ナナ:「もうそろそろで5回戦開始ね。」 律子:「ええ、でも、こんな変則型、不利になるほうが決まってる気がするんだけど…」 ナナが言う水のコーディネーターコンビが提案したバトル、ナナが少々手を加えたらしいんだけど、ルールはこうだ。 まず互いのトレーナーがダブルバトルで勝負し、どちらかのポケモンが2体倒れたら、シングルバトルに変わるというもの。 その際、どちらかのポケモンが1体であるのに対し、相手のポケモンは2体から3体に当たる。 そんな状況だと、先に2体倒された方が不利になるんじゃないかと思うんだけど、ナナの言い分は、 ナナ:「1体で3体を倒せる位の実力、ここまで勝ちあがってきた人にはあるはずよ。」 というものだった。 律子:「でも、それでも結局は1体の方が不利になる場合が続くような…」 ナナ:「いいの。1対3で2体を倒せるくらいの実力があったらすごいじゃないの。それを知ることもできれば十分よ。 この大会は勝負をするものだけど、トレーナーの強さをよくよく知ることだってできるのよ。」 律子:「ナナがそう言うならそうなのかもね。ナナ、そろそろ呼びに行く時間だよ。」 ナナ:「そうね。それじゃ、蓮華ちゃんとレイスさんを呼びに行きましょ。」 あたしたち以外が行ってもオーラにやられるだけよって、…ナナ、それじゃあたしたちが人外みたいじゃん! 渦巻き編 14.5回戦!厄介な変則バトル アナウンス:「ついにやってまいりました!今から5回戦を開催いたします!ルールはホウエン地方ルネジムのバトル方式に、 ポケモン協会による修正などを加えた形として、ダブルバトルからシングルバトルに移るという変則型のバトルとなります。 さて、5回戦1組目は、蓮華選手対シルバー選手です!一体どのようなバトルを見せてくれるのでしょうか?」 会場は決勝間近の5回戦という事で、かなり盛り上がっていた。 そして、蓮華とシルバーがフィールドに姿を見せた事でさらにヒートアップし始めていた。 姫乃の親衛隊でさえも二人の応援を始めているほど。 蓮華:「負けないわよ。」 シルバー:「こちらこそ。」 何となくシルバーから水色のオーラが出てる気がした。 でも、あたしからも出てるらしいのよね、黄緑色のオーラが。 ついさっきナナが教えてくれた。 バトルに対する意欲を持ってるのは5人全員らしいけど、でも、負けられないな、絶対に。 蓮華:「それじゃ、あたしのポケモンはこの子達よ!アクア、ぎょぴちゃん、お願いね!」 あたしのポケモンはミロカロスのアクアに、アズマオウのぎょぴちゃん。 シルバー:「あたしのポケモンはこの子達よ!ジュエロ、ダック、出てきて!」 対するシルバーのポケモンはジュゴンとゴルダック。 これはちょっと選択ミスかと思いかけた。 でも、あたしには秘密兵器もあるし、何とかなるかもしれない。 審判:「それでは、試合開始!」 シルバー:「ジュエロ、冷凍ビームよ!ダック、サイコキネシスで軌道を修正してアズマオウを狙って!」 蓮華:「ぎょぴちゃん、アクアの後ろに回って!アクア、ミラーコートよ!」 ジュゴンの冷凍ビームがアクアに向かって放たれ、それをゴルダックのサイコキネシスによって軌道が修正され、ぎょぴちゃんに 向かっていく。でも、アクアがぎょぴちゃんの前に出て、ぎょぴちゃんが後ろに下がり、ミラーコートを跳ね返す。 だが、跳ね返された冷凍ビームはゴルダックの破壊光線が相殺していた。 シルバー:「やるわね、それならジュエロ、破壊光線よ!」 蓮華:「アクア、ぎょぴちゃん、ダブル水鉄砲で相殺して!そしてぎょぴちゃん、動けないジュゴンに角ドリルよ!」 ジュゴンの破壊光線が2体の水鉄砲で相殺され、水鉄砲は破壊光線によって蒸発し、フィールドを一瞬蒸気が覆った。 その隙にぎょぴちゃんが水に飛び込み、ジュゴンに向かっていくが、それは阻まれる形になっていた。 シルバー:「させないわよ、ダック、アズマオウに気合パンチよ!」 ゴルダックはすでに破壊光線の反動から回復していたのだ。 気合パンチによって跳ね飛ばされるぎょぴちゃん。 シルバー:「今よ!ジュエロ、もう一度破壊光線!ダックはミロカロスをハイドロポンプで足止めして!」 宙に飛ばされたぎょぴちゃんは破壊光線を絶好の的だった。 そのため、ジュゴンの破壊光線によってぎょぴちゃんは打ち落とされていた。 