色んな世界で厄介な出来事が起き、それぞれが動き出そうとしていた頃。 その事を誰からも知らされず、何も気づいていない少女、蓮華とミューズ、そしてユウキはミシロタウンから、ひとまず トウカシティにあるトウカジムに向かうことに決めて、旅を続けていた。 ユウキ:「蓮華は能力者だったのか?」 蓮華:「そうよ、ナナが言ってなかった?」 ユウキ:「言ってたかなぁ…?確か言ってなかったと思うな。でもすげえじゃん、何ができるんだ?」 蓮華:「えっとね、植物を操る事。あ、でも空も飛べるかな。だけど、能力はあまり使うものじゃないよ。」 ユウキ:「そうなのか?」 蓮華:「うん、あたしたちのこの能力は、元々誰かを守るために使うものだもの。個人的なことや遊び半分には使っちゃ駄目なの。」 ユウキ:「へぇ〜。」 どうやらナナは、能力者のことはユウキには喋ってないらしかった。 だからナナが能力者だってことにも驚いてたみたい。喋っちゃいけなかったかな? 第3章 5.トラブル!?×非公式?×熾烈! そんな時、コトキタウンの近くにある古い発電所までやってきた。 今日はとっても暑い日だったので、あたしたちは発電所の陰で休憩する事にした。 ユウキ:「このペースなら、今日のうちにでもトウカシティに行くことが出来ますよ。」 蓮華:「そう?よかったぁ、それじゃもう少し休んだら行こうか。」 あたしは発電所の壁に体を預けた。 その直後。 ソルル:「ソル、ソル!」 ユウキ:「ん?」 ミューズ:「ソルル!」 蓮華:「どうしたの、ソルル。」 いきなりボールから出てきたのは、アブソルのソルルだった。 ユウキ:「アブソルが出たって事は、災害を予知したってことだよな?」 蓮華:「うん、多分。ユウキはアブソルが災害を予知できること知ってるのね。」 ユウキ:「ええ、だって俺も一度ホウエンを旅してるんすよ。アブソルを持ったトレーナーにも結構会ってますから。」 と、その時だった。 あたしが体を預けていた壁が妙に傾き始め、その後の様子はスローモーションに見えたんだけど、ミューズとユウキとソルルが 驚いて駆け寄ってきた時、あたしは暗闇の中に落下して、気を失ってしまったのでした。 一瞬の事で驚いた俺だけど、蓮華がいた壁を調べてもっと驚いた。 ユウキ:「あ、この壁腐ってた…。」 そういえば、この発電所、ほとんど使われてないんだよな。 ミューズ:「腐ってたじゃないよ。あたしも気づかなかったのはいけなかったけどさ。蓮華を助けに行かなきゃ。」 ユウキ:「ああ、俺が行くよ。」 こうなったのは俺が気づかなかったのが原因だから。 俺が名乗り上げたけど、そんな俺に立ちはだかったのはアブソルだった。 ユウキ:「おい、どいてくれないといけないじゃないか。」 だが、アブソルはどこうとせず、俺に威嚇していた。 ミューズ:「ソルル、ユウキが壁の腐り状態を気づかずにいたことに怒ってるみたい。それでも道案内か、だって。」 ユウキ:「それは俺が悪かったと思ってる。だから俺が助けに行くんだ。」 だが、アブソルは更に激しく威嚇していた。 ユウキ:「何だよ、俺が行っちゃいけないのか?」 ミューズ:「違うよ。一応直訳しておくね。注意力が足りないのに、それでも研究者の息子なのか?だってさ。でも、あたしも…、 それは言えて…」 最後まで聞いていられなかった。 無意識的に俺の表情はこわばり、ミューズもアブソルも、俺の変化に戸惑っているようだった。 ミューズ:「どうしたの?」 ミューズが心配そうに聞いてくる。 だが、俺は二人を無視して中に飛び込んでいた。 ミューズ:「あぁ、ちょっと!」 背後でミューズが叫ぶ声がしたけど振り返らずに、蓮華を探そうと中に入り、何もない場所に足をつけようとして、落下してしまった。 