 でも、本当はあたしよりも1つ年上だって知ってる。 だって、律子ちゃんが教えてくれたのだから。 タイヤ:「タマザラシ、頑張ってこいよ!」 そんな彼の出したポケモンは、氷タイプを兼ねた、愛くるしく、可愛らしい表情をしたタマザラシだった。 予選で見た事あるけど、彼のポケモンはクラブ、タッツー、タマザラシの3匹で、すべてが小型の可愛いポケモンだった。 トレーナーがポケモンに似るって言うか、ポケモンにトレーナーが似たって感じなのよね。 希:「負けないわよ、ナマズン、お願いね!」 あたしが対抗して出したのは、間抜けそうな表情のナマズンだけど、こんなオドケタ顔をしているが、実際はかなりの実力者なのだ。 地面タイプを兼ね、特性は鈍感。 普通のナマズンよりも少し大きめの体で、タマザラシの3倍くらいはあった。 ナマズンとタマザラシ、大きさの異なるこの2匹で、どんなバトルが行われるのかな? 審判:「それでは、試合開始!」 タイヤ:「小さいからって油断してないよね?タマザラシ、粉雪だ!」 希:「してないわよ!ナマズン、水の波動よ!」 タマザラシの放った粉雪は、水の波動に吸収され、水の波動は粉雪によって凍って水に沈んでいった。 一応相性的にはあたしのほうが不利だったりする。 地面タイプを兼ねているため、氷タイプには弱いのだ。 ただ、水タイプを兼ねているので、ダメージが効果抜群のダメージではないからいいんだけど。 タイヤ:「タマザラシ、今度は海面に冷凍ビームだ!そして丸くなるんだ!」 タマザラシは突然海面に冷凍ビームを放ち、海面を大幅に凍らせていた。 昨日ヒカリちゃんが凍える風で凍らせた海面とは違い、氷の幅も少し厚そうだった。 これだとちょっとやそっとの攻撃では割れないわね。 丸くなるってことは転がる攻撃か、アイスボールね。 こうしちゃいられないわ。 希:「ナマズン、度忘れよ!そして瞑想!」 あたしは「度忘れ」によって特殊防御力を2段階アップさせ、「瞑想」によって特殊攻撃力と特殊防御力を1段階アップさせた。 それを見たタイヤ選手はというと、 タイヤ:「タマザラシ、アイスボールから変更して転がる攻撃だ!」 どうやらアイスボールをさせようとしていたようだった。 特殊防御力が3段階も上がったのだ。 いかに5発目のアイスボールの威力が高くても、ナマズンを倒すには至らないだろう。 そして転がってきたタマザラシ。 でも、1度目や2度目のぶつかってくる攻撃は、あまりナマズンに効果がなかった。 元々地面タイプだけに、岩タイプの攻撃の威力は受けにくいのだ。 さて、そろそろ転がる事自体が出来ないようにさせないとね。 希:「ナマズン、行くよ!地震攻撃よ!」 まずは地震で凍った海面を大きく揺らし、タマザラシの転がる攻撃時の安定感を崩した。 さらに、地震の振動によって、氷にもひびが入り始めていた。 希:「続いて岩砕きよ!」 ナマズンは大きく飛び上がり、氷に向かって強い衝撃を与えた。 それによって氷は割れ、フィールドの海面上にはたくさんの流氷が出来上がっていた。 タマザラシは、その中の一つの流氷に取り残されていた。 タイヤ:「タマザラシ、もう一度冷凍ビームで海面を凍らせるんだ!」 しかし、安定感のない氷の上で、タマザラシは冷凍ビームが放てずにいた。 希:「もう終わりよ、ナマズン、水の波動よ!」 ナマズンの水の波動は瞑想によって威力を増していて、タマザラシを吹っ飛ばすのは簡単な事だった。 審判:「タマザラシ戦闘不能!よってこの勝負、ナマズンの勝利!」 水の波動を受けてタマザラシは倒れ、あたしの勝利が確定するのだった。 大きさはともかく、進化前と進化後も含め、まだまだタマザラシは育てないとナマズンを倒せるには至らないだろう。 あたしはそう感じるのでした。 その頃。 あたしの次に出る人の控え室は大きく盛り上がっていた。 