ダイゴ:「珠の奪還は失敗したのか?」 フヨウ:「ええ、報告によると、後一歩のところまでは行ったそうなの けど、怪しげな機械に阻まれてしまったって…」 プリム:「だとしたら、もうすぐ起きるのね 天変地異に気づいてか、野生のポケモンたちが先に動き出し、ホウエンの街、 そしてホウエンの周辺にある地方でも避難活動が行われているわ 水位の上昇によってムロ島では既に避難が行われているそうだし、 フエン周辺での炎熱災害も始まりつつあるもの」 カゲツ:「だが、それらを治めるためにグラードンとカイオーガを押さえ込む方法があったんだろ?」 ダイゴ:「あぁ、レジロック、レジスチル、レジアイスを復活させる方法がある」 サイユウシティのポケモンリーグ本部では、ゲンジとミクリを除く四天王とダイゴがグラードンとカイオーガをどう押し留めるか、 討論が行われていた。フヨウが瑞希たちに頼んだ紅色と藍色の珠の奪還は失敗に終わってしまい、今はグラードンとカイオーガを 止める事しかホウエンを守る方法はないのだ。 守るといっても、多大な影響が出ることに変わりはなかった(それに既に出ていた)が。 そんな時にカゲツの提案したのがレジロックたち3体の復活である。 だが、一度それは、グラードンたちがマグマ団たちによって蘇った時に行っていた(あの時の被害は少なかったが)。 そして、レックウザとジラーチの手により、新たなもう一つの封印が成されているため、確実に復活させるのは難しかったのだ。 ダイゴ:「ネオアース団たちは知らないだろうが、あの場所にあるはずのもう一つの封印を解く石版がこれだ」 そこには『最初にホエルオー、最後にジーランス』という言葉に続き、こう書かれていた。 『ホエルオー、ジーランスの間、トゲチック、エネコロロ、トドゼルガ、アブソルと順すべし』と。 ダイゴ:「カゲツがアブソルを、プリムがトドゼルガを手にしているが、トゲチックとエネコロロを持つものはこの中にはいない さらに、並べ立てるこの6匹は愛情を注がれたもののみとジラーチによって決められた 全てのポケモンを手にしているナナたちを 除く、これらのポケモンを1体でも手にしたトレーナーをこの状況で見つけるのは難しいことだ」 プリム:「しかし、見つけないわけにはいかないわよ」 カゲツ:「そうだな エネコロロは兎も角、トゲチックはトゲピー自体、生息率が未知数だが、探せば見つかるはずだ」 フヨウ:「そうね、急ぎましょ、ダイゴ」 ダイゴ:「分かった」 4人は急ぎ足で外に出ようとした。 だが、突然部屋の中央で光が吹き出し、それと共に数人の男女が姿を現していた。 その中の一人はナナの妹のルナだった。 ルナ:「久々に使った能力はきついなぁ…」 ダイゴ:「ルナ、突然の来訪のようだが、もう時間が…」 ルナ:「それなんだけど、ホエルオー、ジーランス、トゲチック、エネコロロのそれぞれ持ってるトレーナーを連れてきたのよ」 ダイゴ:「本当か?」 ルナ:「そうなんだけど…、まずは起こさなきゃね」 ルナのテレポートが不安定に行われたために、晃正、清香、香玖夜、浅香の4人は目を回して気を失っていたのだった…。 第3章 16.復活 美香:「えっ、それ本当なの?」 鈴香:「知らなかった…」 律子:「知らなかったんだ…」 フエンタウンでは、翼と悠也を見つけたことを律子に報告していた美香と鈴香が、今の状況を聞いて驚いていた。 律子も、二人が全く何も知らなかったことに驚きを隠せない様子である。 律子:「多分、グラードンはフエンタウンの近くに眠っているはずなの だから、2人も早めに避難してよね」 美香:「分かってるよ」 鈴香:「翼先輩と悠兄を目覚めさせてから、早めに避難します」 律子:「お願いね」 電話を切ると、流石にヤバイと思う表情が隠せなくなる美香と鈴香。 ぐっすり眠り、起きてみればフエンタウンのはほとんど人がいなく、病院も人が少なくなっていた。 