美咲:「この階はまた、一風変わってるわね…」 希:「明らかにここ、水の世界みたいですし…」 20階に到着した一同が口々にこぼした一言である。 20階も10階と同様、ひび割れた床はないものの、ここは本当に変わっていた。 あちこちで何故か水草が生い茂り、水槽から水を出したように、壁には水滴が着いていて、湿っとした部屋だったのだ。 ヒロ:「どうやら、水を使う奴がいるようだな」 ??:「御名答」 一人の青年が出てきた。 10階でレイムと出会っていないのでこの一同は知らないのだが、この青年も独特のネオアース団のユニフォームを来ていたのだが、 その制服は今回は水色で、青いスカーフとマントをつけていた。 表情は帽子を深くかぶる事で見えないようにしているようだが、銀色の長い髪が伸びている。 美咲:「あなたは何者?」 玲奈:「様子からして幹部クラスなのは分かるけど…」 ??:「そうだ、僕はウォルス ネオアース団4大元素幹部の一人、水のエキスパートだ」 玲奈:「ってことは、10階にいたのは炎のエキスパートかしら?」 ヒロ:「熱かったからそうだろうな ということは、他に大地と風のエキスパートがいるわけか」 ウォルス:「そういうことだ だが、ここから先に君たちをいかせるわけには行かない ここで君たちを倒すのが僕の使命だからな 10階ではレイムが何をしたのか分からないが、君たちに気づいていなかったようだがな」 ウォルスの言葉と同時に、近くで何かが跳ねるような音がした。 どうやら何かが潜んでいるらしい。 玲奈:「ここで私たちを倒すって言ってるけど、私たちは今までそういうことを言ってた奴を倒してきたのよ」 ウォルス:「だが、あらゆるバトルを自然のままにし、力を生かし、自然を味方につけられない以外、君たちは僕には勝てないな 君たちとは違い、僕は水の栄誉を受けている」 その時、美咲の背中から煙のようなものが放出され、室内を包み込んでいた。 そして飛び降りたのは、渚と玲奈だった。 渚:「皆さんは先に行って下さい! ここは私が行きます!」 玲奈:「同じく私も 哲也、美咲ちゃん、みんな、お願いね!」 そして渚と玲奈が一同を先に行かせたとき、煙が晴れ、ウォルスが姿を現した。 第3章 24.水と大地の戦い〜自然と知識、そして特性〜 ウォルス:「どうやら僕の相手を君たちが引き受け、他の人たちを先に行かせたようだね」 渚:「ええ、自然の中でのバトルには知識が必要でしょ? コンテストバトルで学んだ自然の知識、今から見せてあげる!」 玲奈:「それに、私の能力は海の妖精の力 あなたが水で来るのなら、私は海の力を味方につけて戦うわ!」 ウォルス:「面白い子達だな やってみるがいいさ ルンパッパ、出てきてくれ!」 ウォルスは草タイプも兼ねるルンパッパを出していた。 玲奈と渚、ポケモンを出せば2体のはずなのにルンパッパが出るということは、もう1体は既に出ているのだろう。 それには玲奈も渚も直感できた。 そして目の前で、水溜りからシャワーズが飛び出し、液体となってどこかに姿を消していた。 玲奈:「今のはシャワーズね」 渚:「シャワーズの溶ける攻撃によって液体となり、この場所の様々な場所に姿をくらましていたってところかな?」 ウォルス:「流石だね ここに残るだけのことはあるだろう 確かに今のはシャワーズだよ さて、君たちもポケモンを出したらどうかな? ポケモンを使わずに能力で戦うつもりか?」 いかにも挑戦的で、玲奈も渚も自分たちを挑発しているのだろうと感じた。 玲奈:「挑発に乗るのはよくないけど、私たち自身が残ったんだもん」 渚:「今から出すわよ 愛嬌を出せばメロメロになっちゃうピクシー、お願いね!」 