現実世界やホウエン地方、ポケモン協会などが徐々に動きに動き始める前。 数日前のこと。 カントウのクチバシティでポケモンコンテストが開催されていた。 第3章 4.コーディネーターの決意 渚:「プクリン、水の波動をサイコキネシスで操って!」 ビビアン:「おおっと、渚さんのプクリンが水の波動をサイコキネシスによって、ジャグリングをするかのように操っています。」 渚:「さらに冷凍ビーム、そして爆裂パンチよ!」 プクリンは操っていた3つの水の波動の球体をあわせ、それを冷凍ビームで凍らせて、爆裂パンチによって破壊した。 すると… ビビアン:「何と、割れた氷が粉雪のようにプクリンに降り注いでいます。ステージ上が白銀の世界へと姿を変えました!」 ジョーイ:「すばらしいですね」 コンテスタ:「これは、これは…」 スキゾー:「いやぁ好きですね〜」 ビビアン:「おおっと、高得点が出ました。渚さん、28.8点獲得しました!」 美香:「やったね、渚!」 鈴香:「すごかったですよ。」 あたしたちは渚のアピールステージが終わったので控え室に行った。 渚:「そんなことないって、美香と鈴香ちゃんのステージもなかなかだったよ。」 あたしと鈴香ちゃんは渚の少し前に1時審査に出たばかりだけど、結果はあたしが26点、鈴香ちゃんは24点だったのだ。 流石にコンテストに出るのが久々のあたしや、初披露の鈴香ちゃんにはブランクや審査の壁がありすぎたようだ。 ちなみにあたしはリザード、鈴香ちゃんはプリン(バルーン)を使っています。 渚:「でも、久々なのはいいけど、二人とも彼は?一緒じゃないの?」 鈴香:「それは渚さんも同じだと思うんだけど?」 渚:「あぁ、輝治はさ、忙しいからね。」 渚ちゃんの彼氏で、あたしたちが去年ナナシマ事件で救った輝治さんは今、とっても忙しいことをしていた。 元々ポケモンリーグの優勝経験がある人(蓮華と互角にバトルが出来る人)だから、四天王のワタルさんに認められて、 ポケモンGメンに入隊し、各地を飛び回っているらしい。 渚:「元々カイリュウ使いだったからね、輝治は。だから、ワタルさんの弟子みたいなものよ。たまに地方のメールで連絡はくれるけどね。 それで、翼さんと悠也さんはどうしたの?」 美香:「しつこいなぁ、翼先輩は悠也先輩と一緒にホウエン地方でポケモンウォッチャーの仕事に行ってるの。」 鈴香:「何かどうしてもやらなきゃいけない仕事だからって言ってたよ。でも、後数日したら、こっちに来るって言ってたから、 あたしたちはそれまで待ってる事にしたの。」 渚:「ふぅ〜ん。あ、そろそろだよ、審査結果。」 お互いに彼氏は仕事やらで忙しいという事だ。 翼先輩たちは仕事が忙しいのか、ポケギアの電源を切ってるようだし。 それよりも、コンテストの結果はどうなるんだろう…。 そして、スクリーンで発表された。 ビビアン:「第2ステージコンテストバトルに出場するコーディネーターの方々が決定しました。 第2ステージ出場は、メグミさん、カナタさん、ハーリーさん、ソノタさん、渚さん、美香さん、ケントさん、鈴香さんです! トーナメントの方はこちらになりました。30分後に第1バトルが行われます。コーディネーターの方々は準備の方をお願いします。」 渚:「やったね、3人とも出場だよ!」 美香:「よかったぁ…、久々だったからどうなる事かと思った。」 鈴香:「あたし、初ステージ進出、すごく嬉しいよ…。」 あたしたちは見事、コンテストバトルに出場する事が出来た。 渚:「それにしても、今回も結構すごいメンバーだなぁ…。」 渚が言うにはベテラン揃いらしい。 今回、あたしたちがスペース団討伐や他のコンテストで会った事があるシュウやハルカちゃんはいなかったものの、ハーリーさんや メグミさんはグランドフェスティバルに出場した事もある人らしく、結構強敵だと思えた。 