夜が明けた。 昨日の夜遅くにスペース団と戦っていたけれど、蓮華たちは再びアクアカップに出場する事になる。 こうなる事は分かってたけど、実際どんな事が起きるのかは分からない。 今のところ、3回戦に出場するのは蓮華たちを含めた16名。 身内関連を除き、強豪と言われている姫乃さん、シルバーさん、モコナちゃんを除くと、まだデータ上でしか知らない トレーナーも5人いるわけで、蓮華や玲奈先輩、来美先輩と戦う相手がその5人の中にいる。 でも、あたしは蓮華が勝つって信じてる。 信じれば、絶対勝ってくれると思う。 だって、蓮華が強い事は、あたしとナナが前々から、クチバジムのジム戦の時から見てきていることだから。 さてと、そろそろ会場の方に行こうかな。 いつもの席にみんながいるだろうし、身内や知っている人たち以外の5選手の事も知りたいし。 ちなみに、今日のバトルは2対2のシングルバトルです。 すでにどんなポケモンを持っているかも知られている人も何人かいるので、 今回のバトルでは弱点をどのような機転で押し返せるのでしょうか? 渦巻き編 11.3回戦前半!強豪対決 アナウンス:「さぁ、ついに3回戦が始まります!今回の3回戦と次の4回戦は2対2によるシングルバトルとなります! 己のポケモンを信じ、トレーナーは、機転を利かせたバトルによってどのようなコンビネーションを見せてくれるのでしょうか?」 2回戦から3回戦になり、バトルの凄さは噂として渦巻き列島や様々な町へと駆け抜けていく形になったため、 観客の数もさらに増え、町の中に急遽作られた大型スクリーンで観戦する観客も多くいた。 そんな中でいつもの席で観戦しているのが、美香や涼治、哲也たち能力者メンバー達だった。 哲也:「それで、蓮華たちが戦う相手のことは分かったのか?」 ナナ:「さすがにあたしや律子みたいなポケモン協会の人間でもね、トレーナーの内部データを知る事は無理なのよ。 カントウやジョウトのポケモンリーグだったら、それくらい、わけないんだけどね。」 律子:「でも、今まで観戦した内容から多少のことは分かりましたよ。」 清香:「それで、今からの試合に出る人はどんな人なの?」 アリサ:「あ、あたしも聞きたい!エイクがこれから使うポケモン、あたしが貸してるから。」 ルリ:「カルラスって人よね?」 律子:「ええ、でも、その人のことははっきり言って謎なの。持ってるポケモンがギャラドスとミロカロスだけしか確認されてないの。」 清香:「確か、ルアーボールを6つつけた青いロッドを持った人よね?」 彼らがエイクと戦う相手の事を話題に出している時、エイクとカルラスがフィールドに出てくるのが見えた。 アナウンス:「3回戦最初のバトルは、ポケモン以外をほとんど身に包んだ謎の青年カルラス選手と、ダブルバトルで接戦を繰り広げた エイク選手です!ほとんどのバトルを数ターンで終わらせているカルラス選手に対し、エイク選手はどのようなバトルを見せてくれるの でしょうか?」 エイク:「よろしくな!」 相手は謎に包まれてるけど、アリサのラプラスは結構育てられてるし、俺に対してもよく懐いてるから、かなり頑張ってくれると思う。 だから、何とかなるだろうな。 それにあの哲也さんも倒せた。風の力も流れが変わって水に押し返されたんだ。 どんなに強くても、勝てるチャンスはある。 そう思っていたが、相手のカルラスは、一瞬俺を見ただけで、全く何も言わなかった。 逆に布の間から見える目が、まっすぐ俺を貫くように見ていて、逆にぞぉっとさせられてしまった。 エイク:「やべっ、負けられねえな。」 だけど、カルラスはこんな事を言った。 カルラス:「未来は見えている。私が勝つのは予言された事。どのように強がったとしても、君は私には勝てない。 オーダイル、彼にそれを見せてあげなさい。」 全く俺を陣中にない感じで見ている。 でも、こんな心理戦には負けられない。 エイク:「アリサのラプラス、俺に力を貸してくれよ!