次のトレーナーは、蓮華ちゃんだ。 美香:「蓮華、大丈夫?」 香玖夜:「何だかレベルが高そうなバトルなのよね。」 綾香:「仮にもポケモンリーグ優勝者って知られてる以上、相手はかなり全力で来るわよ。」 なずな:「大丈夫とは思うけどさぁ…」 律子:「心配にはなるのよね。」 海:「絶対に負けないでよ。」 涼治:「そのために俺たちが応援に来てるんだからな。」 鈴香:「お姉ちゃん、頑張ってね!」 あたしの控え室にはみんなが来てくれた。 でも、半分以上が心配してるのよね。 どうしてって聞くと、こういう答えが返ってきたりしてて、何だか微妙な気分だなぁ。 でも、あたしはあたしなりに頑張らないとね。 9人の水の絆たちの力をあたしが使いこなさないと、頑張ろうとしている9人にも悪いし。 信じてるから頑張れるんだってところを見せなきゃ! アナウンス:「さて、今日もまた、注目の一戦が始まろうとしております。ポケモンリーグ優勝経験者の蓮華選手の登場です!」 あたしの紹介はすごかった。 まぁ、昨日も姫乃選手が今年1番の注目株だって紹介されてたから、あたしも覚悟はしてたけど、相手がまさか綾香の言ってた 相手だったとはね。 確かに厄介ね。 でも、それをさらに感じさせたのは次の相手の紹介の時だった。 アナウンス:「そして対するは、前回の渦巻きアクアカップにおきまして、準優勝を獲得したコタロウ選手です! それぞれ、ポケモンリーグと渦巻きアクアカップで上位に名乗りを上げた2名が、ここでどのようなバトルを見せてくれるのでしょうか。」 準優勝…。 確かに綾香がかなうわけないわね。 でも、相手にとって不足なし。 ここはアクアとメノノ、どちらかで行ってみようかな。 コタロウ:「ポケモンリーグとアクアカップが違うことを教えてやるぜ!」 蓮華:「それでもあたしは負けないよ。」 コタロウ:「それはどうやろうな?あんたには負ける気がないぜ。行ってこい!カメックス!」 コタロウの出したポケモンはカメックスだった。 しかも、普通よりも一回りくらい大きく、体の青い色が少し濃い目だった。 強さが体から溢れてる、そんな感じのするカメックスが相手。 あたしは、カメックスが相手だって分かってポケモンを決定付けた。 蓮華:「ここはあなたに任せるわよ、全力でお願いね!メノノ、出てきて!」 あたしの1回戦目のポケモンはドククラゲのメノノだ。 水・毒タイプで、特性は能力を下げる効果を受け付けないクリアボディだ。 防御力の高いカメックスに対し、ドククラゲというポケモンは特殊防御力がそれなりに高く、素早さも高い。 また、バリアなどの補助技によって防御力もそこそこ上げる事が出来るポケモンなのだ。 しかも、あたしのメノノには、研究で生まれた事によって得をした部分が一つある。 これをどう使うか、なのよね。 コタロウ:「ドククラゲが相手やな。よっしゃ!相手にとって不足はなしや!」 審判:「それでは試合開始!」 試合が始まった。 先攻してきたのはコタロウだった。 コタロウ:「さっさとカメックスの力を見せたるで!カメックス、高速スピンで突進や!」 カメックスは殻にこもり体を回転させてメノノに突っ込んできた。 蓮華:「メノノ、バリアとリフレクタで受け止めて。ハイドロポンプで押し返すのよ!」 メノノの前にピンク色のような透明の壁が現れてカメックスを一時的に受け止め、直後にさらに透明のような壁がメノノを包んだ。 初めに発動したのがリフレクタ、次がバリアだ。 バリアが発動すると、リフレクタで攻撃力を半減化されたカメックスがメノノに突っ込んできた。 しかし、二つの防御技が功をなし、逆にカメックスはハイドロポンプで押し返されていた。 でも、流石に水ポケモンの最終進化形であるだけに、カメックスは全くダメージを受けた様子を見せていなかった。 コタロウ:「あのドククラゲ、やりおるな。