渚:「後、他の控え室にいると思うんだけど、カナタちゃんのブーピックも結構強いんだよ。美香も鈴香ちゃんも頑張ってね。」 あたしたちに渚は、ある意味すごいプレッシャーを与えつつ、第1バトルに向かっていった。 渚の相手はソノタっていう人で、あたしも前にバトルしたことある人なんだけど、アピール審査まではすごいアピールをするけど、 バトルはあんまりできない感じなのだ。そんな相手だから渚は気楽みたいだな。 鈴香:「あたしの相手…ハーリーってどんな人かなぁ?」 美香:「う〜ん、あたしの相手はメグミさんかぁ。あたしたち、初めから強敵に当たっちゃったね。頑張るしかないよ。」 この時あたしたちは、背後でとあるニュースがやっていた事に全く気づいていなかった。 それだけ、コンテストを頑張ろうと思っていたからなんだけどね。 気づくのが遅かった事に後々後悔するわけです。 美香:「ひとまず、相手に挨拶に行かない?」 鈴香:「そうだね、あたしは初出場だから、いろんなコーディネーターさんからコンテストについて学んだ方がいいかもね。」 美香:「それじゃ、行って来よっか!」 この時、もし渚がいたら鈴香ちゃんを止めていたのかもしれない。 でも、あたしもハーリーさんとコンテストで出会ったのは初めてのことだったから、知らなかったのよね。 美香ちゃんと別れたあたしはハーリーさんを探した。 そして、見つけた。 ノクタスに霧吹きをかけたりしている、ノクタスをあしらった衣装を着た…男?女?何か性別が分からないような人がいた。 鈴香:「あのぉ〜、ハーリーさんですか?」 ハーリー:「あら?あなた、次にあたしとバトルする相手よね?確か、鈴香ちゃんだった?」 鈴香:「はい、あの、あたし今日がコーディネーター初めてで、初めてのコンテストなので、よろしくお願いします!」 あたしはしどろもどろになりながらも話した。 ハーリー:「そう、初めてなの。お手柔らかにやりましょうね。あなたのポケモンは?」 鈴香:「あ、あたしのポケモンはプリンです。」 ハーリー:「そう、あたしのポケモンはね、このノクタスちゃんよ。可愛いでしょ?」 鈴香:「そうですね…」 あたしは返答に困り、無難な線で返した。 だって、ノクタスって…可愛いというより不気味だもん。 だから… 鈴香:「でも…」 ハーリー:「でも?」 鈴香:「いきなり会ったらちょっと怖いかも。」 と言っていた… 口が滑った… でも、まっ、いっか!! ハーリー:「そう、そう…。あっ、これ、あたしが作ったポロックなの。味見してみない?」 ハーリーさんはあたしにポロックをくれたので食べたんだけど…、 鈴香:「…甘すぎないですか?もうちょっと渋みがあったほうがいいと…」 ハーリー:「オホホホ、そうね。そうするわ。」 あたしはその後、コーディネーターの心構えを聞こうと思ったんだけど、ハーリーさんは用事があるらしくて行ってしまった。 でも、終始笑顔だったから、怒ってないと思う。 そうあたしは思い込んでいて、彼?彼女?に対して色んな爆弾を踏んだ事に気づいてなかった。 特に「・・・かも」と言った事が、あたしには些細な、彼?彼女?にはとっても大きな爆弾だったのだ、と。 美香:「それじゃ、あたしのリザードにはこういう味のポロックをあげたほうがいいんですね。」 メグミ:「ええ、このリザード、とってもよく育ってるわね。尻尾の炎の加減もちょうどいいくらいだから。 このまま育てていけば立派なリザードンになると思うけど、肌を綺麗にしたかったら、こういう味のポロックをあげると もっといいと思うわよ。」 美香:「ありがとうございます。」 あたしがメグミさんにいろいろと教わっている時、鈴香ちゃんが戻ってきた。 