アスナ:「あそこだよ、ほら、何かしてるだろ?」 流星の洞窟近くについて早々、アスナとの挨拶を簡単に済ませた蓮華とミューズは、アスナとユウキに案内されてネオアース団の動向を 伺っていた。何か怪しげな機械を運び込んだりつなげたり、操作したりしている様子が伺える。 そしてそれらを下っ端団員達に指示しているのは、蓮華とミューズには見覚えのある2人だった。 蓮華:「あれって確か、スペース団のお荷物の2人じゃ…」 ミューズ:「ヤマトと…コサンジだっけ?」 蓮華:「そうそう、コサンジ」 コサブロウの間違いであるが、2人はそう記憶していた。 蓮華:「中でも何かやってるみたいだし、中でやってる作業を妨害した方がいいかもしれなくない?」 ミューズ:「うん、中には誰がいるかも分からないし…」 アスナ:「だけど、それじゃ蓮華たちが危険じゃないのか?」 ユウキ:「そうだよ、中に厄介な敵がいたらどうするんだ?」 蓮華とミューズは乗り込もうと考えていたが、アスナとユウキがそれを制する。 だが、蓮華とミューズは乗り込む気満々だった。 蓮華:「多分、中にいる敵も私たちが戦ったことのある敵だと思うし、何とかなると思うの」 ユウキ:「けど、それでも危険だよ」 アスナ:「どうせだし、ユウキがついていってやりなよ」 ユウキ:「いいけどさ、アスナは一人でいいのか?」 ミューズ:「大丈夫だと思うよ 外にいるのは一番の下っ端だけだから」 こうして、蓮華、ミューズ、ユウキは洞窟の中に行き、アスナが外でネオアース団員をひきつけることになった。 アスナ:「相手が知っている奴だとしても気をつけるんだよ」 蓮華:「分かりました …終わったらジム戦ですからね」 アスナ:「あぁ、楽しみにしてるからな ユウキ、お前も頑張れよ」 ユウキ:「分かってるよ、アスナこそしっか…痛っ!」 アスナ:「お前、少しは年上を敬えよな…」 ミューズ:「(クスクスクス…、何か仲がいいのか悪いのか分かんない姉と弟みたい…)」 第3章 13.リフレイン〜記憶の目覚めは悲劇へと〜 アスナ:「コラァ! ネオアース団、ここで何をやってんだっ!」 海岸近くに停泊された小船に向かってアスナが叫ぶと、蓮華たちには飽きるほど聞き覚えのある音楽が鳴り始めていた。 そして小船からは、機械をその場において、黄色い髪の女性と緑の髪の男性が飛び出してきた。 女の人:「一体何者なの!と聞かれたら...」 男の人:「答えてあげないの普通だが...」 二人:「まあ特別に答えてやろう!」 女の人:「地球の破壊を防ぐため...」 男の人:「地球の平和を守るため...」 女の人:「愛と誠実の悪を貫く...」 男の人:「キュートでお茶目な敵役...」 女の人:「ヤマト!」 男の人:「コサブロウ!」 ヤマト:「宇宙を駆ける元スペース団、今はスペース強盗コンビの二人には...」 コサブロウ:「ショッキングピンク、桃色の明日が待ってるぜ!」 ヤマト「なーんてな!」 2人の登場と口上に、アスナは呆れていた。 アスナ:「お前ら、そんなことやってて恥ずかしくないのか?」 ヤマト:「うるさいわね! あんた、確かフエンジムのジムリーダーだね」 アスナ:「そうだよ、私はアスナ 隕石で火山を噴火させようとしたアクア団やマグマ団みたいな行動を止めに来たのさ」 コサブロウ:「そうか だが、そういわれてやめる我々ではない ジムリーダーだろうと、ここで倒すまでだ!」 ヤマト:「行くのよ、ヤミラミ!」 コサブロウ:「お前もだ! グラエナ!」 ヤマトとコサンジ、いや、コサブロウはヤミラミとグラエナを放ってきた。 アスナ:「逆に倒してやるよ! コータス、マグカルゴ、行くんだ!」 