だったらカメックス、渦潮でドククラゲの動きを封じるんや!」 カメックスがメノノの周囲を回るように泳ぎ、中心にメノノがいるような状態で大きな渦が出来上がっていた。 さらに、渦の中から小さな細い竜巻がいくつも飛び出し、メノノは水の檻の中に閉じ込められたような形になっていた。 コタロウ:「どうや?渦潮の特訓を行った時に技を改良したんや。そよから渦潮というより水の檻やな。 その竜巻にドククラゲの触手が触れてもダメージがあるで。その細い竜巻は目覚めるパワーと水の波動をうまく合成させたものや。 ドククラゲが傷つく事になるでな、ドククラゲをそのまま動かさない事を進めるで。」 ちょっと油断した。 あたしはそんな感じがした。 コタロウが説明してたけど、あたしは見た感じでそんなことくらい分かってた。 今考えてるのは、次にどんな技が来るのか。 そして、この檻をどうやって破壊するかの二つだった。 多分、次は水の大技が来そうな予感。 蓮華:「ひとまず、メノノ、怪しい光を放出して!」 動けない状態で出せる技は限られている。 ただ、この水の檻が特殊攻撃などの放出する攻撃を阻む可能性があったので、攻撃技を使おうとは思っていなかった。 それで、まずは相手の出方を見るために混乱させてみようと思ったのだ。 カメックスはマジックコートが使えないので、混乱する光を変えさせる事はないし。 そして、この攻撃はコタロウを慌てさせた。 でも。 コタロウ:「何っ!怪しい光やと!?そんならカメックス、一旦水にもぐるんや!そしてこのフィールドを大きく揺らしたれ! 地震や!」 水中に逃げたカメックスが発動させたのは、メノノの弱点に値する地面技の地震だった。 しかも、この地震によって小さな竜巻はメノノに近づき、メノノを攻撃する形になっていた。 蓮華:「メノノ!」 コタロウ:「今の地震で檻は壊れてしまったが、ドククラゲにはかなりのダメージが与えられたようやな。このまま行くで! カメックス、ハイドロカノンや!」 ついに来た。 コタロウの放った技は、ファーストポケモンの水タイプだけが覚えられる水タイプ最強の技だった。 だけど、コタロウはそれが自分自身を攻撃する事になるとは思ってなかったようだ。 蓮華:「メノノ、やるよ。ミラーコートよ!」 コタロウ:「何やて!?」 メノノはミラーコートを発動し、ハイドロカノンを倍にしてカメックスに返していた。 カメックスはハイドロカノンを発動した反動で動けず、ミラーコートによる倍返しをもろに受けることになっていた。 でも、まだ倒れる様子はない。 だったら、肉弾戦よ。 コタロウ:「カメックス、すぐ体勢を立て直せるようにしておくんやで!」 メノノがカメックスに近づいてきた事で、コタロウは何か危険信号みたいなものを感じ取っていたようだ。 そしてカメックスが動けるようになった時、カメックスの目の前にメノノはいた。 コタロウ:「カメックス、そのドククラゲに地球投げや!触手を束ねて持ったれ!」 先に動いたカメックスは、メノノの触手を束ねるように両手で抱え、投げ飛ばす体制に入っていた。 だけど、これをあたしは狙っていた。 メノノが覚えていて、水タイプに対して有効なダメージを与えられる技は二つある。 ただ、二つとも相手に接していない限り、発動しても不発になる他ない技なのだ。 蓮華:「メノノ、スパークよ!」 メノノの体に一瞬、電気のようなものが流れかけたのが見え、そして、膨大な電撃がメノノの体を包んでいた。 そしてその電撃は、メノノの触手を掴み取ったカメックスにも流れ込み、カメックスは電撃による強いダメージを受けていた。 コタロウ:「電気タイプの技を覚えないドククラゲがスパークを使ったやと!?カメックス、ハイドロポンプでドククラゲを 押し返すんや!近距離でのバトルは無理や!」 コタロウはスパークの威力を見てカメックスに叫ぶが、既に遅かった。 