美香:「あ、この子がさっき話した、あたしと一緒にコンテストに出場してる鈴香ちゃんです。」 メグミ:「はじめまして。よろしくね。」 鈴香:「よろしくお願いします!…美香、あたし、ハーリーさんに挨拶してきたよ。」 鈴香ちゃんがあたしに報告していると、近くでガタン!と音がした。 そこにはピンク色のリボンをつけた子、確か…コンテストバトル出場が決まったカナタちゃんだっけ。 その子が鈴香ちゃんを驚いた顔で見つめていた。 カナタ:「それ、本当に本当なの?あいつ、何にも言ってなかったの?」 鈴香:「えっ?」 メグミ:「カナタちゃん?どうかしたの?」 どうやらメグミさんとカナタちゃんは顔見知りらしい。 カナタ:「実は…」 あたしたちはここで、知っておくべきだったハーリーによる情報を教えられることになった。 カナタちゃんは、同じコーディネーターである親友のハルカちゃんから聞いた話だと言っていた。 そこへ… 渚:「あれっ?美香に鈴香ちゃんに、メグミさんやカナタちゃんまで…、一体どうしたの?」 凍りついた表情のあたしたちのところへ、ちょうどバトルを勝利し終えた渚が戻ってきた。 渚:「4人揃いも揃って、あと少ししたら鈴香ちゃんのバトル、時間になるよ。」 鈴香:「えっ?あ、うん…、あたし、行ってくるね。」 鈴香ちゃんが走り出し、渚はあたしたちにあっけらかんに聞いてきた。 何があったのか、と… 〜数秒後〜 渚:「はぁ?あのブラックリスト野郎の爆弾を踏んだ!?」 流石の渚もあたしの報告を聞いて驚いていた。 どうやら、渚はバトルしたことがあるらしい上に、 渚:「あたしもあいつのブラックリストに載ってるからね…、それにしても、鈴香ちゃん、よりにもよって…」 というわけで、何もいえない状況になっていた。 カナタ:「せっかくの初出場記念の日なのに、とんでもない奴に目をつけられちゃったよね。」 メグミ:「まさかそんな汚いことをする人がコーディネーターの中にいたなんて…」 美香:「ハルカちゃんやシュウ君まで目をつけられてたのね。前に言ってた嫌な奴って、ハーリーのことだったんだぁ…」 渚:「鈴香ちゃん、大丈夫かなぁ…」 あたしたちは不安げになりながら、今始まろうとしているバトルを眺める事になった。 鈴香:「さっきはどうも、負けませんからね。」 ハーリー:「ええ、お手柔らかにやりましょうね。」 二人の表情は笑顔だったけど、あたしには、鈴香ちゃんのポーカーフェイスはすぐ分かったし、ハーリーの笑顔が、怒りを押し殺しているというのがすごく 感じられるものだった。 鈴香:「それじゃ、プリン、行ってきて!」 プリンは可愛くターンしながら愛想を振りまいて登場した。 ハーリー:「ノクタスちゃん、行くのよ。」 対するハーリーのノクタスは、不気味な表情をかもし出しながら出現した。 ビビアン:「それでは、コンテストバトル、スタートです!」 鈴香:「プリン、歌う攻撃よ!」 ハーリー:「ノクタスちゃん、砂嵐で歌を妨害しなさい!」 フィールド上に砂嵐が出現し、プリンは砂嵐によって吹き飛ばされていた。 ハーリー:「さらにミサイル針で攻撃よ!」 吹き飛ばされながら膨らんで風に乗るプリンだが、ミサイル針の攻撃で落下してしまう。 鈴香:「プリン、丸くなってそのまま転がる攻撃よ!」 落下しながらも柔軟な体を利用しながら丸くなり、落下のダメージを吸収して転がっていく。 しかし、砂嵐で身を隠すノクタスにはなかなか当たらず、だまし討ちがプリンを攻めていった。 ポイントゲージがどんどん減っていくプリンに対し、ほとんど減っていないノクタス。 鈴香:「それなら、プリン、眠る攻撃よ!」 プリンは眠り始め、受けたダメージを回復し始めた。 だが、それでポイントが戻るわけではない。 