出て来い!」 俺のポケモンはアリサから借りた氷タイプをかねた、特性貯水のラプラス。対するカルラスのポケモンはオーダイルだった。 でも、距離もとられてるし、オーダイルの技と言えば水タイプの攻撃が多い。 これならいける。 そう思っていた。 だが。 審判:「それでは、試合開始!」 試合が始まった直後、すぐに流れが変わっていた。 俺が動く前に、すでにカルラスは動いていた。 カルラス:「オーダイル、攻めろ。」 この一言で一気にラプラスに近づくオーダイルは、ラプラスの背中に飛び乗り、ラプラスの頭をけたぐりで攻撃していた。 カルラス:「そのまま地球投げだ!」 エイク:「ラプラス、10万ボルトで振り落とせ!」 オーダイルがラプラスを持ち上げるが、ラプラスは体から電気を発し、オーダイルを攻撃していた。 だが、それでもオーダイルがラプラスを手放すことはなく、地球投げによってラプラスが倒されてしまった。 審判:「ラプラス戦闘不能!」 カルラス:「だから言ったのだ。君は私には勝てないと。」 エイク:「そんなことはない!カメカメ、行ってくれ!」 俺はラプラスの分もこいつで頑張ろうと、自分のポケモンであるカメックスのカメカメを繰り出した。 カルラス:「まだ分からないようだ、棄権した方がよいというのに。」 エイク:「そんなことはない!カメカメ、水鉄砲だ!」 カルラス:「オーダイル、水鉄砲。」 カルラスは俺と違って冷静だった。 ポケモンも冷静に水鉄砲で繰り出し、同じ水鉄砲なのにカメカメの方が押されていた。 エイク:「それならハイドロポンプだ!」 俺は水鉄砲がこのまま押し返されると思い、水鉄砲からハイドロポンプに移させた。 でも、奴はこのときを狙っていたようだった。 カルラス:「オーダイル、凍てついた風を吹かせ、技を封じろ。」 一瞬何の事か分からなかった。 だが、オーダイルが技を発動した時にようやく分かった。 それは「凍える風」のことで、ハイドロポンプを避けたオーダイルが放った凍える風は、カメカメのキャノン砲ごと、 水を凍らせて、カメカメのキャノンを封じてしまっていた。 カルラス:「これでいいだろう、棄権したまえ。」 エイク:「そんなわけにはいかない!カメカメはまだ戦える!カメカメ、高速スピンだ!」 カメカメは手足や頭を引っ込め、回転しながらオーダイルに向かっていった。 それを受け止め、投げ飛ばす形にするオーダイルだったが、そこを俺は狙った。 エイク:「カメカメ、ロケット頭突きだ!」 すでに頭を引っ込めていたからこそできた。 カメカメのロケット頭突きは不安定な体勢であったが、オーダイルに突っ込み、オーダイルを倒す事ができた。 審判:「オーダイル、戦闘不能!」 その様子を見て、カルラスは呆れたような声を出していた。 カルラス:「予言は多少ずれたようだが、ずいぶんと無茶した戦法だな。だが、このポケモンにはそのカメックスでは 十分に戦えはしないだろう。ラグラージ、君の出番が来た。」 カルラスの次のポケモンは、地面タイプをかねたラグラージだった。 エイク:「ラグラージか、でも、あいつは地面タイプもかねているから、水タイプの攻撃でもダメージは受ける! カメカメ、バブル光線だ!」 カメカメは、口から大量の泡を放出した。 すでに予言がずれたって言っていた。 ということは、あいつの予言が外れてもおかしくない。 元々、俺が負けるなんて予言は信じてなかったが。 カルラス:「泡ごときで何ができるというのかな?ラグラージ、格の違いを教えてあげなさい。濁流です。」 バブル光線に対し、ラグラージの攻撃は濁流だった。 濁った水による津波がバブル光線を覆いつくし、そのままカメカメを飲み込んでしまう。 エイク:「カメカメ、水の中で地震を放て!」 俺はそのまま水から顔を出せば攻撃を受けると感じ、地震を指示した。 直後、フィールドを強大な揺れが襲い、ラグラージもその揺れに顔をゆがめていた。 だが。 カルラス:「ラグラージ、眠りなさい。」 