チカゲ:「あ〜ら、こんな所に人がいる〜♪」 ハヤテ:「ボスが言ったとおりだな」 アミカ:「あなたたちの思うようにはさせないわよ」 捨てられ船の上でカイオーガを弱めようと、そしてこれ以上の被害の拡大を防ごうとしていた久美と海斗だったが、カイオーガの瞑想によって 2人の攻撃はほとんど歯が立たず、逆にそんな2人の前にネオアース団のチカゲとハヤテ、そしてアミカが姿を現していた。 久美:「ネオアース団…」 海斗:「こんな時に来やがったか」 彼らの登場で二人の意識が彼らに向いた直後、カイオーガは海底に姿を消してしまっている。 どうやら攻撃する側の意図を汲み取り、目的を優先してこの場を離れたのだろう。 ネオアース団の3人の目的が、カイオーガとグラードンを弱らせようとする能力者たちの妨害及び抹殺であるだけに、 その目的の一つが達成されてしまっていた。 アミカ:「こっちは3人、そちらは2人」 ハヤテ:「そのポケモンの様子では俺たちには勝てないな」 チカゲ:「あらら〜、もうやられてくれるのね〜♪」 ハイドロカノンを打ち出すために体力を使ったオーダイルや、水の猛攻にさらされながら雷を放ったエレブーはこれ以上戦えず、 戦力的には久美と海斗は不利としか言いようがなかった。 しかし、救援はやってきていた。 ??:「そちらは2人じゃなくて、3人だぜ!」 雷が落ちると共に姿を現したのは、クチバシティにいるはずの拓也だった。 久美:「拓也、どうして?」 拓也:「美咲と俺も救援としてこっちに来てるんだ 俺はカイオーガの進路妨害に来たんだけどさ、この状況じゃ加勢しないわけには いかないって」 海斗:「スペース団の時とは違って頼もしくなったな」 拓也:「それを言うなよ」 明るめにお調子者を演じている拓也だが、その目は鋭く相手を睨みつけていた。 兎も角、こうして3対3になったわけなのである。 久美:「メガニウム、このまま行くよ」 海斗:「俺はこの場を離れてバトルをする 2人とも気をつけろよ」 拓也:「ああ、もう少しすればホウエンジムリーダーの救援も来る それまでにできる限りのことをするんだ!」 捨てられ船の上で、攻防戦が始まった。 第3章 18.雨と日照りの攻防戦 海斗:「ドククラゲ、少しここを離れるぞ!」 先ほどの言葉どおり、海斗はドククラゲに乗って捨てられ船から少し離れ始めていた。 すると、追って来たのはゲンガーで、その後にオニドリルに乗ったチカゲの姿があった。 船の上では久美とハヤテ、拓也とアミカが戦う姿が見られる。 海斗:「やはり一人で追って来たか ドククラゲ、ゲンガーじゃなくて向こうの女に溶解液だ」 海斗はゲンガーの指示を封じるためにチカゲに向かって攻撃を放つように指示を出した。 といっても人を傷つけようとしているわけではなく、オニドリルに当るようにして、海に落とそうとしているだけだったが。 しかし、溶解液は厄介な事にチカゲではなく、チカゲの持っていた人形に当り、人形は溶けて落下していた。 その直後、ゲンガーからは迸るように雷が連発し始めていた。 海斗:「何っ!?」 チカゲ:「フフフ…よくもやってくれたじゃない ドリスの仇、討ってあげるわ」 海斗は突如起きたチカゲの変貌に背中が凍えるような恐怖を感じた。 だがすぐに、バブル光線による雷の相殺を始めていた。 海斗:「あの女、尋常じゃねえな」 チカゲ:「聞こえてるわよ あんたが苦しむような顔、すごく見てみたくなったわ」 海斗:「何だと…」 チカゲ:「ゲンガー、ナイトヘッドをあの男に放つのよ」 ゲンガーの視線が海斗に向き始めた。 自分に向かってこようとしているナイトヘッド。 さすがに海斗も身の危険を感じた。 海斗:「ドククラゲ、海に潜れ!」 咄嗟に海に潜ってかわす海斗とドククラゲ。 海の能力者と称される海斗は、水中で呼吸が可能な水の能力者の一人。 海面に出ている限り攻撃が確実に向かってくることを考えれば、水中にいるほうが安全であろう。 