アクアの攻撃で相殺したかったけど、アクアはゴルダックの攻撃を神秘の守りで防いでいたために何もできなかった。 審判:「アズマオウ、戦闘不能!」 シルバー:「アズマオウを攻撃させるタイミングを外したわね。」 蓮華:「ええ、あたしのミスよ。でも、これから挽回するんだから!ドン、出てきて!これからが勝負の見せ所よ!」 あたしが出した3番目は、ナマズンのドン。 これでも徹夜して特訓した成果。 ドジョッチだったドンは、4日間頑張って育てた結果、ここまで育ってくれた。 シルバー:「ナマズンね。でも、ナマズンは地面タイプよ。ジュエロ、水鉄砲よ!ダックはハイドロポンプで同時にナマズンを 攻撃しなさい!」 シルバーは地面タイプでもあるナマズンを狙ってきた。 水タイプであっても、地面タイプというだけで、受けるダメージは通常通りなのだ。 でも。 蓮華:「こっちにはアクアもいるのよ!アクア、ミラーコートよ!ドンは波乗り!」 ミラーコートが二つの水の攻撃を跳ね返し、それと共にドンの波乗りが2体のポケモンに向かっていった。 波乗りは2体に同時に攻撃ができる技。 同じ水タイプが相手だから効果は今一つだけど、ミラーコートの倍返しに対抗してるだけじゃかわせないよ。 蓮華:「いっけぇ〜!」 シルバー:「だったらジュエロ、冷凍ビームで海を凍らせて!ダックは破壊光線で攻撃を相殺するのよ!」 あたしが行けると思ったすぐに、冷凍ビームが波乗りを凍らせ、ゴルダックがミラーコートの倍返しを破壊光線で相殺する。 でも、ドンはそのまま別の攻撃に移った。 蓮華:「ドン、岩砕きで氷を壊し、のしかかりよ!」 冷凍ビームで凍った氷を割りながら、ドンはジュゴンの元に突っ込んだ。 シルバー:「ジュエロ!」 審判:「ジュゴン、戦闘不能!」 流石にドンの重さと攻撃には、ジュゴンでもきついものだったようだ。 シルバー:「波乗りから岩砕き、そしてのしかかりに移るとはね。コンビネーション技としては十分なのね。 でも、そのコンビネーション技もいいけど、あたしの方もすごいわよ。スター、行きなさい!」 シルバーの3番目はスターミーだった。 蓮華:「スターミーが相手…。相手はエスパーだけど、こっちにはエスパー対策はないし。でも、行けるだけ行ってみよう。 アクアは竜巻、ドンは砂嵐よ!」 砂嵐が発生し、竜巻によって砂嵐が吸収され、砂竜巻となってスターミーとゴルダックに向かっていく。 でも、 シルバー:「そうくるのね、だったら、スター、ダック、同時にサイコキネシスよ!」 ダブルサイコキネシスの力は通常よりも強力で、竜巻を逆回転させ、竜巻を消滅させていた。 だが、竜巻が消えた直後、ゴルダックが何かの攻撃によって弾き飛ばされていた。 シルバー:「えっ!?今のは何?」 一瞬会場も、また乱入者かと思い、動揺が広がっていた。 でも、そうじゃないのよね。 蓮華:「ドンの未来予知よ。あなたが竜巻に向かっている間にドンが放っておいたの。未来予知による攻撃はどこから来るかも分からないし、 誰に当たるのかも分からない。あたしとしてはスターミーを狙ったんだけどね。アクア、ゴルダックにハイドロポンプよ!」 ドンの未来予知で跳ね飛ばされたゴルダックに、続けてアクアのハイドロポンプが攻撃を加える。 シルバー:「させないわよ!スター、サイコキネシスでハイドロポンプの軌道を変えるのよ!ダックはその隙に避けて!」 蓮華:「だったらドン、ゴルダックにマッドショットよ!」 ゴルダックにハイドロポンプが当たる手前で、スターミーのサイコキネシスが軌道を変え、ハイドロポンプは別方向に向かっていく。 その隙にゴルダックは逃げていったんだけど、逃げずに攻撃すればよかったのよね。 あたしのドンが口から放ったマッドショットがゴルダックを攻撃したのだから。 マッドショットを受けたゴルダックは再び吹っ飛ばされて柱にぶつかっていた。 審判:「ゴルダック戦闘不能!」 シルバー:「ダックが負けた…。仕方ないわね。ここまで頑張ってくれたんだもの。疲れていても仕方ないわ。」 シルバーはそう言っていた。 あたしも同意見かな。流石にぎょぴちゃん、アクア、ドンの3体とここまで接戦を繰り広げてたんだもの。 未来予知がなかったら、こうはならなかったかも。 そして。 審判:「シルバー選手のポケモンが2体倒れたので、ここからはシングルバトルに変更します。