対するアスナが放ったのは炎タイプのコータスと、炎・岩タイプのマグカルゴ。 だが、これは作戦だった。 コータスとマグカルゴは、出ると同時に煙幕とスモッグを放出していた。 煙幕とスモッグはみるみるうちに流星の洞窟の入り口を含むここ一帯に広がっていく。 ヤマト:「ゴホッ、ゴホッ…!」 コサブロウ:「一体、何をするつもりだ! 出て来い、ゴルバット、この煙を吹き飛ばしてやれ!」 しかし、煙幕とスモッグが広がっている隙に、蓮華、ミューズ、ユウキは草むらから飛び出し、流星の洞窟の中に入っていった。 それと同時に、煙幕とスモッグはゴルバットの吹き飛ばしによってかき消されていた。 ヤマト:「何をしようとしていたのか分からないけど、これで目くらましはできなくなったわよ」 コサブロウ:「目くらましなど、所詮はチャチな作戦にしかすぎん!」 そして、3匹のポケモンたちがアスナに向かってきた。 アスナ:「3対2は流石に不利だね キュウコン、お前も参戦するんだ!」 キュウコンも飛び出し、アスナの方もバトルを開始する。 コサブロウ:「ゴルバット、超音波で態勢を崩してやれ! グラエナはキュウコンにシャドーボールだ!」 ヤマト:「ヤミラミ、コータスに乱れ引っ掻きだよ!」 アスナ:「させるか! キュウコン、神秘の守りだよ! コータスは鉄壁から突進、マグカルゴは火炎放射だ!」 ゴルバットの超音波がキュウコンの出した神秘の守りによって防がれ、ヤミラミの乱れ引っかきもコータスの甲羅に阻まれる。 マグカルゴはシャドーボールを火炎放射で押し返され、ヤミラミも突進によって弾かれた。 ヤマト:「くぅ〜…、ヤミラミ、ナイトヘッド!」 コサブロウ:「ゴルバットはエアカッター、グラエナはもう一度シャドーボールだ!」 アスナ:「威勢はいいけどまだ甘いよ! キュウコン、怪しい光を照らせ!」 攻撃しようとするポケモンたちは怪しい光を受けて全く別の方向に攻撃を放っていた。 その方向には彼らが乗っていたと思われる船や、取り付けられていた機械がいくつかあり、攻撃によって様子がおかしくなり始めていた。 ヤマト:「ちょ、ちょっとヤミラミ、やめなさい!」 コサブロウ:「グラエナ、ゴルバット、しっかりしろ!」 ヤマトたちは徐々にポケモンと機械に慌て始めていた。 そして他の団員達も集まり始め、大慌ての状態だ。 アスナに対しても向かってくるが、アスナ一人でも対処しきれるほどだったりする。 アスナ:「確かに蓮華たちが言ったとおりだな このまま私一人で奴らをひきつけてやるか」 アスナはさらにマグマッグも出し、ネオアース団を更に翻弄し始めていた。 蓮華:「ここが洞窟の中…」 ミューズ:「実際は神秘的なのかもしれないけど…ネオアース団の仕業ね」 あちこちが砕けた岩壁、削り取られてしまっている鍾乳石、折られたり砕かれたりひどい状況である。 ズバットやイシツブテがこそこそと動いている様子だが、おびえている表情が感じ取れる。 川や滝も機械から流れる妙な液体で汚れているようで、神秘的な洞窟は無残な形で3人を出迎えていた。 ユウキ:「前に来た時はこんなに酷くなんかなかった ネオアース団の奴ら…許さねえ…」 ユウキも怒りを隠しきれない様子だ。 多分、アスナが中の様子を知ったら激怒する事間違いなしだろう。 そんな3人の目の前に、突然2人の男性が姿を現した。 ケーシィを連れているようで、テレポートで出てきたようだ。 2人の男性は微妙に顔立ちが似ているために双子のようで、片方は白髪に銀メッシュが入り、もう片方は緑髪に青メッシュが 入っているようだ。 ??:「どうやらここを嗅ぎ付けられたらしいな」 ??:「しかも懐かしい2人が一緒のようだ」 懐かしい2人とは確実に蓮華とミューズのことだろう。 