チカゲ:「ちっ、チャンスだったのに……だったら…」 海斗:「ドククラゲ、怪しい光だ!」 ドククラゲの2つのレンズから奇妙な色に輝く光が放出された。 それによって混乱を始めるゲンガー。 だが、海斗は気づいていなかった。 水中からの攻撃は今の海斗にとっては有利な状況。 しかし問題は、相手の指示が聞こえないということで…。 海斗:「ドククラゲ、俺との合体攻撃でゲンガーを倒すぞ!」 海斗は混乱するゲンガーを見て、手に槍のような物を出現させた。 それは海斗の個人武器の『アクアランス』と呼ばれる水の槍だった。 その武器が現れた直後、ドククラゲはハイドロポンプを放出した。 すると、海斗は槍をハイドロポンプに向かって投げ、水流を纏ったハイドロポンプは真っ直ぐにゲンガーを貫いていった。 チカゲ:「ゲンガー!」 海斗:「やったな、ドククラゲ ゴーストポケモンは実体がない代わりにノーマル系の攻撃などの打撃をあてる事ができない だが、奴らの持ってる核を破壊する攻撃ならば、打撃攻撃でも倒せる お前の力があったからだ」 チカゲがオニドリルの上で肩を落とすのとは逆に、海斗はドククラゲに感謝していた。 そして二人が海面に戻ろうとした時だった。 水中でも呼吸が可能な2人は、突如息苦しさを感じていた。 海斗:「うぐっ…、こ、これは…」 徐々に頭が朦朧とし始め、呼吸が困難になり始めていたのだ。 更に身体の力が抜けていく。 海斗自身もドククラゲも、一体何が起きているのか、分からなかった。 海斗:「ど、どうし…ゴボッ…」 薄れゆく意識の中で海斗はチカゲの声を聞いた。 チカゲ:「フフフフ…、水中にいて私の指示を聞き損ねたみたいね ゲンガーが怪しい光で混乱する前に、何をしたのか気づいてなかったの? 道連れを使ったのよ それなのに合体攻撃までしちゃって、道連れによって2人とも、ゲンガーと一緒に海の藻屑になるのね いい気味だわ」 つまり、能力を使った攻撃でゲンガーを倒した事で、海斗自身にも道連れの効果が出てしまったようだ。 だが、既に海斗には意識がなく、ドククラゲと共に海に沈んでいってしまった…。 久美:「海斗先輩が!」 ハヤテ:「待て、お前の相手はこの俺だ」 海斗が倒れたのを感じた久美だったが、ハヤテとバクフーンに回り込まれていた。 すでにキュウコンを倒したものの、メガニウムはかなり疲れている。 そして今の相手はバクフーンだった。 ハヤテ:「雨乞いの状態で草タイプの攻撃が弱いのを知っていて、それでも相性の悪い相手に勝つつもりなのか?」 久美:「それはあなたも同じ事よ メガニウム、蔓の鞭!」 ハヤテ:「バクフーン、煙幕だ!」 メガニウムは背中の炎が雨で消えているバクフーンを縛ろうと考えたが、煙幕によってバクフーンは姿を消してしまっている。 その時、メガニウムは背後からの電撃を纏った打撃を受けていた。 久美:「メガニウム!」 ハヤテ:「悪いが、バクフーンは炎が出せなくても様々な攻撃を使えるのでね バクフーン、もう一度雷パンチだ」 電光石火によって回り込んだバクフーンの雷パンチがメガニウムに続けて打ち出された。 久美:「甘い香りよ!」 咄嗟に甘い香りを放出してバクフーンの意識を逸らすのだが、バクフーンは再び煙幕で甘い香りを消し去り、今度はツバメ返しを 使ってきた。 ハヤテ:「効果は抜群だな」 久美:「そんな…」 ハヤテ:「これくらいで負けを認めることだ 俺の辞書に敗北という文字が載った事はない これ以上余計な事をしなければ、 お前のポケモンが傷つくことはないぞ」 久美:「そんなこと言って何かするつもりでしょ! メガニウム、蔓の鞭でジャンプよ! そしてのしかかり!」 メガニウムは蔓の鞭で地面を叩き、その反動で高くジャンプして勢いをつけ、バクフーンにのしかかっていた。 急な攻撃に、バクフーンものしかかられてしまっていた。 久美:「やっ…、えぇっ!?」 