でも、何を思ったのか、鈴香はプリンを眠らせていた。 ハーリー:「あ〜ら、何を思ったのかしら?そんな事をやっても無駄よ、ノクタスちゃん、ニードルアームよ!」 眠っている無防備なプリンに、ノクタスが徐々に近づき、ニードルアームをくらわせようとしたときだった。 突然プリンの口から、歌う攻撃が漏れたのだ。 ハーリー:「何ですって!?」 歌う攻撃を受けて眠ってしまうノクタス。 そして砂嵐も止んだが、プリンは次に転がる攻撃でノクタスを踏み潰していた。 ハーリー:「何?何が起こったの?」 鈴香:「残念でした。プリンの寝言が歌う攻撃と転がる攻撃を発動したのよ!」 どうやらプリンの寝言だったらしい。 寝言は自分の持つ技を寝ている時にランダムに放つのだ。 鈴香はそれを承知で行い、ハーリーのノクタスに大ダメージを与え、ポイントを削っていた。 ハーリー:「ノクタスちゃん、起きるのよ!そこのドードー娘に煮え汁を味合わせるんだから!」 この時になって、彼?彼女?は正体を現した。 しかも鈴香をドードー娘とまで呼んで。 鈴香:「ムカッ!あたしは由緒正しきセイレーンの娘なのに!飛べない鳥ってこと?プリン、火炎放射だよ!」 美香:「あっ…、鈴香ちゃんがぶち切れた…。」 渚:「あらら、鈴香ちゃんの爆弾を踏んだようね、あいつ。」 そして、結果は鈴香の勝利だった。 本当ならプリンの覚える技だけで勝ちたかったらしいのだが、火炎放射を発動した後に吹雪を発動するほど、鈴香が切れていたのは 言うまでもなく、負けるとハーリーは去っていったのだが、終わった直後に彼?彼女?をすごい形相で探したのもいうまでもない。 ハーリー:「あの子、やってくれちゃうじゃない。もう、絶対に次は恥をかかせられる情報を見つけて恥をかかせてやらなきゃ! かもかものメノちゃん以来の嫌な子だわ!」 そして、カナタのバトルやあたしとメグミさんのバトルも終わり、渚とメグミさんのバトルになった。 結局のところ、鈴香ちゃんは次にあたしを倒したメグミさんに負ける結果になり、カナタは渚に接戦の末、敗れていた。 あたしは炎タイプで虫タイプのアゲハントに負けたことがとっても悔しかった。 吹き飛ばしと銀色の風のコンボで火炎放射を逆流され、痺れ粉で動けなくなったところをソーラービームで一蹴とは、流石にグランドフェスティバルに 出場しただけのことはあると思う。 あたしも鈴香ちゃんも、まだまだだなぁ。 鈴香:「それにしても、メグミさんも渚ちゃんも強いよね。」 美香:「ホントね。アゲハントとプクリンが接戦してるもの。」 吹雪や冷凍ビームが銀色の風やシャドーボールで相殺されていく、この激しいバトルに、あたしたちは唖然としていた。 結果的に勝利したのは微妙にポイントが多かったメグミさんだった。 渚:「あ〜あ、今日は行けると思ってたんだけどな〜」 美香:「でも、すごかったよ。あたしたち、圧倒されちゃったもん。」 鈴香:「ホントだよ。でも、いい試合が見れてよかったかな。早くリボンゲットできるくらいまでになりたいし。」 渚:「いつかなれると思うよ。美香もリボン、2つはあるでしょ?」 美香:「うん。菜々美は3つで、渚は4つじゃなかった?」 渚:「ええ。だから、後一つでグランドフェスティバルに出場できるんだけどなぁ…。あたし、プリン系とピッピ系しか使わないからさ、 だんだん対抗策見つけられちゃってね。最近ちょっとやばいかも。」 鈴香:「でも、十分強いから、きっとゲットできると思うよ。」 渚:「そう?ありがとう。」 あたしたちはコンテストが終わり、今日は渚の家に泊まることにして、渚の家に向かっていた。 でも、渚の家には誰かがいた。 渚:「あれっ?開いてる…。誰か…、あぁ!」 美香:「ん?あ…」 いたのは渚ちゃんの彼氏の輝治さんだった。 