渦巻き列島を月夜が照らし始めた時、奴らは俺の前に現われた。 マユミ:「時間よ、出な!」 エイジ:「反抗しようとしたら、こいつらが怪我することになるぜ。」 奴らは渚と輝治の首筋にナイフをあて、俺を睨みつけていた。 涼治:「分かってる。だから二人には手を…」 カエデ:「出されたくなかったら、私たちの言う事を聞くのが一番ですよ。クールナイトさん。」 悪事とは全くかけ離れた感じの雰囲気を思わせるカエデが俺のロープをほどき、何かの機械を俺の体に取り付けていた。 カエデ:「それは盗聴器に通信機、妨害電波発生装置です。それをつけている限り、あなたの行動は全て私たちに分かるようになってますよ。 だから、逃げ出したり怪しい行為をしたときには、この意識を沈めた状態のリュークさんのように、この女の子が意識を沈めてしまいますよ。」 俺は奴らに指示を受け、そのまま彼らと共に渦巻きコロシアムに向かうのだった。 渦巻き編 10.スペース団残党との戦い トイレを出て、観客席に戻ろうとした直後だった。 俺は突然背後から拘束され、首にナイフを当てられ、そのまま口をふさがれて意識を失った。 目が覚めたのは、腹に強力な打撃を受けたからだった。 辺りを見回せば狭い倉庫らしき部屋に入れられ、手足をロープで縛られていた。 そして俺の目の前にいたのは、元スペース団のマユミ、エイジ、カエデ、コタロウだった。 奴らが俺に要求したのは、クールナイトとして海の魂を盗んでこいということだった。 俺がクールナイトだということや、何故怪盗になっていたかということは、ナナと律子が動いた事で公表されたものの、 ドリームの撒いた黒い種を集めるためにやっていたことなどが報道され、俺自身に中傷や攻撃が向く事はなく、ポケモン世界の人々は クールナイトを普通に受け入れていた。 だが、報道された事で、スペース団の残党にクールナイト=涼治=ドルクということはバレバレなわけで、俺がこいつらに捕まったのも それが原因だったりした。 初めは抵抗した。 縛られていても冷気でロープを凍らせて拘束から逃れるなんてわけないことだった。 でも、そんな俺の前に縛られた渚と輝治がやってきたことで、形勢は逆転したのだった。 マユミ:「この二人はあんたの知り合いでしょ?こいつらが一生眠ったままでいたくなかったら、あたしたちの言う事を聞くんだよ。」 コタロウ:「既にリュークには薬を3本注入してやった。これ以上注入すると、ホントに眠ったままになっちまうぞ。 それでもいいのか?」 そこまで言われれば、抵抗しようとは思えなくなる。 だから俺は、こいつらの指示に従っていた。 だが、それはあくまでもコロシアムに入るまでの話だった。 俺がいなくなれば蓮華は怪しむだろうし、この街には志穂や海という偵察が得意な式神使いが二人もやってきている。 さらに、こいつらは売り子に扮していたりもしたのだ。 既に俺がこいつらに仕方なく言われて動いてる事も、志穂か誰かが気づいてるだろう。 だから、俺が動くのは、あくまでもコロシアムに入るまでだった。 夜のコロシアムは静かだった。 マユミ:「エイジ、海の魂はどこにあるの?」 エイジ:「どうやら、バトルフィールドの真ん中にガラスケースを置き、そこに保管しているようだぜ。予告状の脅しが効いたようだ。」 エイジがパソコンで調べだし、バトルフィールドまで向かうと、観客席からでも十分見えるように、ライトアップでフィールドが 照らされ、そこにガラスケースが置いてあった。 だが、警備員の姿はない。 当たり前だ。警備員よりも厄介な連中がこの周囲にも含めて散らばっているのだから。 しかし、それを知らない奴らには楽な仕事だとしか思わなかったようだ。 