ラグラージは眠り始め、すぐに目を覚ましていた。 どうやらカゴの実を持っていたらしい。 そんな時、カメカメが水から顔を出してしまった。 ずっと潜りっ放しだったためだろうか。 そんなカメカメの様子を見て、カルラスは最後の手段に出ようとしていた。 カルラス:「さて、止めと行きましょうか。ラグラージ、影分身から濁流。」 ラグラージは影分身でカメカメを取り囲み、濁流を放った。 それによってダミーの濁流も生まれ、一時的だが海の色は濁ってしまった。 とっさに高速スピンを指示したから、カメカメが濁流に飲まれることはなかったが、濁流を放ち、その間にラグラージは 水にもぐっていた。 エイク:「カメカメ、気をつけろよ!どこから来るか分からないぞ!」 カルラス:「そうですね、ラグラージ、破壊光線です。」 濁流によって濁った海は変化がなく、攻撃の指示があっても、なかなか攻撃がこない。 どうした事だろうかと思いながらも、俺とカメカメは周囲を見渡していた。 だが、それは無意味だった。 破壊光線が放たれたのは、ほぼ真下からだった。 柱の下に隠れていたラグラージの破壊光線が、下の海面から飛び出し、意表をつかれたカメカメを攻撃したのだ。 エイク:「カメカメ、カウンターだ!」 破壊光線は意表をつかれたものの、甲羅に当たって多少の難を逃れていた。 そして逆に破壊光線によるダメージのカウンターが、海面に飛び込んでいった。 それからしばらく経つが、なかなか何も起こらず、フィールドは静まり返っていた。 エイク:「どうしたんだ、もう攻撃をしないのか?」 カルラス:「いえ、勝負はつきました。」 エイク:「どういう意味だ?」 俺は聞いたがさらりと返されてしまい、もう一度聞き返した。 その直後。 突然水面から飛び出したラグラージがカメカメに何かを放ち、カメカメを倒してしまったのだ。 審判:「カメックス、戦闘不能!よってこの勝負、カルラス選手の勝利!」 何が起きたのか分からなかったが、カルラスの勝利で再びヒートアップする会場。 でも、俺はカメカメが敗れた理由が分からなかった。 エイク:「どうしてカメカメに対し、あんな攻撃が出せたんだ?」 カルラス:「君に勝ったのでお教えしましょうか、あれはラグラージの我慢です。君のカウンターを、ラグラージは我慢していました。 それを放てるようになるまでの時間が多少かかってしまっただけのこと。その間に海を凍らされたら、こちらの敗退は決まっていたでしょうが、 君のカメックスのキャノンを封じた事で技が限られ、君が冷静さを欠いたことが、君を敗退に導いたといえるでしょう。 残念でしたね。」 俺の問いにさらりと言い返したカルラスは、そのままフィールドを去っていった。 エイクのバトルが終わり、次のバトルが始まろうというとき、会場が突如ヒートアップし始めた。 なぜなら、次のバトルは姫乃が出場するのだから。 アナウンス:「さて次のバトルは、優勝候補の姫乃選手の登場です!対しますのは、強豪相手を次々に撃破し続けている海斗選手です。 どちらも強豪と言わしめるトレーナー同士!今回はどのようなバトルを見せてくれるのでしょうか?」 アナウンスの声に、親衛隊はさらにヒートアップした応援を始めていた。 そんな中で、一人、空からメガホンを使って応援する少女、清香の姿もあった。 そして…、 鈴香:「あたしのメガホン…」 なずな:「しょうがないよ、あの親衛隊の応援に対抗して応援するにはさ、音の能力者のメガホン使って空から応援するしかないんだもの。 それに、清香先輩くらいしかできないって。」 鈴香:「そうですけど…」 美香:「それより、海ちゃんはどっちの応援するの?姫乃の親友になったんでしょ?」 海は負けた直後に姫乃を追い、少し話しただけで親友にまでなっていた。 海:「そうなのよね…、両方かな。」 音のシールドを利用して、親衛隊のうるさい応援を無視して喋っている少女たちの姿もあった。 そして、フィールドには海斗と姫乃の姿が現れた。 