蓮華:「もうすぐで着くね。」 ミューズ:「そうね、陸地も見えてきたし…」 現実世界の九州に当たると思われる地方であるホウエン地方に、あたしたちは向かっていた。 今回あたしが旅をする事になってるホウエン地方の、ミシロタウンってところに船が向かっている。 そこから歩いてオダマキ博士の住んでいる研究所に向かい、ポケモン図鑑を一応新しくしてもらったり、 ジム戦の許可を得たりしなきゃいけないのだ。 ただ、向こうにはナナがいるはずなんだけど、美香や鈴香も来てる筈なんだけど、忙しいのか連絡をとる事が出来ないのが 気にかかるかな。でも、研究所にいけば会える。そう思って、あたしは気楽に数日間の船の旅を楽しんでいた。 ミューズ:「でもやっぱりさ、別の地方に来た感じがするよね。」 蓮華:「うん、カントウではキャモメやホエルコはあまり見かけなかったもんね。サメハダーの群れだって見なかったし。」 ただ、その割にゲットしてる友達(綾香やヤツデ)とかはいたけど。それにあたしはカントウではゲットできないホウエンポケモンも たくさんゲットしてるから、そう思うと、今回はゲットする事はないかもしれない。 ミューズ:「けどさ、ゲットする事が目的じゃないでしょ?」 蓮華:「うん、今回のあたしの目的はジム戦とかのバトルをして絆たちと一回り強くなることだもの。それに、まだなっくんやてんてんも 育ててあげなきゃいけないし。みんなも体、なまってるでしょ?」 ミューズ:「そうだね、なまってるといえばなまってるかな。最近は平和だったから。」 だからこそ、バトルをしてもっと強くならないとね。 ポケモンリーグ優勝とアクアカップ準優勝の経験が無になっちゃうもん。 第3章 2.旅の友との出会い!仇との出会い! ミューズ:「静かな町だね。」 蓮華:「本当だね。大きい街だけど、静かで落ち着く感じもするし。」 船が到着し、降りればとっても静かな、平和そのものの街が目の前にあった。 そして山の中に一本道があり、そこを歩いていけば研究所に行けるようだった。ただ、車があれば、車に乗れればもっと早く着ける 別ルートもあるようだったけど。 あたしはミューズの他にソルルやアゲハ、リーフィー、フィルも出して一緒に歩く事にした。 主に日光浴を好むメンバーで、一緒に連れたって歩けるのは彼らくらいかな。他にも(ダネッチとか)いるけど、出しすぎもいけないだろうから。 途中でレディアンやドクケイル、アゲハの仲間のアゲハントが飛んでいる姿や、エアームドやスバメが飛ぶ姿、ジクザグマやポチエナの群れを 見かけたりした。縄張り意識が高いのか、グラエナが2,3匹出てきたりもしたけど、大体はソルルが、そしてミューズが威圧して追い払っていた。 蓮華:「やっぱりこれだけ自然が多くて静かな街だとさ、ポケモンもたくさんいるみたいだね。あ、あそこにはキノココがいるよ!」 ミューズ:「蓮華、ホントはゲットしたいんじゃないの?」 蓮華:「えっ?」 ミューズ:「だって蓮華は草の能力者だしさ、キノココは草ポケモンだよ。」 蓮華:「う〜ん…、あたしは別にいいかな。」 ゲットしたいかもしれないけど、今はいいかなって思ったりした。 だってまだ旅の始まりに過ぎないし、今後はもっとたくさんのポケモンに出会う事になるから。 もっともっと強い想いでゲットしたいって思うポケモンに出会うかもしれないもの。 だから今はやめておいた。 そんな話をしているうちに、あたしたちは研究所にたどり着いた。 何か、オーキド研究所とは違って木造のログハウスって感じの外装だった。 でも多分、中はオーキド研究所と同じなんだろうな。 蓮華:「ごめんくださ〜い!