夜が明けた。 今日は第2試合目が行われる。 渦巻きアクアカップは後数日、3日か4日くらいで幕を下ろすから、今後はポケモンのケアもかなり重要になるのよね。 あたしが今眺めているのは涼治君の様子。 涼治君は今日の最初のバトルで、優勝候補の一人、シルバーさんとバトルをするらしい。 しかも、バトル形式は今年からダブルバトルを取り入れていた。どうやら、決勝進出のバトル、残り4人になるまでは ダブルバトルで行われるらしい。そうなると、誰がどんなポケモンを持っているかも大体把握されてしまうので、トレーナーにとっては 厄介なようだったり、逆に対策を考えたりするのに便利だったりするみたい。 ダブルバトル形式のもう一つの厄介な特別ルールは、自分の片方のポケモンが倒れたら、それで負けが決まってしまう事。 これがポケモンの組み合わせに大きく関係するのよね。 今涼治君は、自分のポケモンが進化できるように特訓していた。 後3時間くらいでバトルが始まるから、そろそろ切り上げないと、特訓の疲れが残ってしまうのよね。 そんな時、涼治君のマリルがようやく進化を果たし、マリルリになったところで、涼治君はポケモン3体をボールに戻した。 志穂:「お疲れ様、どう?調子は。」 涼治:「まあまあかな、相手はジュゴンやゴルダックだろ?カメールたちでどこまで対抗できるかが問題だよ。」 確かにそれは言えてるわね。 海斗君みたいにアメタマでオーダイルに立ち向かえるだけの技量は、涼治君にはないもの。 ポケモンがライボルトやガラガラのような扱いなれた面子ならまだしも。 志穂:「ともかく、あたしたちの分も頑張ってよね。」 涼治:「分かってるよ、それくらい。」 志穂:「そう。」 …別に浮気してるわけじゃないから。 今、来美ちゃんや蓮華ちゃんたちにも、こっちに来た仲間の誰かがついて、特訓のサポートをしているの。 涼治君の場合は、蓮華ちゃんがあたしに頼んだからなのよ。 渦巻き編 7.水のダブルバトル!壮絶なる2回戦 前編 懐かしい知り合いに会った。 会ってそれから2年くらいになるかな。 会ったのはグレン島なんだけど、あの島にいた清香先輩は偶然が重なって、会った事がなかったみたい。 なずな:「久しぶり。」 ??:「本当ね、元気だった?」 なずな:「ええ。…2回戦、自信は?」 ??:「あるよ、なずな、あたしのこと、応援できる?」 なずな:「えっ?どうして?」 ??:「だって…、あたしの相手…あなたの好きな人でしょ?」 なずな:「あぁ、あれ?もう、終わった話よ。あたしはシルバーの応援をするね。」 シルバー:「お願いね、なずなの応援があると百人力よ。」 シルバーはそう言うとポケモンセンターに走っていった。 3回くらい会っただけだけど、シルバーとは結構仲がよかった。 ヤマブキジムにも来た事があって、あたしと氷雨さんがジムトレーナーとしてバトルをしたこともあるけど、結構強い。 あたしは瞬殺、氷雨さんも2,3ターンで倒したくらいだから、涼治君がどこまで対抗できるのかな? 伊達に怪盗やってたんだし、少しはシルバーを圧倒できるといいと思うんだけど…。 ともかく、あたしはシルバーの応援をしようかな。 そして、今日も大会の幕が開けた。 アナウンス:「さぁ、今日からは2回戦!ダブルバトルによって、32人の勇者たちがどんな戦いを見せてくれるのでしょうか?」 観客は昨日に増して多くなり、バトルが始まるのを待ち望んでいた。 そしてその一角に、現実世界組+αもいた。 志穂:「みんなは控え室だっけ?」 美香:「うん、バトルも見ていたいけど、今日一日で16試合行われるわけだし、ポケモンのケアや特訓や、いろいろとやる事があるみたい。 昨日みたいに1対1じゃないだけに、余念がないのよ。」 香玖夜:「ところで、なずなは?」 美香:「友達の応援だってさ。後で合流するんだって。」 