ミューズ:「あ…、足元をよく見ろってソルルが吠えたのに…。」 蓮華が無防備すぎると思えば、ユウキは無用心だな。 でも、何でいきなり怒ったんだろ…。 まぁ、いいや。 ミューズ:「ソルル、あたしたちも行くよ。ユウキのバルビートのグロウ、出てきなさい。」 あたしはユウキの荷物を探り、バルビートのボールを取り出した。 ソルル:”早く足元を照らせ、二人の二の舞になるぞ。” グロウ:”分かってるよ、それくらい。それにしても、メウロが寝ててよかったよ。二人とも、ユウキの爆弾を知らずに踏んだんだからさ。” ミューズ:「爆弾?」 あたしはソルルに乗り、グロウがお尻のライトで中を照らし、足を踏み外さないように進むソルル。 中はすでに機械が取り払われているのか空洞で、床が沈没し、地下に続いているようだった。 しかも、何故か遺跡みたいな状態の通路で、踏み外したら奈落の底に落下しそうな感じだった。 こんな場所が近くにあるのねって思いたくなる感じで。 それにしても、爆弾ってどういうことだろう…。 ユウキにも蓮華や涼治君たちみたいに言われたくない事があるみたいだけど…。 そして、ようやく地下に降りついた時、蓮華とユウキを見つけた。 地下は地底湖になっていたようで、二人はそこに落下したから助かったようだ。 ユウキの方が結構濡れてるから、蓮華を助けてくれたんじゃないのかな? そう思ったとき、ユウキのかばんから、ブースターのメウロが飛び出した。 メウロ:”ちょっと、ユウキの爆弾踏んだの?” ソルル:”悪かったな。だが、蓮華が危険な状態になったことに気づかなかったから言ってやっただけだ。” メウロ:”でも、後で謝ってよ、ユウキに。ユウキ、結構あの言葉、気にしてるから。” そう言うと、メウロは炎を出して二人を暖め始めた。 ミューズ:「どういうことなの?爆弾って。」 あたしは聞いた。 でも、メウロもグロウも教えてくれず、ユウキ自身に聞いた方がいいと言っていた。 あたしたちが蓮華を大事に思っているように、メウロたちもユウキを大事に思っているのがよく分かった。 そんな時、背後で水音がした。 あたしたちが振り向くと、そこにはジーランスが泳ぐ姿があった。 メウロ:”そういえば聞いたことがあるわ。コトキタウンの近くにはジーランスがいる秘密の湖があるって。” グロウ:”ここのことだろうな。” ソルル:”ここは平和なようだな。後で、あの壊れた壁を蓮華に直してもらうか。” ミューズ:「そうだね。」 あたしたちは、ジーランスが戯れる姿を眺め、今が平和である事を、そして平和の静けさを聞き入れていた。 数時間後、蓮華よりも先に、ユウキが目を覚ました。 ユウキ:「ん…、ここは…?」 ミューズ:「発電所の地下にある地底湖よ。大丈夫?」 ユウキ:「ああ、メウロもグロウも心配かけたな。」 ユウキが明るく笑いかけるとホッとしたのか、二人は自分からボールに戻っていった。 ソルルもユウキを見つめ、頭を下げて戻っていった。 ユウキ:「今の…どういうことだ?」 ミューズ:「さっきは言い過ぎたからゴメンってことよ。…ユウキ、さっき、何を怒ってたの?」 あたしはソルルの動作を見て目を点にしているユウキに声をかけた。 その瞬間、ユウキはさっきまでの表情と打って変わり、厳しいようなものに変わっていた。 ミューズ:「話したくないならいいわ。でも、いつかは話さなきゃ行けないことだってあると思うの。これから1ヶ月くらい、 一緒に旅をするかもしれないでしょ?だったら、話してくれないかな?」 あたしがゆっくりと聞くと、しょうがないか、と言って、ユウキは話してくれた。 ユウキ:「俺、父さんの、オダマキ博士の本当の息子じゃないんだ。昔の記憶を失っててさ、気づいたら研究所の前にいたんだ。 