スパークは、相手を30%の確率で麻痺状態にさせるのだ。 カメックスも触手を掴んだ状態でスパークを受け、麻痺状態になっていて、ハイドロポンプを放つキャノン砲を出すのが遅れていた。 蓮華:「メノノ、最後の攻撃行くわよ!タマムシジムでエリカさんに貰った技マシンの威力、ここで見せてあげるんだから! カメックスにギガドレインよ!」 メノノは、カメックスの体に触手を絡ませて、カメックスの体力を一気に吸収していた。 体力を吸収されて、苦痛にもがき、顔を歪ませるカメックス。 しかし、麻痺した体のせいで思うように動けず、そのままメノノが触手を放すまで、動く事は出来なかった。 そして。 カメックスは倒れた。 審判:「カメックス戦闘不能!よってこの勝負、ドククラゲの勝利!」 蓮華:「やったぁ!」 あたしは1回戦目をドククラゲのメノノで勝ち進んだ。 ただ、メノノは疲れちゃったから、明日バトルがあったとしても、出す事は無理っぽいだろうな。 コタロウ:「スパーク、ミラーコートにギガドレインか…。相手が悪いな。今回は負けてしもうたが、次の時は負けないで!」 コタロウは、カメックスを戻すとあたしに対し、再戦を誓って去っていった。 メノノを出していなかったらどんなバトルが起きていたのか分からないけど、メノノだったから勝てたのかもしれない。 そんな気がする部分もある。 ヒカリ:「蓮華ちゃん一回戦突破!」 美香:「最高だね。」 綾香:「蓮華は行けると思ってた。」 香玖夜:「そぉ?相手の少年を見てやばいって口走ったのは誰だったかしら?」 綾香:「それは…」 海:「ともかく、蓮華が勝利を収めた事は喜ぶべき事じゃない?」 なずな:「そうだよね、今のバトル、すごかったもの。」 鈴香:「お姉ちゃん、すごくかっこよかったし。」 希:「後は海斗と来美先輩、涼治君と志穂ね。」 久美:「涼治君は心配だけど、他の3人は大丈夫でしょうね。」 玲奈:「そうだね、水のエキスパート二人と、ポケモンリーグ準優勝者だもの。」 ヒカリ:「あ、次のバトルが始まるよ。」 次のバトルは、実は蓮華と友達になったばかりのモコナの試合だった。 アナウンス:「バトルも客席も徐々にヒートアップしてきました!さて次のバトルは、モコナ選手対ハチロウ選手です!」 モコナ:「よぉ〜し、ここはトドクラーに任せるからね!」 ハチロウ:「オクタン、頑張ってくれよ!」 モコナのポケモンは氷タイプを兼ねたトドクラー、ハチロウのポケモンは特性が吸盤のオクタンだった。 両者共に使える技は幅広くあり、巧みな戦術によるバトルが行われるんじゃないかと思われた。 審判:「それでは、試合開始!」 そして試合が始まった。 試合は10分以上にわたって行われたが、なかなか勝負は付き添うになかった。 モコナ:「あのオクタン、なかなかやるなぁ〜、あたしのトドクラーのアイスボールを5回目さえ破壊できるなんて…。」 ハチロウ:「オクタン砲を凍らせたり、岩石封じで攻撃を阻むとは、結構やるな。」 冷凍ビームとサイケ光線が相殺し、アイスボールがヒカリの壁を使用した状態での頭突きで破壊され、ロックブラストが岩石封じで阻まれ、 吹雪と凍える風が相殺し、そしてオクタンの波乗りをトドクラーの地震が押し崩していた。 両者の技がお互いの技によって相殺し、技を技で防御する形でバトルが続いていたのだ。 モコナ:「こうなったら最後の手段だよ!トドクラー、吹雪よ!」 トドクラーは吹雪を放出し、海がドンドン凍りついていった。 ハチロウ:「オクタン、火炎放射だ!」 対するオクタンが吐き出したのは炎技の火炎放射で、吹雪を炎で相殺し、凍りついた海に1本の道筋を作り出していた。 が、モコナは余裕の表情だった。 モコナ:「火炎放射を出してくるとはね。…でも、あたしは吹雪を攻撃として使ったつもりはないんだよ!