鈴香:「まさか涼治先輩も、昔自分に恋してた人が、自分の相手の応援をするとは思わないでしょうね。」 悠也:「だろうな、まっ、それも試練だろうな。」 晃正:「涼治先輩、最近調子いいし、ペナルティも楽になってきたからいい気味っすね。」 美香:「…晃正君のことはおいといて、相手は優勝候補だっけ?」 清香:「ええ、強敵よ。どうなるのかしらね?…あ、すいません、オバサン、ジュ…」 一人の売り子に声をかけた清香だったのだが…、 売り子:「オ・バ・サ・ン?」 清香:「え、…いえ、…お姉さん、ジュースください。」 売り子:「ほらよ。」 オバサンの一言で切れた売り子が、清香にジュースを投げつけて去っていった。 清香:「冷たぁ…、もう、何よ、あれ!」 そしてそれを追っていく一人の青年と、二人の少年少女っぽい売り子がいた。 晃正:「ひでえ売り子だな。」 美香:「女性にオバサンは禁物かもね、でも、ちょっとムカつくかな。」 しかし、そんな中、志穂と鈴香は複雑な表情をしていた。 志穂:”あれって、あの4人よね?” 鈴香:”ええ、間違いないよ。あの4人。あたし、尾けてくるね。” そして、鈴香は動いていた。 志穂:”全く…、どうしてここに厚化粧とパソコンオタクがいるのよ…” そんな中、涼治君とシルバーがフィールドに姿を見せていた。 アナウンス:「やってまいりました!第2試合、最初のバトルは、涼治選手対シルバー選手です!優勝候補のシルバー選手に対し、 涼治選手はどのようなバトルを繰り広げるのでしょうか!」 そんなアナウンスの声と共に、俺には一つ、とある声が聞こえていた。 なずなの声だった。 なずな:「シルバー!頑張って〜!」 あいつ…、いつの間に仲良くなってたんだ…? 何か調子狂うな。 蓮華たちは控え室だし、それに…。 どうしてなずなは俺の背後の客席でシルバーの応援をするんだよ…。 もう、いいや。 涼治:「優勝候補だろうと、絶対に勝つ!カメール、ヒトデマン、行ってこい!」 俺のポケモンは特性が激流のカメールと、発光のヒトデマンだ。 シルバー:「ふぅ〜ん、カメールとヒトデマンなのね。…それじゃあたしは、ジュエロ!ダック!お願いするわね!」 対する相手、シルバーのポケモンは、氷タイプを兼ね、厚い脂肪が特性のジュゴンと、天気の影響がなくなるノーてんきを特性に持つと 考えられるゴルダックだった。 向こうは進化後、こっちは進化前。 こんな状態でどこまで対抗できるかは分からないけど、できるだけの努力をしようと思った。 審判:「それでは、試合開始!」 涼治:「先手必勝だ!カメール、ヒトデマンに乗って波乗りだ!ジュゴンに向かって進め!」 カメールがヒトデマンに乗って波乗りを行った。 まるでサーファーのような様子のカメールは、ジュゴンをまっすぐ見つめていた。 シルバー:「ダック、水の波動で弾くのよ!」 ゴルダックの水の波動が次々と打ち出され、ヒトデマンとカメールに向かっていくが、ヒトデマンが巧みに避け続け、 ジュゴンに向かっていった。 涼治:「今だ!カメール、ロケット頭突きだ!ヒトデマンはゴルダックに高速スピン!」 カメールがロケット頭突きをするためにジュゴンに飛び、ゴルダックにはヒトデマンが向かう。 しかし、涼治の取った戦法は、ここで反撃に遭い始めた。 シルバー:「ふふふ、それでいいのね。…ジュエロは猫騙し!ダックはサイコキネシスよ!」 ジュゴンの猫騙しがカメールを怯ませ、ジュゴンの目の前でカメールは動きを止めてしまった。 さらに、ゴルダックのサイコキネシスがヒトデマンを捕らえ、ヒトデマンは動く事が出来ず、苦悶の表情を表していた。 涼治:「ヒトデマン、お前もサイコキネシスだ!カメールもジュゴンに噛みつけ!」 涼治は慌てるが、指示を出してもヒトデマンは動けなかった。 また、カメールも動こうとしていたが、先に動いていたのはジュゴンの方だった。 シルバー:「渦巻きアクアカップ、ここまでお疲れ様だったわね。