様々な機械が並べられ、水の入ったタンクらしきものやチューブのようなものも多く見られる、どこかの実験室のような場所。 そこに蓮華とユウキは寝かされていた。 ベッドのような寝台らしきものの上で、口にはボンベのようなものがつき、麻酔薬を流し込まれ続けていた。 2人は目覚めそうなのに、ずっと薬によって眠らされ、苦しい夢を見続けていた。 蓮華はユウキを助けられなかった夢を、ユウキは蓮華を殺してしまった(と思い込んでいる)夢を。 永遠に続く悪夢を、見続けていた。 そんな2人の額に、ベイルとバイツが手をかざすと、蓮華とユウキの表情はさらにひきつり、苦しげなものに変わっていった。 ??:「どうやら、作戦は成功したようだな」 その様子をボムと謎の人物が見ていた。 様子からして、どうやらネオアース団のボスらしい。 ナナたちはアクア団とマグマ団のボスだと考えていたが、姿からマツブサでもアオギリでもなかった。 ボム:「はい、このように大地と海を司る二人の能力者を捕らえることが出来ました 後はグラードンとカイオーガを捕獲するのみです」 ??:「そうだ だが、それも既に成功している 今、アクア部隊とマグマ部隊がそれぞれ、グラードンとカイオーガをダークボールに よって捕獲したと連絡が入った 後はバイツとベイルの洗脳催眠が完了するのを待つのみだな」 ボム:「はい …しかし、この世界に入り込んでいる能力者たちはどうするおつもりで? それに、まだレジ3体の捕獲も終わっていませんし…」 ??:「簡単なことだ グラードンとカイオーガの準備が済む前に、まずはホウエンの街を襲い、能力者と我々には向かうトレーナー及び ジムリーダーを片付けるまでだ ボム、今すぐに作戦を決行しろ! そして同時にホエルオーを持つトレーナーがいれば、ネオアース団に 引き込んでしまうがいい」 ボム:「はっ!」 ボムはネオアース団のボスに言われるまま、部屋を出て行った。 その直後、ネオアース団員全員に伝えられた。 『ホウエンの町々を今から一斉に襲撃し、歯向かいそうなトレーナーを一掃するように』と。 第3章 14.襲撃〜伝説が幕を開ける〜 その頃、蓮華とユウキが囚われた事を知らないミシロタウンのオダマキ博士の研究所は、珍しく多くの客で賑わっていた。 いや、賑わっていたという言い方は違うだろう。 真剣な討論が行われていた。 この日、研究所に訪れていたのはホウエン四天王を取り仕切っていたダイゴとポケモンGメンのワタル、そしてナナに、 ホウエン四天王のゲンジ、現実世界から飛ばされていた哲也、玲奈、志穂、律子という面々だったからだ。 ナナ:「…というわけだから、そろそろホウエンの人たちにネオアース団がやろうとしていることを知らせて、避難を始めるべきだと思うの ホウエン以外の地方でも避難の受け入れを始めてくれるらしいし、ポケモン協会も動き出し始めてるから」 ナナの一通りの説明はさすがいろいろな所に顔が通っているポケモンマスターだからなのか、誰一人、水を差すことのない筋が通った内容で、 説明が終わると一人一人から驚きなどのため息が漏れていた。 ゲンジ:「それで、ネオアース団の動きはどうなっている」 ワタル:「内部に潜入した者たちからの通信は今のところ入っていない だが、カイオーガとグラードンの捕獲に向かったとの報告は 入っている 一応妨害の策も打ってはいるが、彼らの戦力の状況についての調査が途中だから妨害は成功しないだろう」 ナナ:「つまり、グラードンとカイオーガは捕獲される可能性が高いわけね?」 ワタル:「ああ …だが、ゲンジさんたちの方で手は打ったと聞きましたが…」 ゲンジ:「うむ、それについてはダイゴが指揮をしているが…」 全員の視線はダイゴに向くと、先ほどまでポケギアで誰かと連絡を取っていたダイゴが話し始めた。 