蓮華選手は2体のうち、どちらか1体を ボールに戻してください。」 戦いはシングルバトルに移った。 あたしが戻したのはアクア。ここからならドンでやっていける。 審判:「それでは、試合再開!」 シルバー:「スター、ナマズンをサイコキネシスで海面に叩きつけるのよ!」 スターミーのサイコキネシスがドンを持ち上げ、海面に叩きつけた。 その衝撃に顔を歪ませるドン。 でも、その攻撃は2回、3回と続いていた。 シルバー:「スター、最後に柱に叩きつけるのよ!」 ドンが柱に向かって飛ばされた。でも、ドンのひげが伸び、柱に巻きつき、そのスピードと反動を利用して、水中に潜っていった。 蓮華:「ドン、スターミーに泥をかける攻撃よ!」 ドンは水中からスターミーに泥を放った。 蓮華:「さらにマッドショットよ!」 そして続けて泥の塊がスターミーを攻撃する。 だが。 シルバー:「スター、自己再生で回復するのよ!そしてサイコキネシスで海に渦を作るのよ!」 水中に逃げ延びたドンを、さらにスターは攻撃していた。 こっちがどんなに攻撃しても自己再生で回復してしまい、逆に海のできた渦がドンを飲み込んでいた。 渦に巻かれてドンは、サイコキネシスで作られた渦潮に閉じ込められてしまった。 シルバー:「スター、ナマズンは渦の中心にいるわよ!破壊光線でとどめよ!」 蓮華:「ドン、水の波動で相殺して!」 あたしは叫んだけど、ドンは渦に巻かれて目を回してしまい、スターミーの破壊光線を受けてしまった。 審判:「ナマズン、戦闘不能!」 蓮華:「ドン…、お疲れ様。アクア、行くのよ!」 流石にスターミーは強敵だ。 ドンがここまで倒されるとは思わなかった。 こうなったらアクアで何とかして倒さなきゃ。 シルバー:「蓮華ちゃん、あたしのスターには流石の見せ所さんも形無しだったみたいね。」 蓮華:「ええ、でも、アクアはスターミーの攻撃に対する対策があるもの。何とかなるわ。」 シルバー:「どうかしら?スター、怪しい光よ!」 スターミーの赤いコアから、強烈な光が放出された。 でも、アクアは動じない。 シルバー:「神秘の守りね…。だったらスター、サイコキネシスでミロカロスを柱に叩きつけるのよ!」 蓮華:「アクア、凍える風を放出して!そして竜巻よ!」 再びスターミーの攻撃、サイコキネシスで、アクアがドンの二の舞になりかけていた。 でも、今度は違った。 サイコキネシスが発動した直後、アクアは凍える風を放出してフィールドを凍えさせて、スターミーの動きを鈍らせた。 そしてサイコキネシスが途絶えたところで竜巻を発動させ、凍える風を吸収した竜巻がスターミーに向かう結果になったのだ。 でも、 シルバー:「スター、破壊光線で竜巻を破壊するのよ!」 破壊光線が氷の竜巻を貫き、竜巻を破壊したのだった。 でも、ここがようやくチャンスになった。 蓮華:「アクア、今よ!スターミーのコアに破壊光線よ!」 スターミーは破壊光線を発動させたので、反動で動けなくなってしまい、その隙を突いたアクアの攻撃がスターミーを吹っ飛ばしていた。 さらに、コアが破壊光線で割れてしまい、スターミーはその場でへばってしまっていた。 ヒトデマンやスターミーは水を放出しすぎてしまったり、コアが破壊されたりすると、力を失ってしまうのだ。 それを見たシルバーは、タオルを投げていた。 審判:「シルバー選手がタオルを投げ辞退を示したので、ここで試合終了!よって、この勝負、蓮華選手の勝利!」 あたしはシルバーがスターミーを思う気持ちによって、勝利する事ができた。 シルバーは、試合終了といわれた直後、スターミーのところに駆け寄っていた。 蓮華:「シルバー、スターミーは大丈夫?」 シルバー:「ええ、スターミーの弱点はこのコアだから、今までにも何度か割れてるわ。でも、いつも回復してるから。 蓮華ちゃん、お疲れ様。ここまで来たら次のバトルでも勝って、絶対に決勝戦に進んでね。」 蓮華:「はい!」 シルバー:「絶対よ。」 蓮華:「分かってます。」 あたしはシルバーと約束した。 そして数時間後。 アナウンス:「ただいまより、5回戦2組目のバトルを行います。姫乃選手対モコナ選手です!」 会場は姫乃応援団と、モコナを応援する声でヒートアップしていた。 アナウンス:「姫乃選手とモコナ選手、このどちらかが勝利したところで、どちらかの決勝進出が決まります。 