ミューズ:「この分だったらさ、早めにムロ島に着くんじゃない?」 蓮華:「う〜ん、多分後数時間で着くと思うよ」 私たちはトロに、ユウキはボーマンダのボウスに乗って海を越えていた。 本来だったらハギ老人の船に乗れるはずなんだけど、カイナシティで忙しい仕事が出来たらしく、いなかったのだ。 ただ、ユウキは妙に緊張した面持ちになっている様子だった。 蓮華:「ユウキ、トウキさんってそんなに怖い人なの?」 ユウキ:「いや、いい人だよ たださ、怒ると怖い人だからさ…」 怒らせなきゃいいのにって思ったんだけど、それは無理な話だと思った。 何故なら、私も関係しているんだけど、昨日私がユウキと大喧嘩を起こしたときに、ポケモンたちにも迷惑をかけて、 かなり無残なバトルをやってしまったからだ。 しかも、このことをユウがトウキさんに喋ってしまっているらしく、ユウキはどんな風に怒られるのかと緊張しているわけだった。 ミューズ:「自業自得だよ」 蓮華:「かもね あ、あれじゃない?」 ミューズ:「アレだね、きっと」 そんな時にミューズが指し示したのは、海に浮かんだ大きな島だった。 街があり、海水浴場もあるようで、人もまばらにいるのが分かる。 ミューズ:「なんか、楽しそうだね」 蓮華:「そうだね でも、夏休みは短いし、今回の旅では海水浴は無理だけど…」 ミューズ:「でもさ、蓮華がジム戦をしてるときは、私はユウキにこの島の案内をしてもらうつもりだから」 私がちょっとガッカリしたような声を出すと、ミューズはさらりとこう、答えていた。 今回のジム戦はユウキが言うには相手は格闘タイプらしいのだ。 草タイプのミューズが出てもいい勝負が出来ると思ったんだけど、一応格闘タイプの天敵である飛行タイプやエスパータイプも 私の絆の仲間にはたくさんいるために、今回は彼らを使うことに決めたのだった。 ミューズ:「ねえ、ところでさ、あそこで手を振っている人、誰?」 蓮華:「誰だろう…」 肉体美輝く青年が、サーフボードを片手に、ハリテヤマとこっちに向かって手を振っている。 だが、数秒後、私たちはすぐに彼がトウキさんだと察した。 だって、ユウキの顔色が変わったんだもん。 第3章 11.ムロ島のジム戦 トウキ:「俺がやったバルキー、ようやくカポエラーに進化したようだな」 着くと早々に、ユウキとトウキさんはポケモンとの鍛錬を始めていた。 私とミューズはそれを眺めているんだけど、レディバのてんてんはそれを面白がって真似しているみたいだった。 トウキ:「攻撃力、防御力もそこそこにあるようだな 確かにツツジとユウが言ってたとおりだな」 ユウキ:「は、はい…」 トウキ:「だが、喧嘩の怒りを持ったままバトルを行って、ポケモンを無駄に傷つけたのはやるべきじゃないぞ それにあれから 数週間しか経っていないというのに、お前の姿勢、どことなく悪いぞ もう少し胸を張れ!」 ユウキ:「すいません!」 師匠と弟子っていう図に見えた。 でも、ユウキはトウキさんを慕っているみたいで、見ている私たちには徐々に仲のいい兄弟にも見えていた。 トウキ:「それで、こっちのお嬢さんがナナの言っていた挑戦者ってことか?」 蓮華:「始めまして、蓮華といいます」 トウキ:「なかなか元気がよさそうだな トロピウスもレディバもキレイハナも、十分に育っているのがよく分かるぞ それで、俺とジム戦をするんだろ?」 蓮華:「ええ」 トウキ:「ユウキから聞いていると思うが、俺は格闘タイプを使う だが、だからといって飛行タイプやエスパータイプに簡単に負けるほど 弱いわけじゃない だから、全力でぶつかってこい!」 蓮華:「はい!」 何だか頼れるお兄さん的存在かなって感じた。 哲兄も秀兄も神兄も頼れる兄貴だったりすることには変わりないんだけど、どっか違うんだよね…。 そういうわけで、私はトウキさんとムロジムに行く事にした。 ここでミューズやユウキとは一時的にお別れである。 ミューズとユウキは、これから『石の洞窟』っていう場所を探検してくるらしいから。 私のポケモンからも数匹(ルナとぴぴ)、それに付いて行くんだけどね。 