ジュエロ、ダック、破壊光線よ!」 ジュゴンとゴルダックの口から発射された強力な光線は、水面に顔を出した状態のカメールと、宙に浮いた状態のヒトデマンを 軽く吹っ飛ばし、涼治の背後にある壁に大きく叩きつけていた。 ヒトデマンのコアは点滅を激しく繰り返し、カメールも口から泡を吐いた状態で倒れていて、勝負は既に決まっていた。 審判:「カメール、ヒトデマン、共に戦闘不能!よってこの勝負、ジュゴン、ゴルダックの勝利!」 シルバー:「ちょっと戦術が甘かったみたいね、もう少し育てないと、あたしには勝てないわよ。」 シルバーはポケモンを戻し、優雅に去っていった。 反対に、涼治は結構落ち込んでいた。 だが、いつもなら駆け寄るはずの蓮華は、この次にバトルを控え、涼治はというと…。 律子:「お疲れ様、ここで休んだら?」 なずな:「やっぱりシルバーの足元には及ばなかったね。」 晃正:「最近のペナルティ弱まりすぎて、先輩も少しは頭冷えたみたいですね。」 負けが初めから決まっていたと思っているようなメンバーの言葉に、さらにがっくりしていた。 そんな中、蓮華がフィールドに姿を現していた。 アナウンス:「さて次の試合は、蓮華選手対セイジ選手です!ポケモンリーグ優勝経験を持つ、優勝候補の蓮華選手に対し、 予選、1回戦を共に2ターン目で制してきたセイジ選手。この二人はどのようなバトルを見せてくれるのでしょうか?」 涼治は負けちゃったか。 あたしは負けたくないな。 ていうか、ここで負けたらみんなにも、絆たちにも悪いもの。 ただ、今回の相手のポケモンは律子が予選を見てたから分かってるし、ここは大会初だしだけど、任せてみようかな。 蓮華:「ハッスル!ぎょぴちゃん!ここではお願いするわよ!」 あたしのポケモンは、水・草タイプのハスブレロことハッスルと、アズマオウのぎょぴちゃん。 共に特性は雨乞いによる素早さ2倍の「スイスイ」だ。 セイジ:「げっ…」 ハスブレロの姿を見て、流石に相手の表情が一瞬曇った。 でも、すぐに元に戻していて、 セイジ:「俺のポケモンはこいつさ!ジーランス、ニョロボン、行ってこいよ!」 クールっぽくポケモンを出してきた。 岩タイプを兼ねた、特性が石頭のジーランスと、格闘タイプを兼ねた、特性が貯水のニョロボンが相手。 あたしの方が有利かもしれないけど、あたしはちゃんと知ってる。 セイジの試合は控え室にいたときだったから見てないと思われがちだけど、多分思われてるだろうけど、律子達が見ていて 分析してくれたから、そのおかげで、あたしは知っている。 セイジの戦術は、素早さ。 だから、ハッスルをカヴァーできるぎょぴちゃんを選出したのでもある。 そんなことをあたしが思ってるのかどうかは別として、試合は審判の一声で始まった。 審判:「それでは、試合開始!」 セイジ:「ジーランス、ハイドロポンプでニョロボンを押し出せ!そしてニョロボンはスピードを生かしてアズマオウに 爆裂パンチだ!」 先手を打ってきたのはセイジだった。 ポケモンは雰囲気や外見だけで結構強さを勘違いされがちで、ジーランスもその一人。 平和主義的な顔のつくりで、昔からいるポケモンと言われてたり、生きた化石だってことで有名なだけに、のんびりとした ポケモンかなって思われてたりするんだけど、実力は結構ある。 そして、ジーランスの出したとてつもない水量のハイドロポンプを利用して、ニョロボンがアズマオウに向かってきた。 蓮華:「ハッスル、ニョロボンに猫騙しよ!ぎょぴちゃんはサイケ光線でニョロボンに攻撃して!」 あたしは咄嗟にハッスルを前に出し、アズマオウを下がらせた。 猫騙しでニョロボンを怯ませ、サイケ光線での攻撃は、ニョロボンを倒すには至らなかったけど、ダメージを与える事は出来た。 技が相殺されなかったのは、ジーランスとニョロボンの距離が離れていたからだった。 セイジ:「ニョロボン!