ワタルさんと似た様な服を着ていて、凛々しさがよく分かった(元々顔も似てるのよね)。 輝治:「渚、ただいま。」 渚:「おかえり。…でも、いきなりどうしたの?いつもは帰ってくるときは連絡してくれるじゃない。」 輝治:「その予定だったんだが…」 と、輝治さんはあたしたちに視線を向けた。 どうやら、用があるのはあたしたちの方らしい。 鈴香:「う〜ん?」 美香:「あたしたちに、何か用ですか?」 輝治:「あぁ、言いにくい事だが、君たちの彼氏であるポケモンウォッチャーたちが…失踪した。」 渚:「……っ!?」 とてつもなく、さっきのコンテストの楽しさや明るい気分が遠ざかっていくのがすごくよく感じられた。 あたしと鈴香ちゃんは、突然、地獄のどん底に落っことされたような、そんな気分になっていて、 何をすればいいのかも、頭が真っ白になって考えられる状況ではなかった。 鈴香:「どういうことなんですか…?」 何とか鈴香ちゃんが言えたのが、その一言だけで………。 輝治:「実は、数ヶ月前からホウエン地方で怪しげな集団が暗躍しているとの報告が入っていた。俺もワタルさんもホウエンに飛び、 他のGメンたちと捜査を行っていたが、なかなか尻尾をつかめずにいた。そんな時に、ポケモンウォッチャー協会がGメンの手助けに なれば、と、数日前くらいからホウエンで集団を追っていたと聞いてね。探ってみれば君たちの彼氏だったというわけさ。 だが、彼らは捜査の途中で姿をくらました。持ち物の残骸がこれだけしかなく、後は海に流されたとしか思えない。」 輝治さんが見せてくれたのは、服の切れ端が少しだけだった。 でも、あたしも鈴香ちゃんも、それが翼先輩と悠也先輩のものだとすぐに分かった。 だって、ダブルデートで一緒に買ったときの服だったから…。 美香:「翼先輩と、悠也先輩のもので間違いありません…」 輝治:「そうか…。…俺はまた、ホウエン地方でワタルさんと合流し、捜査を進めなければいけない。渚、当分は帰れないんだ。悪いな。」 渚:「いいよ。…輝治、気をつけてね。」 輝治:「分かった。…二人の事、お前に任せるよ。」 輝治さんは出て行こうとした。 でも、あたしと鈴香ちゃんはそれを阻んだ。 美香:「その集団っていうのは何者なの?」 鈴香:「教えないと、ここは通さないから。」 渚:「二人とも…」 美香:「渚なら分かるよね?輝治さんも一時は…」 鈴香:「あたしたちは絶対に二人が生きてるって信じてる。能力者は簡単には死なない。自己治癒能力と自己防衛能力が発動して、 どこかで生き延びてる事と思う。でも、あたしたちだって探したい。だから、教えて。」 あたしたちは輝治さんを睨みつけながら言った。 輝治:「…ハァ、…分かったよ。」 輝治さんも流石にため息をつき、あたしたちに近づいてきた。 分かったと言ったから、教えてもらえると思ってた。 でも… ドカッ!ズドッ! 輝治:「悪い、これはまだ秘密事項でね。君たちが能力者であり、スペース団を倒した経験があってもまだ教えるわけには行かないんだ。 君たちの大事な人のためだとしても、俺は関係ない人を巻き込むことは出来ない。誰であろうとも。これは危険な仕事だ。 渚、二人を任せたからな。」 渚:「ええ。」 あたしたちは輝治さんの一撃で、気を失ったのでした。 「分かった」というのはこういうことだったのです。 〜数日後〜 渚の家にはナナちゃんが来ました。 とんでもない報告と一緒に。 美香:「嘘…」 鈴香:「ドアが…!」 ナナ:「ええ、あなたたちの世界で大変な事が起きているみたいなの。晃正君が魘されながら言ってたから。」 次元をつないでいたドアが粉々に壊れていた事と、ホウエン地方でネオアース団が動き出した事を知らされ、さすがにあたしたちも 何も言えなかった。 