久美もメガニウムも勝ったと思っていた。 しかし、メガニウムの足元にあったのはただの人形のようなもので、それもすっと姿を消していた。 ハヤテ:「これ以上の攻撃がなければ傷つかなかったというのにな 煙幕で身代わりを作ったのにも気づかないとは… バクフーン、大文字だ」 背後から2人に対しての声が聞こえた。 だが、久美とメガニウムが振り向くよりも早く、大文字は2人を包み込み、そのまま海へと消えていってしまった…。 拓也:「海斗!久美!」 アミカ:「やっぱり、今はポケモンが疲れてるあなたたちより、私達の方が有利のようね」 拓也:「お前ら、初めからそのつもりだったのか…」 アミカ:「当たり前よ 私はそのつもりだったもの」 海に2人が沈んでしまった事に気づいた拓也は、アミカたちが何をしようとしていたのかに気づいたが、気づくのが遅すぎていた。 荒れ狂う海の上では、雷が確実に当てられる状態の拓也とライボルトでさえも苦戦させるポケモンが存在していたのだから。 アミカ:「ギャラドス、ハイドロポンプよ!」 拓也:「ライボルト、電撃波だ!」 拓也の電撃の力でガードしながら充電したライボルトは、電撃波でハイドロポンプを消し去ったのだが、ギャラドスからは続けて水の波動が打ち出される。 アミカ:「いつまで持つかしら?」 拓也:「ずっと持たせてやるさ ライボルト、かぎ分けて雷だ!」 アミカ:「それならギャラドス、龍の怒りよ!」 かぎ分けることで更に確実にギャラドスに雷を打ち出そうとしたライボルトだが、ギャラドスが龍の怒りを発動させると、ギャラドス自体が海水の竜巻に 包み込まれ、打ち出される幾つもの雷と共に突っ込んできていた。 これによってライボルトが大ダメージを負ってしまい、動けなくなっていた。 拓也:「ライボルト…」 アミカ:「残念ね でも、もうあなたも終わりよ マタドガス、トドメをお願いね」 拓也:「何…」 アミカ:「だ・い・ば・く・は・つ・よ!」 拓也はほとんどアミカの手の上で転がされるに過ぎなかった。 大爆発は捨てられ船の一部を完全に破壊し、残骸と共に拓也とライボルトを海へと葬っていたのだ。 アミカ:「さてと、チカゲ、ハヤテ、こっちも終わったわ すぐにボスの元に向かうわよ」 チカゲ:「りょうか〜い♪」 ハヤテ:「分かった すぐにでも他の邪魔者を消し去るか」 だが、数時間後のことだった。 ネオアース団3人に倒されてしまった3人だが…、 海斗:「んっ…」 拓也:「ここは…」 海斗と拓也が目を覚ますと、いつの間にか捨てられ船の上に戻っていた。 久美:「大丈夫?」 ツツジ:「気づきましたわね 救援が遅くなってしまって申し訳ありませんわ」 海斗と拓也を看病していたのは、同じく倒されたはずの久美と、カナズミジムリーダーのツツジだった。 海斗:「俺たち、確か…」 トウキ:「お前らが海の中にいるのにミクリが気づいたから、水タイプのポケモンが助け出したのさ」 ミクリ:「こちらもネオアース団に襲われてね、片付けている間に救援が遅れてしまったんだ 君たちには大変な思いをさせたね」 ミクリとトウキの背後にはナマズンとニョロボンの姿がある。 どうやら、彼らが助けてくれたようだ。 久美:「ネオアース団は天空の塔に向かったみたいよ」 ツツジ:「早く後を追うべきですが、私たちにはまだ避難活動を助ける任務があります」 トウキ:「それに、そこの2人は兎も角、彼はこれ以上戦えないだろうな」 トウキの言った相手は拓也だった。 大爆発に巻き込まれた怪我は軽いものではなく、ピンピンしているように見える拓也だが、海斗や久美よりも傷は深そうだった。 拓也:「分かった 久美、海斗、後は頼む」 久美:「了解」 海斗:「任せろ この借りは返さないとな」 ミクリ:「では、ツツジ、トウキ、彼を頼む 僕はこの2人をカイナシティまで送ったらすぐに合流する」 ツツジ:「分かりましたわ」 トウキ:「お前も気をつけろよな」 こうして、海斗と久美はミクリに先導されてカイナに向かい、拓也はツツジとトウキと共にその場を離れるのだった。 