マユミ:「あ〜、これで海の魂が手に入るのね。」 カエデ:「でも、私たちが行ったら捕まっちゃうよ。」 カエデが情けない声を出した直後、俺は背後を強く蹴られ、前に押しやられた。 コタロウ:「だから、こいつが行くんだろ?早く行け!」 涼治:「分かったよ。」 俺が2,3歩歩き出し、ガラスケースまで向かおうとした、その時だった。 ??:「お待ちなさい!海の魂を怪我すものはあたしが許さないわよ。」 聞き覚えのある声が響き、ピンクの花びらが周囲を舞い始めた。 マユミ:「何者よ!」 コタロウ:「隠れてないで出て来い!」 すると、花びらが消え、白いパラソルを差した蓮華、いや、チェリーナイトが姿を現していた。 蓮華:「あたしは闇夜に眠る一輪の花。その名はチェリーナイト。今宵、海の魂はあたしが頂きます。キレイハナ、蔓の鞭よ!」 ミューズがキレイハナの声真似で飛び出し、蔓の鞭でガラスケースのある柱まで跳んでいく。 涼治:「ま、待て!」 俺は蓮華がわざと動いていると分かっていた。 だから、マユミたちにばれないように敵対する振りをして俺もガラスケースの柱まで跳んだ。 だが、この演技は蓮華がこの後出した爆弾によって、幕を閉じる事になった。 涼治:「チェリーナイト、お前に邪魔をされる筋合いはない。お前はここから消えな。」 蓮華:「嫌よ、海の魂のような神秘的な代物を、そこの弱そうな年増集団に言われるまま従っているチンケな怪盗に渡すのは出来ないわ。」 マユミ:「誰が年増よ!ガキが偉そうな口を叩いてんじゃないわよ!」 蓮華:「でも、弱いことは事実よ。でしょ?涼治。」 涼治:「ああ、そうだな。」 観客席に目を向ければ、既に片がついたことは分かりきっていたので、俺は蓮華の話にあわせた。 直後、コタロウとエイジが驚きの奇声を上げていた。 カエデ:「コタロウ?」 コタロウ:「大変だ、人質がいない!」 エイジ:「さっきまでここにいたというのに…」 奴らは動揺していた。 そして、さらにその場所にサーチライトが向けられたため、奴らはパニックになり始めていた。 涼治:「残念だったな、お前らの悪事はそこで終わりだ。」 蓮華:「あたしたち能力者を逆手に取ろうとしても無駄だったのよ。残念だったわね、オバサン!」 俺が装置を剥ぎ取り、蓮華と共に本来の姿になると同時に、美香や哲也先輩たちの姿を見せていた。 志穂:「渚ちゃんはあたしたちが助けたわよ。」 玲奈:「輝治君に対するヒーリングも進んでいるわ。」 ヒカリ:「もう、あなたたちはここで捕まる以外にないのよ。降参したら?弱〜い下っ端軍団さん!」 作戦が既に失敗していた事はここまで来ると明らかだったため、マユミたちは悔しそうにしていた。 だが。 マユミ:「降参なんかするもんですか!エイジ、カエデ、コタロウ、あたしたちのポケモンでこいつらをねじ伏せるわよ! まずは人質を奪い返すわよ!」 マユミが叫んだとたん、突然4人のいる場所から煙幕が立ち込め始め、サーチライトが4人を照らしていた。 そしていつもの音楽もかかっている。 そしていつもの口上も始まった。 マユミ:「一体何なのよ!と聞かれなくたって」 エイジ:「答えるか否かはわれらの勝手」 マユミ:「世界の破滅を防ぐため」 エイジ:「宇宙の輝き護るため」 マユミ:「愛と勇気の悪を貫く」 エイジ:「ラブリークールな敵役」 マユミ:「マユミ」 エイジ:「エイジ」 マユミ:「この宇宙にきらめくスペース団の二人には」 エイジ:「ミントブルー、清き青の明日が待っている」 マユミ:「なーんてね」 カエデ:「そして、一体何なのよ!と聞かれなかったとしても…。」 コタロウ:「正直言って答えてやろう…。」 