トドクラー、地震よ!」 トドクラーの地震が、凍りついた海にひびを作り、氷を次々と割っていった。 そして。 モコナ:「トドクラー、岩なだれよ!」 破壊された氷の塊は、意思を持つかのようにオクタンに向かっていった。 ハチロウ:「オ、オクタン!大文字だ!」 オクタンはもう一つ使用できる炎技の大文字によって氷を溶かし、岩なだれとして向かってくる氷を蒸発させていった。 だが、大文字が発動された後、オクタンには氷の塊が突進し、ぶつかっていった。 さらに、大文字で蒸発し切れなかった氷の塊も、オクタンにダメージを与えていた。 ハチロウ:「オクタン!!今のは…」 モコナ:「アイスボールよ、既に今のが3発目、岩なだれを発動した直後に発射していたから、次が4発目よ。」 トドクラーはアイスボールを発射させ、ダメージを受けていたオクタンにさらに強いダメージを与えた。 ハチロウ:「こうなったら、オクタン、アイスボールに破壊光線だ!」 ハチロウはアイスボールの5回目に対し、破壊光線を使い、氷の大きな塊を破壊するのだった。 モコナ:「ふぅ〜、ようやくチャンスが来た!トドクラー、オクタンに吹雪よ!」 ハチロウ:「えっ…、えぇ!?」 先ほどの吹雪は海面に対して行われたが、今度の吹雪はオクタンに対しての攻撃だった。 破壊光線を発動させ、反動で動けないオクタンは吹雪によって凍りつき、倒れるのだった。 審判:「オクタン戦闘不能!よってこの勝負、トドクラーの勝利!」 モコナ:「ふぅ〜、トドクラーお疲れ様!今日のバトルはドッキドキだったね!」 モコナのバトルが終わり、次は志穂のバトルが近づいていた。 対する相手はコレクターのコウキ。 アミカがいなくなった今、コウキは渦巻きアクアカップをここで復活し、決勝に望みたいところ。 そして志穂は、できる限り戦いたいと思っているため、どのような事が起きるのやら…。 悠也:「頑張ってこいよ。」 鈴香:「客席で応援してるからね!」 志穂:「ええ、分かってるわ。火雷の巫女、行きます!」 アナウンス:「さて次のバトルは、ポケモンリーグ準優勝経験の持ち主、志穂選手の登場です!対するトレーナーは、ミナモシティで 有名な、ダイブコレクターのコウキ選手です!」 ダイブコレクター、確か、海底に眠る緑や赤の石のかけらを集めたり、海底に落ちているアイテムを集めたりするダイバーのことよね。 ただ、復帰して間もないらしいから、ポケモンは3匹だけで、ダイビングが使えるのはその中で1匹だけ。 コウキのポケモンは、サニーゴ、メノクラゲ、そして…、何故か予選で使って勝ち抜いたというコイキング。 只者じゃない事は確かね。 さて、悠也から借りたマンタインとカブトプス、鈴香ちゃんから借りたシャワーズ、そしてあたしのランターン。 誰を使おうかしらね? コウキ:「俺はこの手で優勝を勝ち取るために来た。あんたがどんなに強くても負けないからな!」 志穂:「望むところよ、あたしの相手にふさわしそうだもの。あなたの相手に借りたポケモンを使うと火傷をしそうね。 ランターン、ここはお願いするわ!」 あたしが出したのは、あたしの唯一の水ポケモン。 相手が侮れない相手であるだけに、ここはランターンで行くのが一番だと踏んだのだ。 水と電気の属性を持ち、特性は蓄電、これが相手のポケモンにどんな効果を示すのだろうか。 コウキ:「俺のポケモンはこいつだ!俺と唯一引き離されなかったポケモン、コイキングだ!」 コウキの出してきたのは、あたしが睨んでいた相手、コイキングだった。 水タイプで、ポケモンの中で一番弱いと言われている、全てが駄目なポケモン。 特性は雨乞い発動時に素早さが上がる「スイスイ」だ。 会場はコイキングが出たことで、失笑や嘲りの笑いが渦巻いていた。 でも、あたしは知っている。 コイキングだからといっても弱いわけじゃないと。 