姫乃:「海から聞いたわ。あなたは水が好きだと。だから、私の相手としてふさわしいわね。」 海斗:「あぁ、強い相手には腕が鳴る。海の能力者として、強豪の君を津波で押し流す勢いでいってやるよ。」 姫乃:「それは面白いわね。それでは、まずはルダ、出なさい。」 海斗:「俺はこいつだ!ドククラゲ!」 姫乃のポケモンはゴルダック、俺のポケモンは毒タイプをかねたドククラゲだ。 確かゴルダックはサイコキネシスが使えたはずだから、技の使い方次第では一撃でドククラゲを失うことにもなりかねない。 ここは慎重に、かつ、一気にやってみるかな。 審判:「それでは、試合開始!」 姫乃:「ルダ、海面に気合パンチよ。」 ゴルダックの気合パンチが海面に叩きつけられた直後、海が大きく2つに割れ、そのまま水の勢いはドククラゲを押し流し、 ドククラゲを柱に叩きつけていた。だが、そのドククラゲは柱に叩きつけられた直後に姿を消していた。 姫乃:「消えた…?身代わりね、だったら本体は近くにいる。」 海斗:「ご名答!ドククラゲ、どくどくだ!」 気合パンチによる水の攻撃を身代わりを使ってかわし、ドククラゲはゴルダックの背後に現れていた。 そして放たれたどくどくによって、ゴルダックは猛毒を浴びていた。 海斗:「そのゴルダックが首にさげているのは先制の爪だったからな。どくどくを回復する事はできないだろう? ドククラゲ、ギガドレインだ!」 どくどくを受けて悶絶し、数秒の隙を見せたゴルダックは、さらにドククラゲのギガドレインを受け、苦しんでいた。 だが。 姫乃:「ルダ、サイコキネシスよ。ちなみに、首に下げているのは先制の爪のダミー。本当のアイテムは、手首についているぞ。」 サイコキネシスが発動してしまい、ギガドレインを行うために動いていなかったドククラゲはかわすことができなかった。 そして姫乃の言葉を聞いて確認したところ、ゴルダックの手首に下がっていたのは「ピントレンズ」だった。 海斗:「そういうことか。」 姫乃:「そういうことよ、ルダ、もういいわ。そのドククラゲはもう倒れたから。」 分かった時には遅かった。 ピントレンズは攻撃を急所に当てるもの。 サイコキネシスを急所に受けて、ドククラゲは倒れてしまった。 姫乃:「私がアレだけの攻撃を受けた事であせると思ってたの?でも、残念だけどあせらせることはできないのよ。 ルダ、そのまま…ルダ!?」 姫乃は一瞬冷静さを欠きかけた。 ゴルダックも、ギガドレインとどくどくによって体力を失い、ドククラゲが倒れてすぐに倒れたのだから。 審判:「ドククラゲ、ゴルダック、共に戦闘不能!」 姫乃:「…やるわね、でも、次で終わりよ。グド、行きなさい。」 海斗:「終わるのはそっちだな。ジュゴン、行け!」 姫乃の2体目はドラゴンタイプをかねたキングドラ、俺のは氷タイプをかねたジュゴンだった。 相性的にはドラゴンタイプに氷タイプは有効だが、水タイプをかねているためにキングドラに効果的な技はドラゴンタイプの技だけ。 だが、ダメージを当てられないわけではない。 姫乃:「ジュゴンね、でもいいわ。グド、竜巻よ。」 キングドラの竜巻が海水を吹き上げて、大きな水竜巻になり、そのままジュゴンに向かってくる。 しかし、 海斗:「ジュゴン、冷凍ビームだ。」 水竜巻は冷凍ビームによって凍りつき、崩れ落ちた。 海斗:「ジュゴン、そのままオーロラビームを拡散させろ!」 姫乃:「甘いわよ、グド、煙幕よ!」 キングドラの煙幕がフィールドを覆い、オーロラビームは打ち損ねてしまった。 そしてそのまま、キングドラは水中に身を隠していた。 追おうにも、水中も煙幕でいっぱいになっているために、逆に攻撃を受けかねない。 海斗:「ジュゴン、一時的に柱の上に逃げろ!そして吹雪だ!」 ジュゴンは吹雪を放ち、海面上を凍らせるのだった。 海斗:「この状態になれば、氷を割らないと出てくる事はできないぞ。」 姫乃:「そうね。でも、割りながら攻撃する事ができればどうかしら?」 