夏休みも終わってある日のことでした。 あたし、久美のクラスに転校生がやってきたのです。 ただ、その彼は、何か明らかに「悪」そのもの「不良」そのものって感じでした。 第2章 終章 新しい仲間 教師:「彼が今日からこのクラスの仲間になる本宮秀治(もとみやしゅうじ)君だ。みんなも仲良くしてくれよ。」 と担任は言うんだけど、彼は無愛想に何も言わず、適当に視線を飛ばして睨みを利かせ、無言であたしの横に座った。 久美:「よろしく。」 って言ったんだけど、彼はジロッとこっちを見ただけで何も言わず、そのまま教室を出て行ってしまうのでした。 でも、明らかにすごい感じはする。 この高校、実は転校生は少ないのだ。 転校生に行う入学テストが、公立だというのにもかかわらずあって、しかも難しいらしい。 それをクリアしてきてるってことは、頭がいいのは確かだと思うんだけど。 その頃、実は哲也たちのクラスにも転校生はいたらしい。 でも、その彼も変わってるらしかった。 それをあたしは屋上で知った。 昼休みの事。 久美:「寝てばかり?」 玲奈:「ええ、第一声が眠いって言っただけなのよ。でも、入学テストは満点だって聞くから只者じゃないとは思うけどね。」 希:「それを言うなら、久美のクラスに入った人もそうじゃない?」 久美:「そうなんだよね、人を寄せ付けない感じがするし、授業には出てこないし…」 玲奈:「でも、人それぞれって言うから、別に興味を持たなくてもいいかもしれないわよ。」 あたしと希ちゃんと玲奈先輩はそんな事を話しながら、校庭を見下ろしながら昼食を取っていた。 校庭では、哲也や一志先輩や、健人先輩たちがサッカーをしているのが見える。 今日は晴れているから、校庭に出る男子も少なくないのよね。 そんな時に事件が起きた。 突然校庭から「手」が生えたのだ。 詳しく言えば、土が巨大な腕を作り、校庭から伸びてきたのだ。 流石の光景にあたしたちは驚き、校庭にいる哲也たちもそれを唖然として見ていた。 でも、それだけじゃ終わらなかった。 その「手」がいきなり生徒を叩くかのように襲ってきたのだ。 玲奈:「危ない!」 その生徒が哲也だったんだけど、哲也は風を起こして土で出来た「手」を四散させていた。 でも、それでも再び「手」が形成され、しかも他の場所からも手が生えて、生徒や校舎を攻撃し始めたのだ。 久美:「これ…何で…?」 希:「分からないよ…」 玲奈:「でも…、あたしたちが出るしかないよ。行くよ。」 あたしたちは校庭に向かった。 この龍水高校にいる能力者は、あたしと希ちゃん、哲也、玲奈先輩、健人先輩、海斗先輩、清香先輩、翼先輩、そして一志先輩の 9人で、あたしたちが校庭に駆けつけたときには、他の6人はすでに来ていた。 でも、「手」を攻撃して生徒を避難させても、地面が土だからか、「手」はすぐに再生してしまい、全く意味を成さない。 清香:「これじゃきりがないわ。」 翼:「だけど、どうするんだ?このまま校舎を破壊させるわけにも行かないぞ。」 哲也:「今はこの手を押さえるしかない。」 みんな口々に言いながらも、出来上がる手を破壊し続け、元の土に戻していた。 そんな時、あたしは何かの姿を見た気がした。 それは、知っている人、今日出会ったばかりの秀治君の姿だった。 彼は避難しないで、あたしたちの様子を眺めていたけど、あたしと目があうと、いきなり逃げるように走り出していた。 その直後、手が出現しなくなったのだ。 もしかして…。 そう思って探したんだけど、秀治君はすでに帰ってしまったらしかった。 何でも、新しく住む家の引越しが終わったからだって。 あたしはそのことを、ちょうど部活がなくて帰宅が重なった哲也に話した。 哲也:「転校生が能力者ってことか?」 久美:「あたしが思うには、そうしか考えられないの。彼が大地の能力者で、能力者のレベルを見るためにわざと手を作ったのかも しれないわよ。」 