ついにあたしかぁ…。 セイラムたちテレビ中継見てるかな? カンナ様、きっとあたしの細かいミスとか指示の遅れに駄目だし入れてそうだなぁ。 でも、相手は優勝候補、不服なし。 知り合いがドンドン敗れてく中でって言っても、まだそんなに敗れてるわけじゃないけど、あたしが1年以上かけて学んだ バトルの実力と、スペース団の中で身につけたこと力、確実にここで証明して見せようっと。 それにしても、蓮華ちゃんたちが何だか慌しい様子だし、また何かあったのかな? 多分、観客席で見かけた、街で見かけた元同僚が何かをやってるだろうから、それを調査してるんじゃないかな? 観客席で普通にアクアカップを楽しんでるんだし、大事じゃなさそうだ。 渦巻き編 9.水のダブルバトル!壮絶なる2回戦 後編 アナウンス:「さぁ、次のバトルは、これまた優勝候補トレーナーの一人、タカミ選手の登場です!前回、前々回と準優勝を 飾っている彼女、今回の大会では優勝を掴み取れるのでしょうか?対するトレーナーは、何とカントウ四天王カンナ様の愛弟子、 4の島出身のヒカリ選手です!」 会場は優勝候補とカンナの弟子が登場したことでいっそう盛り上がりを見せていた。 タカミ:「よろしくね、いいバトルにしましょう。」 ヒカリ:「ええ。」 二人の間には相手に勝つという闘志よりも、バトルを楽しもうとする、熟練トレーナーの闘志が炎として浮かび上がっていた。 それは、周囲からはほんのりと優しいような、穏やかなムードと感じられていた。 タカミ:「それじゃ、行くわよ。ギャラドス、ゴルダック、行きなさい!」 ヒカリ:「ラプラス、パルシェン、出てきて!」 タカミのポケモンは飛行タイプを兼ね、威嚇の特性を持つギャラドスと、ノーてんきを特性に持つゴルダック。 対するヒカリは、共に氷タイプを兼ね、シェルアーマーを特性に持つラプラスとパルシェン。 ギャラドスの威嚇で攻撃力が下がると思いきや、ラプラスが口にくわえ、パルシェンの殻に張り付いていたアイテムが その姿を消していた。 タカミ:「持たせていたのは白いハーブかしら?ギャラドスの威嚇に備えた作戦ね。」 ヒカリ:「ええ、相手を確認した上での作戦。これくらいの対処が出来ないといけないもの。」 両者共に落ち着きを見せていた。 そして。 審判:「それでは、試合開始!」 バトルが幕を開けた。 ヒカリ:「先に行くわよ、ラプラス、白い霧よ!パルシェンは殻に篭って攻撃に備えて!」 ゴルダックの特性のノーてんきが効果を打ち消す事が出来る天気は4種類のみ。 日本晴れ、雨乞い、あられ、砂嵐。 これら4つの天気以外の天気を打ち消す事が出来る特性ではないので、あたしのラプラスが放出した白い霧は ゴルダックの特性で打ち消される心配はなく、ラプラスとパルシェンと、その周囲を包み込んだ。 タカミ:「やるわね、ノーてんきの対象外を使うとは。でも、それは追加効果、状態異常に関する攻撃を防ぐ技であって、 攻撃そのものを打ち消したり防いだり出来る技ではないのよ。ゴルダック、見破る攻撃でパルシェンの正確な位置を掴み取るのよ。 ギャラドスは龍の舞よ。」 タカミさんのゴルダックは見破る攻撃でパルシェンの位置を掴もうとしていた。 見破る攻撃は相手がどれだけ回避率を上げたとしても、それに全く関係なくこの次の技で攻撃を当てると言う事を可能にしてしまう 技。白い霧があっても、その中に突っ込んでくる事は可能なのだ。 そしてギャラドスは龍の舞で攻撃力と素早さをあげていた。 タカミ:「ギャラドス、竜巻で霧を吹き飛ばして!ゴルダックはパルシェンに瓦割よ!」 ギャラドスが素早さをあげたことで、次のターン、先に攻撃していた。 ギャラドスの素早さはあたしが普段見るよりも早く、竜巻は綺麗に白い霧を吹き飛ばしてしまった。 でも、ラプラスの姿はどこにもなかった。 水に潜ったのだ。 でも、竜巻が消えた直後、パルシェンの方へゴルダックが向かってきた。 ゴルダックの狙いがラプラスではなくパルシェンであるからだ。 氷タイプを持つパルシェンにとって、格闘タイプの技は弱点。 だったらここは…。 ヒカリ:「ラプラス、パルシェンとゴルダックの間に浮上して!