…それならジーランス、そのままニョロボンにハイドロポンプだ!ニョロボンは泡攻撃だ!」 蓮華:「ハッスル、葉っぱカッターよ!ぎょぴちゃんは滝登りで柱の上に飛んで!」 ニョロボンの特性が貯水なだけに、サイケ光線のダメージは回復されてしまったようだ。 でも、泡での至近距離からのダメージを避けるために、ハッスルの葉っぱカッターで泡を割る事にした。 ぎょぴちゃんはその間に柱に上に飛び、次の攻撃に控えた。 セイジ:「ニョロボン、それならハスブレロにメガトンパンチだ!ジーランスは柱に突進してアズマオウを落下させるんだ!」 あたしの方がバトルは優勢に進めていた。 すでに3ターン目。 セイジはいつものパターンが崩された事で、焦りが見えていた。 それに、次にニョロボンを回復させようとするならどうそれを阻むかも考えれていた。 蓮華:「ハッスル、ニョロボンにカウンターよ!ぎょぴちゃんは柱の上で跳ねてからニョロボンに突付く攻撃よ!」 メガトンパンチがハッスルを襲った瞬間、ハッスルのダメージ2倍分の裏拳がニョロボンを襲い、さらに柱の上でジャンプしたことで 相手に向かう体制を整え、向かってきたぎょぴちゃんの突付く攻撃が、ニョロボンの背中を襲っていた。 それでもニョロボンはまだ倒れない 伊達にHPが高いだけはあるか。 蓮華:「ぎょぴちゃんはそのまま水中に待機して!ハッスル、ソーラービームよ!」 そしてあたしは、最後の攻撃に出る体制をとった。 もう分かってると思うけど、こんなことをすれば、相手はハイドロポンプなどの水タイプの攻撃をジーランスに使わせて、 ニョロボンを回復させるでしょ? でも、それはさせない。 そして、そのタイミングがやってきた。 セイジ:「ジーランス、今のうちに水の波動でニョロボンを回復させるんだ!ニョロボンは気合パンチだ!」 気合パンチの打ち出す力によって、ソーラービームを防御するつもりなんだろう。 でも、セイジが水の波動を指示した事が敗因になっていた。 蓮華:「ぎょぴちゃん、今よ!水の波動に冷凍ビームよ!そして尻尾を振る攻撃!」 水中から飛び出したぎょぴちゃんは、冷凍ビームで水の波動を凍らせていた。 そうなると、凍った水の波動=水の球体は水に沈むわけだけど、ぎょぴちゃんが尻尾を振って、その球体をニョロボンに向かって バットのように打っていた。 そして、ニョロボンは背中に氷のよるダメージを受け、気合パンチの集中が途切れてしまっていた。 直後、ニョロボンにはソーラービームが打ち出され、流石のニョロボンも倒れていた。 審判:「ニョロボン、戦闘不能!よってこの勝負、アズマオウ、ハスブレロの勝利!」 セイジ:「そ、そんな…」 セイジ、ニョロボンがソーラービームを受けて水面に落ちていく姿を見ながら、がっくりと膝をついていた。 水の波動を放っていたジーランスも呆然としながら、水に浮くニョロボンを眺めていた。 蓮華:「ぎょぴちゃん、ご苦労様。ハッスルもよく頑張ったわね、これからもよろしくね。」 ハッスルはまだハイドロポンプを覚えていないので、進化させるわけにはいかない。 でも、この状態でもバトルは頑張ってくれるだろう。 ともかく、2回戦、ゲットだぜ! その頃…、 涼治:「おい、何すんだよ!離…うぐっ!…」 ??:「やっと静かになったな。」 ??:「おまえにはやってもらわなければならないことがあるんだ。おとなしくしてもらおうかな。」 ??:「せっかくの金づるのチャンスなのよ。」 ??:「すいませんけど、おとなしくしてください。」 涼治がトイレに出て、そのまま帰ってこないという出来事が起きていた。 でも、あたしはバトル勝利の優越感などがあったり、ポケモンをポケモンセンターに預けに行ったりしていて、そして客席のみんなも、 すぐに戻ってくるだろうと思っていたので、トラブルとは思っていなかった。 でも、トラブルだったんだよね…。 これに気づくのは、試合が終了してからなのだ。 