強豪姫乃選手に対し、モコナ選手はどこまで立ち向かっていくのでしょうか?そして彼女たちは、どのようなバトルを見せてくれるのでしょうか?」 そして二人がフィールドに姿を現した。 直後、姫乃コールとモコナコールが会場を包んでいた。 コールを聞いて手を振るモコナと対照的に、クールにコールを聞く姫乃。 姫乃:「あなたは水が好きよね?好きでなかったらここにはいないもの。」 モコナ:「好きだよ。あたしは水の街、ハナダシティの出身だもの。将来は親友のカスミみたいにアクアマスターになるんだから。」 姫乃:「そう、でも、私に勝てるかしら?あなたは5回戦の5人のトレーナーの一人になるまで勝ち上がってきたわ。 でも、いくら強くて水を愛しているトレーナーだとしても、私には勝てないわよ。」 モコナ:「ふぅ〜ん。でも、私は負ける気はしないよ。私のポケモンたちは4人しかいないけど、ここに来るまでにずっと 頑張ってきてくれたくらいだもん。信頼してるからこそ頑張れるの。だから、あなたには負けない。」 姫乃:「自信は十分のようね。それなら私も楽しめそうだわ。」 一瞬姫乃の表情に笑みが宿りかけ、その表情の美しさにコールが掻き消えかけた。 姫乃:「私のポケモン、ラグージ、ミカロス、行きなさい。」 姫乃のポケモンはラグラージとミロカロスだった。 モコナ:「あたしのポケモンはこの子達だよ!お願いね、トドゼルガにパルシェン!」 対するモコナのポケモンは共に氷タイプでもあるトドゼルガとパルシェンだった。 審判:「それでは、試合開始!」 モコナ:「トドゼルガ、パルシェンの後ろに回ってね!そして霰を降らせて!」 トドゼルガによって、フィールドは霰が降る状態になった。 ラグラージとミロカロスは霰によって些細なダメージを受け始めていたが、氷タイプでもあるモコナのポケモンには霰によるダメージは 生じなかった。 姫乃:「霰は時間が経てば止むわ。ラグージ、ミカロス、トドゼルガに水鉄砲よ。」 だが姫乃は霰には何も対処せず、ポケモンたちに攻撃を指示していた。 ダブル水鉄砲がトドゼルガに向かっていく。 しかし、トドゼルガの前にいたパルシェンが殻を閉じていて、逆に水鉄砲を防ぐ形になっていた。 モコナ:「簡単には攻撃を当てさせないよ。パルシェンの鉄壁が水も氷も弾いちゃうからね。」 姫乃:「そうか。ならば、ラグージ、濁流だ。」 ラグラージが海面の波を濁流に変えて放ってきた。濁流も波乗り同様に2体に攻撃できる技。 この攻撃ではパルシェンの防御があっても、トドゼルガに攻撃を当てる事は可能であるが…、 モコナ:「パルシェン、冷凍ビームで濁流を凍らせて!」 濁流は2体に当たる前に、パルシェンの攻撃で凍り付いていた。 だが、それはあくまでもフェイクだった。 濁流が凍った直後、凍った濁流を覆うようにして波乗りが現れたのだ。 モコナ:「嘘っ!」 姫乃:「ミカロスの波乗りよ。濁流はフェイク。濁流に攻撃を集中した状態からミカロスの波乗りに移ったの。 そのパルシェンの角度からでは波乗りを凍らせる事はできないわよ。同時に、トドゼルガの場所からも無理。 今場所を動いたとしても、波乗りを凍らせる事は不可能ね。」 確かにそうだった。 パルシェンが冷凍ビームを放てるギリギリの位置を凍った濁流が邪魔していて、冷凍ビームは波乗りに当たる前に反射してしまう。 さらにトドゼルガがパルシェンの後ろにいるために、二人はいる場所を交換しないと波乗りを防ぐ事はできない状態だった。 そして2体は、濁流の氷を巻き込んだ波乗りの攻撃を受けた。 姫乃:「さらにミカロス、トドゼルガにアイアンテールよ。」 姫乃のミロカロスが波乗りに乗っていたために、波乗りがトドゼルガとパルシェンを攻撃した時に、ミロカロスは2体の背後を取っていた。 そのため、ミロカロスはトドゼルガを背後から襲い、アイアンテールを炸裂させていた。 審判:「トドゼルガ、戦闘不能!」 モコナ:「そんなぁ…」 姫乃:「うふふ、詰めが甘いわよ。それだとまだ、私を楽しませてくれはしないわね。私をあせらせる事もできないかも…」 モコナ:「ムカッ!そんなことないよ、ジーランス、行ってきて!」 モコナの3番手はジーランスだった。 姫乃:「岩タイプポケモン?だったら、ラグージ、地震よ。」 モコナ:「させないわ。パルシェン、吹雪よ!ジーランスは水中に潜るのよ!」 地震が発動する前に、フィールドは吹雪に包まれていた。 