海斗:「何っ!?」 姫乃:「私がただ煙幕を充満させた水中にグドを潜らせた訳じゃないのよ。グド、破壊光線よ。」 姫乃が指示をしたすぐだった。 氷が簡単に割って飛び出した破壊光線が、ジュゴンを巻き込んで陸地となっている柱の一つを破壊してしまったのだ。 そのまま、破壊光線の一撃で、ジュゴンは倒されていた。 審判:「ジュゴン、戦闘不能!よってこの勝負、姫乃選手の勝利!」 ドククラゲもジュゴンも一撃だった。 やはり恐るべき相手だったというべきだろうな。 海斗:「どうやら龍の舞を使ったようだな。」 姫乃:「ええ、龍の舞を使って攻撃力をあげたから、分厚い氷を簡単に割り、ジュゴンを一撃で倒せたの。 あなたがどうあがいても、この私をあせらせることなんて、できないのよ。そしてあなたは負けた。でも、楽しいバトルだったわよ。」 姫乃はそう言うと、フィールドから去っていった。 すごい相手だった、ということしかできないな。 姫乃とバトルした後の感想は、バトルした相手、俺や清坂たちだけしか分からないだろうな。 アナウンス:「さて、会場もどんどんヒートアップしてきました!次のバトルは、シルバー選手対綾香選手です! 優勝候補のシルバー選手に対し、徐々に名を上げてきたルーキー綾香選手はどのようなバトルを見せてくれるのでしょうか?」 シルバー:「なずなちゃんから聞いてるよ。ポケモンを懐かせることがうまいって。でも、バトルは初心者なんでしょ? お手柔らかに行きましょうか?」 綾香:「そんなこと、しなくていいよ。あたしはあたしなりにやるから。負けないよ。」 シルバー:「それじゃ、出そうかな。まずは様子見を含めて、ラスカ、お願いね!」 綾香:「あたしはヌオー、あなたに任せるよ!」 あたしの相手のシルバーは気軽な話し方だったので、あたしの緊張も溶かしてくれていた。 でも、お手柔らかにやらなくてもいいって言ったのに、出したポケモンはラブカスだった。 明らかにお手柔らかだよ。 こうなったら、力を見せてやるんだから! 審判:「それでは、試合開始!」 シルバー:「先手はあたしから行くわよ、ラスカ、高速移動から天使のキッスよ!」 ラブカスは高速移動でヌオーの周囲を回り始め、タイミングを合わせてヌオーに近づいていった。 綾香:「させないわよ、ヌオー、地震よ!」 あたしのヌオーには先制の爪を持たせている。 でも、元々素早さが低いポケモンである事には変わりないから、相手がラブカスのように素早さが高いポケモンだと、 そのアイテムの効果は出し切れない。だけど、相手が技を出す前くらいには、多少の能力を発揮してくれるはず。 そう呼んで出した指示は当たり、ヌオーの地震によってラブカスの動きはとまる事になった。 綾香:「ヌオー、ラブカスにマッドショットよ!」 動きの止まったラブカスは絶好の的。 ヌオーの放つ泥の塊は、ラブカスに命中した。 でも、これだけで終わりではないようだ。 シルバー:「それくらいの攻撃で、ラスカが負けることはないわよ。ラスカ、もう一度高速移動よ!」 シルバーは何かの手を打ってくるようだ。 綾香:「何をす…なるほど。ヌオー、もう一度行くよ!」 あたしが叫ぶと、ラブカスが再びヌオーに近づこうとタイミングを計っているのが分かった。 シルバー:「ラスカ、天使のキッス…」 綾香:「再び地震…」 シルバー:「と見せかけて、ラスカ、物まねよ!」 物真似は、相手が放った直後の技や、放とうとする技を真似ることができる。 でも、それはすぐに読めていた。 綾香:「残念でした、あたしの方もフェイクよ。ヌオー、尻尾を振って!」 元々ヌオーは地震を放とうとしていなかったので、ただ単に尻尾を振るだけで終わった。 そして、それを物真似でコピーしてしまったラブカスは、尻尾を振ろうにも尻尾がなく、動けない状態でいた。 シルバー:「なっ…、嘘…。」 綾香:「残念でした。あなたが前にバトルをしたヤツデ、キングラーのトレーナーはあたしの彼氏だもん。