蓮華がトウキに連れられてやってきた場所は、格闘道場というような木造でがっしりした造りの建物だった。 その周囲ではアサナンを隣に連れたバトルガールが罵声を叫びながら、数人のトレーナーを鍛錬させていた。 そして、中に入るとバトルフィールドが広がっていた。 石と砂で出来た簡易的なもののようだが、それでも相撲の土俵やプロレスリングのように少し高く作られている。 トウキ:「バトルフィールドはココだ フィールドは砂浜をイメージして作ってあるからバランス感覚を必要とする むやみに足元に体重をかけようならば、即効砂に足を沈めることになるからな」 蓮華:「はい…、でも、そんなこと、チャレンジャーの私に言っちゃっていいんですか?」 トウキ:「ああ、君はナナが強いって太鼓判を押したトレーナーだからな こんなことで倒れて欲しくないのさ」 ナナが強いことは各地のジムリーダーが全員よ〜く知っていることなので、そのナナがよこしたチャレンジャーにも一目置いている様子。 そのため、多少の状況を説明するべきだと思ったのだろう。 トウキ:「それじゃ、始めるか?」 蓮華:「ええ」 トウキ:「使用ポケモンは3体 チャレンジャーのみポケモンの交代は自由 使用ポケモン3体が戦闘不能になった時点で勝敗が決まる 審判は今回は無しの方向で行くからな」 蓮華:「はい!」 バトルフィールドのあるこの部屋の中には蓮華とトウキだけしかいなく、2人のそれとない緊張感が漂っていた。 そして、2人はモンスターボールに手をかけた。 トウキ:「まずはこいつからだ 行け、バルキー!」 トウキの出したポケモンは、エビワラー、サワムラー、カポエラーに条件とレベルを経て進化するポケモンのバルキーだった。 蓮華:「相手は格闘タイプだから勿論有利なのは飛行タイプ それに輪をかけてダメージを減らすためにもこの子! お願いね、リーフィー!」 対する蓮華が出したポケモンはバタフリーのリーフィーだった。 飛行タイプと虫タイプを併せ持ち、エスパーなどの多彩な技も使うことが可能なのだ。 トウキ:「バタフリーか だが、相手が誰であれ、本気を出していくぞ バルキー、影分身!」 蓮華:「リーフィー、空から毒の粉よ!」 バルキーが影分身によって回避率を上げ、同時に分身によってリーフィーをかく乱するが、上空にいるリーフィーの羽からは毒の粉が振りまかれた。 それにより、苦しい表情を見せて消えていく分身たち。 そして最後の一匹、本体が残った。 蓮華:「今よ、風起こしから吹き飛ばし!」 本体が残ってしまい、さらに毒を受けている状態のためにバルキーは無防備だった。 そのため、強風がバルキーを襲い、さらに強風がバルキーを地面から吹き飛ばす。 同時にフィールドの砂も飛び、バルキーは「砂かけ」を受けた時のように目をやられてしまったようだ。 トウキ:「バルキー! …やるな」 蓮華:「このフィールドを十分に利用する事もバトルを有利にさせる手ですから」 トウキ:「なるほどな だが、油断は禁物だぞ」 トウキは壁に強く激突したバルキーを見た。 激しく当ったように見え、壁の気配を身体で感じ、腕と足をバネのように曲げる事で衝撃を抑えていたため、バルキーはまだまだやれる様子だ。 ただ、毒の粉を浴びているために、長期戦には持ち込めそうにない。 しかし、トウキにはまだ手が残っていた。 トウキ:「バルキー、早々に勝負に出るぞ 空元気でマッハパンチだ!」 『空元気』とは状態異常の時だと相手に与えるダメージが上がる技で、その空元気の力をプラスさせたマッハパンチがリーフィーに向かっていく。 蓮華:「ヤバイ、リーフィー、飛んで攻撃を避けるのよ!」 トウキ:「甘いな バルキー、心の目だ!」 バルキーはマッハパンチを相手に当てる為に高速移動のような速さで壁や地面を土台にして動いていた。 同時に目を瞑り、精神を統一させて、相手の居場所と周囲の状態を掴んでいる。 そしてついに、バルキーがリーフィーの背後を取った。 トウキ:「今だ、バルキー、メガトンキックだ!」 バルキーはリーフィーの背中に向かって、強力な気を帯びたような足を振り下ろし、リーフィーを地面に叩き付けた。 