すでに霰は止んでしまっているが、吹雪の威力は大きく、海を凍らせ、水から体を、頭を出しているラグラージとミロカロスは 動けなくなっていた。 姫乃:「動きを封じたの?でも、これくらいならミカロスもラグージも動けるわよ。ミカロスは水鉄砲、ラグージはマッドショットで 氷を壊すのよ。」 ラグラージとミロカロスは、周囲の氷を割って、再び動ける状態にしていた。 だが、その直後、氷の浮いた水面から、氷の塊が何本も飛び出し、ミロカロスとラグラージの動きを封じていた。 姫乃:「なっ…、ジーランスの岩石封じね。」 モコナ:「ええ。でも、それだけじゃないわよ。パルシェン、オーロラビームよ!」 パルシェンのオーロラビームがミロカロスとラグラージに向かっていく。 しかし、それは氷の塊にぶつかって反射し、反射を繰り返していた。 姫乃:「ラグージ、ミカロス、すぐに水に潜るのよ!」 だが、姫乃はとっさに気づき、指示を出していた。 が、指示を出した直後、ラグラージが背後から飛んできたオーロラビームの攻撃を受けていた。 モコナ:「気づくのが遅かったよ。岩石封じで出現した氷の塊によってオーロラビームを反射して、ポケモンの死角から攻撃を放つ。 よく分かったわね。」 姫乃:「反射を繰り返していれば気づくわ。でも、反射する方法はもう無理ね、ポケモンが水中に潜ってしまえば。」 姫乃の指示は遅れたものの、ミロカロスも、攻撃を受けたラグラージも、水中に潜っていた。 モコナ:「そうでもないよ、ジーランス、行け!」 モコナの言葉と共に、海底にいたジーランスがスピードを上げてラグラージに突っ込んでいた。 そして水から飛び出すというより、ジーランスの攻撃で吹っ飛ばされてくるラグラージ。 姫乃:「ミカロス、ジーランスにアイアンテールよ。ラグージは体勢を立て直しなさい。」 モコナ:「させない。ジーランス、硬くなってからミロカロスに欠伸だよ。パルシェンはラグラージに絶対零度よ!」 パルシェンが放出した強烈な冷気によって、一時期フィールドは見えなくなっていた。 そして冷気が消えたとき、ラグラージが氷漬けになり、ジーランスが浮かび上がり、ミロカロスが眠っていた。 審判:「ラグラージ、ジーランス、共に戦闘不能!」 つまりこういうことである。 ジーランスが硬くなったが、アイアンテールの一撃が急所に当たり、ジーランスは倒れたのだ。 だが、ジーランスが吐き出した欠伸の泡を受けてしまい、ミロカロスは眠ってしまった。 そしてラグラージは絶対零度を受けて凍り付いていたのだ。 モコナ:「急所に当たるとは、やっぱりミロカロスの持ってるその道具、ピントレンズだったんだね。」 姫乃:「ええ、でも、ラグージを倒され、ミカロスを眠らされてしまうとはね。ミカロスも起きそうにないし、久々にここまで 押されるとは思わなかったわ。やるわね。」 モコナ:「やるよ。」 そして。 審判:「モコナ選手のポケモンが2体倒れたので、ここでシングルバトルに変更します。」 バトルの行方はシングルバトルに移った。 審判:「それでは、試合再開!」 眠ったままのミロカロスがいたが、眠ってる状態は戦闘不能でないために、試合が続行された。 モコナ:「パルシェン、破壊光線よ!」 姫乃:「ミカロス、戻るのよ!」 モコナのパルシェンが攻撃を放ち、姫乃がミロカロスをボールに戻そうとした。 だが、相変わらず海面を浮いている氷の塊が、ちょうど姫乃のボールとミロカロスの間に浮いていたために、ボールに戻す事ができず、 ミロカロスは破壊光線で一蹴されてしまった。 審判:「ミロカロス、戦闘不能!」 姫乃が2体を同時に失ったことで、会場は姫乃コールが衰え始め、モコナコールが大きくなり、モコナのフィールドを使った戦いが 優勢になり始めていた。 姫乃:「久々に焦ってきたわ。これがあなたの本気なのね。」 モコナ:「ええ。このまま一気に行くわよ。ジーランスを攻めようとして、パルシェンはまだほとんど攻撃を受けてないわ。 このままあなたのポケモンの攻撃を防ぎながら、一気に倒してあげる。」 姫乃:「そう上手くいくといいわね。でも、それは阻んであげるわ。グド、行きなさい。」 姫乃の3番手は、ドラゴンタイプを兼ねているキングドラだった。 相性的には姫乃は不利な側にいた。 だが、姫乃の表情がゆれないため、まだまだ手はあるようだ。 