誰かいませんか〜?」 ミューズ:「ナナちゃ〜ん、あたしと蓮華、来たよ〜!」 あたしたちは鍵が開いてたから中に入ったんだけど、誰もいないのか、出てくる気配がない。 蓮華:「留守なのかな?」 ミューズ:「それじゃ、待つしかないんじゃない?」 あたしたちは一時研究所から出ようとして、研究所に入ってきた女性とぶつかりかけた。 ??:「きゃっ!」 蓮華:「あ、すいません。」 ミューズ:「大丈夫ですか?」 ??:「え、ええ…。」 目の前の女性はミューズが喋ったのを見て驚きかけたけど、すぐに表情を戻し、笑顔で話しかけてきた。 とっても綺麗な人で、あたしはこの人と初対面だと思えないくらい、身近に感じるオーラが放たれていると思っていた。 ??:「あなたが蓮華ちゃんとミューズちゃんね。ナナちゃんから聞いているわ。ナナちゃんは昨日ちょっと倒れちゃってね、 最近疲れがたまってたんじゃないかな。私の家にいるわよ。」 蓮華:「そうですか…。あの、ところであなたは…?」 ??:「私はこの研究所で研究をしているオダマキの妻で、スズカといいます。主人は今フィールドワークに出かけているの。 あなたが来るだろうからって主人に言われてね、こうして見に来たところよ。」 スズカさんは、あたしたちを研究所から少し離れたところにある家に案内してくれた。 スズカ:「ここが私の家よ。ナナちゃんは2階で寝てるから、2階に行ってみるといいわ。ポケモンたちは私が見ているから。」 蓮華:「それじゃ、ソルルたち、お願いします。」 ミューズ:「あ、待ってよ、あたしは行くよ!」 あたしはスズカさんにソルルやフィルたちを任せ、2階に行ってみた。 確か、上がってすぐ右側の、真ん中のドアだったわよね。 蓮華:「ナナ、入るよ。」 ミューズ:「蓮華、違うよ、そっちの左のドア!」 蓮華:「えっ…?」 あたしは間違ってドアを開け、目の前の上半身裸の少年と、ばったり出くわした。 (この時蓮華のものすごい悲鳴が家の中を響き渡りました。でも、あたしはそれよりも、もっと驚いたんだけどね…。 だって、その人は…。 byミューズ) ナナ:「あはははは…、蓮華ったらそういうところは相変わらずなのね。」 蓮華:「もう、笑い事じゃないんだから!」 あたしの悲鳴を聞いてナナがすぐに部屋から出てきたので助かったんだけど、そうじゃなかったらあたしも目の前にいた少年も、 その場から動けなかったよ、きっと。 ナナ:「ゴメン、ゴメン。でさ、蓮華、紹介するね。この子はスズカさんとオダマキ博士の息子のユウキ君。これでもあたしや ホウエンのジムリーダー、四天王たちに特訓してもらってる、結構強いトレーナーなのよ。」 今、あたしとミューズは1階のリビングにいた。 スズカさんは研究所に用事があるらしくて出かけている。 そしてあたしの前には、ナナと、さっきの少年、ユウキ君がいた。 蓮華:「あ、さっきはゴメンね。」 ユウキ:「いや…、俺も無防備だったし…」 ユウキ君は白髪の明るそうな感じの少年って感じだった。でも、まさかあたしと同い年とはね。 ナナ:「それでさ、蓮華、夏休みは長いって聞いてるけどさ、一応そっちの世界の1ヶ月がこっちの世界の2ヶ月だとしても、 短い期間でホウエンを回るのは難しいと思うのよね。特に蓮華とミューズって、結構方向音痴でしょ?」 ミューズ:「う〜ん、結構じゃないけど…確かにそうかな。」 蓮華:「うん。迷うよね、結構。」 ナナ:「だから、今回は道案内を兼ねて、ユウキ君も一緒に旅に参加させようと思ってるの。昨日のうちに、ユウキ君にはOK出させたし、 スズカさんの許可も取ってるから。」 いきなりナナはそう言いきった。 