あなたの事は聞いていたわよ。 物真似をジュゴンが持ってたってことは、他のポケモンが持ってる可能性も高いって事。高速移動を再び使おうとした時から読めていたわ。 ヌオー、叩きつける攻撃よ!」 ヌオーの叩きつける攻撃は、動くに動けない状態のラブカスに見事に決まり、ラブカスを倒す結果になった。 審判:「ラブカス、戦闘不能!」 シルバー:「やられたわ。まさかあの時のトレーナーがそうだったとは…。でも、次で挽回よ。スター、行くのよ!」 シルバーの2番手はスターミーだった。 綾香:「負けないわよ、ヌオー、マッドショットよ!」 出たばかりのスターミーに対し、マッドショットで素早さを下げようと思った。 でも、 シルバー:「ヌオーの攻撃パターンは十分に分かったわ。ラスカでの様子見もできたし。スター、サイコキネシスよ!」 スターミーのサイコキネシスがマッドショットを跳ね返し、ヌオーに直撃させていた。 綾香:「ヌオー!」 シルバー:「さらに破壊光線よ!」 マッドショットを受けてよろけたヌオーは破壊光線を避けきれず、そのまま倒されてしまった。 素早さが遅い事が、ここに来て不利な形になってしまったようだ。 審判:「ヌオー、戦闘不能!」 綾香:「やられたわ。攻撃パターンまで読まれたなんて。この分だと、今までのバトルであたしの他のポケモンのパターンも知ってそうね?」 シルバー:「ええ。」 綾香:「それでもあたしは負けられない!ペリッパー、行くわよ!」 あたしの2番手は飛行タイプをかねたペリッパーだ。 ミロカロスでもよかったかもしれないけど、ここは飛行タイプを兼ね、攻撃のバリエーションが多いペリッパーに託すのが一番だろう。 シルバー:「ペリッパーね、空からの攻撃は空を飛ぶ事を封じれば勝算がある。スター、ペリッパーの翼にハイドロポンプよ!」 綾香:「ペリッパー、風起こしよ!」 スターミーのハイドロポンプがペリッパーの羽部分を狙う中、ペリッパーは風を起こしてハイドロポンプを防ぎきっていた。 シルバー:「だったら破壊光線よ!」 綾香:「ペリッパー、きりもみ旋回でかわして、電撃波よ!」 ハイドロポンプが駄目なら破壊光線とばかりに撃ってくるスターミーだけど、攻撃力の高い攻撃は当たらなければ意味がない。 空を自由に飛べるペリッパーには破壊光線を優雅にかわされてしまい、逆に電撃波がスターミーを打ち落とす事になった。 綾香:「どう?このまま電撃がスターミーを狙うわよ。」 でも、スターミーにはまだ策があった。 シルバー:「スター、自己再生よ!そして水に飛び込んで!」 スターミーは自己再生で回復してしまい、逆に水中に潜ってしまった。 ペリッパーが空を飛ぶ事でバトルを有意義に活躍するのに対し、スターミーは水ポケモン。 水中の方がバトルを有意義に活躍できるのだ。 水にもぐられた事で、ペリッパーの水鉄砲や電撃波をスターミーに命中させることは難しくなっていた。 シルバー:「これで形勢逆転ね。スター、水中からハイドロポンプよ!そして破壊光線!」 水にもぐって元気になったスターミーは、水中を素早く動きながら、ハイドロポンプと破壊光線を続けて放ってきた。 さすがにこれは避けきれず、ペリッパーは羽に攻撃を受けてしまった。 綾香:「ペリッパー!」 シルバー:「今よ、スター、もう一度破壊光線よ!」 羽を撃たれて飛ぶに飛べなくなったペリッパーは、そのまま柱の上に着地できたが、そこから飛べなくなっていた。 そこを狙って飛び出したスターミーの破壊光線を受け、ペリッパーは倒されてしまうのだった。 審判:「ペリッパー、戦闘不能!よってこの勝負、シルバー選手の勝利!」 綾香:「ペリッパー…」 シルバー:「攻撃のバリエーションやパターンはよかったわよ。でも、水中にいる敵に対する攻撃の方法を考えないと、 そのペリッパーで水タイプに勝利する事はできないわよ。」 シルバーはそう言い、なずながいるほうに手を振った後、その場を去っていった。 あたしは、まだまだ甘いかなって思った。 