カエデ:「星の破壊を防ぐため…。」 コタロウ:「星の平和を守るため…。」 カエデ:「愛と希望の悪を貫く…。」 コタロウ:「クール&チャーミングな敵役…。」 カエデ:「カエデ!」 コタロウ:「コタロウ!」 カエデ:「太陽系を光速に飛ぶスペース団の二人には…。」 コタロウ:「シャイニングゴールド、金色に輝く明日が待ってるぜ!」 カエデ:「なぁ〜んちゃって☆」 4人:「我らスペース団残党隊四天王、ここでお前たちを亡き者としてやる!」 4人は叫んだ後、あたしたちに襲い掛かってきていた。 涼治:「蓮華、行くぞ。」 蓮華:「ええ。」 哲也:「待て。涼治はコタロウを、蓮華はマユミを何とかしろ。エイジには俺と翼が行く。」 美香:「ここまで来たら総力戦よ、明日バトルがないあたしと海ちゃんでカエデを倒してくるわ!」 向かおうとした矢先、俺は哲也先輩に止められ、指示を出された。 哲也:「お前が無事だったのはよかったが、少し軽はずみすぎだ。これが終わったら俺が鍛えてやるからな。覚悟しとけ。」 涼治:「はい…。」 哲也先輩の目は、結構怒っている目をしていた。 マユミ:「あんたがチェリーナイトだったのね!でもそんなことどうでもいいわ。あんたをここで倒してもう一度、 海の魂を頂くんだから!」 蓮華:「そんなこと、あたしがさせないわよ。よくも涼治や渚ちゃんたちをひどい目に合わせてくれたわね! あたしが許さないんだから!」 マユミ:「うるさい!ラブカス、ゴルダック、その小娘に水の波動をお見舞いしてやれ!」 マユミのポケモン2体が水から飛び出して襲い掛かってきた。 間一髪避けたけど、ウィンディやキュウコン、シザリガーやナッシーが周囲を取り囲んでいる。 ここは総力戦だ。 あたしがボールに手をかけた直後、ウィンディが飛び掛ってきていた。 蓮華:「速い!」 マユミ:「ウィンディ、そこの邪魔な小娘を噛み砕くのよ!」 ウィンディの大きな牙が見え、あたしは恐怖を感じて動けずにいた。 でも、あたしには、あたしを見守っている絆たちがいた。 ガキン!と、耳をキーンとさせるような不協和音が聞こえ、前を見ると、クチートのくぴーのおおあごをウィンディが 噛みつき、牙が折れて涙目になっている。 マユミ:「ウィンディ!」 蓮華:「今がチャンス!ハッスル!サゴッピ!たねね!ヘラクロ!そしてフィル!出てきて!」 あたしはマユミに隙ができたのを狙い、5人の仲間をマユミのポケモンに向かって出した。 マユミ:「何っ!だが、そんなポケモンであたしに勝とうなど無理なことよ! ウィンディ、キュウコン!クチートとエーフィに火炎放射だ!ゴルダックはサニーゴに瓦割り!ナッシーはヘラクロスにサイコキネシス、 シザリガーはハスブレロにハサミギロチン!ラブカスはダーテングにバブル光線をお見舞いしてやれ!」 マユミは、あたしのポケモンたちに対し、動揺せずに向かってきていた。 でも、彼女とあたしのレベルの差は明らかであり、みんな、その攻撃を受け流していた。 蓮華:「次はこっちの番よ!くぴーはシザリガーに気合パンチ!フィルはナッシーにシャドーボール!サゴッピとハッスルは ウィンディとキュウコンに水鉄砲!たねねはラブカスに種マシンガン、ヘラクロはゴルダックに起死回生よ!」 フィルの神秘の守りで炎を交わしたくぴーは集中していたので、シザリガーを気合パンチでのし、フィルのシャドーボールもナッシー を背後から狙って倒していた。 ヘラクロもサイコキネシスをこらえた力で起死回生をゴルダックにぶつけ、サゴッピとハッスルは炎ポケモンを水鉄砲で 海に叩き落し、そしてたねねの種マシンガンがラブカスを倒すのだった。 