すでに、蓮華ちゃんのポケモンで実証されているのだから。 志穂:「300匹に1匹は龍の怒りを使えるコイキングがいるようだけど、差し詰めあなたのコイキングはその1匹に当たるのかしら?」 すると。 コウキ:「ああ、そのとおりさ。よく分かったな、姉さん。」 彼は肯定していた。 コウキ:「でも、それだけじゃないぜ!」 コウキの発言からして、まだまだ色々と秘密があるようだった。 やっぱりね、これは…荒れるわ。 審判:「それでは、試合開始!」 コウキ:「コイキング、まずは高速移動だ!」 コイキングはランターンを凌駕する高速移動で海面を動き、体当たりをしようと狙っていた。 志穂:「ランターン、充電して雨乞いよ!」 あたしは、コイキングの特性を分かっていながら雨乞いを発動させた。 コウキ:「雨乞いか、だったらこっちの方が素早さがあがる!コイキング、さらに高速移動で動き、のしかかりだ!」 コイキングの攻撃が執拗なものになってきていた。 ランターンは充電をしたものの、攻撃に変わる態勢にはなれない。 初めは雷を発動させるつもりだったけど、この際雷は諦めようと思った。 そして。 志穂:「ランターン、ダイビングで海底に潜って!そして怪しい光よ!」 ランターンが海底に潜った事で、怪しい光はフィールド全域を覆うことになった。 でも、それなのにコイキングは動き続けていて、混乱している様子がない。 志穂:「そんな…」 コウキ:「残念だけど、神秘の守りを使わせてもらったよ。これで怪しい光も超音波も封じたぜ。」 高速移動に神秘の守り、そしてのしかかりとは、蓮華ちゃん以上の「コイキング育て」ね。 だったらこれはどうかな? 志穂:「それならこれよ!ランターン、充電パワーで10万ボルトよ!」 流石にこれは効いていたようだった。 コイキングは大ダメージを受けたのだが、直後、海底に向かって、膨大なエネルギーを放出していた。 志穂:「えっ…、これが龍の怒り…?」 コウキ:「ああ、コイキング、龍の怒りで10万ボルトの発生源を叩くんだ!」 10万ボルトと龍の怒りがぶつかり合い、海が爆発を起こしていた。 そして、気絶したランターンが浮き上がってきたのだった。 志穂:「そんな…」 審判:「ランターン戦闘不能!よってこの勝負、コイキングの勝利!」 あたしは、負けちゃった…。 来美:「予想以上の強敵出現ね。」 海斗:「ああ、志穂が敗れるとはな。」 蓮華:「志穂ちゃん…」 悠也:「コイキング、あの様子で進化しないとはな。」 鈴香:「進化してもおかしくない状態だよ。」 哲也:「この大会、侮れないってことだな。」 エイク:「そういうことになるでしょうね。」 アヤネ:「あたし…ちょっと不安かも。」 志穂の敗北は、能力者メンバーたちにも、勝ち抜いたトレーナーたちにも衝撃を与えていた。 そんな中で、次のバトルが始まろうとしていた。 涼治:「カメール、バブル光線だ!」 カメールのバブル光線がシードラにダメージを与えていた。 涼治の相手はコウムというマジシャン。 シードラが攻撃されると手品を繰り返しながらもシードラに指示を与えていた。 コウム:「ふん美しくない攻撃だな。シードラ、影分身から龍の息吹だ!」 シードラは態勢を立て直して影分身を行い、龍の息吹によってカメールを攻撃した。 涼治:「カメール、ハイドロポンプだ!」 龍の息吹がカメールを封じるかと思ったその時、カメールは殻にこもり、回転して、大量の水の放出して龍の息吹ごと、 シードラを押し流し、シードラを柱に叩きつけていた。 審判:「シードラ戦闘不能!よってこの勝負、カメールの勝利!」 コウム:「あぁ…弟子がリーグで破れ、僕も新たな大会で幕を下ろすなんて…」 涼治:「手品に集中しすぎて、ポケモンを見る事が疎かだったぞ。残念だったな。」 トキオ:「ニョロボン、バブル光線だ!」 来美:「ジュゴン、冷凍ビームよ!」 