ダイゴ:「ナナに頼まれてトレーナーの育成にカゲツとプリムを送った代わりに、フヨウに奪われた紅色と藍色の珠の奪還を頼んでおいた ちょうど今、紅色と藍色の珠を発見し、奪還を試みようとしているそうだ」 正確にはフヨウに頼まれた幽霊の瑞希と、神楽の別人格の纏が、であるが。 それでも成功しかけているのはいいことだろう。 律子:「それじゃ、もう安心していいわけなの?」 この言葉に律子は一つ肩の荷が下りたと、ホッと一息ついていた。 律子はポケモントレーナーの一人ではあるが、ナナと同じで協会の人間でもある。 ポケモン世界で起きようとしていることを防ぐ責任があるのだ。 ナナ:「そうね、あの2つの珠を使って、2人の人間を元にグラードンとカイオーガを作るって言う図式をつぶす事が出来るんだから、 安心していいと思うかな でも、グラードンとカイオーガを眠らせなきゃいけないから、一応避難活動の準備は進めておきましょうね」 そして、ナナが軽く声をかけたときだった。 研究所のテレビ電話が、けたたましい音を立てて鳴り始めたのは。 アスナ:「ナナ、詳しいことを教えろ! ナギさんやツツジには言っていて、どうして私やトウキには何も言わなかったんだよ!」 電話をかけたのはアスナだった。 ひどく泥だらけの姿だが、アスナの問い詰めるような表情に、ナナたちは何かが起きた事を察していた。 ナナ:「何があったの?」 アスナ:「フエンの近くの流星の洞窟にネオアース団の企みがあってさ、それを妨害してやっつけようって向かったわけなんだけど、 逆に洞窟が崩壊したんだ」 ダイゴ:「流星の洞窟が崩壊!?」 ダイゴはよく流星の洞窟でも発掘作業を行うため、顔面蒼白で驚いていて、言葉が続かないようだ。 アスナ:「あ、ダイゴさんたちもいたんだ それでさ、さっきツツジに連絡した時に聞いたんだ ユウキを巻き込んじゃいけなかったのか?」 ナナはこの一言で何が起きたのかを最初に察した。 ナナ:「もしかして、ユウキ君と一緒にいた女の子、私の友達に何か遭ったの?」 アスナ:「…その様子じゃ、やっぱり巻き込んじゃいけなかったのか ユウキと…、蓮華だっけ? あの2人をネオアース団関係のことには 巻き込むなって、私とトウキにはややこしくなるからって伝えなかっただろ?」 ナナ:「だって、2人に話したら絶対喋りそうだったから…」 アスナ:「そのせいで厄介な事になったんだよ!」 この2人の会話で、律子たち4人も徐々に『蓮華に何かが起きた』ことを察する事が出来た。 そして同時に不安が広がる。 律子:「アスナの怒りは後で全部受け止めるから、ひとまず何が起きたのか、話してくれない? その様子だと、ツツジから大体のことは 聞いたんでしょ?」 アスナ:「あ、ああ…、2人が消えた」 ナナ:「どういうこと!?」 アスナの簡単な一言に、ナナたちは衝撃の展開を見たときと同じような表情になった。 アスナ:「それが…崩壊した洞窟の中にいたんだよ、ユウキと蓮華」 ナナ:「探したの?」 アスナ:「騒ぎを聞きつけたトレーナーやツツジたちと一緒に探したよ でも、見つからなかったんだ」 その時、アスナの背後を何かが通った。 律子:「ちょっ、ちょっとアスナ、後ろにいる人は?」 それを見て反応したのは律子だった。 アスナ:「えっ…、あぁ、ユウキと蓮華は見つからなかったけど、2人のポケモンと、この2人は見つかって…」 アスナが画面を操作すると、ベッドに横たわっている2人の男女の姿があり、それと共に新しいボールの中に入れられて、回復装置に入っている 2人のポケモンたちの姿もあった。 