怪しい光よ!」 瓦割が炸裂する前に、ラプラスがゴルダックの目の前に現れ、怪しい光がゴルダックに向けられていた。 タカミ:「ゴルダック、正気に戻るのよ!」 タカミが叫ぶも、ゴルダックの持ち物は首にかけた貝殻の鈴。 混乱を治すアイテムではなかった。 ヒカリ:「パルシェン、今よ!ゴルダックを殻で挟んで!」 混乱し、ボーっと突っ立って何もしないゴルダックは格好の標的だった。 パルシェンに体を半分挟まれた事でようやく混乱から目が覚めたものの、動く事が出来ずに殻から出ようとゴルダックは必死に 動いていた。同時にパルシェンとラプラスがゴルダックの近くにいるために、ギャラドスも攻撃に出る事が出来ない。 トレーナーのポケモンが1体倒れた時点で負けが決まってしまうこのダブルバトルだけに、慎重な行動と冷静な判断が伴うのだ。 ヒカリ:「今のうちよ、ラプラス、メロメロよ。」 この状態をヒカリが見逃すわけがなかった。 ラプラスのウインクから飛び出したハートがギャラドスに当たり、ギャラドスの目はハートになっていた。 タカミ:「ギャラドスまで…。私のギャラドスが♂であると、よく分かったわね。」 ヒカリ:「カンナ様に教わりましたから。ひげの長さやヒレ、背びれの大きさなどの細かい部分で、ギャラドスは♂♀が判断可能なんです。 タカミさんのギャラドスはひげの長さが結構長く、ヒレは大きいので、♂だと判断しました。」 タカミ:「そう、でも、ゴルダックの動きに目が行ってないわね。」 ヒカリ:「えっ?」 あたしはラプラスとギャラドスに目を向けていて、ちょっとした油断を作っていた。 指摘された直後、パルシェンに目を戻す前、あたしは鈍器が割れるような嫌な音を聞いた。 ヒカリ:「パルシェンの殻が…」 タカミ:「ようやくゴルダックは動けるわね。」 パルシェンの殻が大きく割られ、ゴルダックはまだかすかに動いているパルシェンを踏んづけて胸を叩いていた。 タカミ:「白い霧が消えた時点で相手の状態を崩す技は使えるようになるの。ゴルダックのかすかな嫌な音がパルシェンの殻の中で 響いていた。そして、ゴルダックの片手による爆裂パンチが、防御力を落としたパルシェンの殻を破壊したのよ。 どれほど防御力が優れたポケモンでも、嫌な音が体中を間近で響き続けていれば格段と防御力を落としてしまうものなのよ。 ゴルダック、ラプラスにアイアンテールよ!」 ギャラドスに体を向けていたラプラスも、ゴルダックが動けるようになってしまえば格好の標的第2号。 ゴルダックのアイアンテールはラプラスの後頭部に強くぶつかり、ラプラスは海に沈んでいってしまった。 浮かんできた時に戦闘不能になっていたらあたしの負けだ。 でも、浮かんでくる様子がない。 元々特性のシェルアーマーが攻撃を急所に当てないものだから、ラプラスはまだ戦える状態だとあたしは思った。 タカミ:「ゴルダック、ラプラスが浮かんでこない今、パルシェンに止めを刺すのよ。今度こそ、瓦割よ!」 ギャラドスが相変わらずメロメロ状態から戻ってないために、タカミさんの動けるポケモンはゴルダックだけだった。 そしてパルシェンに対し、ゴルダックが止めを放とうとしたときだった。 ゴルダックが異常に気づいたのだ。 タカミ:「ゴルダック?どうしたの?」 ゴルダックが全く動かないのだ。 ヒカリ:「残念だったわね。パルシェン、今のうちに眠るのよ!」 ゴルダックが動かない、いや、動けないのは柱に足が張り付いてしまっていたからだった。 タカミ:「もしかして、足の裏が凍ってしまっているの?」 ヒカリ:「ええ、パルシェンのオーロラビームが柱を冷やした事で、水からあがってきたゴルダックの足が張り付いたのよ。 ラプラス、そろそろ浮上してきなさい!サイコキネシスでギャラドスをパルシェンに近づけて!」 ゴルダックが動けず、パルシェンが眠り、ギャラドスの目がハートになっている状況。 ここでラプラスが浮上してきた。 彼女の目は、少し怒りを持っていた。 頭を強く殴られたのだからしょうがないだろう。 そして、サイコキネシスでギャラドスの体が無理やり伸ばされ、ゴルダックはその体に巻きつけられていた。 