父さんは母さんも一緒にいたって言ってたけど、前に二人が話してる声を聞いちゃってさ。母さんも俺を生んだかどうかは 覚えてないって。」 ミューズ:「それじゃ…孤児ってこと?」 ユウキ:「ああ。だからさ、父さんの子供なのに、どうして父さんみたいにとか言われるのが無償に嫌なんだ。俺は俺なんだって 思っていても、自覚していても、周囲の人は父さんの後を俺が継ぐから、父さんみたいに出来るのが普通だって言ってる。 それが重荷なんだよ、すごく。」 それで、あたしとソルルの言葉に怒って、無謀な行動に出たわけか。 ミューズ:「そうだったの、ゴメンね。」 ユウキ:「いや、ミューズは知らなかったんだし…。」 ミューズ:「でも、謝る。ごめんなさい。」 あたしが謝ると、ユウキは恥ずかしそうにうつむいていた。 ミューズ:「それにしても、自分が二人の子供じゃないにしても、父と母がいることはいい事だと思うよ。」 ユウキ:「えっ?」 ミューズ:「蓮華は両親がいないから。保護者になってくれる人はいて、全くの他人だけど、とっても優しいお兄さんやお姉さんはいるけど、 実際には両親がいない、孤児だから。だから、ユウキはもうちょっと、大人になった方がいいと思う。 会話を聞いちゃったとしても、二人を親として、自分の目標に進んでいけばいいんじゃないの?だから、誰に何を言われようと、 自分は自分だって言えなきゃ駄目だよ。」 あたしがそう言うと、流石に自覚したのか、心を打たれたのか、 ユウキ:「ミューズ、ありがとう。俺、ちょっと他の出口がないか、見てくるよ。」 と言って走り出していった。 あたしも蓮華に似てきたかな、誰かの心に訴えかけれるようになったんだから。 ミューズ:「それにしても、いつまで寝たふりを続けるつもりなの?」 あたしは蓮華をくすぐってやった。 蓮華:「ちょ、ちょっとやめてよ、ミューズ。分かったわよ、起きるわよ。」 いつからかは知らないけど、ユウキが起きて少ししたら、蓮華も起きていたのだ。 ミューズ:「何を考えてるの?」 蓮華:「ちょっとね、ユウキも大変だなって思ったの。夜遅くまでポケモンと一緒に特訓してて、今日も元気な姿を 見せてくれてて、弱いところも見せていいのにさ、強がってるもの。」 ミューズ:「そうかもね。」 蓮華も結構見ているようだ、ユウキのことを。 何か蓮華、お姉さんみたい。 敢えて口には出さなかったけど、物凄くそう思った。 結局、あたしたちが外に出れたのはそれから3時間後でした。 その日の夜。 あたしはポケモンセンターの裏手でバルキーと一緒にトレーニングをしているユウキを見つけた。 蓮華は久々に壁を元に戻すのに能力を使って疲れたのか、今部屋でぐったりしている。 ミューズ:「特訓ははかどってる?」 あたしは二人に近づいていった。 ユウキ:「ああ、ミューズか。はかどってるよ。でも、トウキさんに言わせればまだまだらしいけどな。」 ミューズ:「ふぅ〜ん、バルキーは結構レベルが上がってるみたいだけど…。誰に進化させるつもり?」 ユウキ:「う〜ん、俺はカポエラーが希望だけど、こいつはトウキさんが見たところ、エビワラーになる可能性が高いらしいんだ。 それで攻撃と防御を同時に高めるトレーニングをしているわけなんだ。」 結構大変そうなんだって感じた。 でも、ユウキが頑張ろうとしている分、バルキーもそれに答えようと必死になっているのが分かった。 ニャースが言葉を喋る事が出来るようになるまで特訓したほどだから、バルキーもきっと成果を上げられると思う。 ミューズ:「ところで、今日は蓮華を助けてくれてありがとう。」 水から蓮華を引き上げてくれた事を感謝したんだけど…、 ユウキ:「へ?何の事だ?」 