あたしは唖然としていた(ミューズもだけど)。 蓮華:「でも、あたしとユウキ君って…」 ユウキ:「あ、ユウキでいいっすよ。ユウキで。」 蓮華:「うん、ユウキとあたしは今日が初対面なんだよ。それなのにいいの?あたしたちの都合で振り回されるようなものなのに。」 ナナ:「いいの。ユウキ君も旅をする事は少なくなっちゃったしさ、この機会にムロのトウキさんのとこ以外の場所も回ってきたら いいんじゃないって思ったの。あ、トウキさんっていうのは、ムロ島ってところに住んでるジムリーダーよ。」 あたしは当惑してたけど、ナナの言葉に押し切られていた。 蓮華:「いいの?」 ユウキ:「いいっすよ。ただ、ポケモンリーグの優勝してるから、俺とバトルしてほしいんですけど。」 蓮華:「バトル?」 ユウキ:「リーグのビデオじゃなくて、どれだけ強いトレーナーなのか、俺の眼で見たいんですよ。4対4で、どうっすか?」 蓮華:「いいね、やろっか。」 あたしはナナに審判を頼み、この家の裏にあったバトルフィールドでバトルをする事にした。 ただ、その直前にミューズとナナが何かをやってたけど…。 ナナ:「やっぱりあの時言ってた、あなたが人の姿になったときの相手って…」 ミューズ:「うん…。だから…」 ナナ:「分かってる。部分的に記憶を消して、人の姿になってたときのことはあまり覚えてないし、出会った人の顔も、酔っていたから 思い出せないってことにしておくわ。」 ミューズ:「お願い!そうして!」 ナナ:「全く、よりによって本当にユウキ君だったとはね…。でも、あたしのこの記憶操作は完璧に忘れさせた場合は結構成功するけど、 部分的にした場合、何かのショックで思い出しちゃうこともあるからね。」 ミューズ:「いいよ、それでも。あたしが人の姿になることはほとんどないんだしさ。」 ナナ:「それじゃ、これから蓮華ちゃんとユウキ君の4対4のポケモンバトルを行うよ。ルールはすべて1対1。 ポケモンの交換は認めないから、吹き飛ばしや吠える攻撃によるポケモンをボールに戻す行為は禁止とします。 まっ、蓮華ちゃんのポケモンの場合、吠える攻撃くらいで動じるメンバーはほとんどいないから、使っても無意味だと思うけど。」 ナナは余計な事を言い、ユウキはすごく驚いていた。 吠える攻撃で戻らないポケモン…、はっきり言えば、あなたの目の前のミューズがそうなんだけどな…。 蓮華:「それじゃ、まずあたしのポケモンから行くよ!そうだなぁ…、ソルル、行ってきて!」 あたしの最初のポケモンは、アブソルのソルル。 ユウキ:「それじゃ、俺は…グロウ、頼むよ!」 ユウキのポケモンは、バルビートだった。 ソルルの苦手なタイプを出してきたわね。 ナナ:「それじゃ、試合開始よ。」 ユウキ:「グロウ、シグナルビームだ!」 蓮華:「ソルル、電光石火でかわして影分身よ。」 初めからソルルの弱点の虫タイプの技が放たれた。でも、ソルルはさらりとそれをかわし、影分身で分身をバルビートの周囲に作り出した。 ユウキ:「グロウ、電磁波を放て!電磁波で分身を消すんだ!」 蓮華:「ソルル、マジックコートよ。」 バルビートは電磁波で分身を消し、本体を麻痺させようとしたけど、ソルルのマジックコートが電磁波を跳ね返し、バルビートを麻痺させていた。 ユウキ:「グロウ!」 蓮華:「技の出し方が甘いかもね。ポケモンリーグのビデオを見てたなら、あたしのソルルがマジックコートを使えることも知ってるはずよ。 勉強不足じゃない?」 ユウキ:「うっ…、それは…」 蓮華:「それじゃ、バルビートとのバトルは終わらせるわね。ソルル、カマイタチよ。」 