しかも、パルシェンと共に。 ヒカリ:「もう、バトルはおしまいだよ。お疲れ様でした。」 タカミ:「どういう…こと?」 ヒカリ:「言ったほうがいいよ?ポケモンが怪我する前に。」 タカミ:「そうね…。ギャラドス、ゴルダック、戻りなさい!」 ヒカリはおもいっきり笑っていて、逆にタカミはヒカリが何をしようとしているのかを察し、かすかに顔を青くしていた。 そして、ポケモンをボールに戻す=負けを認める行動に出ていた。 審判:「タカミ選手がポケモンを戻したので、試合途中離脱により、ヒカリ選手の勝利です!」 タカミ:「…あなたとバトルができたことはよかったわ。でも、この次は4の島に行ってあなたにバトルを挑むから。 覚悟していなさいよ。」 ヒカリ:「ええ。ありがとうございました。」 タカミ:「次のバトルも頑張ってね。」 ヒカリ:「はい。」 ヒカリが行おうとしていた、パルシェンの大爆発によって、ギャラドスとゴルダックが普通以上のダメージを受けるという状況が 起きることなく、ヒカリとタカミのバトルは幕が下りた。 ただ、タカミはあれを脅しと考えているが、実はヒカリは本気でやろうとしていたのだったりした。 スペース団にいたときの残忍な部分がまだ抜けきれていない証拠でもあるのだが、中継を見ていたカンナ以外、誰もそれには気づいていなかった。 アナウンス:「さて、次の試合はモコナ選手対マサオミ選手です。」 この大会が終わった時が、俺が元の世界に帰るときか。 長かったな。 突然何かに落ちたかと思えばこの世界にいた。 神様なんか信じてなかったけど、帰る機会があるはずなのにその機会を逃していた。 それは故意に逃させられていたと直感できたのは、信じていないはずの俺の霊力が開花したからだった。 この世界に来て2年目の事だった。 そして俺はそれ類を憎んだ。 でも、憎むだけで、何も始まらなかった。 だからずっとこの世界で暮らしていた。 トレーナーとして旅をしていれば、気がまぎれると思ってた。 そして、今回この大会に来て、竜宮神社の巫女に会い、ようやく帰れる機会が来たと知った。 これで帰れるんだ。 何だか寂しい気もするな。 この世界は自由だったから。 向こうに戻れば、俺は20にもなったと言うのに、向こうでは18として扱われるかもしれない。 向こうに戻れば、自由じゃない生活になるかもしれない。 帰れる事が幸せじゃないのかもしれない。 でも、これを逃したら一生帰れないんだろうな。 仕方がない。 この大会でこの世界との終止符を打つとするか。 モコナ:「あなたがあたしの相手だね。よろしくね。負けないからね。」 マサオミ:「俺も負けない。もうここで負ける気はない。」 モコナ:「そっか、でも、あたしが勝つんだからね。行ってきてよね、シェルダーにシャワーズ!」 モコナのポケモンは特性がシェルアーマーのシェルダーに、貯水のシャワーズだった。 マサオミ:「俺のポケモンはこいつらだ。ヌマクロー、アリゲイツ、行って来い!」 対するマサオミのポケモンは、共にファーストポケモンとして扱われているポケモンで、特性は激流だった。 負けない気は、笑顔のモコナも、無表情のマサオミも強く、笑顔と無表情の見つめあいは、意外と凄みをきかせたムードを かもし出してもいた。 審判:「それでは、試合開始!」 マサオミ:「先手必勝だ!ヌマクロー、シェルダーにマッドショット!アリゲイツ、シャワーズに切り裂く攻撃だ!」 モコナ:「防御には攻撃が最大だけど、攻撃には防御するよ!シェルダー、殻に篭るのよ!シャワーズは水に飛び込んで溶けて!」 ヌマクローが出した土の塊がシェルダーにぶつかるが、殻に閉じたシェルダーには全く効いていなかった。 そして、アリゲイツの切り裂く攻撃も水に溶けたシャワーズにはかすりもせず、水を切り裂いたに過ぎなかった。 さらに。 マサオミ:「くっ、だったら次は…」 モコナ:「遅いよ〜。次の攻撃はあたしが行っちゃうからね!シェルダー、ヌマクローを殻で挟んじゃえ!そしてシャワーズは、 ヌマクローに水の波動だよ!」 マサオミの指示が飛ぶ前に、モコナが既に動いていた。 