となると男2人は蓮華たちが一度戦った相手のはず。 だが、蓮華とミューズにはなかなか相手の正体が分からなかった。 ミューズ:「思い出した! あんたたち、ベイルとバイツね!」 ベイル:「いかにも我ら操り兄弟、ここを任されている」 バイツ:「お前達が来たからとはいえ、ここで妨害されてはならないからな」 そう言ってベイルとバイツは襲い掛かってきた。 ベイルは虫・鋼タイプのハッサムと氷・飛行タイプのデリバードを、バイツは悪・飛行タイプのヤミカラスと悪・炎タイプのヘルガーを 出している。 蓮華:「ユウキ、ここはやるしかないね」 ユウキ:「ああ、俺があのベイルって奴を相手にするよ メウロ、ソルロン、出るんだ!」 蓮華:「ミューズ、行くよ! それにソルルも!」 蓮華はミューズに続けてアブソルのソルルを出し、ユウキはブースターのメウロとソルロックのソルロンを出した。 そして走り出そうとしたのだが、その直後、天井が続けざまに爆発を起こし、天井が崩れ落ちてきた。 蓮華:「ミューズ、ソルル、ユウキ!」 蓮華が気づいたときには、洞窟は崩れた天井の壁によって2つに分けられてしまっていた 同時に入り口も崩れてしまっている。 蓮華だけ、バイツやベイルとも、ユウキたちとも離されてしまっていた。 蓮華:「どういうこと…? 明らかに今のは故意…」 ??:「当たり前だ 今洞窟を崩したのは私だからな」 蓮華:「何者!」 蓮華が手からソーラー弾を声のした方に向けると、攻撃は何かが放ったスピードスターで相殺されていた。 そして姿を現したのは妖艶な女性だった。 蓮華:「あなた…ボムね」 ボム:「覚えてくれていたとは嬉しい事だな」 妖艶な女性は蓮華が一度戦ったことのある相手、爆弾ポケモンを使うボムだった。 ナナがナナシマで戦ったこともあるが、自爆と大爆発が使えるポケモンは全て持っているために厄介な相手である。 蓮華:「洞窟の壁を壊して私たちを別々にするなんて、どういうつもり?」 ボム:「簡単なことだ ネオアース団の目的はお前達を捕まえる事だったからな」 蓮華:「……えっ?」 ボム:「その様子だと、誰からも聞かされていないようだな どうやらずっとお前に隠していたようだ」 蓮華:「どういう意味よ!」 蓮華はボムの言っている言葉がよく理解できなかった。 ボム:「お前に答える気はない 今すぐにお前を捕まえ、私たちの計画に生かさせてもらうぞ」 蓮華:「誰がされるもんですか!」 ボム:「それが楽に言えたらいいな メタグロス、ゴローニャ、マルマイン、マタドガス、そしてハガネールにゲンガー!」 ボムが叫ぶと同時に、6匹のポケモンが姿を現した。 蓮華:「…マジ?」 ボム:「マジよ どう動くのかしら?」 蓮華:「こっちもやってやるわよ!」 蓮華も一気にボールを放った。 サニーゴのサゴッピ、フシギソウのダネッチ、カイリュウのリュウ、カビゴンのゴン、ギャラドスのコイッチ、そしてエーフィのフィルだ。 蓮華:「総力戦とまでは行かないけど、やるだけやってやるんだから!」 6対6のポケモンの戦いが今始まった。 ボム:「メタグロスとゲンガーはサイコキネシス! ゴローニャとハガネールは岩なだれ! マタドガスはヘドロ攻撃! マルマインは雷だ!」 蓮華:「リュウ、ゴン、コイッチ、破壊光線よ! ダネッチは葉っぱカッター、サゴッピは水鉄砲、フィルはシャドーボールよ!」 ゴローニャとハガネールの起こした岩なだれがメタグロスとゲンガーの放つサイコキネシスによってサイコパワーを纏い、 ヘドロ攻撃や雷と共に迫ってくる。 それに対して3匹の破壊光線が攻撃を迎え撃ち、葉っぱカッター、水鉄砲、シャドーボールの3つの攻撃がそれに続く。 