それ以外にもおかしいことは山ほどだった。 植物の幹や葉が熱によって蒸発し始め、建物も砂のように崩れ始めている。 病院は美香がいることによって、ポケモンセンターやジムも何らかの力が働く事によって無事だったが、他の建物は徐々に崩れつつあった。 そのために美香と鈴香は報告ついでに事情を聞いたのだ。 美香:「どうしよう…」 鈴香:「遠くの音を聞く限り、何かが地面を掘ってる音しか聞こえないし…」 鈴香は何気なしに言葉を発し、数秒後、2人はハッとした。 美香:「地面を掘る音?」 鈴香:「妙に何かが上に向かってるこの感じ…」 美香&鈴香:「もしかして…グラードン?」 ついハモってしまうくらい、それくらい2人は動揺していた。 音の能力者である鈴香が確実にそうだと感じたのだ。 グラードン以外の何者でもないだろう、好き好んで火山の中から出てくる物体は。 鈴香:「だんだん音、大きくなってるし…」 美香:「あと、どれくらいで来そう?」 鈴香:「…3分くらいだと思う」 すると、美香が窓の外に飛び出した。 手には炎の弓矢があり、向かっていく気満々のようだ。 美香:「私、ちょっと食い止めてくるから、その間に街の人たちを安全な場所に誘導して!」 鈴香:「う、うん、分かった!」 そして美香が飛び出して数秒後、鈴香の予想が外れて、火山が噴火すると共に、フエンタウンや周囲の街に怒涛といえるほどの 凶暴な鳴き声が響き渡った…。 海斗:「海が騒ぎ出した」 久美:「それって…」 海斗:「復活が近いようだな」 ムロ島では、島に住む人たちの避難が終わり、海斗と久美以外には、誰も残っていない状況だった。 水位の上昇によって、既に2人の膝丈まで海水が上がってきていた。 久美:「蓮華ちゃん達を助けるためにも、倒さないようにしなきゃいけないのよね」 海斗:「倒さないように…か 難しいな」 久美:「ゲットできるくらいに静めるしかないわね それに、そうしなきゃいけないのはグラードンも同じよ」 海斗:「そうだな だが、グラードンとカイオーガを同じ場所に向かわせれば、同士討ちが起きるのも時間の問題だ 核にされた2人を消滅させないためにも心がけなければならない」 久美:「この世界にいる能力者の力を結集させる以外にないわ それまではカイオーガは私達で食い止めるのよ」 その時、石の洞窟がある方で、強い爆発音と共に何かが飛び出した。 それは、巨大な鯨ほどの大きさのもので、海に飛び込むと共に、大津波が久美たちを襲っていた。 だが、津波は島にぶつかる直前に、バリアのようなものにぶつかり、それらを壊すことで打ち消されていた。 久美:「私の電磁シールドが消滅するなんて…」 海斗:「甘い考えでは相手にしてはいけないようだな 俺達も島を出るぞ ドククラゲ、乗せてくれ!」 2人は、海斗のドククラゲに乗って海に出た。 久美:「カイオーガって、データ上では4,5メートルくらいなのよね?」 海斗:「そのはずだったな あれは10メートルはある」 久美:「多分、核となっている蓮華ちゃんとユウキ君の力を吸収して大きくなったのよ」 海斗:「それ以外になさそうだな …ひとまず、捨てられ船まで行くぞ あそこでカイオーガを食い止めるんだ」 久美:「うん!」 久美が振り返ると、カイオーガは目覚めたばかりだからなのか、まだムロ島の周囲を泳ぎ回っている。 そしてムロ島は徐々に水に浸かってしまっている様だった。 行くなら今しかない。 今捨てられ船に行かなければ、確実に少しでも食い止める時間はないだろう…。 カイオーガが本格的に動き出せば、ミシロやトウカ、カイナも確実に沈んでしまうのだろうから…。 グラードンとカイオーガがそれぞれ復活を果たす中、他の街での避難活動も進んでいた。 だが、カナズミやカイナ、ヒワマキやミナモを筆頭に、ネオアース団の襲撃も避難活動を阻むかのように続いていた。 ツツジ:「これ以上、先には行かせませんわ! ノズパス、とおせんぼうですわ!」 