元々ヌマクローは水タイプであると同時に地面タイプでもあるので、水タイプの攻撃は普通に効いてしまうのだ。 そして、ヌマクローに対してモコナのポケモンは攻撃を集中させていた。 水に溶けたシャワーズが既にアリゲイツから遠ざかってもいて、アリゲイツは直接攻撃でヌマクローを守ることが出来る状態でもなかった。 しかも、特性が貯水なだけに、水鉄砲などは使えないのだ。 そしてヌマクローは殻で挟む攻撃と水の波動による攻撃を受けた。 マサオミ:「ヌマクロー!…だったらアリゲイツ、シェルダーに水鉄砲だ!ヌマクローは岩石封じでシャワーズを攻撃してやれ!」 モコナの攻撃にマサオミは反撃を試みた。 貯水のシャワーズから目を外し、シェルダーに目を向けたのだ。 だが、シェルダーと水鉄砲の間にシャワーズが飛び込んできていた。 マサオミ:「な、何!?」 モコナ:「へっへ〜ん、シャワーズの電光石火だよ。さて、これで終わりにしちゃおうかな。シャワーズ、ヌマクローにオーロラビームだよ! シェルダーはヌマクローの頭のヒレに氷柱針を刺しちゃえ!」 シャワーズが電光石火で攻撃をかわし、さらに体力をつけたため、マサオミの攻撃は外された。 そして、シャワーズの氷タイプの攻撃がヌマクローを弾き飛ばし、さらにヌマクローの頭のヒレ、ミズゴロウ一族にとってはレーダーの役割になる 大事な部分が攻撃を受けたことで、ヌマクローはその場に崩れ落ちるのだった。 審判:「ヌマクロー、戦闘不能!よって、この勝負、モコナ選手の勝利!」 モコナ:「やったぁ〜!!次の試合もドッキドキ!!」 マサオミ:「負けたか…。俺の旅が終わったんだな。」 バトルが終わり、モコナが飛び上がって喜ぶのを尻目に、マサオミはその場を去っていった。 数時間後、なずなのテレポートによって、マサオミはナナの家まで運ばれていった。 志穂が言うには、その時の彼の表情はさっぱりしていたらしい。 その後、彼がどうなったのかは志穂以外、知るものはいない。 そして、次は来美の試合だった。 だが、その頃…。 アクアカップのコロシアムに人が多く集まっていたために、ポケモンセンターの警備が疎かになっていて、 ポケモンセンターが襲われる事件が起きていた。 ジョーイ:「やめなさい、ここのポケモンたちは多くのトレーナーの大切なポケモンなのよ。あなたたちが勝手に持ち出していくのは いけないわよ。」 必死で止めているのはジョーイさんとラッキーやハピナスたちだったが、頭にメカをつけたポケモンたちの攻撃で倒れ、 二人組の強盗は、トレーナーたちからポケモンを奪っていっていた。 ジュンサー:「あなたたち、一体何者なの!トレーナーから奪ったモンスターボールを返しなさい!」 そして、コロシアムから駆けつけたジュンサーが叫んだ時、強盗団は妙な動きを始めていた。 と同時に、空には大きなラッタ型の気球が姿を現し、音楽が流れてきていた。 女の人:「一体何者なの!と聞かれたら...」 男の人:「答えてあげないの普通だが...」 二人:「まあ特別に答えてやろう!」 女の人:「地球の破壊を防ぐため...」 男の人:「地球の平和を守るため...」 女の人:「愛と誠実の悪を貫く...」 男の人:「キュートでお茶目な敵役...」 女の人:「ヤマト!」 男の人:「コサブロウ!」 ヤマト:「宇宙を駆ける元スペース団、今はスペース強盗コンビの二人には...」 コサブロウ:「ショッキングピンク、桃色の明日が待ってるぜ!」 ヤマト「なーんてな!」 ラッタ:「だっちゅーの!」 ジョーイ:「元スペース団ですって!?」 ジュンサー:「残党がこんなところで出てくるなんて…、ガーディ、行くのよ!」 ジュンサーはガーディを出すが、コサブロウのカポエラーがトリプルキックでノックアウトし、ガーディさえも捕まってしまった。 ジュンサー:「ガーディ!」 コサブロウ:「残念だったな、このガーディは俺たちが育てて使ってやるよ。ポケモン警察のポケモンが悪の道を走ったら、 世間はポケモン警察を批判するだろうな。」 二人はスペース団の中では雑魚キャラであるが、ジョーイさんやジュンサーさんには勝てるくらいの力は持っていた。 