哲也:「考えすぎだろ。能力者同士は協力しないと乗り越えられない事が多いんだ。そんなことをしたら仲たがいをするだけだって 分からない事もないぞ。」 久美:「でも…」 あたしは哲也が信じてくれそうになかったから、更に言い返そうとした。 でも、あたしも哲也も、何も言えなかった。 何故なら、あたしたちの家に、その張本人が入っていったのだから。 久美:「…そういえば、舞さんが新しく二人、一緒に住むことになったって言ってたわよね…?」 哲也:「ああ、だけど…まさかな…。」 数日前、アクアカップから帰った日にいきなり言われたことだった。 あたしたちがポケモン世界に出かけてたから、それを相談できず、そのまま自分の意見を押し通したらしいけど。 哲也:「でも、あいつが一人ってことは、もう一人いるんだよな?」 久美:「うん…、女ばかりだから、男を増やすって聞いてるけど…」 あたしたちの脳裏には「まさか…」という文字が浮かんだ。 そこへ、 ??:「あれっ?哲也、どうしているの?」 背後から声がして、振り返った哲也は脱力していた。 どうやら、まさかと思っていたことは、大当たりだったみたいです。 数時間後。 すでに帰宅していた来美ちゃんと蓮華ちゃんも加えて、あたしたちは新たな孤児仲間二人を、舞さんに紹介してもらった。 といっても、片方は目の前で爆睡してるけど…。 舞:「久美ちゃんと哲也は同じ高校だから知ってると思うけど、本宮秀治君と、蓮杖神楽君よ。みんなと同じ能力者だから、 いろいろ教えてあげてね。」 久美:「やっぱりそうだったんだ…」 哲也:「ってことは…校庭のアレはお前か?」 舞さんの言葉を聞いて、すかさずあたしたちは聞いた。 すると、 秀治:「ちょっと確かめただけさ。」 秀治は全く反省する気もなく言っていた。 蓮華:「あれって何のこと?秀兄、何かやったの?」 秀治:「いや、別にたいしたことじゃないさ。」 久美:「何がたいしたことないよ、校舎を土でできた手で殴ったくせに。」 蓮華:「えっ、そんなことしたんだ…」 秀治:「たいしたことじゃないだろ?」 来美:「たいしたことかもしれないわよ。秀治、どうしてやったの?久美ちゃんたちのレベルを見るため?」 秀治:「ああ、結構やるな。」 あたしや哲也には全く眼を合わせてない割に、蓮華ちゃんや来美ちゃん、舞さんとはかなり素直に話していた。 久美:「あのさ、危ないと思うんだけど?あんなことして関係ない人が怪我したらどうするのよ。」 秀治:「怪我しない程度のイタズラさ。気にするなよ。」 哲也:「それじゃ、俺を最初に狙ったのは能力者って知っていたからか?」 秀治:「ああ、蓮華から強いって聞いてたけど、アレはたいしたことないなって感じだったぜ。」 秀治が言うと、蓮華ちゃんと来美ちゃんは噴出している。 どうやら一部始終はすでに話しているらしい。 それにしても、どうしてあたしたちには目を合わせないのよ…。 そう思って聞いた。 すると、 秀治:「いや、まだ親しくないし、心開けそうにないからな。あれくらいで怒るし、話しかけて喧嘩売られたら買うしかないが、 舞さんに迷惑かけたくないからさ。」 と、悪びれずに言っていた。 そのため、 哲也:「それじゃ、しっかり目を見て話せよな。お前が心を開かないなら、俺も開く気はない。」 秀治:「そっか。なら、あんたには力を見せ付けないといけないかもな。」 哲也と秀治の間ですぐに内紛が勃発した。 でも、舞さんも蓮華ちゃんたちも、止めようとしていなかった。 久美:「止めないの?」 舞:「止めなくていいわ。いつか、起きると思ってたから。」 来美:「それに、ついさっきやりやったばかりなのよ。」 久美:「へ?」 蓮華:「ミューズとやりあったばかりなのよ。ちなみにミューズが勝利したけどね。あたしたちが秀兄と仲良くなれたのは、 それがきっかけ。