その頃、ミナモシティの近くでは、日照り状態の最中での戦いが起きていた。 志穂:「少しはやれるようになったわけね でも、簡単にはいかないわよ」 ヤマト:「それはこっちのセリフ、あなたを倒して少しでも昇進してやるんだから」 志穂と律子は、カナズミから吹っ飛ばされたヤマトとコサブロウに遭遇してしまい、バトルをする羽目になっていたのだ。 志穂のポケモンはピクシーとムウマ、ヤマトのポケモンはラッタとパルシェンだった。 ヤマト:「ラッタ、あのピクシーに怒りの前歯よ!」 志穂:「ピクシー、物真似でこっちも怒りの前歯!」 同時に怒りの前歯で互いをかみ合い、ダメージを受けるラッタとピクシー。 ムウマがピクシーを助けに行こうとするが、それはパルシェンのオーロラビームによって遮られていた。 志穂:「くっ…」 ヤマト:「フフ、パルシェンの力、見せてあげるわ 雨乞いから水の波動よ!」 グラードンの影響による日照りだが、雨乞いなどの攻撃が放てないわけではなく、一定時間の雨乞いは可能なのだ。 そのため、パルシェンが水の波動を打ち出そうと殻をあけるが、そこに一本の雷が落下した。 ヤマト:「何だと!?」 志穂:「残念ね ムウマは雷が使えるのよ そんなことも知らなかったの?」 ヤマト:「キィィーッ! ムカつく砂利ガールだこと!」 志穂のさらりとした一言にヤマトが怒るが既に遅く、パルシェンは倒されてしまっていた。 ヤマト:「それなら、ラッタ、ムウマに必殺前歯よ!」 志穂:「マズイ、ピクシー、コメットパンチよ!」 既にムウマは、別の場所で律子と戦っているコサブロウのポケモンに見破られているのだ。 ラッタの必殺前歯で普通にダメージを与えられてしまう。 そのため、ムウマの前にピクシーが躍り出た。 コメットパンチを振るうピクシーだが、ラッタがジャンプしたために空を切ってしまう。 ヤマト:「さあ、行くのよ!」 志穂:「させない!ムウマ、怪しい光よ!」 ラッタはムウマに向かって飛びかかっていた。 そのために、ムウマの怪しい光は確実にラッタを混乱させていた。 ヤマト:「ラッタ、しっかりしなさい!」 志穂:「無駄よ、ピクシー、コメットパンチ!」 ヤマトがラッタを叱責するが、ラッタは混乱したままの様子で方向違いの場所に攻撃を放ったり、地面に噛み付いたりしていた。 そのため、ピクシーの攻撃にも気づかず、コメットパンチを受けて倒れこんでいた。 ヤマト:「ラッタ!!」 志穂:「これで終わりよ 早々に観念したら?」 ヤマト:「ふんっ、簡単に負けたりはしないわ まだ次の手が出てるのよ!」 志穂:「何ですって! …これは」 志穂は突如一部から放出される煙幕に気づいた。 しかし、煙幕を吹き飛ばす手立てに出る前に、ムウマとピクシーの悲痛な声を聞く。 志穂:「何が起きてるのよ…」 そして煙幕が晴れた時、ムウマとピクシーは火傷状態で倒れていた。 ヤマトのそばにいるマグマラシの仕業らしい。 志穂:「マグマラシの煙幕と火炎放射ね」 ヤマト:「ようやく分かったのね この日照り状態で炎タイプの力は上がるのさ マグマラシ、あの女にスピードスターよ!」 マグマラシは志穂にスピードスターを放つ。 だが、志穂はすぐに2体をボールに戻し、別のポケモンを出していた。 志穂:「ベロリンガ、お願い!」 志穂が出したベロリンガは出て早々に舌をまわしてスピードスターを弾き、大きくジャンプして地震を起こした。 日照り状態で力を上げているにしても炎タイプであるが故に、マグマラシは大ダメージを受けてしまう。 ヤマト:「くそっ、だったら接近戦よ! マグマラシ、電光石火で火炎車よ!」 マグマラシは電光石火のスピードで素早くないベロリンガに近づき、炎に包まれた身体で体当たりをした。 