そのため、いい気分になって、道の向こうからやってくる人影には気づいていなかった。 ヤマト:「そうね、それに、スペース団復興のためにも私たちは頑張るのだから。ヤミラミ、黒いき…」 そして、悪が裁かれる時が来た。 黒い霧を発動させる直前のヤミラミが、どこからか放たれたソーラービームの一撃でダウンしていたのだ。 ヤマト:「何!?ヤミラミ!」 コサブロウ:「誰だ!」 ??:「ポケモン泥棒はあたしが許さないわよ!」 ??:「悪は成敗するのが礼儀だ。」 やってきたのは小麦と刹那だった。 鈴香がヤマトとコサンジの声を聞き取り、志穂達に知らせた直後、街に行っていた二人のことを思い出し、連絡をつけたのだ。 ヤマト:「くそぉ、私たちのスペース団復活のための作戦を邪魔しないでいただきたいわ。ラッタ、スリープ、行くのよ!」 コサブロウ:「ヘルガー、カポエラー、迎え撃て!そしてナンバ博士ナンバ5起動だ!」 ラッタ、スリープ、ヘルガー、カポエラーの頭につけられたメカが動き出し、4匹の目の色が変わり、顔つきが凶暴になるのを 二人は見た。 小麦:「これがポケモンの怒りを力に変えて増幅させる機械…。ひどすぎる。」 刹那:「ポケモンたちは操られる道具ではないのだ!」 小麦:「普段はバトルをやらないけど、あたし、怒ったからね!ラフレシア、ペルシアン、お願い!」 刹那:「ニューラ、オニドリル、ポケモンの冷静なる怒りを見せるのだ!」 戦いの場に身を置いていた時期が長い刹那はともかく、平和主義者の小麦にとって、ポケモンが操られる事や、犯罪組織の復活を願うものが 出ることは、とっても嫌で仕方のないことだった。 ヤマト:「ふん、そんな娘、ひとひねりよ!ラッタ、ペルシアンに必殺前歯!スリープはラフレシアにサイケ光線よ!」 小麦:「ペルシアン、影分身でかわして乱れ引っ掻きよ!ラフレシア、サイケ光線を花びらの舞で四散させて、破壊光線よ!」 ラッタはペルシアンに飛びかかるがすぐにかわされ、影分身で囲まれ、乱れ引っ掻きに倒れた。 スリープのサイケ光線は、花びらの舞によって途中で四散し、相殺し、直後、圧倒的な力の破壊光線で倒されていた。 コサブロウ:「ヘルガー、ニューラに火炎放射だ!カポエラー、オニドリルを見切り、雷パンチだ!」 刹那:「ニューラ、凍える風を身に纏い、火を感じるな!オニドリル、カポエラーを挑発してやりな!」 火炎放射がニューラを包むが、その火炎放射は内部からの凍える風によって吹き飛ばされ、全く炎の熱をニューラは感じ取っていなかった。 そして見切ろうとしたカポエラーは、上空から挑発したオニドリルの行動を見て、見切るのをやめていた。 そして雷パンチを放とうとするが、上空にオニドリルがいるために不発に終わっていた。 コサブロウ:「何!?…ならば、ヘルガー、ニューラに突進だ!カポエラー、オニドリルにもう一度雷パンチだ!」 刹那:「懲りない奴だ。ニューラ、高速移動から影分身、そしてヘルガーの背後を取り、ブレイククローだ。 オニドリル、今度はいちゃもんをつけろ。そしてドリルくちばしで決めてやれ。」 ヘルガー、ニューラ、共に素早さは高いポケモンだが、ニューラの方が小回りの利いた素早い動きができた。 そして、ヘルガーの突進を楽にかわし、影分身の状態で高速移動をし、残像現象を起こしてヘルガーを混乱させ、 背後を取り、ヘルガーを一撃で倒していた。 カポエラーの方は、いちゃもんをつけられたので雷パンチを出す事が出来ず、向かってきたオニドリルに攻撃できないまま 倒されるのだった。 コサブロウ:「俺たちのポケモンが倒されたなんて…」 ヤマト:「いや〜ん、これじゃ失敗じゃない。逃げるわよ、コサンジ!」 コサブロウ:「だから俺は…」 ヤマト:「いいから来るの!」 小麦と刹那に倒された二人はそのまま逃走を企てた。 だが、次に二人の前に現われたのは、志穂だった。 ヤマト:「お前は!」 コサブロウ:「あのときの!」 志穂:「久しぶりね、雑魚がまだ残っていたなんて。簡単だけど、ヒマだから片付けに来たわ。必殺、火雷砲。」 ヤマトとコサブロウが志穂の言葉に反論しようとする直前だった。 志穂の手から放たれ、一瞬のうちにヤマトとコサブロウにぶち当たった火雷砲は、二人を高く吹っ飛ばすに至った。 