ソルルのカマイタチがバルビートを跳ね飛ばして最初のバトルはあたしが制した。 その後もサニーゴのサゴッピでボスゴドラを、ドククラゲのメノノでライボルトを制した。 どうやらビデオであたしのバトルを見たとは言ってたけど、しっかり見ていないらしく、あたしのポケモンがどんな技を持っているか、とか、 メノノに電気技が効かないとか、そういうことを全然知らないようだった。 ある意味勉強不足というもので、ナナも流石に呆れていた。 でも、バトルはあたしが見るとちょっと甘い感じがするけど、それなりにポケモンが育ってるからか、ナナが言うだけのことはあると思った。 ナナ:「それじゃ、次が最後ね。」 蓮華:「最後はやっぱり、ミューズ、頼んだわよ!」 ミューズ:「ええ!」 あたしの4番目のポケモンはキレイハナのミューズである。 やっぱりミューズの強さを見せてあげなきゃね。 ユウキ:「それじゃ、俺の一番強いポケモンを見せるよ。ただ、パートナーを先に教えるけどね。メウロ、出て来い!」 ユウキのパートナーポケモンはブースターだった。 ナナが言うには、ファーストポケモンがイーブイだったらしい。 ただ、ブースターでもミューズには天敵なのに、一番強いポケモンは別個らしい。 ユウキ:「メウロ、彼女が俺が旅の道案内をする相手だよ。挨拶しろよ。」 ブースターは、あたしたちに明るい声で鳴いた。 ミューズが好印象を抱いたので、厄介な性格ではないようだ。 ユウキ:「それじゃ、俺の持ってる最強ポケモン、ボウス、出て来い!」 そして出てきたのはドラゴンポケモンのボーマンダだった。 威嚇するような強烈な声に、近くを通った野生ポケモンや、バトルを見ていたポケモンたちも引っ込んでしまったくらいだけど、 ソルルやミューズはそんな様子ではなかった。 逆にミューズはファイティングポーズをとっていたほど…。 ミューズ:「あたしの相手にはふさわしいわね。」 ナナ:「それじゃ、試合開始よ!」 ユウキ:「ボウス、上昇して急降下!そしてツバメ返しで攻めるんだ!」 このポケモンが他のポケモンとは違うのはすぐに感じた。 威圧感といい、バトルの厳しさやバトルでの経験が一番豊富だって言うのを十分学んでるポケモンだって言う感じがしたのだ。 でも、あたしはある作戦を思いついた。 蓮華:「ミューズ、…!!」 あたしが言おうとした時に、ボーマンダが偶然吠えたので、あたしが何を叫んだのかはミューズに聞こえたかは分からない。 でも、ミューズとあたしって、バトルで考える事は大体同じ。 だからもしかしたら…。 そしてボーマンダは一気に急上昇し、そこから猛スピードで急降下しながら地面すれすれでツバメ返しを放っていた。 そしてツバメ返しが当たった時、風で砂が舞い上がり、ミューズがどうなったのか、見えなくなった。 ユウキ:「俺のボウスはメウロの次にゲットしたポケモン。攻撃に切れがあるし、四天王のゲンジさんが認めてくれたポケモン。 だから今の攻撃で勝負はついてるよ。」 ユウキはそう言ったけど、砂が消えると、フィールドにはミューズの姿はなかった。 ユウキ:「あれっ?キレイハナがいない…」 ナナ:「はは〜ん、蓮華、まさか…」 蓮華:「あたしの予想が当たってれば、ミューズ、いるんでしょ?」 ミューズ:「いるよ〜!」 ユウキ:「えぇ!?」 ミューズは倒れてなかった。 逆に声は空から聞こえた。 ボーマンダの上から。 蓮華:「ミューズはツバメ返しを見切る攻撃でかわして、蔓の鞭でボーマンダの体にしがみついたの。ミューズ、叩きつける攻撃よ!」 ミューズ:「了〜解。」 ミューズが蔓の鞭をしたまま、上空にハイパーボイスを放ちながら飛び降り、ハイパーボイスの波動をジェット噴射のように使いながら 地面に落下し、ボーマンダをその反動で地面に叩きつけていた。 