モコナ:「あたしから行くわよ。パルシェン、オーロラビームよ!」 再びオーロラビームが氷によって反射されていく。 だが、 姫乃:「うふふ、同じ手にはかからないわよ。グド、影分身よ。」 キングドラが影分身をしたために、オーロラビームは当たらなくなってしまった。 姫乃:「グド、そのまま煙幕よ!」 そしてキングドラの煙幕がフィールドを包み込んでいた。 モコナ:「形勢逆転にしたいんですか?煙幕を張ってしまったら、相手の位置も分からないと思うんですけど?」 姫乃:「そうかしら?グド、じたばたするのよ。そして破壊光線よ!」 煙幕で何も見えないけど、何か波音が立つ音がした。 そして、パルシェンがいる位置にも、その波の振動が伝わってくる。 と思えば、突然煙幕の中から破壊光線がパルシェンを攻撃していた。 モコナ:「パルシェン!どうして…」 姫乃:「じたばたしたことで周囲の位置が波のぶつかり具合でたいてい分かるようになったの。だからパルシェンがいる位置も、 大まかな位置をグドが掴むたのよ。」 モコナ:「やられた…。」 姫乃:「私を焦らせてくれたけど、もう、そうはいかないわよ。グド、今度は竜巻で煙幕を遠ざけて。パルシェンに龍の息吹よ!」 キングドラは突然煙幕を晴らしていた。 そしてパルシェンに再び攻撃をしているが、今度はモコナの指示で殻に篭り、攻撃を防いでいた。 モコナ:「どういうわけか知らないけど、これで次の攻撃に移れるわ。」 姫乃:「そうかしら?」 モコナ:「えっ?」 姫乃:「それはもう無理よ。気づかなかったの?龍の息吹で、パルシェンは麻痺したわよ。いくら殻に篭っていようと龍の息吹は 空気の攻撃。パルシェンの殻の隙間から中に入っていったわ。確認してみたらどう?」 モコナ:「え…、パルシェン…?」 姫乃が言ったとおりだった。 パルシェンは痺れた様な表情で動けずにいた。 姫乃:「残念だけど、もう終わりよ。グド、破壊光線よ。」 そして、キングドラの破壊光線は、殻の開いた状態のパルシェンを襲った。 審判:「パルシェン戦闘不能!よってこの勝負、姫乃選手の勝利!」 姫乃:「ほら…だから言ったじゃない。やっぱり、あなたが私に敵うわけがない。わたしを焦らせた事は評価してもいいけど、 私のグドの攻撃を防ぐ事ができなかったのが失敗よ。」 モコナ:「そうかもね。でも、あなたを焦らせる事はできたし、あたしも十分に楽しめた。またいつか、この場所であたしは優勝を狙うわ。 決勝戦、頑張ってよね。」 姫乃:「ええ。あなたの分も頑張ってくるわ。」 そして、5回戦は後1戦を残す結果になっていた。 アナウンス:「さて、決勝戦に行く最後のチャンスとなる、5回戦最後のバトルが始まろうとしています。 5回戦3組目は、蓮華選手対レイス選手です!このバトルに勝利したどちらかが、決勝戦に駒を進める事になります! 今日3回連続バトルが続く蓮華選手ですが、対するレイス選手とどのようなバトルを繰り広げるのでしょうか?」 蓮華:「確かに連発はあたしもポケモンもきついかな。でも、みんなの分も頑張ってあなたに勝って見せるから。」 レイス:「面白いわね、でも、それはしっかり阻んであげる。」 レイスは冷たい視線であたしを睨んでいた。 だが、あたしはそれを見つめ返して笑っていた。 蓮華:「あたしには視線で圧倒するのは意味ないですよ。あたしは癒しの能力者だから、洗脳とか、そういう類のものに 強い性質があるんですから。」 レイス:「あら、あなた、そういえばそうだったのよね。でも、私の視線を受け返せる人が二人もいたとは面白い事だわ。」 ちなみにもう一人はモコナのことである。 蓮華:「それじゃ、あたしのポケモンたち、出てきて!」 あたしのポケモンはハッスルとパル。 ハッスルは今日2度目だけど、相手が相手なだけに、対抗できるメンバーを決めていたら、ハッスルってことになったのだ。 でも、ハッスルはあたしの癒しの力で体力を十分に回復してるので大丈夫だ。 それに、パルも物凄くやる気だったりした。 レイス:「私のポケモンは分かりきってるわよね?ダルト、ラブラ、出なさい。」 確かに分かりきっていた。 ゴルダックとラブカスが相手だった。 でも、レイスのポケモンは3匹目が謎なのだ。 3匹目が何か分かっていないから、あたしも慎重に3番目を選んできた。 これがどう影響するのかな? 審判:「それでは試合開始!」 