秀兄もいろいろあったみたいだよ。詳しく教えてくれた。だから、哲兄とは一番話し合った方がいいかも。」 どうやらいろいろあったみたい。 でも、蓮華ちゃんの言う、哲也と一番話すってのは、どういうことだろう…? あたしは不思議に思いながら、目の前で起こってる馬鹿らしい殴り合いの喧嘩(血のつながってない兄弟喧嘩みたいなものだろう)を眺めていた。 そのうちにその喧嘩には、神楽が巻き込まれ始め、そうなると舞さんたちも止めようとし始めた。 だが、そのときに神楽がどんな能力を持つのかを知ることになった。 眠ってる神楽は寝返りをうとうとして倒れた時、殴り合いの二人の方を向き、そこに二人がなだれ込んだ。 その拍子に哲也か秀治が神楽のおなかを殴ったらしい。 すると、神楽の口から火が飛んで、二人に飛び火をしていた。 ちなみに消化したのは来美ちゃん。 どうやら、神楽は炎の能力者のようだった。 そして、神楽に火を噴かれた二人は、その出来事で気を失っていた。 舞:「疲れたのね。」 来美:「哲也は殴り合いなんか普通しないもの。」 蓮華:「哲兄も秀兄も寝ちゃったし、久美ちゃん、二人の看病お願いね。ついでに神兄も。」 久美:「あたし一人で?」 舞:「ええ、お願いね。」 ちょっと非道だと思った。 でも、多分、あたしが看病しないと、この新しい兄弟とは心を開けないのかも。 そんな気もして、あたしは、あたしの部屋で看病を始めた。 始めに目を覚ましたのは神楽だった。 だけど、何か様子が違う…。 久美:「神楽…?」 神楽は目がパッチリしていて、寝ぼけてる表情よりも、凛々しさが感じられた。 神楽:「おはよう。久美、これからもよろしくな。」 あたしは再び唖然とした。 神楽が…普通に喋ってるから…。 久美:「あなたは何者なの?」 だからついそうやって聞いていた。 神楽:「俺は神楽であって神楽じゃないのさ。」 久美:「どういうこと?」 神楽:「俺は神楽の兄の纏。神楽の意識の中で生きてるのさ。」 久美:「…」 神楽:「神楽と俺は小学生の時に事故に遭い、両親を失い、俺は気づけば神楽の中で眠っていた。神楽は事故で家族を失ったため、 精神を破壊してしまったらしいんだ。それでいつも寝てばかりいるような性格になってしまった。だが、たまに俺が神楽の中で起きれる時がある。 だから俺が、こいつを体の中で導いてきて、今に至る。一応、舞さんや蓮華たちはこの事は知ってるからな。 哲也と秀治にも後で話しておいてくれよ。」 初めは驚いていたあたしだったけど、途中から、彼の話を黙って聞いていた。 夢見たいな話かもしれないけど、そんな夢みたいな出来事をあたし自身も経験しているので、彼の話を信じることができるのだ。 久美:「それじゃ、これからもずっと神楽の中で生きるの?」 神楽:「いや、こいつ自身も少しずつ成長している。こいつが成長した時、俺はこいつの中から出て、成仏できる。 俺はこいつに取り付いているようなものらしいからな。ただ、取り付いて、そのまま神楽が成長しきるまで出れなくなっているんだけどな。」 久美:「そう…。」 神楽:「だが、神楽自身には言うなよ。こいつはそれを知らないからな。こいつがそれを知れば、また両親と俺を亡くしたことで 精神に異常をきたすかもしれない恐れがある。」 久美:「分かったわ。纏さん、これからもよろしくね。あ、でも、普段から神楽って呼んだ方がいいわね。」 神楽:「頼む。それじゃ、よろしくな。」 彼がそういったのを最後に、神楽はまた眠ってしまった。 神楽は今までは施設にいたって聞くし、大変だっただろうなぁ。 でも…あたしは妹として神楽を助ければいいのかな? 何か、お姉さん的な存在になりそうな気がする。 ちょっと微妙…。 そんな時に秀治が起きた。 秀治:「ん…」 久美:「大丈夫?」 あたしが顔を近づけると、ぎょっとして離れようとした。 