マユミ:「あたしのポケモンが…」 蓮華:「残念ね、もうちょっと強くなったかと思ってたのに、前と全く変わってないわ。」 あたしがバトルをしていたとき、周囲ではほかのみんなも戦っていた。 涼治:「さっきの仕返しはさせてもらうよ。」 コタロウ:「ほう、俺の相手をしたいってのか? 面白い、やってやろうじゃねぇか!サンドパン、そいつに砂をぶつけてやれ!」 俺の相手はコタロウ。 だが、コタロウはサンドパンを使い、ポケモンを出す前の俺に砂をぶつけてきた。 とっさにカメールを出して甲羅で受け止めるものの、すでにコタロウはバリヤードを出し終え、何かをやり終えていた。 こいつ、今までと何か違いそうだ。 コタロウ:「さすがのクールナイトもこれで終わりだな。」 涼治:「何っ!カメール、水鉄…」 ゴンッ! 俺はカメールに指示を出そうと足を踏み出し、何かに頭をぶつけた。 だが、目の前には何もない。 ということは…。 コタロウ:「ようやく気づいたな。お前の周囲はバリヤードのバリアが囲んでいるのさ。変わった形の壁だからな、 むやみに動くと怪我することになるぜ。おっと、ホントの事を口走ってしまった。まぁ、いいか。さて、どうする?」 俺は手から涼風を放出し、風の動きを読んでみたところ、確かに周囲を変わった形のバリアが囲んでいた。 人間の心臓や神経系などの部分に当たる部分に確実に当たるよう、鋭く尖ったバリアができた部分も背後にいくつかできている。 バリヤードを倒さない限り、この状態から抜け出せないが…。 待てよ、バリアが目の前にある以上、奴らの攻撃はバリアに阻まれている。 ってことは、バリヤードやサンドパンが攻撃を俺に向かって放てる場所がどこかにあるはずだ。 コタロウ:「つまんねえな、せっかくのバリアの壁だってのに、動かなきゃ意味がねえし…」 涼風の力よ、俺の周囲に満ち、風の通り口を探せ。 必死になって俺は念じた。 コタロウが技を放てば、風の通り道を探すためだけに放っている風は防御できるわけがなく、カメールと俺を攻撃する事になる。 そのおかげで、ようやく一点を見つける事ができた。 俺の右斜め23度前だ。 光線系の技ならば曲がりくねったバリアの道でも届き、俺とカメールを攻撃する事になる。 ここは…。 涼治:「カメール、戻れ。そしてヤミラミ、お前が行ってくれ。」 俺はヤミラミを出した。 俺にはエーフィのフィートもいて、テレポートを使えばすぐだったかもしれないが、同じエスパー属性のエーフィでは コタロウのバリヤードがいる以上、テレポートする場所を変えられる可能性がないわけでもないのだ。 コタロウ:「ようやく動いたか。でも、もう遅い!バリヤード、サイケ光線だ!」 涼治:「サイケ光線?無駄だな。ヤミラミ、受け止めてナイトヘッドだ!」 俺に対して向かってきたサイケ光線は、ヤミラミに当たる前に四散していた。 コタロウ:「なっ…」 涼治:「悪いけど、ヤミラミはゴーストと悪の属性だ。エスパー攻撃は通用しない。そして逆に、エスパータイプには 天敵のタイプだよな?」 ナイトヘッドはバリヤードを直撃し、バリヤードがその場に倒れた。 直後、周囲を囲っていたと思える壁が消えたのを感じた。 コタロウ:「バリヤードがナイトヘッドの一撃で敗れるなんて…だったらサンドパン、バクフーン、行け! 遠慮なくお前を倒させてもらうぜ!」 バリヤードが倒れた事で、サンドパンとバクフーンが向かってきた。 でも、バリアが消えた以上、2体の攻撃を簡単に受けるような俺ではない。 涼治:「残念だな、遠慮なく倒れるのはお前だ。クールマジック、凍える風だ。」 この時コタロウには、涼治の姿が消え、逆に吹雪の竜巻が出現し、サンドパンとバクフーンを一瞬で凍らせたように見えていた。 