レイス:「ダルト、ルンパッパに爆裂パンチよ。ラブラ、高速移動から影分身、そしてサクラビスに水の波動よ。」 レイスは一気に勝負に出ていた。 今回はスピード技で来る様子なのかな? 蓮華:「ハッスル、爆裂パンチを受け止めるのよ!そして地球投げよ!後、パル、適当にあしらっていいよ。」 この時、会場がずっこけた音をかもし出した気がする。 気のせいかな(気のせいじゃないんだけど…)。 いつものことなので、ハッスルはゴルダックの攻撃(何かあたしの指示直後に力が上がったような…)を受け止め、 パルも優雅に水の波動をかわしていた。 レイス:「あなた…、真面目に勝負してるの?」 蓮華:「してるわよ。パル、ラブカス任せたからね。ハッスルにラブカスの技あたらないように倒してあげてね!」 レイス:「それのどこが真面目なのよ!」 真面目じゃないかもしれないけど、あたしとしては大真面目。 それに答えるかのように、パルはラブカスをサイコキネシスで持ち上げ、ゴルダックに投げつけていた。 逆にゴルダックはハッスルの地球投げを軽くかわして組みなおしていた。 レイス:「ここまで常識外れの相手だったとは思わなかった。ダルト、サイコキネシスでルンパッパを持ち上げ、 柱に叩きつけろ!ラブラ、天使のキッスでサクラビスを混乱させるんだ!」 蓮華:「させないよ。ハッスル、葉っぱカッターよ。そしてパル、しょうがないから行くよ、神秘の守りから渦潮よ!」 ハッスルを持ち上げようとするゴルダックだが、葉っぱカッターの攻撃にサイコキネシスを発動できずにいた。 そしてパルは、神秘の守りで天使のキッスを防ぎ、逆にラブカスを渦潮に閉じ込めていた。 蓮華:「パル、そのままシャドーボールを渦潮に叩き込んで。ハッスルはゴルダックに種マシンガンから吹雪よ!」 レイス:「何っ!ダルト、水鉄砲をルンパッパの口に流し込んで防ぐのよ!ラブカスはダイビングで飛び出し、サクラビスに水の波動よ!」 流石にあたしが真面目に攻めると、その対抗策にレイスが焦っていた。 焦ってくると、指示を出しても上手くいかないもの。 ハッスルは種マシンガンで水鉄砲を相殺し、吹雪でゴルダックの足場を固めていた。 そしてラブカスは渦潮からはダイビングでも出る事ができず、水の波動の一撃をシャドーボールの相殺に使えたが、シャドーボールの2発目、 3発目を受けて、沈んでいった。 審判:「ラブカス、ゴルダック、戦闘不能!」 浮かんできたラブカスを見たときの審判の一言はこうだったので、流石のレイスも驚いていた。 でも、すぐにレイスも気づき、そして唖然としていた。 実は種マシンガンの際に宿木の種も仕掛けておいたのだが、水鉄砲で落下していたのだ。 でも、吹雪で攻撃した時に種が飛ばされて、偶然ゴルダックのそばに落ちたらしい。 ゴルダックはパルからも攻撃を加えられていた事もあり、ダメージが多く、力尽きてしまったようだ。 レイス:「まさか、私のポケモンがこんな奴に負けてしまうとはな…」 蓮華:「こんな奴とは失礼ね。あたしはパルの好きなようにやらせただけなのよ。」 レイス:「ポケモンの指示を出さずに好きに攻撃させるトレーナーがいるとは思わなかったわ。」 そして。 審判:「レイス選手のポケモンが2体倒れたので、ここでシングルバトルに変更します。蓮華選手はポケモンのどちらか一方を戻してください。」 勝負はシングルバトルに持ち込まれた。 蓮華:「残念だけど、ハッスル、パル、お疲れ様、戻ってね。そして、サゴッピ、行きなさい!」 あたしの3番目はサニーゴのサゴッピ。 ハッスルとパルは、相手のポケモンが強かった場合の控えも含めて戻ってもらった。 レイス:「相手はサニーゴね。それじゃ、私の3体目のポケモンを教えてあげるわ。ザリガ、行きなさい。」 レイスの3番目は、悪タイプを兼ねた、ならず者ポケモンのシザリガーだった。 ご主人様と同様に冷酷な視線をサゴッピに送っていたが、腕白であり、元気な性格のサゴッピに、そんな視線は全く通用していなく、 逆にニコニコした笑みを相手に送っていた。 審判:「それでは、試合再開!」 レイス:「ザリガ、サニーゴにバブル光線よ。」 能力値的に言うと、サニーゴよりもシザリガーのほうが勝っている部分ばかりなので、確率的にはあたしの方が不利な相手だった。 そして、試合が始まってすぐにサゴッピは攻撃を受けてしまっていた。 