しかし、ベロリンガに突っ込んだマグマラシは、一瞬のうちに弾力のある身体から弾かれていた。 ヤマト:「何っ!?」 志穂:「私のベロリンガの身体はとっても柔らかいの 打撃攻撃はほとんど、効き目がないわよ」 ヤマト:「だったらマグマラシ、ブレイククローよ!」 志穂:「ベロリンガ、嫌な音!」 鋭い爪の攻撃に出るマグマラシはベロリンガから発せられる嫌な音で頭を抱えた。 志穂:「今よ、叩き付ける攻撃!」 嫌な音で頭を抱えているマグマラシは、ベロリンガの舌に巻きつけられ、強く振り回されて地面に叩き付けられた。 それによって既に気絶していて戦える様子ではないようだ。 志穂:「これで終わりよ」 ヤマト:「くそっ、覚えてなさい!」 ヤマトはもうポケモンがないのか、それとも不利だと思ったのか逃げ出し始めた。 しかし、目の前をウィンディに回り込まれ、背後にはゲンガーの姿がある。 志穂:「逃がさないわよ ゲンガー、催眠術!」 ゲンガーの催眠術を受けて、流石のヤマトも意識を失った。 志穂:「さてと、律子の方はどうかな?」 コサブロウ:「さっきまでの威勢はどうした! もう終わりか?」 律子:「くっ…」 志穂が優勢だったのとは逆に、律子はコサブロウに劣勢に追い込まれていた。 セレビィでカポエラーに対抗で来ていたのだが、どこから現れたのか、コサブロウのゴルバットの奇襲を受けて、劣勢になっているのだ。 コサブロウ:「カポエラー、トリプルキックだ! ゴルバットはエアカッター!」 律子:「セレビィ、リフレクタよ!」 打撃攻撃のダメージを半減させるリフレクタでかわし、耐久戦に出るのだが、エアカッターをやめたゴルバットの騙し討ちもあり、 セレビィと律子は中々反撃に出れない。さらに、律子もゴルバットの嫌な音で他のポケモンを出すに出せないのだ。 コサブロウ:「そろそろ終わりだな ゴルバット、カポエラー、破壊光線だ!」 コサブロウは動きの遅くなったセレビィに狙いを定めた。 だが、突然ゴルバットに向かって卵のようなものが投げつけられ、ゴルバットに当ると爆発した。 コサブロウ:「何っ!」 律子:「ハピナス、出てきてくれたのね」 どうやら自分からボールを飛び出したらしい。 ハピナスの卵爆弾によって意識を逸らし、破壊光線は飛ばなかった。 律子:「ハピナス、セレビィに卵生みよ!」 卵生みによって回復するセレビィ。 そこにカポエラーの電光石火が向かってきた。 律子:「セレビィ、テレポートよ! ハピナスは影分身!」 セレビィはテレポートでゴルバットの背後に回り、ハピナスも電光石火を影分身で避けた。 律子:「今よ!ダブルサイコキネシス!」 2体のポケモンのサイコキネシスがゴルバットとカポエラーを攻撃した。 だが、ゴルバットが倒れた時、カポエラーは堪えていたのか、ハピナスに一撃のダメージを加えて倒してしまっていた。 コサブロウ:「残念だが、堪えてたのさ ゴルバットはできなかったけどな」 律子:「それはどうかしら? ハピナス、もう一度卵爆弾よ!」 コサブロウ:「何!」 コサブロウの驚く目の前で、倒れたはずのハピナスが現れ、カポエラーを卵爆弾で倒していた。 コサブロウ:「もしや、身代わり!」 律子:「大正解よ 防御力の弱いハピナスに普通に戦わせたりなんかしないわ」 コサブロウ:「ならばスリーパー、毒ガスだ!」 形勢不利と見たコサブロウはスリーパーを出し、毒ガスを放った。 これによって毒を受けてしまうセレビィとハピナス。 先ほどのバトルで疲れも見えるため、律子は2体をボールに戻した。 コサブロウ:「残念だな、もう少しだったというのに」 律子:「簡単にポケモンを倒されたくないもん 出てきて、チルタリス!」 律子はチルタリスに乗って浮上した。 そして急いでボールに毒消しを注ぎ込む。 律子:「チルタリス、火炎放射!」 コサブロウ:「指示が遅いな スリーパー、火炎放射を炎のパンチで相殺しろ そしてサイコキネシスだ!」 