志穂:”えっ?途中でテレポートされちゃったの?” 鈴香:”ばれてたみたいですよ、多分誰かが尾行するって呼んでたみたいです。” 志穂:”そう…、また動きがあったら、今度はみんなにも言いましょうね。” 鈴香:”ええ。” そして、バトルフィールドでは3戦目、4戦目と続いていた。 5戦目になり、次のバトルは綾香の出番だった。 アナウンス:「さて次の試合は、綾香選手対ダイキ選手です!」 あたしの相手はちょっと太目の男の人だった。 パソコンを片手に色々と作戦を練っているようだけど、あたしは自信満々でバトルをしてみせる! そう決めていた。 綾香:「お願いね、ペリッパー、ミロカロス!」 あたしはゲットしたばかり、進化したばかりのヌオーを控えさせ、今回はペリッパーとミロカロスを投入した。 ダイキ:「ミロカロスとペリッパーか、水面と空中からの攻撃かな。だったら僕は…ルンパッパとランターン、君たちが行ってくれ!」 相手はそれを見て、草タイプを兼ねたルンパッパと、電気タイプを兼ねたランターンが出されていた。 それぞれ弱点をつく気らしい。 だったら、その弱点を覆してやらなきゃね。 そして試合は始まった。 審判:「それでは、試合開始!」 ダイキ:「ランターン、ペリッパーに電撃波だ!ルンパッパはミロカロスに種マシンガンだ!」 綾香:「ペリッパー、守る攻撃!ミロカロスは竜巻よ!」 必ず当たる攻撃の電撃波でも、守る攻撃に防がれてペリッパーには当たらず、ミロカロスの起こした竜巻が種マシンガンごと 水で押し流していった。 ダイキ:「守る攻撃によるバリアの強度と竜巻の威力は…こんなもんか。」 すると、パソコンのようなものを操作して技の防御度や威力を調べ始めるダイキ。 どうやらそれによって相手のポケモンの力を把握して、今までのバトルを終えてきたようだ。 ダイキ:「ランターン、ダイビングで底に潜れ!その間にルンパッパ、自然の力を見せてやるんだ!」 自然の力は、そのフィールドにあった攻撃をしてくる技。 でも、水辺での自然の力はバブル光線だから大丈夫。 そう思ったあたしは、 綾香:「ペリッパー、ルンパッパに翼で打つ攻撃よ!ミロカロスは相手の出方を見て待機よ!」 と指示を出した。 だけど、海面からはハイドロポンプが飛び出し、ペリッパーとミロカロスに向かってきていた。 綾香:「えっ、どうしてハイドロポンプが…。とにかく、ペリッパーは上昇!ミロカロスはミラーコートよ!」 だが、ペリッパーは避けきれず、翼に攻撃を受け、体勢を傾けてしまっていた。 しかも、ミラーコートの倍返しもルンパッパにはするりと避けられてしまっていた。 ダイキ:「どうやら自然の力を知らないようだな、トレーナーのくせによくやってきたね。ランターン、そろそろ飛び出していいよ。 ペリッパーは潰しやすくなってる。10万ボルトをお見舞いしてやるといいよ。ルンパッパもペリッパーに葉っぱカッターだ!」 ダイキは嫌味を言いながら、ペリッパーに狙いを定めていた。 そのうえ、ペリッパーに対しての攻撃のはずの葉っぱカッターが、ミロカロスにも攻撃として向かってきていた。 あたしにとっては初めてだらけの攻撃で、もう混乱状態! でも、何とかやるしかない! 綾香:「ペリッパー、影分身で避けるのよ!避け切れなかったら守る攻撃!ミロカロスは水の波動よ!」 先ほどの攻撃でよろめいていたペリッパーだけど、影分身で10万ボルトは回避できた。 そして守る攻撃が発動して、葉っぱカッターからも身を守った。ミロカロスの水の波動は葉っぱカッターを弾き返して ルンパッパに向かったけど、何故かルンパッパには当たらなかった。 ルンパッパには、攻撃を避ける事が出来る何かがあるようだ。 ともかく、ペリッパーに対しての攻撃が今後も向くのは察した。 このままじゃヤバイし…。 ダイキ:「どうやら、トレーナーになって間もないようだね。