蓮華:「リーフィー!」 砂煙が上がり、その場には砂に半分、体が埋まって気を失っているリーフィーと、膝をつき、肩を上下しているバルキーの姿があった。 トウキ:「どうやら、バタフリーは戦闘不能のようだな」 蓮華:「そのようですね でも、同様にバルキーもこれ以上のバトルは無理のようですよ」 トウキ:「そうだな まずは最初のポケモンは互いに引き分けだな」 引き分けたのだが、蓮華もトウキも残念がっている表情ではない。 逆に楽しんでいた。 だが、一匹目は相手の実力を知るための小手調べのようなもの。 本格的なバトルは2匹目からである。 トウキ:「俺の2番手はこいつだ 行ってこい、バシャーモ!」 トウキの2番手は炎タイプを併せ持つ格闘タイプのバシャーモだった。 攻撃力と特殊攻撃力が共に強く、格闘タイプの技だけでなく、炎タイプの技もかなりの威力のある技が多い。 さらに特性は体力が少なくなったときに発動する、炎タイプの力を高める「猛火」だった。 トウキ:「格闘タイプは虫タイプや草タイプにダメージをあまり入れられないと言うトレーナーが最近増えたからな こいつをしっかり育てて正解だったと思っている さっきみたいに虫タイプを出すと逆に火傷するぞ」 蓮華:「そうでしょうね …水タイプだと有利かもしれないけど、水・飛行タイプはコイッチだけだし…」 外の水のフィールドのような場所ならばギャラドスのコイッチでも有利な状況だろうが、この室内空間では体の大きいポケモンは不利だった。 出したとしても、容易に技を決められる状態になってしまうだろう。 蓮華はルナトーンのルナをミューズたちと一緒に行かせたことを少々後悔していた。 だが、後悔してばかりはいられない。 蓮華:「私の2番手はこの子、行くのよ、よま!」 蓮華が出したのはサマヨールの「よま」だった。 バシャーモは攻撃力と特殊攻撃力が高くて優れているのだが、サマヨールは防御力と特殊防御力が高くて優れていた。 そのため、人選的には間違えてないと思える。 さらによまはゴーストタイプであるため、ノーマルタイプ、格闘タイプの技は通用しない。 バシャーモは卵遺伝でも『見破る攻撃』は覚えないため、かなり有利なポケモンを蓮華は出していた。 トウキ:「ゴーストタイプか これは厄介だな」 蓮華:「バシャーモの出せる技が少々減りましたね」 トウキ:「あぁ、だが、簡単にバシャーモを倒されはしない 逆に攻撃の強さを教えてやるよ バシャーモ、電光石火でサマヨールに近づくんだ! そして炎のパンチを叩き込め!」 軽いジャブといったところだろうか。 バシャーモは電光石火でよまの目の前まで来て、炎のパンチをよまの体にぶつけてきた。 だが、よまはそれを両手で受け止める。 いや、よまの身体から離れた2つの手が、炎のパンチを受け止めていた。 蓮華:「よま、そのままシャドーパンチよ!」 身体から離れた2つの手がバシャーモを放し、そのままぶつかっていく。 だが、バシャーモは「オウム返し」によってそれらを相殺していた。 トウキ:「シャドーパンチにはシャドーパンチ ゴーストタイプにゴーストタイプの技はよく効くからな」 蓮華:「…この分だとシャドーパンチはこれ以上やっても同じように返されるわね だったら、よま、凍える風よ!」 よまの身体というか口が開き、そこから冷たい風が放出された。 トウキ:「バシャーモ、火炎放射だ!」 バシャーモは冷気を炎で消していくが、その直後、目の前に移動していたよまの真っ赤な目に睨まれてしまった。 すると、その時からバシャーモは身体が動けないような状態になっている。 蓮華:「よまの金縛りよ サマヨールやヨマワルの目に睨まれると誰であっても震え上がって金縛りにあってしまうの よま、今のうちにシャドーボールよ!」 よまの両手に黒い光が集中し、黒い球体が作られ、そして打ち出された。 更に続けてシャドーパンチが発射された。 トウキ:「連続攻撃か バシャーモ、金縛りを打ち破るんだ! そしてブレイズキックだ!」 バシャーモは両手首、両足首から炎を吹き出して金縛りを打ち払い、シャドーボールとシャドーパンチに激しい炎に包まれた足を 強く叩きつけていく。 