回復装置の様子から、ダメージが大きいことを悟るナナたちだが、律子だけは男の方に目を向けていた。 そして、 アスナ:「今さ、ジュンサーさんたちが、この2人に事情聴衆をしようとしてて…」 律子:「どうして?」 アスナ:「だって、この2人がネオアース団…」 律子:「それだけは誰が否定しても絶対にない!」 アスナの言葉をもう反論するかのように否定すると、 律子:「ナナ、この2人と2人のポケモンたち、ここに連れてきて」 律子はそう言いきって電話を切ってしまうのだった。 ナナ:「…律子が言うなら信じるよ でも、2人の正体、話してくれるよね?」 周囲の視線は律子を疑っているようにも見えたのだが、ナナは妙に強気な律子に何かを察したのか、ケーシィでテレポートをすると、 数分後に2人の男女をカイリキーに運ばせた状態で戻ってきた。 数時間後、ポケモンたちを回復装置にかけると、律子は話し始めた。 すでに蓮華が姿を消した事で伝説どおりのことが起きるのではと、事情は後で話すことにしてワタルやゲンジ、ダイゴはそれぞれやるべきことを 行いに向かっていてこの場にはなく、ナナ、志穂、哲也、玲奈の4人が残っている。 律子:「この2人、女性の方は多分なんだけどね、ミューズとソルルだよ」 志穂:「やっぱり」 玲奈:「え、志穂ちゃん気づいてたの?」 志穂:「だって一度、ソルルと律子がうちの神社の夏祭りでデートしてたもの」 玲奈:「嘘っ、それじゃもしかして、律子の好きな人って…」 ここで話がずれかけた時だった。 ミューズ:「ん、ここは…?」 ナナ:「オダマキ博士の研究所よ」 ミューズはナナの言葉でハッと飛び起き、同時に自分の状況に気づいた。 ミューズ:「…また、この姿だ」 律子:「また?」 ミューズ:「セキエイのパーティと、種に囚われた涼治君を助けた時と、ムロ島…で、これで4回目 …って、そんなことは関係ないよ どうして私たちに何も教えてくれなかったのよ!」 数秒唖然としていたミューズだったが、すぐにアスナのようにナナに食って掛かっていた。 ナナ:「こっちでも色々あって…、蓮華ちゃんを巻き込まないように動こうとしてたのよ」 哲也:「風使い一族の狙いは蓮華の抹殺だからな」 玲奈:「蓮華ちゃんが抱え込まないためにも、私たちだけで何とかしようってことになってたの」 ミューズ:「けど…、もう無駄だよ 蓮華は洞窟が崩壊した直後にボムたちに連れてかれちゃったもん ユウキも一緒に」 ミューズの言葉はアスナから聞かされたときから聞いていたことを詳しく言った内容だったため、驚きはなかったものの、哲也たちへの ショックは大きかった。 ソルル:「俺たちがもうちょっとしっかりしていれば、蓮華を助ける事も出来たはずなんだが…」 いつの間にかソルルも目覚めていたようで、律子の肩に捕まって起き上がっている。 ポケモンの姿の時に痛めた足が完治していないようだ。 ソルル:「これからとんでもないことが起きるぞ その様子では何が起きるか予想できているようだが、予想以上の大災害が始まる 俺が今までに予知したことがないほどの強力な奴だ」 ナナ:「そうよ けど…グラードンの中に融合されるといわれている、紅色の珠の核にされちゃうのが蓮華だとしても、もう一人は誰なの? 純粋な水の能力者だけど、海斗君や来美ちゃんではないのよ」 ミューズ:「融合?」 ナナ:「ええ」 ナナは話し始めた。 哲也たちにも先ほどした、伝説の詳しい内容についてを。 