ナナ:「ポケモンGメンが正式にポケモン協会に報告した事だから、だからあなたたちに言えるの。」 鈴香:「悠兄は、ネオアース団にやられたってこと?」 ナナ:「多分、隙をつかれて攻撃を受けたんだと思うわ。あの二人が簡単にやられるとは思わないもの。」 美香:「それより、晃正君って、どういうこと?」 ドアが壊れたのに、こっちに来れるのは不思議だった。 ナナ:「分からないわ。ポケモン協会のあるセキエイ高原に、いきなりゲートが開いて、体中大怪我の状態でゲートから出てきたんだもの。 向こうで何かがあったことは事実よ。魘されながら、風使いがどうとか言ってたわ。」 美香:「風使い?それって…」 鈴香:「うん。悠兄が言ってたよね。お姉ちゃんを狙ってる人たち。」 ナナ:「蓮華ちゃんを?どういうこと?」 あたしたちは、ナナと情報を交換した。 蓮華は知らないだろうけど、あたしたちは去年のアクアカップ後に、悠也先輩から風使いの状況を教えられ、蓮華たちの親が一気に亡くなった理由 とかも知らされたのだから。 もし彼らが動き出したとすれば、蓮華ちゃんを狙っている事は確か。 鈴香:「お姉ちゃんはどうしてるの?」 ナナ:「ホウエンにいるわ。確か、あたしがオダマキ博士の息子さんを道案内につけたけど…」 鈴香:「お姉ちゃんが危ないかもしれない。でも、状況が分からないよ。どうしよう…」 美香:「ひとまず、ナナが言ってた予言を成立させるためにも、先輩たちを探すのが先決じゃない?さっき聞いたあの予言、鳥を司る少女は多分、 鈴香ちゃんだよ。それに、炎を纏う翼はあたしのことだと思う。」 ナナ:「やっぱりそう?考えれば考えるほど、誰が誰なのかは分かるのよ。でも、危険よ。」 美香:「そんな危険な場所にあたしたちはこれまでも行ってきたのよ。」 鈴香:「こうなったら、先輩たちを探すしかないよ。あたしはとめられても行くよ。」 ナナ:「そう、それじゃ、あたしはこっちで情報を集めるわ。二人は明日、ホウエン地方に向かって。…でも、蓮華ちゃんには言わないようにね。」 美香:「どうして?」 鈴香:「お姉ちゃんが狙われてるかもしれないのに?」 ナナ:「ええ。状況が分かっていない以上、自分の過去に関係ある事件に蓮華ちゃんを巻き込むのは危険よ。それに、自分の過去を忘れてしまっている 蓮華ちゃんの過去を、いきなり暴くのはどうかしら?大地を司る少女って言うのが蓮華ちゃんだとしても、蓮華ちゃんの属性は草よ。大地ではないわ。 この意味も分かっていないの。状況が分かり次第、あたしから蓮華ちゃんに伝えるわ。」 鈴香:「分かったよ。」 美香:「蓮華の事はナナに任せるわね。」 こうして、あたしたちは渚とナナ、そして美咲ちゃんたちにも見送られ、ホウエン地方に向かった。 ネオアース団が活動を始めたことで、ヒカリやカエデたちも動いてるらしい。 でも、あたしたちの最大の目的は、先輩たちを見つけること。 絶対に、絶対に探し出してみせる! ナナ:「ふぅ、二人とも出かけたわね。」 美咲:「ナナ、これからどうするの?」 ナナ:「動くわよ。あたしはルナと一緒に古文書の予言を解読する作業に入るつもりよ。美咲ちゃんも拓也引き連れて手伝いに来てね。」 美咲:「分かったわ。最近は平和だから拓也をひっ捕まえて連れてくわ。…ところで、ナナシマの連中も動いてるの?」 ナナ:「ええ、ヒカリ、ユウ、ライ、セイラム、スパイル、ブラスト、カエデ、コタロウも協力要請は出してあるし、カンナさんが リーダーシップを取って情報収集をやってくれてるわ。ただ、ネオアース団は今まで暗躍していて、その存在を知った情報屋をドンドン消却していった 奴らよ。どこまで詳しい事が分かるかは分からないわ。」 美咲:「そう。」 