トウキ:「そのままサマヨールに突進だ!」 シャドー攻撃2連続をブレイズキックで消してしまったバシャーモは、そのまま電光石火のスピードでよまに向かっていった。 そしてそのまま、身体が炎に包まれていく。 炎の突進といったところだろうか。 蓮華:「よま、ナイトヘッドで突進の威力を下げるのよ!」 よまは両手から黒い波動を放出し、炎の突進をするバシャーモに打ち出した。 徐々に突進のスピードも下がるのだが、結局、よまは突進を受け、炎に包まれていた。 だが、バシャーモはよまから離れない。 トウキ:「バシャーモ、サマヨールから離れろ!」 だがバシャーモは離れず、炎はよまが身体から噴出した凍える風で消化された。 そしてトウキは気がついた。 バシャーモは、よま(サマヨール)の身体から垂れ下がっているものによって締め付ける攻撃を受けていたのだ。 そしてそのまま凍える風を受け、身体の炎も消えてしまっていた。 トウキ:「締め付ける攻撃か…」 蓮華:「油断は禁物ですよ」 先ほどの1戦目で言われた言葉をさらっと返す蓮華。 そして蓮華は最後の勝負に出ていた。 蓮華:「よま、至近距離からの破壊光線よ!」 再びよまの口が開き、徐々に光が集まっていく。 だが、同時にバシャーモが赤い波動に包まれていた。 トウキ:「ようやく特性の発動か バシャーモ、最大パワーでこっちからもオーバーヒートだ!」 よまの口から破壊光線が、猛火を発動させたバシャーモからオーバーヒートが、両者の顔面に数センチ前から発射された。 そのためにエネルギー同士のぶつかり合いは普通以上のものとなり、強い爆発が起きる。 同時に、このバトルフィールドのある部屋はエネルギーによって崩壊していた。 トウキ:「ココまでとは予想外だったな」 蓮華:「でも、勝敗は…?」 爆発の威力をトウキはチャーレムのリフレクタで、蓮華はドラ(コドラ)の鉄壁で防いでいたが、よまとバシャーモがどうなったのかは よく分からない。 そして煙が晴れたとき、その場にはバシャーモが倒れていた。 よまはといえば、ギリギリの状態ではあるが立ち上がっていた。 トウキ:「突進の影響や至近距離からの凍える風及び締め付ける攻撃…、どうやら攻撃を多く受けたバシャーモが敗北の意図を辿った様だな」 蓮華:「この勝負は一応、私の勝ちですね」 トウキ:「ああ、だが、最後の一匹がまだ残っている」 蓮華:「それで全部が決まる…」 2人はポケモンをボールに戻すと、ひとまずその場からは離れた。 バトルフィールド場がムロジムの一角にあり、建物と隣接していなかったために他の建物には影響はさほど出ていないようだが、 この状態では戦えない。 そのため、場所を移すことにしたのだ。 トウキ:「さて、仕方がないし、ここでやるか」 蓮華:「えっ…」 トウキ:「一応俺がトレーニングしている場所だからな 俺のほうに有利かもしれないが、その難関を乗り越えていくのがトレーナーの腕にかかっている といえる 最後の一匹同士のバトル、勝敗がどうであれ、バッジは君に渡す事は既に決めた後はどれくらい、いい勝負が出来るかということだ 本気で来いよ」 蓮華:「は、はい!」 遠巻きに突然砂浜で始まったジム戦を眺める観光客や、ムロジムの門下生達。 だが、彼らのことを気にせずに、蓮華とトウキの最後のバトルが始まろうとしていた。 能力者たちがこの場にいれば、2人のオーラがとてつもない威力でぶつかり合っていたのが分かっただろう。 トウキ:「行け、ハリテヤマ!」 蓮華:「お願いね、ヘラクロ!」 ボールを投げたのは同時だった。 トウキの最後のポケモンは特性が根性の格闘タイプ、ハリテヤマ。 対する蓮華のポケモンも、虫タイプを兼ねているが格闘タイプで、「虫の知らせ」を特性に持つポケモン、ヘラクロスのヘラクロだった。 トウキ:「なかなかよさそうに育っているようだな」 蓮華:「私のヘラクロの強さは半端じゃありません」 トウキ:「そうだといいな 行くぞ!」 蓮華:「ええ!」 トウキと蓮華は互いに声をかけ、同時にポケモンに指示を出す。 