ナナ:「伝説のようにもうすぐ、新たなる闇の力でグラードンとカイオーガが目覚めて、ホウエン全域を巻き込んだ大災害が起きるわ でも、本来は紅色と藍色の珠があっても、グラードンとカイオーガの起こす災害はそこまでひどくならない 一度、アクア団とマグマ団が あの2体を起こしたときも、そこまでひどい事件が起きるほどでもなかったわだけど、今回は違うの みんなに話した伝説を 詳しく訳した中に、こういう一節があったのよ」 『新たなる闇の力、大地と海の化身を核とし、闇の力纏いし紅と藍の珠、生まれる その力、神々の力に反し、世界を滅ぼす』 ナナ:「ネオアース団が何らかの方法で人間と紅色の珠、藍色の珠を融合して、グラードンとカイオーガと合体させようってことじゃないかと思うの それによってグラードンに大地の力、カイオーガに海の力が加わり、凶暴化した2体の力でホウエンが、世界が滅亡する危機になるんだと思う 伝説の中の一節に、『草を、大地を司る少女』とあったから、植物の力を持つ蓮華ちゃんがグラードンに融合させるんだと思う」 律子:「未然に防ぐためにも、風使いたちから蓮華を守るためにも、蓮華にはネオアース団に関わらせないようにするべきだって言ってたんだけど…」 すでにトウカの森で関わり、そして流星の洞窟で囚われたというわけだ。 ナナ:「ただ、私たちが分からないのは海の力よ」 律子:「水の能力者に、そこまで強い人はいなかったはずだもん」 志穂:「でも、ミューズは何か知ってるみたいだけど…?」 ナナ:「えっ?」 志穂が何かを見抜いた様子でミューズを眺める。 ミューズ:「うん…、気づいたって言うか、私たちもまだ驚いてるの …ユウキだよ」 ナナ:「えぇ!?」 律子:「嘘…」 ミューズ:「これが大マジ しかも…ユウキ、蓮華の弟だった」 一同を沈黙が襲ったのは言うまでもない。 ナナ:「前々から、蓮華に似てるとは思ってたけど…」 律子:「ユウキ君には会ったことあるけどさ…」 哲也:「蓮華の弟で、しかも海の化身かよ…」 玲奈:「姉弟そろってとんでもない力の持ち主なのね…」 志穂:「けど、これではっきりしたわ 私たちの親族や親は私たちの世界に存在していてこの世界にはいないから、親や親族がいない人には100%の 効力を示す強力なお守りが、蓮華に対してだけ、全く効き目がなかった理由が」 ナナたちが驚く中で、志穂だけは事情が分かってスッキリしているようだった。 だが、すぐに表情は真面目に戻る。 志穂:「だけど、これでグラードンとカイオーガが確実に大暴れする事が分かっちゃったわよ どうする?」 律子:「う〜ん…難しいよ 蓮華たちが融合される前に助けるのが必要だけどさ、融合されちゃったら2人自身の力で目覚めないと助けれないんでしょ?」 ナナ:「そうらしいよ ルナが調べてくれてるけど、今のところは目覚めさせる以外にないから…」 どうやら、融合後に誰かが倒したり、誰かがゲットしたり、同士討ちをしてしまうと蓮華とユウキの存在自体が消滅してしまうらしいのだ。 ミューズ:「嘘…」 ソルル:「だったら何とか食い止めないといけないんじゃないのか?」 ナナ:「それで今、Gメンや四天王たちが動いてるのよ 私たちも動かなきゃいけないけどね」 その時、外の方が何やら騒がしくなってきた。 そして、反射的にソルルの表情が険しいものに変わった。 ソルル:「厄介ごとが始まったぞ」 ナナ:「どういうこと?」 ソルル:「そのネオアース団って奴らが、邪魔者を消しに来たようだ」 同時に外の方で、たくさんの悲鳴が聞こえ始めていた…。 その数時間前のことだった。 カイナシティにはヒワマキを出発したヒロ、綾香、秀治が到着していた。 ヒロ:「旅立った、だと?」 モコナ:「うん、つい昨日のことなんだけどね、久美さんは海斗さんと一緒にムロ島の方に行っちゃったし、健人さんと菜々美ちゃんは キンセツシティの方に向かったよ」 ミサト:「行き違い、だったんじゃないんですか?」 