玲奈:「パルシェン、まずはあなたよ!」 渚はノーマルタイプのピクシーを、玲奈は氷タイプを兼ねるパルシェンを出した。 渚:「先手必勝よ! ピクシー、はたく攻撃!」 ピクシーは姿の見えないシャワーズよりも先に、ルンパッパに挑みかかったが、ルンパッパの両手が強く叩かれる音、『猫騙し』によって 怯んでしまっていた。 ウォルス:「勝負は先手が強いわけじゃない バトルを急ぎすぎたね ルンパッパ、自然の力だ」 ルンパッパは目の前で怯んでいるピクシーに向かって痺れ粉を放った。 だが一度は麻痺するものの、ピクシーはラムの実で助かっていた。 渚:「コンテストバトルでも状態異常は不利だもの 美しさや可愛さを有利にするものを持たせて状態異常になるのは嫌でしょ ピクシー、ルンパッパからは離れて!」 玲奈:「援護射撃をするわ パルシェン、オーロラビーム!」 ピクシーはルンパッパから離れ、ルンパッパにはオーロラビームが放たれた。 しかし放たれる直前、水溜りから飛び出したシャワーズの電光石火を受け、パルシェンは攻撃を外していた。 ウォルス:「簡単に攻撃は当てさせない ルンパッパ、自然の力を見せてやれ!」 ルンパッパは痺れ粉ではなく、今度はスピードスターを放っていた。 さらに続けて岩雪崩も向かってくる。 玲奈:「パルシェン、鉄壁で攻撃をかわすのよ!」 渚:「ピクシー、パルシェンに手助け!」 ナパーム弾でも壊せない殻ではあるが、続けられる攻撃のダメージは殻の中にいるパルシェンの本体に響かないはずがない。 そのため、手助けによってパルシェンを助けているピクシー。 ウォルス:「パルシェンによる防御か」 玲奈:「ええ、それにそれだけじゃないわよ パルシェン、4つの方向にトゲキャノンよ!」 パルシェンの角から4つの方向にトゲキャノンが向かっていく。 シャワーズをおびき出そうとしているようだ。 そしてそれに答えるかのように、シャワーズが飛び出してきた。 ウォルス:「おびき出しに乗る気はないよ シャワーズ、影分身だ」 実はシャワーズが飛び出したら、ピクシーが攻撃を放とうとしていた。 しかし、シャワーズは影分身をしたために、ピクシーは攻撃が放てずに戸惑っていた。 ウォルス:「先を読んだ作戦はいいが、それを壊す方法はいくらでもある シャワーズ、水鉄砲だ」 シャワーズは水鉄砲でピクシーを攻撃した。 しかし突然、ピクシーの姿は消え、水鉄砲は宙を切った。 渚:「作戦は壊れても、一度攻撃を放てば本体は分かるわ ピクシー、サイコキネシスよ!」 そしてピクシーの攻撃によって倒れるシャワーズ。 ウォルス:「なるほど、小さくなる攻撃か」 玲奈:「感心している場合じゃないわよ パルシェン、吹雪よ!」 シャワーズが倒され、パルシェンもルンパッパに攻撃を放つ。 しかしルンパッパは軽いステップを踏んでその場を避け、往復ビンタによってピクシーを倒していた。 ウォルス:「ルンパッパは大きさの割りに動きは素早いんだ ルンパッパ、気合パンチ!」 そして気合パンチはパルシェンに放たれる。 しかし、パルシェンは殻を少し開け、殻で挟む攻撃によって気合パンチを挟んでいた。 玲奈:「これで攻撃はもう無理よ」 ウォルス:「ああ、だが同時に勝負は引き分けたな」 玲奈:「どういう意味よ」 渚:「あ、分かったかも」 ウォルスは分かっているが、玲奈はよく分からなかった。 しかし、ルンパッパが顔をひきつらせていると同時に、パルシェンが動かなくなっているために、引き分けた事は察した。 ウォルス:「シャワーズとルンパッパを倒すとはなかなかだな だが、ルンパッパがパルシェンを倒した理由が分からない以上、 俺にはまだ勝てないな 続いてサメハダーにニョロボン、お前達を出す」 実はギガドレインによって体力を吸い取ったのだが、どうやら玲奈は気づくのに遅れたらしい。 