それじゃ、僕には勝てないね。ランターン、今度はもう一度電撃波だ! ルンパッパもペリッパーに凍える風をお見舞いしてやれ!」 そう思ってるうちに、あたしのことはダイキには気づかれていた。 電撃波と凍える風はペリッパーに向いている。 こうなったら一か八か! 綾香:「ペリッパー、影分身をしながら高速移動よ!攻撃は堪えてルンパッパに近づいて!ミロカロスはランターンに龍の息吹よ!」 ダイキ:「何をするつもりだ?ルンパッパ、近づいたらメガトンパンチだ!ランターンも水の波動で仕返してやれ!」 電撃波と凍える風をかわして進むペリッパーは、ルンパッパに近寄り、そしてすんでのところできりもみ旋回でメガトンパンチをかわした。 直後、ランターンに向いていたはずの龍の息吹が何故か、ルンパッパに攻撃をしていた。 そしてミロカロスは水の波動を体に受けていたが、全く平気な顔をしていた。 ダイキ:「何っ!?」 綾香:「うふふ、フェイク成功ね。」 あたしはヌオーを含む3人に、バトルの前にあることを指示しておいたのだ。 多分、ダブルバトルでは広範囲を移動できた方が攻撃は可能だと思った。 だから、ペリッパーとミロカロス、またはペリッパーとヌオーでのバトルをやるつもりだと。 その際、相手の方が有利な状況になった場合、一か八かの方法として、相手の道具を奪う事を考えたのだ。 ようするに、「どろぼう」という技を使うのだ。 でも、使おうとすれば相手の攻撃を受けることになるから、ヌオーとミロカロスは奪う相手じゃないポケモンを攻撃するふりをしなければ いけない。ふりをすることで自分のほうに攻撃の目を向け、わざと攻撃を受けて、泥棒される相手に攻撃を当てるのだ。 相手があたしよりも実力があるなら分かるけど、アイテムによって相手が上回ってるのならば、あたしの作戦は成功する事になる。 そして、ペリッパーの翼に下がっていたものを見て、あたしの作戦が成功した事が分かった。 それは、「光の粉」が入った袋だった。 「光の粉」は相手の命中力を落とす事が出来るアイテム。 そのおかげでルンパッパはミロカロスによる攻撃を避ける事が出来たようだ。 その証拠に、ミロカロスの龍の息吹が命中していた。 当たりにくいような位置での攻撃で当たったので、成功したことははっきり分かる。 ダイキ:「光の粉が…!くそっ、でも水の波動でミロカロスは混乱したはずだ!ランターンは10万ボルト、ルンパッパは水の波動で ミロカロスを集中的に狙うんだ!」 それにダイキも動揺していた。 どうやら、光の粉がルンパッパを助けていたようだ。 そして今度は、水の波動で混乱したと思われたミロカロスに攻撃が向かっていた。 でも。 綾香:「ミロカロス、ミラーコートよ。ペリッパーはルンパッパに電撃波よ!」 ミロカロスは混乱せず、ミラーコートによってルンパッパに二つの攻撃の倍返しを放っていた。 そこに電撃波の攻撃も向かい、ルンパッパは倒れるのだった。 そして、 審判:「ルンパッパ、戦闘不能!よってこの勝負、ミロカロスの勝利!」 ルンパッパが審判によって戦闘不能だと決定され、あたしの勝利が決まった。 その時、 ダイキ:「何故だ、ミロカロスは水の波動で混乱していたはずなのに、混乱した様子を一瞬でも見せていたのに…、どうして ミロカロスはミラーコートの指示に従えたんだ!」 と聞かれた。 でも、あたしは笑っただけで、何も言わなかった。 だって、ミロカロスのほうをよく見ていれば分かるんだもの。 ミロカロスの首に、キーの実がかかっていたことが。 この木の実のおかげで、ミロカロスは混乱を治す事が出来たのだ。 あたしが自然の力に戸惑ったりしてことで、狙いをペリッパーに集中させていた事により、それにより、ミロカロスを観察する事が 疎かだった。それが彼の敗因だろう。 ともかく、あたしは少しずつ、ルーキーなりのトレーナー街道を通っているかな。 綾香:「ペリッパー、ミロカロス、お疲れ様でした。