来美の相手は水・格闘タイプのニョロボンを使う少年のトキオだった。 アナウンスが言うには、ジョウト地方で有名な釣り大会の優勝常連らしい。 予選では大きなアズマオウを使って勝ち抜いていた。 ニョロボンのバブル光線は冷凍ビームによって凍り、次々に落下して、海に沈んでいく。 トキオ:「ニョロボン、高速移動でジュゴンに近づけ!そして地獄車だ!」 トキオのニョロボンがジュゴンに近づいてくる。 地獄車が決まれば、氷タイプのジュゴンには大ダメージである。 だが、来美は慌てずに指示を出していた。 実は来美、バトルが始まる前にこの少年に言われた一言に、ぶっちり切れていた。 それは、「ハナダジムのジムリーダーには勝つのは難しくても、ジムトレーナーなら楽勝だ」という言葉だった。 来美:「ジュゴン、海面に冷凍ビームよ!そして尻尾で叩き起こして!」 ニョロボンが向かってくる直前、冷凍ビームによって凍った海面が、ジュゴンによってニョロボンの眼前に立ち上がった。 だが、 トキオ:「ニョロボン、爆裂パンチで氷を壊せ!」 ニョロボンもトキオも、これくらいでは動揺しないようだった。 でも、来美はさらにその上にいた。 来美:「だったらこれはどうかしら?ジュゴン、角ドリルよ!」 爆裂パンチによって高速移動のスピードを落としていたニョロボンは、氷を壊したことで一瞬動きが止まっていた。 それを突いたジュゴンは、角ドリルをニョロボンの渦巻きの中心に当てていた。 ニョロモ一族をゲットしたり、攻撃でクリティカルヒットを当てる場合、最も効果的に攻撃を加えたり、ゲットを成功させたりできるのが、 渦巻きの部分なのだ。 そこを狙った事で、ジュゴンの角ドリルは一撃必殺の効果を発動させたのだった。 審判:「ニョロボン戦闘不能!よってこの勝負、ジュゴンの勝利!」 ニョロボンは浮いたまま、動く様子がなく、一撃必殺の威力が示されたような状態だった。 来美:「ジムトレーナーを舐めてもらっちゃ困るわよ!」 ライデン:「オーダイル、水鉄砲だ!」 海斗の相手はポケモン相撲の常連で、優勝経験もあるという、体格が海斗に似た、ライデンという男性だった。 予選ではオーダイルの馬鹿力と、口から放つ膨大な水量の水鉄砲で相手を圧倒していた。 海斗:「アメタマ、高速移動で避けるんだ!」 対する海斗のポケモンは、大きさが全く違う水・虫タイプのポケモン、アメタマだった。 一見すると不利に見える相手だが、アメタマは素早さが高いポケモンであり、普段は大きいポケモンばかりを相手にしていた オーダイルには、やりにくい相手になっていた。 海斗:「アメタマ、白い霧を放出して身を隠せ!」 ライデン:「何だと!オーダイル、周囲の音を聞いて相手の出方を見るんだ!」 白い霧にアメタマが隠れたのを見て、オーダイルは目を瞑り、周囲の様子を音で聞き取ろうとしていた。 だが、白い霧に包まれたフィールドは何も起きないうえに、音も聞こえない状況となっていた。 ライデン:「何故だ、何故何も起きない…」 海斗:「おっさん、よくフィールドの状態を見たらどうだ?」 ライデン:「何だと?…これは…!!」 ライデンが気づいた時、フィールドはさんさんとした太陽の光に包まれていた。 海斗:「日本晴れさ。これでオーダイルの出せる水量の威力は半減したってわけだ。アメタマ、ソーラービームを連続で発射しろ!」 霧の中からはソーラービームが発射されていた。 先ほどまで音が聞こえなかったのは日本晴れを行うために動かなかったからだったのだ。 そして、霧の中から打ち出されるソーラービームはオーダイルにダメージを与えていた。 オーダイルが水鉄砲を放つものの、日本晴れ効果によって威力は半減し、ハイドロポンプでさえもソーラービームと相殺するだけだった。 ライデン:「ならばオーダイル、雨乞いだ!ソーラービームの威力を半減させて、水鉄砲だ!」 