すると、そのままボーマンダは力尽きるのだった。 ユウキ:「そんな…ボウスが簡単に倒れるなんて…」 蓮華:「よ〜く見たら?毒状態よ。」 ユウキ:「えっ…、あぁ!」 蓮華:「ミューズがツバメ返しを相殺した技はヘドロ爆弾。その証拠に、フィールドにはヘドロ爆弾の残りが落ちてるのよ。 気づかなかった?」 砂が舞い上がった事で砂がつき、分かりにくくなっていたけど、フィールドをよく見れば分かった事だ。 つまり、ミューズがボーマンダにしがみついた事で意識を空に向け過ぎたようだ。 蓮華:「もうちょっと勉強しないとね。でも、結構強かったよ。」 あたしはそう言ったんだけど、ユウキには全く聞こえてないようだった。 自信喪失、そんな言葉が頭をよぎった。 ちょっと…やり過ぎたかな? 〜その夜〜 あたしは外の空気を吸うために、スズカさんの家を出た。 すると、家の裏にユウキの姿を見つけた。 何やらバルキーと一緒になってパンチやキックの技の形を作っているようだった。 健人先輩もやってたけど、格闘タイプのポケモンにはそうやって一緒に体を使ってやる事で、ポケモンに技の形を教え、 覚えさせる事が出来るんだという。ただ、バルキー以外にも、彼のそばにはジュプトルやプクリンの姿もあり、一緒に技の形を 覚えていた。 すごく必死な表情だった。 それだけ真剣に育てている事が分かる。 そして、ポケモンが大好きだってことも。 そのうちに、あたしはユウキと目があった。 ユウキ:「見てたのか。」 蓮華:「うん、声がするから何してるのかなって思って。いつもやってるの?」 ユウキ:「ああ、サボるとバルキーの腕がなまるって言われたからさ。俺さ、バトルで簡単に負けたの、久しぶりだったんだ。 だから負けたことが悔しかった。あんなに簡単に負けたことが、すごく悔しかったんだ。」 蓮華:「ゴメンね、ちょっとやりすぎたかなって…」 ユウキ:「謝る事なんかないよ、上には上がいるってよく分かったんだ。だから蓮華のバトルを見て、自分なりにもっと勉強したい。 そう思ったんだ。だから、しっかり道案内をするよ。」 蓮華:「ありがとう。」 ユウキ:「それじゃ、俺はもうちょっと続けるから。」 蓮華:「分かった。それじゃ、明日ね。」 あたしはユウキと別れ、部屋に戻った。 次の日、スズカさんにジム戦の手続きやポケモン図鑑の更新を手伝ってもらい、旅の準備を終えた。 ナナは昨日のうちに帰っていて、美香や鈴香にも連絡を取ってくれると言っていた。 あたしは黄色のキャミソールに膝小僧あたりまでの白いスカートをはき(黒目のスパッツを下にはいてます)、 黄緑色の髪をいつものようにポニーテール状にした。寒い時は、薄い水色の上着があるからいいかな。 あたしが準備を終えて外に出ると、ユウキ(エメラルド版の衣装)がすでに待っていた。 ユウキ:「遅いぞ!」 蓮華:「しょうがないでしょ、いろいろあったんだから。」 ユウキ:「分かってるって。それじゃ、母さん、行ってきます!」 スズカ:「頑張ってね、ユウキ、そして蓮華ちゃん!」 蓮華:「はい!」 あたしは何か、スズカさんが舞さんのように感じられた。 いわゆるお母さんが出発を見送ってくれる感じが。 だから、すごく元気な声で返事をして、近くにいたユウキを驚かせてしまっていた。 こんな感じで、あたしの旅は始まった。 〜その頃〜 現実世界ではある事件が勃発していた。 蓮華が旅立った直後のことだった…。 久美:「行っちゃったね…」 来美:「元気で何よりよ。あの様子じゃ嬉しくてしょうがないようだし。