なぜかユウキは知らないみたいだった。 ミューズ:「水に落ちた蓮華を助けてくれたんじゃないの?」 ユウキ:「俺が?俺、そんな事してないよ。落ちたショックで気を失ってたし、てっきりメウロやミューズたちが助けてくれたんだと 思ってた。多分、ジーランスたちが助けてくれたんだよ。」 そういうと、ユウキは再びトレーニングを始めていた。 でも、それは違う。 あの時ジーランスは何もしていないと言っていたから。 蓮華が水に落ちてきて、ユウキがそれに続いて落下してきた事は知ってたけど、二人がどうやって水から上がったのかは ジーランスたちも見ていない。 嫌な予感とは違ったけど、あたしは何か、腑に落ちない思いだった。 次の日。 コトキタウンのポケモンセンターに泊まったあたしたちは、再びトウカシティに向けて出発した。 ただ、その日はユウキが寝坊をしていて、歩く時も欠伸を連発して、どうやら今までの重荷が昨日のミューズの言葉によって 外されたんじゃないのかなって、あたしたちは思いたくなるのでした。 蓮華:「大丈夫?」 ユウキ:「大丈夫だよ、ちょっと寝るのが遅かったからさ…」 蓮華:「疲れたなら疲れたって言っていいからね。」 ミューズ:「あたしたちは平気だもの。」 ユウキ:「ありがとう。」 あたしたちはいつの間にか、昨日よりも打ち解けていました。 昨日のトラブルのおかげかもしれないけどね。 そうして到着したトウカシティは大きな街でした。 ミシロタウンが静かだとしたら、トウカシティはとっても賑やかな感じがします。 ユウキ:「ここにトウカジムがあるけどさ、今日は挨拶だけにしたらどうだ?」 蓮華:「どういうこと?」 ユウキ:「トウカジムはさ、ホウエン地方の5番目のジムなんだ。ジムに挑戦するとしたら、その前に4つのジムを回った方が いいんじゃないかな。」 蓮華:「でも、あたし、力試しはしてみたいから行く。」 あたしはユウキに案内してもらい、トウカジムまで行った。 何だか普通の家みたいだと思えたけど、近くには大きな植物園もあり、やっぱりジムなんだと思った。 その時だった。 ??:「あれっ?ユウキ兄ちゃんじゃないの?どうしてここにいるの?」 ジムの2階の窓が開き、どこか見覚えのあるメガネの男の子が顔を出した。 ユウキ:「あぁ、マサトか。ちょっとな、ホウエン地方を旅する人がいてさ、道案内をしてるんだ。センリさんいるか?」 マサト:「待ってて、呼んでくるよ。」 窓から顔を引っ込めた時、あたしは思い出した。 一度タマムシで見かけたこともある。 ポケモンコーディネーターのハルカちゃんの弟だったかな。 前にスペース団に操られた健人先輩を助けてくれたはず。 蓮華:「知り合いなの?」 ユウキ:「蓮華、マサトのこと知っ…、そういえば、スペース団の戦いに蓮華も参加してたんだよな。その時に会ったのか?」 蓮華:「うん、ちょっとだけね。」 ユウキ:「そうか、俺はあいつとハルカ、そしてサトシさんと一緒に旅してたんだ。それに、父さんとセンリさんが親しいからさ、 俺もあいつらとは小さい時から知ってるんだ。」 蓮華:「ふぅ〜ん。」 と、そこでドアが開いた。 出てきた女の人、ハルカちゃんたちのお母さんのミツコさんに案内されて、あたしとユウキはリビングに通された。 そこにはマサト君と男の人がいたから、多分この人がセンリさんなんだろうな。 センリ:「君が蓮華ちゃんだね。オダマキ博士からは聞いているよ。ユウキ君の道案内でホウエンのジムを回るたびに出るんだってね。」 蓮華:「はい、それで、一応ジム戦をしたいんですけど、いいですか?」 ユウキ:「蓮華にはここが5番目のジムとは教えてあるんすけど、一度戦ってみたいそうなんすよ。」 あたしがジム戦をしたいといったら、マサト君の目が光った気がした。 