サイコパワーを纏う岩が破壊光線によって相殺され、ヘドロ攻撃と雷は水鉄砲とシャドーボールに相殺される。 そして葉っぱカッターがそのままゴローニャをまず撃破しようとした。 しかし、倒れる直前にゴローニャが、続けてマタドガスが大爆発を起こし、爆発の力は蓮華たちに襲い掛かっていた…。 ミューズ:「蓮華と離れ離れなんて…」 ユウキ:「これは…罠なのか…?」 爆発の影響か、ソルロンがやられてしまい、ソルルも足に怪我を負っていた。 ミューズとメウロがベイルとバイツを牽制しているものの、相手は全く負傷もしていないのだ。 この爆発が予想していたものだとしたら、確実に罠だとしか考えられない。 ベイル:「ふっ、ようやく罠と分かったようだな」 バイツ:「だが、罠は動き始めたばかりだ この罠は、お前達が倒れるまで動くのだからな」 そしてベイルたちは襲い掛かってきた。 ユウキ:「メウロ、火炎放射だ!」 ミューズ:「行くわよ、ソーラービーム!」 メウロとミューズの攻撃がベイルのデリバードとバイツのヤミカラスを打ち落とすのだが、ベイルとバイツはそのまま2人をすり抜け、 ユウキに向かってきていた。 ユウキ:「なっ…!」 ベイル:「どうやら、自分がどういうものなのか、まだ分かっていないようだな」 バイツ:「仕方ないだろうな、記憶を失っているのだから」 ユウキには何が起きたのか、全く分からなかった。 同様にミューズやメウロたちもその様子に唖然としていた。 ユウキはベイルとバイツの両手によって胸倉を掴まれていた。 ソルロンもソルルも近くにいるものの、ハッサムとヘルガーによってユウキを助ける事は出来ずにいた。 ユウキ:「ど、どういう意味なんだ…」 ベイル:「ふっ、今に分かるさ」 バイツ:「俺たちが無理やりお前の記憶を蘇らせてやるからさ」 ミューズ:「そんなこと…!!」 ベイル:「させないってか?」 バイツ:「お前がここで俺たちを妨害したら、この壁の向こうにいるお前の大事な奴は死ぬ事になるぞ」 ミューズ:「何ですって…!」 同時に壁の向こうからは、何かが爆発する音と、蓮華やポケモンたちの悲鳴が聞こえていた。 ミューズ:「蓮華…」 蓮華の悲鳴には流石のミューズやソルルも動揺していた。 ベイル:「さて、始めるとしようか」 バイツ:「ああ、記憶の再生をな」 ベイルとバイツは何かの機械をユウキにかぶせ、スイッチを入れた。 すると、機械からは電磁波のようなものが放出され、ユウキの表情は苦痛なものに変わっていた。 ミューズ:「これ以上はもう嫌!」 メウロ:「ブスタ(ユウキを助けるよ)!」 ミューズとメウロは流石に飛び出し、ヘルガーとハッサムを払いのける。 だが、ベイルとバイツはソルルとソルロンを人質にして立ちはだかっていた。 ミューズ:「あんた達の目的は一体何なのよ! こんなことをして、何をしようとしてるわけ!?」 ベイル:「どうやら、本当に誰からも教えられていないようだな」 バイツ:「全ての世界の征服だよ お前達のいる世界にいる風使いの一族と、我々ネオアース団の手によって、この世界もお前達の世界も 征服してやるのさ」 ミューズ:「そ、そんな…」 ベイル:「お前たちは知らされていなかったようだが、その鍵を握るのはコイツとこの壁の向こうにいるお前の主人なのさ」 ミューズ:「蓮華と、ユウキが…?」 バイツ:「そうだ こいつらの力を使えば、世界は始まりと同じものに生まれ変わる」 ベイルとバイツの言葉から少しずつ何かを理解し始めるミューズだが、分からない事は多かった。 唯一察する事が出来たのは、自分たち以外の蓮華の仲間達が何か知っているはずだと言うことと、蓮華たちが前に話していた 風使いという輩が何か怪しげなことをしているということだった。 