カナズミではツツジがネオアース団員達と戦っていた。 トンネルや流星の洞窟の方からのネオアース団の進撃により、すでにデボンコーポレーションとジム、そしてその周辺の建物が 彼らの手に落ちていた。 避難は済んでいるのだが、カナズミの拠点となるべき場所が落ちたことは、ツツジにとっては痛い事実だった。 だが、これ以上南下させるわけにも行かないのだ。 カナズミの人々たちが避難しているトウカの森の方に進ませるのだけは避けなければいけない。 そのため、ツツジはネオアース団のポケモンたちをノズパスの「とおせんぼう」で動きを封じていた。 だが、それでも彼らの進撃は続いていた。 ヤマト:「ラッタ、ノズパスにバブル光線よ!」 コサブロウ:「カポエラー、トリプルキックだ!」 カナズミを襲撃するネオアース団は、この2人を中心に動いていた。 ツツジ:「ユレイドル、根を掘るのですわ! プテラ、翼を打つ攻撃でカポエラーを払いのけるのです!」 ノズパスの前に出たユレイドルは草タイプの属性を持ち合わせている。 そのため、多少の水の攻撃には対抗できるのだ。 そして根を張ることでダメージを回復し、対抗できる状態にしていた。 また、カポエラーもプテラの一撃で跳ね飛ばされている。 だが、ツツジのポケモンは岩タイプが中心、どこまで対抗できるかは分からなかった。 ツツジ:「イシツブテは転がる攻撃、ゴローニャは岩なだれですわ!」 ヤマトとコサブロウに対抗する間も団員達からの攻撃は向かってくるため、イシツブテとゴローニャの攻撃がそれらを一掃していく。 イシツブテの転がる攻撃は回転率が早いために、向かってくる泡や水鉄砲などの水攻撃を払いのけられているようだ。 だが、そんな時、突然イシツブテとゴローニャが逆に払いのけられていた。 ツツジ:「何ですって!?」 ??:「残念だけど、ヤマトとコサンジばかりがネオアース団じゃないのよ」 コサブロウが何かを吠えているがそれは無視するとしよう。 さっきまで大勢いた団員の姿はなく、ヤマトとコサブロウの他にいるのは緑色の制服の少女だった。 ??:「私はネオアース団、マグマ支部の幹部、ミカリ 私は草のエキスパートなの あなたの力、ここで弾かせていただくわ ウツボット、フシギバナ、行きなさい!」 ミカリが放つ2体の草ポケモンは葉っぱカッターを放ってきた。 そしてプテラとノズパスが一撃で倒されてしまう。 ツツジ:「そんな…」 ミカリ:「これでとおせんぼうも敗れたわね 後はそのユレイドルだけ まぁ、あなたが他に所持していたとしても、ここで 倒させてもらうわ ヤマト、コサンジ、あなたたちも行きなさい!」 ヤマト:「はっ(何故私がこんな小娘に…)!」 コサブロウ:「分かりました(だから俺はコサンジじゃない)!」 心の中では毒づく2人も加え、3人の団員がツツジにジリジリと近づいてくる。 ツツジ:「どんな方が来ようと、私はこの町のジムリーダー、負けるわけには行きません!」 ツツジは劣勢であるが、強気な姿勢をやめる様子はなく、立ち向かうようだ。 だが、かなりヤバイ状況だった。 ミカリ:「最終攻撃よ、ウツボット、フシギバナ、行きなさい!」 そして草ポケモン2体が動いた時だった。 空から炎のようなものが放たれ、ウツボットとフシギバナを攻撃していた。 突然の炎攻撃に、ウツボットもフシギバナも目の色を変えて逃げ回っている。 ミカリ:「何ですって!?一体誰が…!?」 ヤマト:「くそっ、まだ伏兵がいたなんて…」 コサブロウ:「カポエラー、見破る攻撃…って、お前ら、しっかりしろ!」 ミカリのポケモンが攻撃で混乱している間に、ヤマトとコサブロウも攻撃に出ようとしたのだが、2人のポケモン、ラッタとカポエラーは ツツジのユレイドルのヘドロ爆弾を受けて苦しんでいた。 ツツジ:「バトル中に余所見をしてはいけませんわよ」 ??:「そうそう、それに、相手はツツジだけじゃないんだから」 ツツジの横にはいつの間にか、一人の少女が立っていた。 