でも、あたしはそれに気にせずに意欲的な思いをぶつけたのでした。 センリ:「ジム戦をやりたい意欲的なトレーナーは、確かに私も大歓迎だよ。しかし、一応このジムはホウエンの5番目のジムだ。 だから今回のバトルは非公式と言う事にしたいのだが、いいかな?」 そんなあたしに返ってきたのはこれ。 やっぱり一応順番みたいなものはあるらしい。 でも、それをあたしは了承した。 だって、あたしはカントウでもその順番を守ってバトルしてきたから。ジムリーダーの言葉を無視するわけにはいかない。 そんなわけで、あたしはミツコさんの審判の下で1対1の非公式バトルをすることになった。 マサト:「お父さんは手ごわいからなぁ、一度ポケモンリーグで優勝してても手ごわいと思うなぁ。」 ユウキ:「そうだよな、サトシさんも一度は負けたくらいだったし。」 ミューズ:「ふぅ〜ん、まぁいいじゃん。負けたほうが得るものは多いことだし。それにしても久しぶりね、エネコたちは元気?」 マサト:「うん、今日はおねえちゃんが全部連れてっちゃってるからいないけどね。」 それはちょっと残念だった。 それにしても、あたしが喋っても驚かないのも残念だ。まぁ、しょうがないかもしれないけどな。 あの時の戦いで会ってるし。 ユウキ:「それよりさ、非公式とはいえ、強引にジム戦が決まったよな。」 ミューズ:「別に、いいんじゃないの?バトルをするのはあたしじゃないんだから。」 ユウキ:「えっ、バトルに出るのはお前じゃないのか?」 ミューズ:「うん、あたしじゃないらしいよ。」 マサト:「えっ、てっきりキレイハナが出てくるかと思ってたのに…」 ミューズ:「そう思うみたいだけど、今日はあたしは使わないみたいよ。」 ミツコ:「それではこれからジムリーダーセンリとチャレンジャー蓮華によるジム戦を行います。使用ポケモンは1体です。 それでは、試合開始!」 センリ:「それでは蓮華ちゃん、行くよ、私のポケモンはこいつだ!ヤルキモノ、行ってこい!」 センリさんのポケモンはノーマルタイプのポケモンで、攻撃力と素早さが高い、特性が眠り状態にならない「やる気」のヤルキモノ。 ジムリーダーの使うタイプがノーマルタイプだって聞いていたから、多分攻撃力が高いポケモンが出てくるんじゃないかと思ってた。 それで今回はミューズじゃなくて、素早さが高くて対抗できそうなポケモンを選んでいた。 蓮華:「あたしのポケモンはこの子!ソルル、お願いね!」 そういうわけで出したのが、アブソルのソルルである。 素早さが高くて切れ味の高い技を持つ彼なら、ヤルキモノに十分に対抗できるはずだ。 センリ:「アブソルか、珍しいポケモンを持ってるね。だが、どこまで対抗できるかな?ヤルキモノ、切り裂く攻撃だ!」 ヤルキモノが一気に距離をつめ、ソルルに切り裂く攻撃で襲い掛かってくる。 蓮華:「ソルル、影分身でかわして!そして剣の舞から居合い切りよ!」 ソルルは影分身で切り裂く攻撃を避けた直後、頭の鋭い角(触角)を大きく振り回し、そして鋭い触角で鋭い切れ味の一線を ヤルキモノに放った。だが、ヤルキモノはこれをかわし、乱れ引っかきでソルルに詰め寄ってくる。 センリ:「ヤルキモノに対するスピードと切れ味にいい技による攻撃はいいが、その攻撃は当たらなければ意味がない。 ヤルキモノのスピードにどう立ち向かうつもりなのかな?」 蓮華:「…それなら、ソルル、電光石火で距離を詰めて、切り裂く攻撃よ!」 乱れ引っ掻きをジャンプしてかわしたソルルはそのまま電光石火のスピードでヤルキモノが攻撃しにくい距離に入り、 切り裂く攻撃を思いっきり食らわした。 蓮華:「決まっ…防がれたか。」 決まったかと思いかけた。 