ヒロ:「行き違いか…」 ヒロが綾香や秀治と共にカイナシティに到着した時には、すでに久美たち4人の姿はなく、モコナとミサトしかいなかったのだ。 聞くところによると、アレから襲撃があった様子はなく、何事もなく平和な日々を送る事が出来、そのために4人も回復できたらしい。 そして、引き寄せられるが如く、二組は旅立ってしまったらしい。 綾香:「止められなかったの?」 ミサト:「うん、久美さんたちは止めれたんだけど、菜々美ちゃん達のほうを引きとめている間に行っちゃったの」 モコナ:「菜々美ちゃんと健人さん、誰か大切な人に呼ばれてるんだって」 綾香:「大切な人?」 秀治:「そんな奴、こっちの世界にいるって聞いたことないぞ」 綾香:「うん…」 その時、突然周囲がざわつき始めていた。 尋常じゃないほどの騒ぎように、5人の表情が険しくなる。 ヒロ:「一体、どうしたんだ?」 綾香:「何かみなさん、慌ててるみたいですよ」 モコナ:「ちょっと待って ポケギアのラジオ機能を使えば…」 モコナは新発売されたポケギアを取り出し、ラジオ機能にした。 すると、とんでもない言葉が、 『我々はネオアース団 今からホウエンの町は我々が頂く 歯向かったものはすべて排除する』 という言葉が延々流れ続けていたのだ。 ミサト:「ネオアース団が!?」 綾香:「ついに動き出したんだ…」 秀治:「それじゃ、伝説通りのことが起きるっていうのか? それに…蓮華が捕まったのかよ…」 モコナ:「蓮華ちゃん…」 今までは部外者だったはずのモコナとミサトもストールから『言わなかったら別れる』といって伝説と事情を聞いていた。 そのため、5人は蓮華が捕まった事を察したのだ。 綾香:「蓮華が捕まったってことはグラードンとカイオーガが動き出すのも時間の問題…」 秀治:「だが、それを止める必要があるな」 ヒロ:「あぁ、すぐに動き出そう カイオーガが動き出せば、海に面したこの街は沈没しかねない」 ミサト:「それじゃ、今すぐジョーイさん達に知らせます!」 ヒロ:「頼んだぞ 俺たちは襲撃がいつ来ても戦えるようにしておくぞ!」 綾香&モコナ:「オー!!」 しかし、カイナに限ってだけは襲撃が失敗していた。 〜同時刻〜 カイナシティに向かっているネオアース団員たちを乗せた飛行船の中では、団員を取りまとめる幹部らしき人物が、団員達に今回の作戦の説明を行っていた。 幹部:「…であるからして、飛行船から飛び降りたらすぐポケモンによって構わず街を破壊し、トレーナー達を拘束するんだ 別部隊はポケモンセンターと病院を占領し、ネオアース団の手に落とせ そうなれば警察やトレーナー達も容易に手を出すことはできなくなる からな」 だが、この直後、団員の一人が突如、胸を押さえて倒れていた。 幹部:「どうした」 団員:「分かりません 突然気を失ったようで…」 しかし、倒れたのは一人ではなかった。 彼一人が倒れると同時に、彼の周囲にいた団員達も一人、また一人と意識を失っていったのだ。 そのため、周囲の団員がスパイで、何かをやったのではないかというような空気に変わっていた。 幹部:「この中にスパイがいるとなればこの作戦は筒抜けという事になる すぐに怪しい奴を捕まえるんだ!」 多分、この幹部は頭がよくないのだろう。 そのためにこんな事を怒鳴ってしまい、団員達は一斉に仲間割れを始めていた。 怪しいと思ったら、例えそれが味方であっても攻撃するような状態に。 しかし、実際に100名を超える団員たちの中に、潜入者は存在した。 ??:「アメモース、吹き飛ばしよ!」 ??:「ラプラス、冷凍ビーム!」 ポケモンが登場すると同時に、女性団員の指示が飛び、団員達は吹き飛ばしに寄る風で壁に叩きつけられ、冷凍ビームによって氷の彫像に 変わっていった。 ??:「カメックス、水鉄砲だ!」 ??:「オクタン、あなたも水鉄砲だよ!」 別の場所ではカメックスやオクタンも水鉄砲を発射する。 向かってくる団員はカメックスが体当たりで跳ね飛ばし、オクタンも絡み付いて跳ね除けていた。 100名を超える団員達は徐々に倒されていき、狭い部屋にいたらいつやられるかもしれないと、一斉に飛行船から飛び出ようともしていた。 だが、飛行タイプのポケモンたちと飛び出る団員は、突如雲の中から現れたボーマンダとフライゴンの攻撃で墜落していく。 ??:「ハブネーク、巻きつく攻撃だ! ガーディ、睨みつけて奴らを逃がすなよ!」 また、さらに一方ではハブネークとガーディに指示を出す団員の姿もあった。 こうして、幹部らしき一人を除いた団員達が全て倒されてしまうと、幹部らしき人物は動揺していた。 幹部:「ま、まさか数分でこんな事が…」 ??:「私たちが潜入している事自体、気づいてないのがダメなんだと思うけどね」 ??:「うん、でもこの飛行船に風使い一族や、私たちのことを知っている人がいなくてよかったよね」 ??:「いたら、絶対にやばかったよ」 ??:「それじゃ、そろそろ元の服装に戻るかな そこにいる君も潜入してたんだろ? 紹介してくれよ」 ??:「ああ、分かった」 動揺している幹部を尻目に、彼らは制服を脱ぎ捨てた。 ヒカリ:「なんだ、アヤネちゃんたちだったのね」 その姿を見て、今まで飛行タイプのポケモンに乗っていたネオアース団員を倒していたヒカリは懐かしむような声を上げた。 続けてユウも入ってくる。 団員達を倒していた潜入者の正体は、皿数えの指示で潜入していたルリ、アリサ、アヤネ、エイクの4人だった。 ユウ:「ところで、君は?」 ??:「俺? 俺は神楽、蓮華とは血のつながってない兄弟の関係になってるんだ」 ヒカリ:「蓮華ちゃんと?」 神楽:「ああ、だが、蓮華は捕まった…」 正確にいうと、神楽の別人格の纏であるが、それは今はどうでもいいだろう。 纏自身、それを説明したらややこしいだろうと思って敢えて言わなかった。 ヒカリ:「蓮華ちゃんは確かに捕まった 蓮華ちゃんの弟も…」 アヤネ:「やっぱり、弟さん、存在してたんですか?」 ヒカリ:「うん …確か、アヤネちゃんもあのバスにいたんだっけ?」 アヤネ:「はい、つい最近、その時の記憶、おぼろげですが思い出しました」 ヒカリ:「そう… …ところで、これから先、どうする?」 ユウ:「このまま飛行船に乗ってカイナに行き、カイオーガが暴れだす前にカイナの人々を飛行船に乗せようと思ってるんだけど、いいか?」 ユウの提案には、その場の全員が載った。 しかし、 幹部:「そんなことはさせん!」 幹部らしき人物が、ヒカリの喉元にナイフを突きつけたのだ。 が、直後、その幹部らしき人物は目を見開いて崩れ落ちていた。 ヒカリ:「ど、どうしちゃったわけ?」 アリサ:「そういえば、なんかいきなり倒れる人、多かったよね?」 エイク:「そのおかげでこうして動き出せたけどな…」 すると、小さな笑い声と共に、彼らの前には透明な身体の少女、瑞希が姿を現した。 神楽:「紹介していなかったな 蓮華の友人で、俺と一緒に潜入していた幽霊の瑞希だ」 瑞希:「初めまして …私、嫌いな人に嫌いな想いを持ったまま取り付くと、その人を気絶させちゃう力があるんです」 数秒、間が訪れたのは言うまでもなかった…。 そして、各地でネオアース団との戦いが始まろうとしているのだった…。