でも、腕に痛みがあるらしく、うまく起き上がれないらしい。 あたしがしっかりとテーピングしたり、傷薬を塗ったり、包帯巻いたりしたから、怪我は数日で治ると思うけど。 久美:「殴り合ってた割に、たいしたことない怪我でよかったわ。本気では殴れなかったんでしょ?」 秀治:「どうして分かるんだ?」 久美:「分かったわよ。怪我を見れば手を抜いたのはすぐ分かった。あたしは空手部よ。力の入れ具合は見て分かるわ。」 秀治:「そうか。…お前も事故で…、風使いに家族を殺されたんだろ?」 いきなり秀治が身の上を語りだした。 久美:「ええ。」 この話はアクアカップの時に志穂ちゃんから聞いたから、そして悠也から聞き出したから知ってる。 蓮華ちゃんからも聞いたことがあるし。 あたしたちの両親が風使いに反発していたから、攻撃を受けたって。 でも、その風使い一族も、今はおとなしいし、蓮華ちゃんが生きてるとは知らないらしいから、平和が続いている。 秀治:「お前らのは10年位前だけどさ、俺は3年前なんだ。」 久美:「えっ?」 秀治の言葉には流石に驚いた。 氷雨さんが睨みをきかせていても、一族が隠密に何かをしていたのね。 これからも注意は必要かもしれない。そんな気がした。 秀治:「3年前、俺は家族でキャンプに出かけた。そして妹と弟が迷子になって、俺も父さんも母さんも、必死になって探したんだ。 そして見つけたとき、妹と弟は、近くにいた覆面の誰かに殺されていた。父さんと母さんも、一瞬のうちに…。 俺も殺されかけた。でも、その時に力が目覚めたんだ。それで、助かる事が出来た。だが、そいつらは隙を突いて俺の気を失わせ、 俺は気づいたら病院にいた。 周囲の大人に聞くと、落盤事故での唯一の生還者って言っていた。キャンプ中に落盤にあって家族を失ったってことになってた。 俺が誰かに殺されたって言っても、誰も信じてくれなかった。頭を打って、記憶に障害が起きたってことになった。 そして俺は、親戚がいなかったから、施設に預けられた。でも、俺の周囲でよくおかしなことが起きて、俺がやってるって思われて、 腫れ物に扱われた。でも、そんなときに氷雨さんに会ったんだ。」 久美:「氷雨さんに?」 秀治:「ああ。そして俺は、氷雨さんの知り合いに保護されてたんだ。でも、氷雨さんが消滅して、俺の保護者がいないから、 舞さんが俺の保護者になってくれた。ただ、氷雨さんには、俺の家族が死んだ理由を教えてもらった。だから、風使いは憎いんだ。」 秀治の妹と弟は、風使いの隠密部隊が暗殺をしているところに出くわし、家族ごと口封じにあったらしい。 両親を殺されたあたしたちが生きているのは、この街の妖怪たちに守られているかららしいけど、それまで一般人だった秀治の場合は 守られていなかったから、口封じに遭いかけたらしい。 氷雨さんが秀治の存在に気づいたのは、風使いの不穏な動きをキャッチしたかららしい。 施設の子供の一人の周囲でおかしな現象を作り、その子供を孤独にしようとしていたため、他の妖怪たちと一緒に、風使いの一族に ある契約を交わさせたという。 それでも秀治は孤独になって、不良になった。 そんな時、氷雨さんと出会い、そして舞さんと出会って今に至るらしい。 でも、自分の両親を殺した風使いが憎いから、同じ風使いの一族の血を引く哲也が憎い存在だったらしい。 しかし、蓮華ちゃんたちの話を聞いて、哲也は部外者だと分かったという。 秀治:「もし、あいつが同じ仲間だったら本気で殴っていた。でも、あいつが違うって分かったら、本気では殴れなかった。 あいつが怪我をしたら、蓮華が悲しむからな。」 秀治は悪ぶってるけど、性格はかなり優しい性格のようだ。 蓮華ちゃんのために、殴る力を弱めたみたいだし。 ただ、学校でのアレは、蓮華ちゃんたちの話を聞く前だったから、哲也を本気で倒そうとしたらしかった。 秀治:「久美、手当てありがとな。」 