実際には俺のカメールが放った凍える風が、エアームドの風起こしとフィートのサイコキネシスによって吹雪に変化し、 俺の放出してあった涼風の力と融合して冷気となり、サンドパンとバクフーンを凍らせたのだが。 コタロウ:「サンドパンにバクフーンまで…」 涼治:「言ったとおり、遠慮なく倒れたぞ。…チェックメイトだ。」 エイジ:「一度は俺に敗れた奴が、俺に勝てるのか?」 哲也:「勝てるに決まってるだろ。」 翼:「お前のポケモンは1体しかいない。でも俺たちにはそれ以上だ。」 俺と翼がエイジを追い詰めたとき、エイジの横にはメタグロスしかいなかった。 だが…。 エイジ:「それはどうかな?ハガネール、サイドン、出て来い!」 突如、エイジが地面にできた穴に消え、ハガネールに乗って出現した。 同時にサイドンも現れ、メタグロスと共に近づいてきた。 哲也:「やはり伏兵がいたか。」 翼:「でも、どうやらその3匹だけらしいぞ。哲也、行くぞ!」 哲也:「ああ。ピジョット、カメックス、出ろ!」 翼:「オクタン、ハッサム、行くぞ!」 俺たちがポケモンを出すと、エイジはパソコンを取り出していた。 エイジ:「残念だが、そいつらのデータはしっかり保管してある。俺のポケモンと比べると、お前らが俺に勝てる確率は 全くもって低いぞ。」 哲也:「それはお前のデータだろ。」 翼:「俺たちはそんな手には負けない!オクタン、サイドンにオクタン砲だ!」 翼のオクタンがサイドンに水タイプの攻撃を放つが、サイドンは尻尾で攻撃を打ち落としてしまった。 翼:「サイドンに攻撃は効いてないのか?」 エイジ:「当たり前だ。そんな攻撃でやられるサイドンじゃない。メタグロス、そいつらをサイコキネシスでもちあげろ!」 俺たちが驚いているうちに、いきなりサイコキネシスが俺たちを持ち上げていた。 ポケモンを戻そうにも、体を動かす事もできない。 エイジ:「これで終わりだな。」 そんな時だった。 サイドンとハガネールが俺たちに攻撃を放とうとした時、2体の目がハートマークに変わり、混乱を始めていた。 エイジ:「何っ!?」 エイジもメタグロスも驚いているが、もっと驚いたのは俺たちだった。 だが、何が起きたのかはすぐに分かった。 俺たちの頭上に丸い球体につかまって飛んでくる子がいたのだ。 渚ちゃんだった。 渚:「そこにいるサイドンとハガネールはあたしのププリンたちの天使のキッスが効いて、混乱しちゃったわよ。」 エイジ:「何だと!よくもやってくれたな!ただのコーディネーターだと思っていたが…」 渚:「コーディネーターだからって舐めてちゃ困るわよ。ピクシーにプクリン!火炎放射と水の波動よ!」 ピクシーの水の波動がサイドンを包み込み、プクリンの火炎放射がハガネールを包み込む。 さらに、どこかから現れたププリンの影分身によるバブル光線が2体を包み、ハガネールとサイドンが、その場で崩れ落ちていた。 エイジ:「サイドンにハガネール!くそっ、データがないばっかりに…」 エイジは呆然としていたが、こっちの事も教えないといけないな。 哲也:「そっちばかりに気を向けてると、こっちはおろそかになるぞ!」 エイジ:「何だっ…馬鹿な!?」 実は、俺と翼は助かっていた。 そして、メタグロスは焦げ焦げになって倒れていた。 メタグロスの上には、2体のプリンが座っていた。 実は、渚ちゃんのプリンが大文字と火炎放射でメタグロスを倒したのだ。 哲也:「俺たちは何もできなかったが、コーディネーターと甘く見て、データを取らなかったことが失敗だったようだな。」 翼:「渚ちゃんも一度はナナシマに攻め込んだ仲間だ。油断した事が命取りってことだぜ。」 