ミューズ:「で、でも、ユウキの力って…、ユウキは普通の人間じゃ…」 ベイル:「いや、この少年は普通の人間ではないのさ」 バイツ:「だから使えるのさ そろそろだろうな」 バイツの言葉と共に、ユウキの頭に取り付けられた機械が作動しなくなり、同時に、近くを流れる川や滝が青く光り始めていた。 ミューズ:「これ…あの時と同じ…、…それじゃ、まさか…」 蓮華:「みんな…!!」 ボム:「ふっ、大爆発の威力には流石のお前の中までも耐え切れなかったようだな」 ボムのポケモンはまだ4匹共に体力満タンで戦える状態なのとは逆に、蓮華が出していた6匹は全員2体の大爆発によって 倒されてしまっていた。 蓮華:「くっ…」 ボム:「さて、次はどうするつもりだ?」 ニヤッと笑うボム。 だが、蓮華は既にポケモンを放っていた。 蓮華:「こうするのよ!みんな、出てきて一斉攻撃よ!」 ボム:「何っ…!」 ボムたちがあちこち見回しているが、蓮華のポケモンたちが出てきたのは背後の地面からだった。 蓮華:「きっぴー、ドラ、火炎放射とアイアンテールよ! ディグは穴を掘る攻撃、なっくんは噛み砕く攻撃よ!」 ハガネールにロコンのきっぴーによる火炎放射が、ゲンガーにナックラーのなっくんの噛み砕く攻撃が、マルマインにダグトリオのディグの 穴を掘る攻撃が、メタグロスにコドラのドラのアイアンテールが放たれた。 ドラの放った攻撃は効果抜群であったが、その直後、再びボムのポケモンたちが、倒れる前に大爆発を起こしたのだ。 蓮華:「みんな…!!」 ボム:「残念だな 私は今までの敗北を期に、ポケモンたちには倒れる前に大爆発を使うよう仕付けておいたのさ さて、そろそろ本題に入ろうか」 蓮華:「本題?」 ボム:「ああ、一つ言っておくが、私にはまだお前と同様にポケモンを何体も持っている だからお前がどれだけポケモンを出したとしても、 すべて自爆と大爆発によって倒してやるからな」 この一言から、流石の蓮華も言葉が続かない。 自爆と大爆発は湿り気という特性があれば防げるのだが、蓮華のポケモンに湿り気の特性を持つポケモンはいないのだ。 ボム:「お前は知らないようだが、今から世界は生まれたばかりのものになるのだ そのためにお前が必要というわけさ」 蓮華:「私が…?」 ボム:「あぁ、お前の力と、もう一つ、お前の肉親の力をな」 蓮華:「肉親って…」 ボム:「壁の向こうにいる奴さ」 蓮華は目を見開いて驚いた。 壁の向こうにいる人間は一人だけ…。 ユウキ以外に存在しない。 蓮華:「ユウキが、弟…?」 ボム:「今に分かる」 その直後、洞窟が揺れ始めていた。 洞窟を分けていた壁も崩れ、中にいるすべてのものがユウキに目を向けていた。 蓮華:「ユウキ…」 ミューズ:「蓮華、ユウキが…」 蓮華もミューズも、メウロたちも、ユウキの状況に驚いていた。 ユウキからは青い光が放出し続け、そして濁っていたはずの川や滝も光り輝いているのだ。 蓮華:「これは水の力…、まさか、ユウキが水の能力者だったなんて…」 蓮華は驚いていたが、逆にミューズは納得していた。 蓮華とユウキが古い発電所のそこにある地底湖に落ちたとき、いつの間にか蓮華とユウキは助け出されていた。 助けたのはそこに住むジーランスたちでも、ミューズたちでもない。ユウキが無意識に力を使ったからだったのだ。 それに、石の洞窟で起きた代わった現象の謎も。 だが、それを眺めていられたのは一瞬の事だった。 突如ユウキが、あちこちに力を放ち始めたのだ。 それも、敵味方関係なしに。 蓮華:「ユ、ユウキ!」 