ルンパッパはパルシェンの氷タイプを受けるのを避けるために、これを使うチャンスを狙ったようだ。 そして次にポケモンが飛び出すと、同時にボールからは水も溢れていた。 室内だというのに徐々に水位が上がり、気づけば膝丈までの水位になっている。 渚:「さっきまで水溜りしかなかったのに…」 玲奈:「これもポケモンの技によるのね 水タイプの力を効率よく使おうって所かしら」 ウォルス:「そういうことさ サメハダーの秘密の力でこの場所を更に水中や水辺に近づけ、そしてニョロボンの水鉄砲で水を増やしたのさ これなら十分にサメハダーも動けられる」 そして再び黙り込むウォルス。 それは、渚と玲奈がポケモンを出すのを待っているからだった。 自分から攻撃を放ってこないところを見ると、少しは紳士的なのかもしれない。 玲奈:「向こうも待ってるみたいだし…」 渚:「そうですね 次は可愛さ満点のパワーファイター、プクリンの登場だよ!」 玲奈:「私のポケモンはアゲハント、あなたで行くわ!」 だがポケモンが飛び出すと、すぐにウォルスのポケモンは襲い掛かってきた。 向かってきたのはサメハダーだった。 ウォルス:「そいつの性格は気まぐれでね 今はどうもバトルをしたかったようだ サメハダー、突進だ!」 サメハダーの突進は勢いよく向かってくる。 しかしそれは、プクリンのリフレクタによって阻まれていた。 アゲハントもフラッシュを放って牽制している。 渚:「向こうも攻撃で来るなら、その攻撃を出来なくしてあげるよ プクリン、歌うのよ!」 玲奈:「アゲハントは神秘の守りで防いでね」 渚は歌う攻撃を使い、室内に歌を充満させてサメハダーを眠らせていた。 しかしニョロボンはカゴの実を使って眠る攻撃を防いだ様子だ。 ウォルス:「サメハダーは眠ってしまったが、ニョロボンはまだ戦える ニョロボン、雨乞いを使え」 すると、室内を雨が降り始めた。 水位も徐々に増していく。 が、その直後、ニョロボンは手から冷凍ビームを放っていた。 それも天井に向かってである。 そのために、雨は雪に変わっていた。 ウォルス:「雨乞いを雪に変えた これでアゲハントの力は衰えたな」 玲奈:「でもやるわよ、アゲハント、風起こしよ!」 確かにアゲハントは元気がほとんどない様子だった。 だが風起こしで雪を飛ばし、ニョロボンに攻撃をしている。 格闘タイプでもあるため、飛行タイプの風起こしにこれ以上当るのは危険だった。 近くにいるウォルスは、雪をマントで防ぎながら、ニョロボンに指示を放った。 ウォルス:「ニョロボン、水中を進んでプクリンに地獄車だ」 風起こしを避けたニョロボンは水に飛び込み、プクリンの背後に飛び出した。 しかし、プクリンはニョロボンに抱きついていく。 そして地獄車を出されたものの、ニョロボンを逆にメロメロにしてしまっていた。 ウォルス:「逆手に取られたか…」 渚:「ええ、プクリンの得意手ですからね プクリン、そのまま気合パンチよ!」 ニョロボンはプクリンの気合パンチを受け、そして倒されていた。 しかしその直後、水中から飛び出したハイドロポンプがプクリンを跳ね飛ばし、プクリンを倒してしまっていた。 渚:「プクリン!」 玲奈:「どうやら、サメハダーが目を覚ましたみたいよ」 ウォルス:「ああ、仲間がやられてようやく起きたな サメハダー、水中からアゲハントに攻撃だ」 サメハダーは水中を泳ぎまわり、雪の止んだこの室内を何とか飛び続けているアゲハントに向かって攻撃を仕掛けていく。 