渚:「さて、どうしようかな?あたしと輝治をひどい目に合わせた分、味わってもらわなきゃ。」 カエデ:「子供だからって手加減しないからね!チルタリス、フーディン、行きなさい!」 海:「手加減してくれないほうがうれしいです。キングドラ、行って!」 美香:「あたしはマリルリを出すよ!」 あたしと海ちゃんの相手はカエデ。 カエデはさっきまでサクラビスで向かってきてたけど、エイパムとカポエラーで簡単に倒せてしまったし、 向かってきた割に、最初は戦おうかを迷っていた節が合った。 何か、マユミに言われてやってるだけのような、そんな気が。 カエデ:「チルタリスは竜の息吹をキングドラに!フーディンは電撃波をマリルリに放って!」 海:「キングドラ、ハイドロポンプで相殺し、龍の怒りよ!」 美香:「マリルリ、神秘の守りで防いでから水鉄砲よ!」 前にカエデと戦ったときは、これくらいで倒れる事はない。 そうあたしは分かってた。 でも、今回は違ってた。 チルタリスもフーディンも、あたしと海ちゃんのやり返しを技で応じることなく、そのまま倒れていったのだ。 何か、違う。 美香:「カエデ、あたしたちと本気で戦ってないように見えるけど…」 海:「そうね。それは言えてるわ。」 美香:「カエデ!もうあなたは戦えないわよ!それに、手加減しないっていっときながら、何で手加減するのよ! あんた本当は戦いたくないんじゃないの?」 カエデ:「え…、それは…。しょうがないんです!あたし本当は…」 カエデが何かを言おうとしたときだった。 マユミ:「コラッ!カエデ、何勝手に負けてるのよ!」 蓮華ちゃんに負けたマユミがカエデに怒り始めたのだ。 すでにエイジもコタロウも負け、事件は解決に近いところにいた。 志穂:「言いたい事があるなら、はっきり言ったほうがいいのではないかしら?」 玲奈:「そうね、カエデ、あなたはどうしたいの?」 カエデが戦いたくなさそうな事は、あたしたちだけじゃなく、その様子を見ていた志穂ちゃんや玲奈先輩も気づいていたらしい。 すると、彼女は話してくれた、のだが…。 彼女が戦いたくないのに、マユミの言う事を聞いていた理由に、あたしたちは呆れてしまった。 カエデ:「実はスペース団を一度脱退したんですけど、脱退したときにもらった退職金と貯金を使って買ったファンシーグッズいっぱいの 家が、ちょっと高くて、それでお金が足りなくて、マユミさんに借金したんです。 でも、マユミさんの利子、かなり高くて、結局スペース団に戻らないと、借金帳消しにしてくれないって言ったので…。」 マユミ:「当たり前よ!お金が返せないんだからスペース団としてあたしの下で働いて返すのは当然じゃない!」 ようするに、マユミとカエデはお金でつながってるのだ。 ナナ:「だったら、あたしが代わりに借金返済してあげるよ。」 そこにやってきたのはナナだった。 しかも、こっちの世界のお金と思われるものを取り出し、適当に札束をマユミに投げつけていた。 ナナ:「これでいいでしょ?」 ナナの行動に、カエデはうれしそうだったが、マユミは苦笑いだった。 こんな感じで、事件は終わった。 マユミ、エイジ、コタロウはポケモン警察に捕まり、運ばれていった。 でも、カエデは渚がとりなしたおかげで、全くもって無罪となったのだった。 渚:「だって、この人だけはあたしにひどいことをしなかったんだもん。」 カエデ:「プリンやピッピを持ってる子を泣かすような事、できませんもの。」 ということらしい。 そんなわけで一夜明け、もうすぐ、蓮華たちのバトルが始まる。 今度はどんな、バトルが待っているのかな? ちょっと楽しみだ、見ているあたしたちにとっては。