ヤマト&コサブロウ:「やな気持ち〜!!」 そんな中、コロシアムでは試合が始まろうとしていた。 今日は残り2試合か…。 あたしのバトルでしょ、後、哲也のバトル。 相手は恋人に告白をしたりしてるけど、ナンパ師みたいなこともしてる変わった人。 変わってはいないかもしれないけど、あたしにとっては変わってるのかもしれないかな。 さて、頑張るとしましょうか。 アナウンス:「さて、いよいよバトルも残り2試合に差し掛かってきました。次の試合は、来美選手対チアキ選手です!」 チアキ:「マロン、親父、見ていてくれよ。…お嬢さん、俺があなたに勝つ姿を彼女に見せるために、一役買っていただけませんか?」 来美:「嫌よ。あたしは水のエキスパートだもの。ここで勝って、次に進むんだから。」 チアキ:「それは残念だな。だが、俺のポケモンは簡単にはやられないぜ。」 来美:「そういうことを言う人ほど、簡単に倒せるものよ。」 チアキ:「そうかな?ハリーセン、スターミー、行ってくれ!」 チアキ選手のポケモンは、毒タイプを兼ねた、特性毒のトゲのハリーセンと、エスパータイプを兼ねた、特性自然回復のスターミーだった。 来美:「確かに簡単にはやられてくれなさそうかもね(てっきり予選で見たラグラージが来るかと思ったわ)。あたしのポケモンは この子達よ。女を触れる時は優しくしないと火傷するものだから。 出てきなさい、恋人の幸福を示すポケモン、ラブカス!そして深海を照らす小さな命、チョンチー!」 あたしのポケモンは、ハート型で有名な、特性スイスイのラブカスと、特性が蓄電のチョンチーだ。 ちなみに、両方とも♀である。 審判:「それでは、試合開始!」 そしてバトルは幕を開けた。 チアキ:「ハリーセン、毒針だ!スターミーはサイコキネシスで毒針を確実に相手に当てろ!」 来美:「ラブカス、高速移動で避けるのよ!チョンチーは水に潜って電磁波で毒針を相殺して!」 ハリーセンが発射した毒針をスターミーが操って攻撃する向こうに対し、あたしはチョンチーが電磁波で毒針を相殺し、 ラブカスに素早さを高めさせた。 あたしのラブカスは素早さを利用したバトルで威力を発揮しているのだ。 でも、今は相手に翻弄されてる。 何とかしなきゃね。 チアキ:「逃げ回ってるだけじゃ意味がないぜ。ハリーセン、チョンチーにヘドロ爆弾だ!スターミーはラブカスの動きを サイコキネシスで止めて10万ボルトだ!」 そして攻撃は続いた。 来美:「チョンチー、スパークよ!ラブカスは雨乞いで素早さを高め、超音波でサイコキネシスを相殺して!」 ヘドロ爆弾をスパークによる力で当たる寸前で相殺し、さらにチョンチーのスパークが空に放たれた。 チョンチーのスパークによる放電が雲を刺激して、落雷を呼び寄せたのだ。 同時に、雨乞いをラブカスが行ったために、雨雲も呼び寄せられていて、今にも雷が落ちてもおかしくない状況になっていた。 そしてラブカスの動きは雨によって高まり、超音波がサイコキネシスを相殺していた。 来美:「雨乞いはこのフィールドにいる水ポケモン全員の水タイプの攻撃の威力を高めてしまうけど、でも、これであたしの勝利を導ける。 ラブカス、高速移動から天使のキッスよ!チョンチーは雷!」 あたしは敢えて、誰に攻撃をするのかを言わずに指示を出した。 まっ、元から誰が誰に対して攻撃するのかは、先ほどの攻撃で決まっていたんだけどね。 チアキ:「どっちに来るんだ…?でも、やってやるか。ハリーセン、水の波動をチョンチーに放て!スターミーはラブカスに ハイドロポンプだ!」 対するチアキは、あたしの指示の相手が誰か分からないようだったけど、それでも、あたしが当てようと思っていた相手に攻撃をしていた。 だけど、雨乞いで素早さのあがったラブカスに攻撃する事は出来ず、ハイドロポンプははずれ、天使のキッスはスターミーを混乱させていた。 同時に、ハリーセンには雷が落ち、ハリーセンは目を回して浮かんでいるのだった。 審判:「ハリーセン、戦闘不能!よってこの勝負、来美選手の勝利!」 チアキ:「そんな…。俺が負けるとは…。」 