きっと心配かけることはしないと思うわよ。」 秀治:「だといいけどな。」 哲也:「蓮華ははりきりすぎてへまをしそうだからなぁ…」 神楽:「眠いなぁ…」 見送った5人は日常の生活を始めようとしたいた。 そんな時、玄関の方で音がして、来美が見に行ったのだが、直後、来美の強烈な悲鳴が聞こえたのだった。 久美:「来美ちゃん?」 哲也:「何があったんだ?」 他の4人が慌てて行ってみると、いつの間にか家には黒い覆面をした謎の黒い装束集団が入り、来美を捕らえていた。 久美:「何者よ!」 哲也:「来美姉を放せ!」 秀治:「俺たちに喧嘩を売るとどうなるか分かってるのか?」 神楽:「眠いけど戦うよ。」 だが、4人には目を向けず、部屋を無造作に荒らし始めていた。 4人は追おうとするが、来美の首に刃物が近づけられていて動くに動けない。 しかし、その来美当人が突然液体のように溶け出した。 久美:「今よ!」 その瞬間、久美たちは彼らに攻撃を仕掛けたのだが、液体からもとの姿に戻った来美も含め、5人は簡単に技を避けられ、 倒されてしまっていた。 ??:「我々にそのような攻撃は効かないな。哲也、やっぱりお前は甘いな。」 哲也:「どうして俺の名前を知ってるんだ!お前は誰だ?」 ??:「俺か?俺は…」 集団の一人が覆面を取ると、哲也は驚いた。 神楽も少なからず驚いていたが、目は眠い様子…。 哲也:「竹巳…、お前…」 竹巳:「哲也たちのことを監視した結果、草鬼の娘が生存していた事が明らかになった。だからこうして倒しにきたのだが、 家から一歩も出た様子がないが、どこにいるんだ?」 竹巳がそう言った事で、哲也たちは黒集団の正体を察した。 秀治:「お前ら、風使いの一族だな!」 ??:「そうよ、死に底ない君。あなたが目覚めなかったら、あたしの仕事は完璧だったはずなのに。」 切れる秀治の背後には、もう一人、哲也のクラスメイトだという少女が現れた。 哲也:「竹巳と葛葉…、お前ら、俺たちを監視するために転校してきたんだな。」 葛葉:「そうよ。風使い一族を倒そうとした、風使いの仕事場を目撃した人間の忘れ形見や死に底ないたちを監視し、不穏な動きが あったら消滅させるのが、あたしたちの仕事。そして今の任務は蓮華とか言う草鬼の娘の削除。そいつはどこにいるの? 同じ風使いのあなたに聞くわ。言いなさい。」 竹巳:「言わなかったらこいつらの命はないぞ。俺たちは風使い一族のエリート暗殺集団。お前らを倒す事など簡単なことだ。」 秀治:「何だって!もういっぺ…」 秀治が自分を抑えていた一人を土の塊で昏倒させ、竹巳に殴りかかろうとした。 しかし、昏倒させたはずがフェイクだったらしく、逆に攻撃を受けて秀治は倒れていた。 哲也:「秀治!」 葛葉:「安心しなさい。急所は外したわ。でも、このままだったら確実に殺せるし、死ぬわよ。こいつを死なせたくなければ、 おとなしく言うのよ。」 その時だった。 2階に上がっていった一人が、怪しげなドアを見つけたと報告してきたのだ。 葛葉:「ドア?…確か、この家にはポケモン世界につながるドアがあったのよね?ってことは、蓮華ってのはその世界ね。」 哲也:「待て!お前らは行かせない!絶対に行かせ…」 葛葉:「邪魔よ。」 竹巳:「どきな。」 哲也は二人の前に立ちはだかろうとし、二人の一撃で倒れていた。 すでに哲也と秀治が血を流した状態で倒れ、来美と久美、そして神楽は動くに動けない状況だった。 だが、久美は近くの柱を触り、出てきたボタンを押した。 直後、家は大振動で揺れに揺れ、2階からは爆発音が響いていた。 実は、蓮華も含め、能力者一同でとある事を決めたのだ。 