ボールの中でゆっくり休んでね!」 そんなバトルが続く中、来賓席では新たなトラブルが起き始めようとしていた。 マヤ:「今年はとても楽しいバトルが続いているわ。彼らのうち、誰が海の勇者として称えられる事になるのかしら?」 律子:「綾香も勝ったし、蓮華ちゃんも勝ったけど、まだまだ優勝候補のトレーナーがダブルバトルを戦ってないし、まだまだ分かりませんよ。」 ナナ:「そうね、途中で帰ってきて正解だったわ。」 来賓席には神官マヤの左右に、律子とナナが座っていた。 ナナはホウエンでのジム巡りを終え、四天王とフロンティアブレーンとの戦いを先延ばしにして戻ってきたのだ。 理由は渦巻きアクアカップが見たくなったからという理由だった。 ナナ:「それにしても、みんな頑張ってるわね。」 律子:「でもさ、ナナは初めからいたほうがよかったよ。その方がもっと楽しめたもの。」 マヤ:「ですけど、ナナさんがいらしてくれて安心してますわ。あなたは一度海の勇者としても称えられたことがありますし、 海の神も、海の勇者が再び来てくださり、トレーナーのバトルを見守ってくださっている事をお喜びだと思います。」 そんなときだった。 ジュンサー:「大変です、マヤ様。これをご覧ください!」 トラブルが起きたのは。 ナナ:「えっ…えぇ!?」 律子:「嘘…マジで?」 マヤ:「あらあらあら…、これは困りましたわ…。」 ジュンサーが持ってきた紙を見た3人はこのように驚いていた。 何故なら、何が書いてあったかといえば… 『予告状 渦巻きアクアカップ主催者 神官マヤ様 今日の夜、海の魂の宝玉を取りに参ります。 怪盗クールナイト』 だったのだ。 しかも、ナナと律子はその紙が、トイレットペーパーの破れかすに書かれていたことで不安を倍増させていた。 ナナ:”涼治君は怪盗を辞めたってことだし…、でもこの筆跡はそうだけど…” 律子:”あの馬鹿、またトラブルに巻き込まれたんだから!ここは何とかしなきゃ!” 二人が行った行動、それは、バトルのない観客席メンバーに伝えにいく事だった。 ナナはジュンサーたちポケモン警察や神官たちと対策を考えると言い、律子は他のメンバーに伝えに行った。 律子:「でも、涼治君はどうしてなの…?辞めた事は分かってるし、何で、今になってまたなの?まだ、あのときのドリームの力が 残っていたっていうの?それに操られてるって言うの?」 そんな涼治はといえば、アクアカップが開催されているカクイシティの街中の一軒家に監禁されていた。 だが、中で鎖につながれて監禁されていたのは涼治だけじゃなく、他の人物がいた。 ??:「すいません、あたしのためにこんなことになって…」 涼治:「いや、大丈夫だって。」 涼治は、ある4人によって気を失わせられ、この家に連れてこさせられ、怪盗をするように脅迫を受けていた。 それを突っぱねた時に出てきたのが、彼女だった。 「彼女を助けたければ、傷つけられたくなければ、怪盗をしろ!」というのが4人から出された指令だった。 涼治は嘘だと思いたかったが、4人のうちの1人がどうも、嘘を言ってない目をしていたので、信じることにしたのだ。 だが、監禁部屋に再び引きずられてきた時、そこにはもう一人いた事が分かった。 それが、彼女の彼氏だった。 二人ともナナシマの時に知り合っていたので、涼治は見捨てる事が出来なかったのだ。 そして今に至る。 涼治:「蓮華たちは怒ってるだろうけど、大丈夫だって。」 ??:「それじゃ、一応安心してます。輝治が、目を覚ましてくれるときを待ちながら。」 涼治:「薬の効き目が強いだけだし、多分大丈夫だよ。」 ??:「はい!」 そんな中、蓮華たちが怪盗のことを知って驚いたり、涼治がある少女を励ましたりしている中、次の試合が始まろうとしていた。 同時に、海が、波が少し荒れ始めていた。 これは、海の戦士が現われた事を意味していた。