来美:「残念でした。ラブカスとチョンチーは小さい勇者なのよ。見くびって火傷したわね。」 雷を少しは耐えられるかもしれないとずっと思ってたけど、意外にも、雨雲と融合した雷雲の力は強力だったらしい。 次もやってみようかな? さて、次はいよいよ哲也の試合。 最後だけに、面白いバトルを見せてくれると嬉しいんだけどな。 アナウンス:「さて、今日、最後のバトルとなりました!最後のバトル、対戦者は、哲也選手とアクアリウム選手です! この二人は今日の最後を締めるバトルをどのように見せてくれるのでしょうか?」 哲也:「お前には負けないからな。」 エイク:「俺こそ、あなたには負ける気はありません。」 哲也:「自信があるようだな。」 エイク:「ええ、俺は水の能力者、いわゆる水のエキスパートですから。水の恵みを受けています。風の力も水の力には 飲み込まれるだけですよ。」 哲也:「言ってくれるな。だが、俺のポケモンはポケモンリーグでも実力を見せたほどだ。簡単には倒れないぜ。」 二人の間には熱い火花が見えていた。 エイク:「それじゃ、俺のポケモン、カメカメとルオス、出て来い!」 エイクのポケモンは特性が激流のカメックスと、特性が水のベールのホエルオーだった。 フィールドの半分がホエルオーの体で占められた。 哲也:「その大きな体がどこまでこのバトルを有利にするのかな?ルンパッパ、ニョロトノ、行ってこい!」 対する俺のポケモンは、草タイプを兼ね、雨受け皿を特性に持つルンパッパと、特性に湿り気を持つニョロトノだ。 審判:「それでは、試合開始!」 エイク:「1発目から行きますよ!ルオス、潮吹きだ!カメカメはハイドロカノン!」 ホントに1発目から来た。 自分の体力の量があるだけ威力が上がる潮吹きと、水タイプ最強と言えるハイドロカノンが襲い掛かってきた。 哲也:「ルンパッパ、自然の力で対抗しろ!ニョロトノはハイドロカノンにハイドロポンプだ!」 潮吹きがルンパッパとニョロトノを叩く中、ルンパッパによる大波がホエルオーを押し流し、カメックスのキャノン砲から打ち出される ハイドロカノンが、ニョロトノの放つハイドロポンプとぶつかり合った。 威力はハイドロカノンの方が上だが、波乗りによるホエルオーの押し流しで、エイク側のフィールド状態は悪く、ハイドロカノンの最中で カメックスは波乗りの攻撃を受け、態勢を崩し、ハイドロポンプの攻撃を少なからず受けていた。 これで共に攻撃を受けあったことになる。 だが、ホエルオーはHPが高いだけに、波乗りでは些細なダメージを当てたことにしかならないだろう。 エイク:「やりますね。」 哲也:「お前もな。」 エイク:「でも、今の攻撃でカメカメは反動で動けなくなりました。その代わり、ルオス、波乗りだ!」 ホエルオーの体が少し上に上がり、再び水に着水した時、強力な波が立ちのぼり、大きな津波がルンパッパとニョロトノに向かっていた。 哲也:「やるな。だが、波乗りのような攻撃でも打撃によって崩れ去るものだ。ニョロトノ、ビルドアップから気合パンチだ!」 ニョロトノは津波の前に立ちはだかり、目を瞑り、力強い拳を前に叩き出した。 直後、ホエルオーの起こした大きな波が、一撃のパンチで崩れ落ちていった。 エイク:「な、波乗りが…!?」 哲也:「残念だが、ニョロトノの力を甘く見たようだな。ルンパッパ、続いてお前の番だ。ホエルオーの上に乗り、カメックスにギガドレインだ!」 ルンパッパは波乗りが目の前から消えた直後、ホエルオーに飛び乗り、ホエルオーの上からカメックスを攻撃した。 カメックスはだんだん苦しみの表情を見せていたが、突然水鉄砲をルンパッパに放ち、ギガドレインを止めていた。 ようやく反動が解けたのだ。 だが、ギガドレインによる攻撃は効果抜群だったらしく、カメックスの表情は冴えなかった。 エイク:「カメックス…。」 哲也:「残念だが、大きさだけでバトルが決まるわけじゃないんだ。」 エイク:「だけど、まだ負けは決まってません。一匹でも倒れればいいんです。ルオス、地震攻撃だ!カメカメは眠って体力を回復しろ!」 ホエルオーの体が再び持ち上がり、強力な地震がフィールドを襲う。 