だが、ライデンの指示は、出した直後に失敗だったと悟らせていた。 確かに雨乞いをすれば、オーダイルの水鉄砲の威力も上がるが、相手のアメタマの特性は「スイスイ」なのだ。 雨乞いが発動した事で素早さのあがったアメタマは、高速移動を繰り返し、影分身でオーダイルを翻弄しながら、 オーダイルに近づいていた。 ライデン:「オーダイル、海面に地震を放つんだ!アメタマの動きを抑えろ!」 海斗:「残念だな、おっさん。そんなことはもう無駄だぜ!」 ライデン:「何っ!」 海斗:「アメタマ、オーダイルの体に張り付いてギガドレインだ!」 地震を放つ前に、すでにオーダイルの近くにいたアメタマは、オーダイルに張り付いてギガドレインを行った。 流石のオーダイルも、ソーラービームとギガドレインという草タイプの威力の高い技を受けたために、その場に崩れ落ちる結果となった。 審判:「オーダイル戦闘不能!よってこの勝負、アメタマの勝利!」 ライデン:「負けたか…。やはり俺とオーダイルはポケモン相撲が似合ってるようだな。…少年、またいつか勝負しような。」 海斗:「ああ、おっさん、結構強かったぜ!」 長いようで短い時間の間に、トレーナーのバトルは続き、海斗のバトルが終わって、64人のトレーナーによる第1試合の幕は閉じるのだった。 そして、32人のトレーナーが、第2試合への駒を進めていた。 志穂:「あたしのような大番狂わせがあったけど、結局みんな勝ち抜いたわね。」 美香:「そうだね。」 なずな:「明日からまた第2試合だっけ?」 香玖夜:「らしいわよ、今ポケモンセンターで、32人のトレーナーの組み合わせを発表してるらしいし。」 ヤツデ:「第2試合からは、仲間同士でのバトルも始まるんだよな。」 律子:「ええ、それは仕方ない事だけどね。」 悠也:「ああ、それを知っていて、分かっていてこの大会に出たようなものだからな。」 鈴香:「でも、次の第2試合は今日以上に荒れると思うよ。」 清香:「でしょうね。」 志穂達は、第2試合のバトル形式を発表している電光掲示板を見ていた。 『第2試合のバトル形式は、ポケモン2体によるダブルバトル形式となります』 と書かれていたのだ。 蓮華たちのように3体以上のポケモンを持っているトレーナーなら何とかなるものの、昨日今日のバトルでの怪我がまだ回復していない 第2試合出場者で、ポケモンを3体しか持っていないトレーナーは、最も難解なバトルにもなりかねないのだ。 清香:「あたしは予選で負けたけど、それでよかったのかもしれないわ。」 香玖夜:「確か、2体しか持ってないんでしたっけ…」 清香:「ええ…」 律子:「今日のバトルで疲れ切った可能性のあるポケモンを持ってる綾香や涼治君、希先輩も大変ね、きっと。」 晃正:「そうですよね、3人とも持ってる水ポケモンは3体だし…」 志穂:「でも、やるからには頑張らないと始まらないわ。みんなを信じましょ。それだけよ。」 そして、発表が終わり、夜になった。 仲間同士の対戦になったのは、希とアヤネ、哲也とエイクだった。 また、優勝候補のトレーナー、姫乃、シルバー、タカミとの対戦相手は海と涼治、ヒカリで、志穂を倒したコウキとは海斗が対戦することになった。 玲奈と綾香は知らない他のトレーナーと戦う事になったが、第2回戦はダブルバトルであるだけに、とてつもなく難解であるだろうと言う事を 彼らは身に染みて、感じていた。 蓮華:「明日は涼治の試合から始まるのよね…」 ミューズ:「らしいね、さっきカメールも回復して、特訓してたよ。」 蓮華:「相手は優勝候補だし、ヤツデ君が恐れてた相手よ。」 ミューズ:「清香さんもシルバーさんは手強い相手だって言ってたもんね。」 あたしは、明日のバトルが気になって、寝付けなかった。 明日の2回戦。 あたしたちは絶対に勝ち抜きたい。 信頼する仲間と共に…。