でもヤルキモノの爪がソルルの触角を受け止め、押し返すかのような引っかく攻撃をぶつけていた。 センリ:「ヤルキモノは自分の使える技への対抗策を持ってるからね、ヤルキモノ、そのままアブソルに欠伸をしてやるんだ!」 ヤルキモノ自身は「欠伸」は覚えない。 でも、ヤルキモノの進化前のナマケロは「欠伸」を覚える事が出来る。 だからこのヤルキモノも持ってるのだろう。 でも、ソルルにそれは通じなかった。 センリ:「至近距離での欠伸で眠らない…?…なるほど、マジックコートが使えるようだね、君のアブソルは。」 蓮華:「ええ、ソルルのマジックコートが欠伸を跳ね返したの。でも、やる気を特性に持っているからヤルキモノにも欠伸は 通じなかったんです。」 ほとんど互角のバトルだった気がする。 スピードと威力や切れ味の高い技を互いに使い、状態を変える技に対する対策を持ってるから。 センリ:「だが、そろそろ本気を出していこうか。このままではだらだらしたバトルが続いてしまうからね。」 蓮華:「本気…(今までのが軽めにやってたってことはこのままだと押されるかも…)」 ミューズ:「あ、空気が変わった。」 ユウキ:「えっ…?」 マサト:「僕には何も分からないけど…」 ミューズ:「変わったよ、センリさんの一言で、蓮華の目も変わった。これはもっと熾烈なバトルになるかもね。」 マサト:「そうなの?」 ミューズ:「うん、それくらい分かった方がいいよ。一応二人ともトレーナーなんだし。バトルをしているトレーナーの空気が読めた方が、 相手にどういう手を打つかが決めやすいと思うもの。」 マサト:「ふぅ〜ん、なるほどね。」 ユウキ:「(俺はまだまだってことなのか…?)」 センリ:「ヤルキモノ、気合溜めから乱れ引っかき、そして場をつめて切り裂く攻撃だ!」 蓮華:「ソルル、剣の舞で攻撃力をあげて、高速移動で攻撃をかわし、カマイタチ攻撃よ!」 気合だめで飛び出したヤルキモノが乱れ引っ掻きを仕向けるが、ソルルは高速移動で攻撃の一手一手をかわし、剣の舞で攻撃力をあげ、 カマイタチを放つ。しかしそれは、切り裂く攻撃の空気の波動で相殺されていた。 その後も切り裂く攻撃をヤルキモノが放つが、それを触角で受け止めたソルルは、スピードスターで反撃に出ていた。 ヤルキモノとソルルの技と技の競り合いは続き、技の一手はかわされるか相殺しあうかを続けていた。 センリ:「私の本気にここまでついてくるトレーナーは久しぶりだな。これはやりがいがあるよ。」 蓮華:「あたしも楽しいです、こういうバトルは。」 二人は笑顔で会話しているが、その裏では熾烈なバトルを続けていく。 流石の3人も、審判をしているミツコさんも、このバトルには圧倒されていた。 これが公式のジム戦だったら、どうなっていただろうか? しかし、そんなバトルも終わりを迎えようとしていた。 センリ:「ヤルキモノ、切り裂く攻撃だ!」 蓮華:「ソルル、受け止めて居合い切りよ!」 ヤルキモノが切り裂く攻撃に出ようとし、ソルルが触角で受け止めようとした時だった。 センリ:「ヤルキモノ、そのまま爆裂パンチだ!」 蓮華:「えっ、ソルル、守…」 切り裂く攻撃を下から突き上げる形に出ていたヤルキモノが、いきなり爆裂パンチに移った。 それによってソルルは殴り飛ばされてしまっていた。 守る攻撃を行わせる時間もなく。 蓮華:「ソルル、立ち上がって!」 あたしは叫ぶけど、ソルルは頭を床に打ちつけながら、立ち上がろうとしない。 爆裂パンチの効果によって、混乱してしまっているようだった。 センリ:「これで最後だ。ヤルキモノ、気合パンチ!」 無防備なソルルに、ヤルキモノの気合の入った一撃が加わり、ソルルは倒されてしまった。 ミツコ:「試合終了、勝者、ジムリーダーセンリ。