ナナがピジョットに乗って飛んでいくと、あたしも動く事に決めた。 拓也は最近バトルに熱中してるから、ジムにでも行けば見つけられるだろうな。 〜その頃〜 タマムシ大学では、ポケモンドクターを目指す若者たちの勉強会が開かれていた。 そこには今回の事件をまだ知らない涼治もいたわけで、ジョーイさんやナナから借りた医学書やポケモンセンターなどで学んだ事以外のことも いくつか学ぶ事が出来、有意義な時間を過ごしていた。 涼治:「今日も新たな医薬品の作り方が分かったし、これを使えば今まで治療法がよく分からなかったゴーストタイプにも、効果的な治療が出来るかな。 …そういえば、蓮華たち、今頃どうしてるかな?この勉強会は後2,3日で終わることだし、終わったら俺もホウエンに行ってみようかな。」 涼治はもらったばかりの資料をそろえながら、それぞれの若者に用意された個室で、次の講義及び実習の準備をしていた。 だが、天井から怪しげな音を聞きつけ、いつでも動けるようにもしていた。 涼治:「誰だ!」 すると、天井の板が一枚落ち、それと同時に蔓の鞭が涼治に襲い掛かっていた。 涼治:「なっ、これは一体…」 間一髪それらを避け、近くにあった鉢植えを投げるが、風が吹いたかと思うと、鉢植えを3枚におろしていた。 涼治:「これはカマイタチ…、能力者の仕業か?」 涼治はボールに手をかけようとした。 しかしその直後、背後に気配を感じ、振り替える間もなく首に一撃を受け、意識を失っていた。 謎の人物:「葛葉と竹巳から聞いてはいたが、事件を知らないものはやはり無防備だったな。こいつを里に連れて行き、使える戦闘員にすれば、 草鬼の娘を軽々と手に入れ、処分する事も可能というわけか。」 謎の覆面の女性によって、涼治が捕らえられてしまうのだった。 そして数時間後、涼治が実習に来ないことを不審に思った他の実習生が部屋を訪れ、部屋が荒らされ、涼治が行方不明になったのを知るのだった。 〜更にその頃〜 ホウエン地方のとある森の中に、キャンプをしている青年の姿があった。 そばには一匹のオオタチがいて、青年の吹くハーモニカの音色を聞きながら眠っていた。 だが、一人と一匹は、突如空に出来上がった、紫色のブラックホールのような穴を見て不審に思った。 青年:「アレは一体…」 オオタチ:「むきゅ〜…」 そして一人と一匹は見た。 穴の中から一人の少年と一人の少女が落下し、近くの川に落ちる姿を。 青年:「おい、大丈夫か?」 少年:「ん?ここは…」 少女:「あたし、助かったんですか…?」 青年の前に現れた少年は肩と足から、少女は腕から血を流しながらも、川から上がり、そこで気を失うのだった。 青年:「おい、おい!しっかりしろ!…ラチア、救急箱を持ってきてくれ!」 ラチア:「むきゅ〜!」 ラチアと呼ばれたオオタチがテントに飛び込み、青年は少年と少女をビニールシートを敷いた場所にゆっくり寝かせるのだった。 〜更に更にその頃〜 ジョウト地方アサギシティにある、小さなファミリーレストランでは、異形な姿の女性オーナーが4人の男女を集めて話していた。 皿数え:「…というわけだから、あなたたちにも協力が要請されたわ。特に、アヤネには関係がないとは言い切れない話よ。」 アヤネ:「ええ、お姉ちゃんが危ないし、実際に何がどうつながって起きているのかも分からないけど、あたし、やります!」 エイク:「俺も。」 ルリ:「あたしも。」 アリサ:「あたしもやるよ。さっきのニュースで涼治君のことも知ったもん。多分あたしの予想が正しければ、そのアヤネちゃんの言う 人のところに涼治君は連れて行かれたんでしょ?そこに行くには、やらなきゃいけないじゃん。」 皿数え:「それじゃ、お願いね。…その代わり、あの子には…、蓮華ちゃんには、この事は秘密よ。」 4人:「はい!」