その少女を見て、ヤマトとコサブロウは驚いている。 そりゃそうだろう、元同僚なのだから。 ヤマト:「お前は裏切り者のフレイ!」 コサブロウ:「また俺達の邪魔をしに来たんだな!」 美咲:「当たり前でしょ! ネオアース団のしていることは犯罪だもの」 フレイこと美咲は、炎の鳥のような姿で奇襲をし、ツツジを助けたのだ。 そしてコータスを出し、加勢していた。 ツツジ:「突然でしたが、助かりましたわ」 美咲:「どういたしまして 今頃、他の街にも加勢が向かってるはずよ」 そこに葉っぱカッターが飛び、コータスの火炎放射が全てを焼き払う。 美咲:「そんなチャチな攻撃で、コータスが倒されたりはしないわ!」 ミカリ:「なんてやな女なの! フシギバナ、蔓の鞭よ!」 ヤマト:「ヤミラミ、シャドーボールよ!」 コサブロウ:「スリーパー、メガトンパンチだ!」 ウツボットは倒れたようでフシギバナを使ってくるミカリ。 ヤマトたちもポケモンを入れ替えていた。 ツツジ:「ユレイドル、蔓の鞭に溶解液をかけなさい!」 美咲:「コータス、スリーパーにオーバーヒートよ! それにラッタ、ヤミラミにアイアンテールよ!」 ユレイドルの溶解液で蔓の鞭が解かされ、フシギバナは悲鳴を上げて蔓を引っ込めた。 さらにスリーパーが火達磨となってフシギバナに突っ込み、2体とも崩れ落ちていた。 美咲が続けて放ったラッタはノーマルタイプのため、ゴーストタイプの攻撃を受けても全くダメージは与えられない。 そのため、シャドーボールを身体で受け止めるように相殺し、そのままヤミラミを前足の爪のアイアンテールによって 弾き飛ばしていた。 ミカリ:「くっ…ひとまず退却だ!」 美咲:「させないわよっ!プロミネンスブラスト!」 ポケモンたちが倒された事で、ミカリは煙玉を使おうとしていた。 だが、使われる直前に、美咲の手から放出された炎が彼女達を包み、大きな爆発が彼女達を吹き飛ばしたのだった。 ヤマト&コサブロウ:「やな気持ち〜!!」 美咲:「ふぅ…」 ツツジ:「一時はどうなるかと思われましたが、何とかやっつけられましたね」 美咲:「ええ、…避難活動は終わってる?」 ツツジ:「少し待ってください」 ツツジは美咲に聞かれ、ポケギアでどこかに連絡を取っていた。 そして、 ツツジ:「ちょうど先ほど、終わったようですわ 今この街には、私達以外には誰もいません」 と答えた。 美咲:「ジョーイさんたちも?」 ツツジ:「ええ」 美咲:「それじゃ、私達も急ごうね もう、時間がないから」 美咲は自分の姿を炎の鳥に変えると、ツツジを乗せて飛び立った。 その数秒後、街に熱風が流れ、緑が燃え、建物が熱によって乾き、崩れる様子が2人の目に映る事になった。 ツツジ:「こうなることが、分かっていらしたのですか?」 美咲:「ええ、私は炎の能力者だから、熱が迫ってくる事は感じ取っていたわ グラードンの影響、ここまでとはね」 ツツジ:「それで、これからどちらへ?」 美咲:「カイナシティに行くわ 水没してるかもしれないけど、それなりに対処を取っているはずだから」 こうして美咲はツツジを連れて飛び立った。 だが、2人は気づいていなかった。 さっきまで戦っていたミカリが、建物の影で揚々とその様子を見ていたことに。 美香:「高温の熱気が渦巻いてる…、炎の能力者じゃなかったら確実に灰になってるわよ」 グラードンが出現したフエン火山の近くでは、美香がグラードンの足止めを行っていた。 既にグラードンが出現したことにより、特性の日照りが炎熱災害を広範囲に渡って引き起こしてはいる。 同時に火山の噴火も始まっていたが、美香が足止めと同時に行っていたのは火山災害の遮断だった。 美香:「フレイムシールド、発動!」 炎の弓矢を操る美香は、4本の炎の矢を放つことでフエン火山とグラードンの周囲に結界を作り出し、熱は放出されてしまうものの、 燃え盛るマグマの流出や火山岩の噴出を一時的に封じていた。 