蓮華ちゃん、お疲れ様でした。ここにも回復用の機械があるから、 そこでポケモンを元気にしてあげなさいね。」 センリ:「蓮華ちゃん、君のバトルはとても気持ちがいいものだったよ。だが、同じ技で牽制しあう事で、相手に技の対策を取られやすくなったり、 自分の弱点を見極められる事になるからね。十分注意してバトルを行うといいよ。」 こうして非公式の試合は終わった。 センリさんとミツコさんはラブラブカップルのようにどこかに行ってしまい、あたしと他3名が残された。 ただ、ミューズはともかく、ユウキとマサト君は、今のバトルに思いっきり圧倒されてしまったらしく、なかなか声が出るに出せない状態のようだった。 それにしても、ソルルで負けちゃうとは、あたしもまだまだかな。 ユウキのポケモンに勝った事で、ちょっと大人ぶってたかもしれない。 これからは初心にかえって頑張らなきゃね。 あたしはそう思いながら、あたしの力でソルルを元気にしていた。 ミューズ:「回復の機械を使えばいいのに…、まぁ、蓮華らしいと言えばらしいかな。」 あたしが淡い緑色の光を放ってソルルを元気にする姿は、ユウキとマサト君にはどう映っていたのかは分からない。 でも、何か、バトルを行う前と見られ方が違うのは気のせいかな? ミューズ:「…(あれは絶対蓮華、気にしてるな)…」 ひとまず、その日あたしはユウキと一緒に、トウカジムに泊まった。 あたしのポケモンたち総勢43匹は植物園の中に行き、トウカジムのポケモンや、ユウキのポケモンと仲良くなったらしかった。 ミューズが言うには、とっても居心地のいい場所だったんだって。 そして次の日、あたしはユウキと一緒にホウエン地方1番目のジムがある、カナズミシティに向かうことにした。 ユウキ:「蓮華、昨日のバトルは本当にすごかったよ。俺、圧倒されちゃったからさ。」 蓮華:「う〜ん、そうなの?あたし、無我夢中でやってたもん。何か、あんなに強いトレーナーとバトルしたの、すごく久しぶりだったから。 ユウキもセンリさんくらいを目指すの?」 ユウキ:「ああ、いつかはジムリーダーくらい強くなりたいからな。」 蓮華:「それじゃ、頑張らなきゃね。あたしに負けてるようじゃ、まだまだよ。」 ユウキ:「…それは痛いな、でも、いつか追い越してやるよ。」 ミューズ:「(ふぅ〜、なぁ〜んか、これって仲のいい姉弟みたいだなぁ。全然友達とかライバルとかって感じがしないし。 二人は自覚してないだろうし。あたしとしては前途多難だなぁ。)」 二人の様子を見て、ミューズが内心そう思っているとは知らず、二人は本当に姉と弟のように喋っているのだった。 このとき3人は知らなかった。 自分たちをこっそりと眺めている二人組がいたことを。 ??:「見つけたわ、あれがボスの言っていたトレーナーね。」 ??:「そのようだな。あいつを倒し、捕まえてボスに渡すのが俺たちの仕事だ。」 ??:「もう、それくらい分かってるわよ、何で私があんたの指図をうけなくてはならないの?それにしても、あいつは私を楽しませてくれるのかな? クスクスクス…」 ??:「おい、本性が出てるぞ…。それより、もうすぐであいつらはトウカの森だ。そこで攻めれば勝てる。いや、俺たちなら確実に勝てる。 俺の辞書に負けと言う言葉が載った事はないからな。」 ??:「ええ、分かってるわ。うふふふふ…、ボスに言われたあの子以外にもオマケがいるようだけど、どうやってやろうかしらね。 ウフフフ、ウフフフフフ…」 ??:「だから本性が出過ぎだって…全く…だが、俺たちなら行けるぞ。」 そして二人は、そのまますっと姿を消した。 蓮華たちの前に現れる大きな森、トウカの森に、黒い影がそびえ立ち始めていた…。