チルタリスの火炎放射は、スリーパーの両手の炎の拳によって消えてしまった。 さらに、あたりの瓦礫や岩を、サイコキネシスによって投げつけるスリーパー。 必死で避けるチルタリスだが、防戦の一方だった。 律子:「日照り状態だけど、炎タイプの攻撃を放っても炎で相殺されるし…」 だがその時、突如起こった地震が、スリーパーのサイコキネシスを止めていた。 コサブロウ:「何だと!?」 律子:「これは…?」 実は志穂のベロリンガの地震である。 そう離れていないこともあり、二人のバトルにも影響を及ぼしたのだ。 律子:「チャンス! チルタリス、龍の息吹よ!」 チルタリスの龍の息吹がスリーパーに向かうと、スリーパーをサイコキネシスによる岩投げをそれに集中させた。 だが、砕かれる岩は次々に、スリーパーの周囲に壁を作っていく。 そして龍の息吹が止まった時、スリーパーの周囲には幾つもの岩や石で出来た低い壁が出来ていた。 コサブロウ:「何だと…!?」 律子:「うふふ、それじゃ攻撃から避ける時間はないでしょ? チルタリス、スリーパーの周囲に火炎放射よ!」 火炎放射は、岩や石で出来た小さな壁を熱く燃やしていった。 それによって熱を持ち、熱くなっていく岩や石。 マグマのようになっているものもある。 コサブロウ:「これではスリーパーが動けない!?」 律子:「今よ!チルタリス、破壊光線!」 破壊光線は移動が封じられたスリーパーに命中し、後ろに倒れるスリーパー。 前面を破壊光線で、背後を炎で負傷し、そのまま倒れたのだった。 コサブロウ:「スリーパー!」 律子:「どうなの? 負けを認めるのはあなたの方よ!」 コサブロウ:「くそっ、だが俺にはポケモンがまだいる! こいつらを使って…」 コサブロウは3体倒されてもなおも、ポケモンを出そうとしていた。 だが、ボールに手をかけた直後、何かの衝撃がコサブロウを襲い、ボールが弾かれていった。 アンノーンの目覚めるパワーである。 気づけば、コサブロウの周囲はセレビィ、ハピナス、アンノーン、チルタリスに囲まれていた。 コサブロウ:「邪魔しやがっ…」 それでも何かしようとするコサブロウだが、そこに何かが降りかかり、彼は睡魔に襲われていた。 律子:「これ以上のジタバタは怪我の元よ、コサンジさん」 コサブロウ:「だから俺…コサ…」 そして、コサブロウはここでついに倒れた。 律子のロゼリアの眠り粉によって、である。 マンタインは日照り状態のために出れないものの、律子のポケモンほぼ全員の力で、何とかコサブロウは倒されていた。 志穂と律子はこの2人を数時間後、ポケモン警察に引き渡すのだった。 ナナ:「そっかぁ、やっぱりネオアース団の動きが活発化してるのね?」 志穂:「ええ」 ミナモシティに着いた2人は、ナナの力で守られているポケモン協会ミナモ支部事務所の一室でナナ、哲也、玲奈と合流していた。 律子:「だから、最終決戦も近い気がするの」 ナナ:「う〜ん…、最終決戦か …それじゃ、私たちも移動する?」 哲也:「どこに行くんだ?」 ナナ:「天空の塔よ あと、幻島にもだけど」 玲奈:「でも、そこって時間が一定の時じゃないと出てこないんじゃないの?」 ナナ:「だけどね、律子のセレビィと志穂ちゃんの力を合わせて、何とか幻島にグラードンとカイオーガを誘い込む必要があるの 今、晃正君や浅香ちゃんたちが私の妹やホウエンの四天王たちと一緒にグラードンとカイオーガを押さえ込む力を捕まえに行ってるわ もう捕まえたかもしれないけどね だから、私たちも出来るだけ早く動けたらいいの いいかしら?」 ナナの言葉ははっきりと筋を通していた。 そのため、その場の4人はすぐにそれを飲み込んだ。 ナナ:「あ、カイナにも何人か集まってたはずだわ 私、連絡してみる みんなを一つの場所に集めなきゃいけないもの」 志穂:「分かったわ それじゃ、早く行きましょう」 5人はミナモを飛び出した…。