だが、グラードンはそれを感じ取ったのか、美香に対しても攻撃を始めていた。 グラードンの口からとてつもない閃光のビームが放たれ、結界によって遮断されるが、結界も消滅しそうなくらい揺らいでいる。 美香:「ソーラービーム…、これほどのものなのね 蓮華の力が混ざってるとは思うけど…だからって負けられない! みんな、行くよ!」 美香は腰につけていた6つのボールを投げ、同時に6本の矢を放つ。 すると矢は鳥のような翼に変わり、ボールから飛び出した6匹のポケモンたちの背中や胴に姿を現した。 美香:「私のポケモンの中に空が飛べる子はいないけど、この方法を使えば空くらい飛ぶことが可能なのよ! マリルリは水鉄砲、 エイパムはスピードスターよ!」 再びソーラービームを発射しようとするグラードンに対し、水鉄砲とスピードスターが放たれ、ソーラービームの一瞬の貯めが 阻止された。 更にそこに向かってサーナイトのサイケ光線とリザードの火炎放射が向かうが、グラードンの手から放たれる岩石がそれらを相殺していた。 美香:「グラードンの岩石封じ…、一応地面タイプのポケモンだったわね でも、蓮華が融合した事で草タイプの力も持ってる だったら、リザード、炎の渦よ! オタチとドンファンは鳴き声でグラードンの攻撃力を下げて!」 リザードの口から吐き出された炎がグラードンの周囲を取り囲み、大きな炎に変わっていく。 グラードンはソーラービームや岩石封じでそれらを弾こうとするが、鳴き声に驚いて攻撃の力が弱まり、炎を相殺できずにいた。 しかし、グラードンの身体が炎によって熱を持ち、それらが空に上った時、強力な雷が放出されていた。 美香:「嘘、雷まで出せるわけ!?」 流石の美香もこれには驚いた。 そして同時に雷は確実に美香のポケモンを一体ずつ打ち落としていく。 美香:「みんな、戻って!」 サーナイトが光の壁で身を守り、ドンファンは電気に対抗できる地面タイプであったが、他の4体は今の雷によって倒されてしまっていた。 そして、美香に対しても雷が打ち出されてくる。 美香:「ヤバイ…、これじゃ一時、引き返すしか…」 美香自身、危険を察したのはよかったのだが、少し遅かった。 既に火山の熱によって生まれた灼熱の炎による、グラードンの『オーバーヒート』が美香に向かって放出されていたのだから…。 美香:「炎の力に強くても、これじゃもう持たない…」 グラードンの力に負ける自分が見えかけているせいか、美香は逃げる事が出来ずにいた。 しかし、結界をも破ったオーバーヒートは、突如、何らかの力によって相殺され、膨大な水蒸気に姿を変えていた。 美香:「えっ…?」 同時に、水蒸気の中には、鈴香と見覚えのある2人が、翼と悠也が立っていたのだった。 鈴香:「ここで負けるなんて、思っちゃダメだよ」 翼:「俺たちが来たからには、ここでもう少し耐えるんだ」 悠也:「あと少しで、この近辺の避難がようやく終わるからな」 鈴香の手に握られたメガホンの音波が炎を遮り、翼の放出する水流と悠也の放出する突風がグラードンの進路を妨害していた。 翼:「心配かけたな、美香」 美香:「先輩…」 翼:「夢枕に氷雨さんが立って教えてくれた 風使い一族は、哲也や悠也たち一部を除くもの以外の力が封じられることになったって」 美香:「氷雨さんが!?」 翼:「あぁ、各地でみんなも動いてる 俺たちもここを食い止めたら、みんなと合流するぞ」 鈴香:「みんなでネオアース団を倒さなきゃね!」 美香:「うん、そうだね!」 そして数時間後、避難が終わり、美香たち4人もグラードンに攻撃を打ち出して足止めをすると、仲間がいる場所に向かって飛び立った。 志穂:「炎は右手に、雷は左手に集まり、我が力となれ! 必殺、火雷砲!」 律子:「聖なる光よ、電光を纏いて我に力を与えよ 必殺、サイコプラズマ!」 