ミューズ:「何、どうなってんの?」 ボム:「くっ…、予定外だ」 ベイル:「記憶を取り戻して混乱しやがったな」 バイツ:「いや、暴走というべきだな」 手近なボールにソルロンをいれ、蓮華はソルルを戻してミューズ、メウロと共にその攻撃から避け始めていた。 だが、暴走しているユウキを止めない限り、攻撃が止む事はない。 蓮華:「どうしよう…」 その時、ボムが何かをユウキに放つのが見えた。 ミューズ:「あれは…メノクラゲ?」 ユウキにメノクラゲが絡みつくと、電磁波を放って無理やり押さえ込み始めた。 蓮華:「ボム、何をするのよ!」 ボム:「予想外の出来事になったが、コイツが力を目覚めさせたのは計画通りのことだ 後はこいつを捕獲して使うのみ どうしようとお前達には関係ないね」 蓮華:「関係あるわよ、私の弟だもん!」 ミューズ:「嘘っ!」 蓮華:「だって、何か思い出せたんだもん」 今までどうして思い出さなかったのかは分からない。 だが、この状況になって、ユウキのことを弟だと知らされて、蓮華の脳裏で記憶が徐々に蘇ってきたのだ。 ミューズ:「そうだったんだ…」 蓮華:「うん、だからユウキを守…」 蓮華は強く宣言しかけた。 だが、言葉は続かなかった。 ユウキが放った攻撃が、蓮華に命中したのだ。 ユウキ:「蓮華…?」 その拍子に、ユウキは正気に戻っていた。 そして、自分が放ったものによって蓮華が倒れた事に気づいていた。 ユウキ:「俺が…蓮華を…?」 ボム:「そうだよ それも、お前の血のつながった姉を、お前が倒したんだよ」 ユウキ:「…蓮華が?」 ボム:「ああ、あの女はお前の姉だ お前は姉を自分の手で倒したのさ」 ユウキ:「そ、そんな…」 ユウキは自分のしたことと、ボムから知らされた言葉によって衝撃を受けていた。 蓮華は草の能力者のため、水の力を多大な力で受けたとしても死ぬ事はない。 数分気を失うほどだ。 だが、自分が能力者だと知ったばかりのユウキがそれを知るはずもなく、自分が蓮華を殺してしまったと思い込んでいた。 ユウキ:「お、俺が…」 ユウキは既に何も見えていなく、呆然とした状態で立ちすくんでいた。 ミューズ:「ボム…あんたって奴は…」 ミューズは怒りを隠しきれないが、ボムはしたり顔で更に何かのスイッチを押した。 その直後、洞窟の至る所で爆発が起き始めていた。 ミューズ:「な、何よ、これは…」 気づいてみればバイツとベイルの姿はない。 ボム:「最後だから教えてやるよ この洞窟の至る所に仕掛けた爆破装置が作動したのさ この洞窟はもうすぐ消滅する」 ミューズ:「嘘…、蓮華、しっかりしてよ!」 ミューズが蓮華を必死で起こすと、蓮華は目を覚ました。 だが、その直後に蓮華の目に飛び込んできたのは、ユウキの身体が爆発と共に吹き飛ぶ姿だった。 蓮華:「ユウキ!」 蓮華は駆け寄ろうとした。 だが、再び蓮華の目の前を崩れてきた天井の岩が阻み、さらに蓮華やミューズたちも爆発に巻き込まれていたのだった…。 アスナ:「ま、マジかよ…」 ネオアース団を全員ふっ飛ばした直後、アスナの目の前で爆発と共に流星の洞窟が崩れ落ちたのだ。 アスナ:「蓮華!ユウキ!」 慌てて駆け寄るアスナだが、呼べも言葉は返ってこない。 だが、アスナは諦めず、ポケモンたちと必死になって岩を避け、蓮華たちを探し続けていた。 アスナ:「これは…誰かの腕だ!」 そしてようやく、アスナが見つけたのは、見覚えのない2人の男女と、壊れた無数のモンスターボール、そして、たくさんのポケモンたちだった…。 アスナ:「蓮華とユウキは…どこなんだ…?」 この後探し続けたが、アスナや駆けつけた人々でさえも、2人を見つけることが出来ないのだった…。