蓮華:「サゴッピ、岩石封じでシザリガーを足止めして!」 レイス:「無駄よ。ザリガ、クラブハンマーで飛び出してきた岩を砕くのよ。」 サゴッピの岩石封じが発動すると、海底にある岩がシザリガーに向かって飛び出し、シザリガーの行く手を阻む形になった。 でも、それらはすぐにクラブハンマーによって破壊されてしまった。でも、岩石封じは準備に過ぎない。 蓮華:「サゴッピ、そのまま原始の力よ!」 原始の力によって、砕かれた岩は意思を持つかのようにシザリガーを攻撃した。 だが。 レイス:「守る攻撃よ。」 シザリガーの守る攻撃によって、原始の力はすべて防御されてしまっていた。 レイス:「残念だけど、あなたのサニーゴの動きは大体読めているのよ。ザリガ、次は私たちから行くわよ。 剣の舞で攻撃力をあげ、相手を挑発しなさい。」 「挑発」を受けると、相手は攻撃しかできなくなる。 そしてサゴッピは、挑発を受けて、シザリガーに向かっていってしまった。 レイス:「今よ、ザリガ、サニーゴに瓦割よ。そして同時にどくどくをかけなさい。」 挑発を受けて向かっていったサゴッピは、シザリガーのはさみによる瓦割を頭に受け、さらにどくどくの液をかけられて 沈んでいってしまった。 蓮華:「サゴッピ、自己再生よ!そしてリフレッシュして!」 あたしが叫ぶと、サゴッピは自己再生で復活し、リフレッシュで毒を浄化し、再び海から上がった。 しかし、 レイス:「なるほど。でも、それを長く続けられるのかな?ザリガ、サニーゴに水の波動よ!」 レイスからの攻撃は緩むことなく、上がったすぐにサゴッピには、シザリガーの攻撃が向かってきていた。 でも、もう大丈夫だ。 特殊攻撃に対してだけは、反撃する方法がある。 蓮華:「サゴッピ、ミラーコートよ!そして続けてトゲキャノン!」 レイス:「何っ、ザリガ、バブル光線よ!」 シザリガーの二つの鋏から打ち出された水の波動がサゴッピに向かうが、ミラーコートによってそれらは倍の大きさとなって シザリガーに帰っていった。さらにトゲキャノンの攻撃もあり、シザリガーはそれらをバブル光線で相殺しきれず、もろに受けていた。 レイス:「ザリガ、こうなったら一気に攻めるわよ。挑発して破壊光線よ!」 シザリガーは再び挑発していた。 でも、挑発という攻撃には弱点があった。 それはトレーナーが攻撃の指示を出せば、挑発を受けたポケモンはその攻撃をするというものだ。 防御などの攻撃を指示した場合は、攻撃じゃないのに何もできないか、何も考えなくて突っ込むかのどちらかになるだけで。 そしてあたしも、それに気づいたので指示は出せていた。 蓮華:「サゴッピ、地震よ!」 と。 挑発に応じて地震を放つサゴッピは破壊光線で吹っ飛ばされてしまったが、地震攻撃でシザリガーを圧倒していた。 そして。 審判:「シザリガー、サニーゴ、共に戦闘不能!」 地震と今までの攻撃によるダメージの蓄積でシザリガーが、剣の舞でパワーアップした破壊光線の一撃でサゴッピが倒れたのでした。 でも。 審判:「よってこの勝負、蓮華選手の勝利!」 あたしの勝利は決まったのでした。 レイス:「ザリガが倒れたか。最大の私の秘密兵器も、ここまで来たら無理のようだな。」 蓮華:「でも、シザリガーには苦戦しました。」 レイス:「だろうな。それにザリガは悪タイプだ。お前のサクラビスも、こいつには敵わなかっただろうな。」 蓮華:「そうですね。」 あたしが去ろうとした時、レイスは、あたしに握手を求めていた。 レイス:「楽しかったぞ。でも、ポケモンに自由にさせるのはバトルではやめろ。いつかは自分を追い込むことになるぞ。」 レイスは顔を覆っている布を取り、そう言って去っていった。 その表情は、物凄い美女だった。 あたしも流石に、あの綺麗な顔には圧倒されてしまいました。 アナウンス:「以上により、5回戦を終了いたします。明日、日が空高く上った時、蓮華選手と姫乃選手の決勝戦を開催いたします。 それまで両選手は体を休め、ポケモンを休めて明日にお備えください。そして皆さん、明日、この会場で会いましょう!」 そしていつものように、アナウンスにしめられてこの日も、アクアカップが幕を閉じた。 明日、あたしと姫乃さんとで、最後の決戦が行われる。 あたしはモコナやレイス、シルバーや、一緒に戦って、敗れていったみんなのためにも絶対に優勝したい!