先に動いたのは蓮華だった。 蓮華:「ヘラクロ、地震よ!」 ヘラクロが角を振り上げて地面に叩きつけようとする。 だが、それは阻まれた。 トウキ:「ハリテヤマ、猫騙しだ!」 猫騙しによってヘラクロは怯んでしまい、最初の一発目が封じられる。 その隙をトウキが見逃すはずがなかった。 トウキ:「ハリテヤマ、そのまま突っ張りだ!」 突っ張り攻撃が怯んだヘラクロの顔面を強く叩きつけていく。 ヘラクロは突っ張りで正気に戻ったが、必死で防戦するしか打つ手がないようだ。 蓮華:「ヘラクロ、突っ張りには連続攻撃、乱れ突きよ!!」 突っ張り攻撃が一段落する瞬間を狙って蓮華が叫ぶ。 だが、角を前に出そうとした直後、ハリテヤマに角をつかまれてしまった。 蓮華:「嘘っ…」 トウキ:「格闘タイプの技は何も突っ張りだけじゃないぜ ハリテヤマ、あて身投げだ!」 ヘラクロは角をつかまれ、そのままハリテヤマによって投げ飛ばされてしまった。 砂浜にたたきつけられるヘラクロ。 トウキ:「ハリテヤマ、そのままのしかかれ!」 ハリテヤマは大きくジャンプしてヘラクロにのしかかろうとしていた。 だが、これ以上やられるわけにも行かない。 それは蓮華もヘラクロも強く思っていた。 蓮華:「ヘラクロ、立ち上がって起死回生よ!」 今までダメージを受けた分を返すくらいの勢いで立ち上がったヘラクロはのしかかりを避ける。 そのためにハリテヤマは体重とのしかかりの威力によって砂浜に身体(足)がズボッと嵌ってしまった。 そこに起死回生の一撃が叩き付けられる。 ハリテヤマの表情がしかめっ面になっていた。 トウキ:「ハリテヤマ、砂から立ち上がるんだ!」 トウキが言うが、のしかかりの威力が強かったせいか、なかなか立ち上がれそうにないハリテヤマ。 そこを蓮華は突いた。 蓮華:「さっきのお返しよ! ヘラクロス、乱れ突きよ! そして角で突く攻撃!!」 先ほどの突っ張り攻撃を返す勢いで、ヘラクロの乱れ突きが開始された。 そして最後の一撃が角で突く攻撃となってハリテヤマを直撃する。 だが、最後の一撃が大きく空気を掠めた。 ハリテヤマの姿が突如砂の中に消えたのだ。 蓮華:「これは…穴を掘る攻撃ね ヘラクロ、上空に飛び上がるのよ!」 トウキ:「そうはさせない! ハリテヤマ、砂から飛び出してヘラクロスの足を掴め!」 上空に飛びあがる寸前、ヘラクロの足は見事にハリテヤマにつかまれた。 そしてそのまま引っ張られるが、ヘラクロも必死で引っ張り返していた。 だが、引っ張り合いがされているのはヘラクロの足。 ヘラクロの表情は徐々に厳しいものになり始めていた。 蓮華:「こうなったら、ヘラクロ、そのまま威張るのよ!」 ヘラクロは力を緩めて引っ張られるようにハリテヤマに顔を向け、そしてハリテヤマに向かって強く威張った。 すると、その直後、ハリテヤマは混乱を起こし、自分に対してのきつけ攻撃を行っている。 きつけは麻痺状態を打ち破る技であり、混乱を治すものではない。 そのため、逆にハリテヤマは自分に攻撃をしていた。 トウキの声も聞こえていないようだ。 蓮華:「チャンス! ヘラクロ、メガホーンよ!」 このチャンスを見逃すトレーナーはいないだろう。 蓮華も同じでメガホーンをハリテヤマに叩き付けた。 それによって、ハリテヤマはついに、その場に倒れたのだった。 トウキ:「ハリテヤマ、戦闘不能か 俺の負けだ」 蓮華:「ありがとうございました」 トウキ:「いや、俺の方こそかな 久々に楽しいバトルだった このナックルバッジは君に渡しておくよ」 蓮華はナックルバッジを手に入れた。 トウキ:「さてと、ユウキたちが帰ってくるまではジムで休んでいくといい 君の他のポケモンも鍛錬に参加したらいいよ」 蓮華:「そう…、ですね」 ユウキとミューズたちはまだ洞窟から戻ってきていないため、蓮華はその誘いに乗ることにした。 ただ、ムロジムでまずやらなきゃいけないのは、2人が破壊してしまったフィールド場の撤去作業の手伝いだったのだが…。 そしてこの時蓮華はユウキたちに再び厄介ごとが押し寄せていた事に、全く気づいていないのだった…。