そしてカメックスは殻に篭り、眠って体力を回復していた。 だが、ホエルオーに跨っているルンパッパには、地震のダメージは与えられなかった。 でも、ニョロトノはダメージを受けてしまった。 哲也:「ニョロトノ、大丈夫か?」 表情は明るいが、ニョロトノは頷かない。 どうやらあと少しでやばいようだ。 ここは確実に決めてやらないといけないな。 エイク:「その様子じゃ終わりは近いですね。ルオス、ニョロトノにもう一度攻撃を…」 哲也:「ルンパッパ、ホエルオーの潮吹き孔に気合パンチだ!ニョロトノはホエルオーに爆裂パンチで行け!」 エイクが攻撃に移ろうとしていたので、俺は速攻攻撃を指示した。 ホエルオーは背中の潮吹き孔を攻撃された事が応えたようで、直後にエイクが潮吹きを指示しても、その行動に移れずにいた。 そして、ホエルオーの顔面にも爆裂パンチがぶちかまされ、ホエルオーは海に沈んでいった。 エイク:「ルオス!!」 哲也:「決まったな。」 エイク:「いえ、まだまだ…」 エイクはまだ一歩も引く気ではなかった。 だが、ホエルオーが浮かび上がってきた時、ホエルオーは既に戦闘不能になっていた。 よし!と思った。 が。 ホエルオーが浮かび上がってきた直後、ニョロトノがその場に倒れたのだ。 審判:「ホエルオー、ニョロトノ、共に戦闘不能のため、試合は続行とみなし、カメックスとルンパッパのバトルによる 勝者がこのバトルの勝者とします!」 試合は続行になっていた。 エイク:「残念でしたね、もう終わりかと思ったでしょうに。」 哲也:「ああ。でも、まだカメックスは寝てるからな。ここで本当に終わらせてやるよ。ルンパッパ、種マシンガンだ!」 ルンパッパの口から大量の種が放出された。 だが、突然その種は向きをかえ、ルンパッパに襲い掛かっていた。 哲也:「何!?」 エイク:「残念ながら、カメカメは既に起きてますよ。今のはミラーコートです。」 哲也:「くっ、やられたな。だったら宿り木の種だ!」 カメックスは俺も持ってるから知ってる事だけど、カウンターもミラーコートも覚えられる。 だから、こういうことじゃないとバトルを優勢に進められないだろうと思ったのだ。 宿り木の種は水鉄砲によって何個か弾かれたものの、カメックスのキャノン砲片方を使えなくしていた。 エイク:「だったらカメカメ、冷凍ビームだ!」 哲也:「ルンパッパ、こっちも冷凍ビームで行け!」 エイク:「今度はハイドロポンプだ!」 哲也:「ルンパッパ、ソーラービームで決めろ!」 この後も互いの攻撃を続けていたが、攻撃は相殺となり、なかなか勝負がつかなかった。 エイク:「長期戦になるとは思いませんでしたね。でも、次で最後ですよ!カメックス、破壊光線だ!」 哲也:「ルンパッパ、こっちも破壊光線だ!」 そして両者が破壊光線を発射し、互いが動きを止めていた。 エイク:「カメカメ…」 哲也:「ルンパッパ…」 そして、カメックスの方がゆっくりと傾きかけたが、先に倒れたのはルンパッパの方だった。 審判:「ルンパッパ、戦闘不能!よってこの勝負、アクアリウム選手の勝利!」 哲也:「ルンパッパが負けたか…。」 エイク:「楽しかったですよ。」 哲也:「そうか。」 哲也はエイクに背を向け、足早に去っていくのだが、哲也の頬を雫が流れ落ちていくのだった。 玲奈:「哲也…」 その様子を見ていた玲奈は、控え室に走っていくのだった。 アナウンス:「これにより、今日のバトルは全て終了しました。明日は今日の勝者16名をランダムにトーナメントで分け、 第3試合を開催いたします。第3試合は通常のポケモンバトルになりますのでお気をつけください。ちなみに、使用ポケモンは2体となります。 それでは、選手の皆さん、今日はお疲れ様でした。明日のバトルに控え、ポケモンをおやすませください。」 アナウンスがコロシアム内を、街中を響かせていた。 そしてトレーナーたちはポケモンセンターに戻るのだが、戻らずにコロシアムに残る数名の姿があった。 蓮華たちである。 彼らはスペース団の残党が来るのを待っていた。 バトルが終わったコロシアムで深夜、別の戦いが始まろうとしていた。