トレーナーとして早々とここまで来たけど、まだ暦が短いし、もうちょっと修行が必要かもしれない。 アナウンス:「さて次のバトルで3回戦の前半は終了という形になります。その記念すべき前半戦を締めくくるのは、希選手とヒカリ選手です! 何と、クチバの電撃女神の希選手と四天王カンナ様の弟子の対決となりました!一体どのようなバトルになるのでしょうか?」 希:「身内対決になったわね、いつか起きるとは思ってたけど。」 ヒカリ:「そうですね、でも、あたしは負ける気はありませんから。」 希:「あたしもよ。行きなさい、ナマズン!」 ヒカリ:「トドゼルガ、行くのよ!」 あたしのポケモンは地面タイプを兼ねたナマズン、ヒカリのポケモンは氷タイプを兼ねたトドゼルガだ。 あたしたちは共に、どんなポケモンを使うのかも、持っているのかも知っている。 だからそれだけ相手にするのは難しいのかもしれない。 でも、いつかはこうなると思ってただけに、負けるわけには行かないわね。 審判:「それでは、試合開始!」 どちらとも、負けるわけには行かないという思いが強かった。 そのため、1番手でこんなことになるなんて、あたしは夢にも思わなかったんだけど、どれはヒカリちゃんも同じだった。 何故なら…。 希:「ナマズン、地割れよ!」 ヒカリ:「トドゼルガ、絶対零度よ!」 互いに一撃必殺の技を放ったのだ。どうなったのかといえば、姫乃さんのゴルダックが気合パンチで水面を割ったときよりも 強い衝撃がトドゼルガを襲い、同時に強力な冷気がナマズンを包み込んでいた。 そして、互いに同時に倒れたのだ。 さすがに審判も、観客たちも、あたしたちでさえも、これには呆気に取られるしかなかったのでした。 審判:「…ナ、ナマズン、トドゼルガ、共に戦闘不能!」 ヒカリ:「まさかこうなっちゃうとはね…でも、次は負けないからね。パルシェン、行ってきて!」 希:「あたしだって負けないよ!ハリーセン、お願い!」 ヒカリのポケモンは相変わらず、氷タイプを兼ねたポケモンで、防御力の高いパルシェンだった。 対するあたしの方は(勝てるのかな?)、毒タイプを兼ねたハリーセン。 どこまでパルシェンに立ち向かえるかが勝負の決め所だろうな。 ヒカリ:「パルシェン、とげキャノンよ!」 希:「ハリーセン、毒針で対抗して!」 とげキャノンと毒針が相殺する中、ハリーセンは水を吸って大きくなり始めた。 バトルの前に教えたのだ。 毒針の後にミサイル針を使いたいから準備をするように、と。 でも、ヒカリは甘くなかった。 ヒカリ:「ミサイル針を撃つつもりなのね。そうはさせないわよ。パルシェン、氷柱針よ!」 パルシェンは殻の棘に冷気を集中させて氷柱を作り上げ、それを打ち出していた。 水を吸い込むのに集中するハリーセンはその攻撃によって水を吐き出してしまい、ミサイル針を撃つ事は無理になってしまった。 ヒカリ:「ハリーセンの攻撃は大体分かってるわ。これで最後よ!パルシェン、捨て身タックルよ!」 希:「だったらこっちはハリーセンの体当たりよ!」 ヒカリが勝負に出た。 だからあたしも勝負に出てみた。 でも、攻撃を受けた数はあたしの方が多く、しかも相手は防御力の塊。 どうなったかといえば、簡単な事だった。 審判:「ハリーセン、戦闘不能!よってこの勝負、ヒカリ選手の勝利!」 あたしは戦う相手が悪かったから負けたという感じです。 防御力の塊による捨て身タックルの威力は大きく、ハリーセンの体当たりは針の一撃にも満たず、弾き飛ばされてハリーセンが倒されてしまうのでした。 そしてあたしは負けてしまいました。 流石の電撃女神も、電気技が使えないハリーセンでは、なかなか有利には立ち向かえないようです。 アナウンス:「最後のバトルでは司会の私でもあっけに取られる展開となりましたが、前半戦はここで終了いたします。 数時間の休息を終えて、3回戦の後半戦をスタートいたします。観客の皆様は今しばらくお待ちください。」