久美:「ようやく名前で呼んでくれたわね。」 秀治:「あ、ああ…」 久美:「どういたしまして。」 秀治:「そ、それじゃ、俺は部屋に戻るよ。」 秀治は、初対面の印象とは大きく違う形で、部屋を出て行った。 話してみれば、結構いい奴だと。 久美:「そろそろ寝た振りはやめたら?」 あたしは秀治も行ったので、哲也に呼びかけた。 実は、哲也は途中から起きているのだ。 久美:「後で秀治と話しなさいよ。哲也が悪いわけじゃない事は事実だし、秀治にも悪気があるわけじゃないんだから。」 哲也:「ああ。」 久美:「風使いの一族とは、あたしたちもいつか因縁を断ち切らなきゃいけないことがあるわ。でも、その前に、哲也と秀治の因縁を 消滅させなきゃいけないわよ。仲間なんだし、家族なのよ。秀治はあなたを兄として認めたようなものだから、哲也も秀治を弟として 認めてあげなさいよ。」 哲也:「分かってる。」 哲也はそういって部屋を出て行った。 秀治は素直だけど、哲也も素直なんだけど…、それぞれ性格に、微妙な問題があるのよね。 多分、それぞれは認めれても、衝突は免れないかもなぁ。 そう思っていると、何かが倒れる音が今まで空き部屋になってるはずの部屋から聞こえた。 そして哲也と秀治の罵声も。 どうやら、あの二人の喧嘩は当分続きそうだ。 互いを認めてるから、多分もう、本気で殴りあいも始めちゃうかも。 まぁ、いいか。 そんな頃。 ミューズ:「久美ちゃんの方は終わったみたいだけど、衝突は免れなかったみたいね。」 蓮華:「そうだね、哲兄も秀兄も、もうちょっと大人になってくれないとね〜。」 瑞希:「無理なんじゃないですか?男同士って言うのは女同士よりもいろいろあるんですし。」 来美:「そうよね。でも、兄弟喧嘩をするのはいい事だと思うわ。哲也と秀治、それぞれ、新しい成長を見せてくれるんじゃないの?」 あたしたちは、あたしの部屋で喋っていた。 皆さんは不思議に思うことがあるだろう。 だって、「瑞希」っていう人がいるのだから。 彼女はミューズの知り合いの、存在感のない幽霊です。 でも、今あたしたちの前では実体化して、普通に喋ってます。 それがどうしてかというと、実は身近な能力者が、瑞希ちゃんに体を貸しているのです。 来美:「それにしても驚いたわよね。」 ミューズ:「そうだよね、アクアカップから帰ったら、家に瑞希がいて、しかも実体化してるんだもの。」 蓮華:「どうしてって思ったけどね。まさか舞さんが能力者だったとはね。」 瑞希:「あたしも驚きました。ミューズちゃんを訪ねたら、あたしの姿が見える人に出会ったのですから。」 実は、舞さんが能力者だったのだ。 舞さんは「神崎 舞」っていうのは偽名で、本名は「神楽坂 麻衣」というらしい。 舞さんの能力はナナと同じで特殊なものらしく、あたしたちにも詳しくは教えてくれなかったんだけど、人から受け継ぐものらしい。 そしてその能力の一つが、幽霊に一定時間だけ体を貸すことができ、人体には影響を受けさせない、というものだった。 だからここ最近、あたしの学校の7不思議7番目の瑞希ちゃんは、あたしの家に来ている。 舞さんは、この家の8人目の子供にしたいらしいんだけどね。 瑞希:「これからの生活は楽しくなりそうですね。」 来美:「ええ、でも、いろいろと起きるような気がするわ。まだまだ先かもしれないけど。」 ミューズ:「あたしもそう思う。」 蓮華:「あたしも。」 いつか分からないけど、あたしの弟の存在は本当なのか。 そして、あたしの記憶がもどることはあるのか。 さらに、あたしたちと風使いの因縁。 これらを解決する事になる事が、絶対にいつか起きると思う。 でも、それまでの平和を、あたしたちが楽しく過ごし、来年、あたしはホウエンに旅に出る事を絶対に実現させたい! それまでに、あたしは絆たちと、そして家族と、もっと楽しく、暖かく過ごして生きたいな。