このドアが悪用される事を防ぐために、ドアに発火装置をつけ、何か自分たちにとって悪になるものが通ろうとしたら、 ドアごと爆破をしようと。 そして久美は、それを来美と目で話して決め、行動に出たのだ。 そのため、ドアが勢いよく爆発したというわけだ。 家を大きく巻き込む形で。 ちなみにこの爆弾を作ったのは、久美だ。 黒集団:「何っ!?これは…」 彼らは突然のことに慌てていて、久美が更にもう一つのボタンを押したことには気づいていなかった。 だが、葛葉と竹巳は、久美たちが何かをしたと感づいていた。 竹巳:「お前ら、ドアを壊しやがったな。」 葛葉:「死んでもいいって言う証拠なのね?」 久美:「あたしたちはたとえ血がつながってなくても家族同然よ。蓮華ちゃんを守るためなら、この家に仕掛けた発火装置の スイッチを押して、ポケモン世界に行けなくなる代わりにドアを壊す事にためらうことはないわ。」 来美:「悪いけど、あなたたちの言葉に従う気はないの。あたしたちも、あなたたちに親を殺された事は忘れてないから。」 久美は体中から発電し、来美は空気中の水蒸気を集めて2本の剣を作り出し、神楽も無意識のうちに自分の周囲に炎を出していた。 炎は敵意のあるものにしか効かない特別なものだ。 そして、倒れている哲也と秀治も、無意識的に傷を自己治癒能力で治し始めていた。 葛葉:「それが何だって?あたしたちにそんなんで勝てるとでも思ってるの?」 竹巳:「葛葉、こいつら、本当に死にたいらしいぞ。今からお前らを…」 ??:「たっぷり凍えさせてあげるわ。」 葛葉と竹巳が、そして黒集団が今にも襲い掛かろうとしたときだった。 吹雪が舞い降りて黒集団を次々と凍らせ、近くの壊された植木が大きく枝を伸ばして黒集団を締め上げ、花瓶の水が意思を持って 黒集団に襲い掛かっていた。 葛葉:「何者だ!」 雪美:「あたしたちよ。」 双葉:「風使いの一族に告げるわ。あたしたちの縄張りで人を傷つけようって言うのなら、妖怪界の長老がした約束、 しっかり守ってもらうんだからね。」 泉:「それが嫌だったら、この場を去り、彼らには近づかない事よ。それとも、あたしたちとやりあう?」 黒集団に攻撃を仕掛けたのは雪美、双葉、泉の妖怪3人官女だった。 彼らが日本一強い女妖怪である事を知っているのか、 葛葉:「覚えていろ」 竹巳:「ここは一旦引き上げるしかないな」 と、彼らは捨て台詞を残して去っていった。 数時間後 双葉:「家の損傷はあたしたちの知り合いが直してくれるわ。」 雪美:「それにしても、氷雨さんが留めていた風使いの一族がついに蓮華ちゃんの存在に気づいたとはね。」 泉:「ポケモン世界に行った事はバレたから、彼らはきっとあっちの世界に飛ぶはずよ。彼らもそういうゲートの開け方くらいは知ってるから。」 来美:「それじゃ、何とかして、ポケモン世界にいるみんなにこの事を知らせなきゃ…」 秀治:「蓮華を守ると同時に、風使いの一族にも攻撃を仕掛けないといけないしな。」 神楽:「ところで、蓮華はどうして草鬼の娘だからって狙われてんの?」 久美:「そういえば…、草鬼が狙われてる理由、双葉さんたちも知らないのよね。」 双葉:「ええ、氷雨もちょっとだけしか知らなかったわ。」 来美:「こうなると、調べる必要もあるわ。双葉さん、能力者を志穂ちゃんの神社に集めて。」 双葉:「分かった。海ちゃんの術で能力者の半数をポケモン世界に送り、半数で風使いの一族に乗り込むのね。」 来美:「ええ。早くしないと、蓮華ちゃんに何が起きるかも分からないもの。」 こうして、蓮華が元気な旅を始めようとしていた頃、現実世界では大変な戦いが始まろうとしているのだった……。