炎と雷の融合体と電磁波を纏ったサイキックエネルギーが打ち寄せる津波を薙ぎ払っている。 カイオーガの復活により、ムロ島が水没し、同時に力を徐々に発揮し始めたカイオーガによって、ついにミシロタウンも水没を始めていたのだ。 そして同時に大津波がミシロタウンを飲み込みつつある。 それらを必死で食い止めていたのが志穂と律子だった。 研究所ではポケモンのデータを一つにまとめる作業を、スズカが続けていたのだから。 志穂:「あとどれくらいで終わりそう?」 ミューズ:「20分あれば全部終わるって!」 律子:「分かった、それまでは何とか頑張ってみる! セレビィ、サイコキネシスよ!」 律子のセレビィのサイコキネシスがミシロタウンに流れてくる水を防ぎ、そこに志穂と律子、そして彼女たちのポケモンの攻撃が 放たれていく。さっきからずっとこの作業を続けているのだ。 海の水は無限大ではあるが、少しでも蒸発させて、水を押し切らない限り、ミシロタウンは水没し、彼女たちも流されてしまうのだから。 それにしても、何故ポケモンのデータをまとめる必要があるのか。 今は避難が必要なのではと思うだろう。 だが、今ミシロタウンにいる研究者はスズカしかいなく、このデータをまとめる事は彼女にとっても大事な事だったのだ。 少しでも多くのポケモンのデータがあれば、それだけ事件が収まってからもポケモンについてを解明し、多くのポケモンとの共存を 可能なものに出来るようにするために。 志穂:「…ビックウェーブが来そうよ」 律子:「こんな時に?」 志穂:「みたいね…」 2人の両手から再び炎や雷が、念の力が放出されていく。 だが、限界も近かった。 ポケモンたちの力も徐々に減少しつつある。 蓮華とユウキのポケモンも協力してはいるが、長時間も連続で続ければ力が尽きてしまってもおかしくなかった。 さらに、今はカイオーガの特性『雨降らし』が広範囲に広がっているために、豪雨が続いているのだ。 メウロやソルロンを筆頭に、炎や岩、地面タイプなど、水タイプの攻撃に弱い者たちの力も弱まっていた。 志穂:「あとちょっとのはずなのに…」 律子:「ヤバイよ、このままじゃ…」 そして、彼女たちの力でも押さえ切れそうにない大津波が、彼女たちの前に現れていた。 まさに、街一つを飲み込んでもおかしくないような津波が…。 しかし、その津波が意思を持つかのように、寸前のところで力をなくし、消滅していた。 律子:「え…今のは…」 志穂:「どうやら、救援が来てくれたみたいね」 律子:「救援?」 律子は志穂の指し示す方向を見た。 するとそこには、ポケモンではない生物に乗り、キングドラと共に手を振っている少女の姿があった。 律子:「海ちゃん!」 海:「遅くなったわ でも、何とか力を回復してきたの 現実世界では来美先輩たちが頑張ってるから」 さらに、やってきたのは海だけではなかった。 泉:「私たちを忘れてもらっちゃ困るわ」 双葉:「現実世界では雪美がリーダーとなって動いてる こっちの世界では、私たちがみんなを導くわよ」 能力者たちを導く役目を帯びていた妖怪、人魚の泉と古椿の双葉が、いつの間にか律子と志穂の背後に立っていたのだ。 志穂:「さっきの津波、泉さんの力ですね?」 泉:「ええ、この辺一帯に、私の結界を張り巡らせたから、津波の力は弱まらせたわ でも、カイオーガの力は強そうね」 双葉:「まさか、スズカがこっちの世界にいたとは思わなかったけど…でも、問題は蓮華ちゃんたちね」 律子:「既に融合が済んでます 私たちは、グラードンとカイオーガの力を弱めつつ、倒さないように一つの場所に導かなきゃいけません」 双葉:「分かったわ グラードンは私が、カイオーガは泉が出来るだけ誘導させる」 志穂:「お願いしますね」 そして、志穂たちが気づけば、既に泉と双葉の姿は消えていた。 グラードンとカイオーガの元に向かったのであろう。 志穂と律子は海にスズカとミューズらを任せ、ナナとの合流を果たすためにミナモシティに向かうのだった。 しかし、この数時間前から、捨てられ船の上で、久美と海斗によるカイオーガとの戦いが幕を開けていた。 久美:「エレブー、10万ボルトよ!」 海斗:「アメモース、銀色の風だ!」 捨てられ船はカイオーガの起こす津波と水の波動によって壊されつつも、海の上にその存在を残し、カイオーガの行く手を遮っていた。 その上で、久美のエレブーと海斗のアメモースの攻撃が、カイオーガを抑えようとしていた。 しかし、カイオーガの起こす津波や水の波動がそれらを弾き、全く効果のない状況だった。 久美:「タイプ的にはこっちの方が有利なのに…」 海斗:「アイツの特性は雨降らしのみ 貯水特性を持たないことで、水タイプの攻撃も多少の効果はあるはずだが…」 水の波動によってアメモースを倒された海斗は、オーダイルのハイドロポンプで対抗し続けていた。 久美:「それならこれよ、エレブー、充電して!」 周囲の大気から電力を吸収し、体内に溜め込み続けるエレブー。 その間、エレブーはメガニウムによって守られ、メガニウムの葉っぱカッターがカイオーガに放たれ続けていた。 久美:「今よ、雷!」 海斗:「オーダイル、ハイドロカノンだ!」 充電によって貯められた電力による雷と、水タイプ最大の技がカイオーガに向かっていった。 しかし、攻撃を受けたにもかかわらず、カイオーガはピンピンした表情で笑っているかのように見えた。 海斗:「アレだけの攻撃で全く傷つきさえしてないのか?」 久美:「違うよ、アイツは自分の弱点に対抗する策を知ってるのよ」 海斗:「…瞑想か」 久美:「多分ね …特殊防御力を極限まであげることで、電気タイプや草タイプの技に対する技の防御策を取ってるのよ」 海斗:「くそっ…」 カイオーガの力を少しでも弱め、これ以上の被害を食い止めるためにも、今ここで頑張る必要があるのに…、久美と海斗の力では それも不可能のような状況になりつつあった。 そして…、 チカゲ:「あ〜ら、こんな所に人がいる〜♪」 ハヤテ:「ボスが言ったとおりだな」 アミカ:「あなたたちの思うようにはさせないわよ」 捨てられ船で奮闘する久美と海斗の前に…、 葛葉:「裏切り者発見ね」 竹巳:「まだ生きながらえていたとはな」 カイナシティへと向かい始めた美香、翼、悠也、鈴香の前に…、 リース:「あなたたち、どこに行こうとしているか知らないけど、ここから先は通さないわよ」 仲間との合流を果たそうとする健人や菜々美、涼治、ヤツデの前に…、 ヤマト:「飛ばされたけど、再び妨害可能ね」 コサブロウ:「お前達は俺たちが倒してやるからな」 ミシロを離れ、ナナとの合流を果たすためにミナモシティへと向かう、志穂と律子の前に、事態を終わらせまいと ネオアース団員達が姿を現していたのだった…。 だが、希望の光も消えてはいない。 ダイゴ:「ホエルオー、トゲチック、エネコロロ、トドゼルガ、アブソル、そしてジーランス 今こうして並べられた事により、 石版が砕け、3つの光が飛び散った」 ルナ:「封印が溶けた今、レジロック、レジスチル、レジアイスをゲットする必要があるわね」 カゲツ:「そうと決まったらいくとするかな」 フヨウ:「ルナちゃんが連れてきたこの子達、能力者なら彼らの力を使いこなす事は可能なはずよね?」 プリム:「そうですわね 私たちはゲットしたらすぐにネオアース団の鎮圧に向かうことにしましょうか」 ゲンジ:「ただし、わしはワタルと合流せねばならぬ」 ルナ:「いいわ 私が能力者の子達を導くから 善は急げ、ゲンジさんを除くこの場の9人を3つに分けるわ そして、大地の能力者の晃正君にレジロックの、光の能力者の浅香ちゃんにレジスチルの、太古の神秘を司る清香ちゃんにレジアイスの ゲットを任命するわ ポケモン協会特別役員の名の下にね」 サイユウから2つの力を鎮めるべく、3つの力をゲットするための精鋭たちが飛び出していくのだった。