ダイビングによって飛び出してはアゲハントにぶつかっているのだ。 ウォルス:「特性の鮫肌で倒れるのももうすぐだな」 玲奈:「でも、これ以上は行かないよ アゲハント、全力で次の攻撃に備えるのよ 銀色の風で水面を叩いて!」 アゲハントは早く羽を動かし、銀色の風を水面に向かって叩き付ける。 すると水面から伝わる銀色の風の波動がサメハダーに届き、サメハダーを水面近くにおびき寄せていた。 玲奈:「今よ、アゲハント、銀色の風!」 そして、サメハダーは、銀色の風を受けて倒れてしまった。 しかし、同時にウォルスの近くから飛び出した何かが、アゲハントを攻撃して墜落させていた。 玲奈:「アゲハント!」 ウォルス:「そちらのお嬢さんはポケモンを出していないが、今僕達が行っているのはポケモンバトルに変わりない だからサメハダーが倒れたため、ポケモンを出したに過ぎないよ」 飛び出したのはペリッパーのようだ。 アゲハントを倒した技はツバメ返しに違いない。 更にウォルスの手にはボールがあり、既にポケモンを出し終えているようだ。 この室内はウォルスの手によって、入り口と出口は特殊な見えない壁に覆われているため、水が下に流れては行かない。 そのため、今は室内の半分を水が埋め尽くしていた。 だからこの先は、水中戦が主流になるだろう。 玲奈:「渚ちゃん、あなたの他のポケモンに水タイプは?」 渚:「…後はこの子だけで、後は水中戦は…」 玲奈:「分かったわ できるだけ水タイプを残すためにも、今はこの子を使って」 渚:「はい」 相手が地形を生かそうとしていることを感じ取った玲奈は、渚にポケモンを指定していた。 玲奈:「次はこの子、ハンテール、お願い!」 渚:「苦手だと思うけどお願いね! 誇り高き聖なる炎を身に纏う愛馬、ギャロップ!」 渚は不利を感じたものの、ギャロップと水タイプの一匹以外がププリンとプリンだったために、ギャロップを出し、玲奈はパールルの進化系、 ハンテールを放った。 ウォルス:「炎タイプを出すとはな」 渚:「別に ギャロップ、スピードスターと火の粉でペリッパーを攻撃よ!」 だが、2つの攻撃は水中から現れた竜巻によって吹き飛ばされてしまっていた。 咄嗟に炎の渦が放たれて水竜巻を消したが、これに当ったら一撃でギャロップは倒れるだろう。 ウォルス:「残念だが、これ以上の攻撃は無謀だな」 渚:「くっ…」 玲奈:「でも、まだハンテールがいるわ! ハンテール、突進よ!」 ハンテールはペリッパーに向かって飛び出す。 しかしそれは、目の前に現れたキングドラによって阻まれてしまった。 先ほどの竜巻を使ったのは、どうやらキングドラらしい。 ウォルス:「今の状況はそちらが不利だ 早く作戦を立てるほうがいいぞ」 玲奈:「どうして?」 ウォルス:「もう攻撃は始まったからな キングドラ、竜巻だ」 キングドラの竜巻は先ほどと違って幾つも出現し、ギャロップを追い詰めていく。 行き場が少ないだけ、ギャロップには不利だった。 そしてその竜巻を避けながら、ペリッパーがギャロップを更に追い立てる。 ウォルス:「ペリッパー、水鉄砲で足場を崩せ!」 ギャロップの足場は水面から頭を覗かせている岩場ばかりであり、もうあと少しで水が室内を覆ってしまいかけていた。 キングドラが竜巻をしながら水鉄砲で増水をしているのだ。 玲奈:「それならハンテール、嫌な音よ!」 この時に少しでも隙を作ろうとしたのは玲奈だった。 嫌な音はキングドラとペリッパーの顔をしかめさせ、一時的に室内に響いたことでウォルスにもダメージを与えていた。 少なからず味方にも効果を与えてはいたが。 しかし、これがチャンスになった。 玲奈:「ハンテール、キングドラの口を噛み付くのよ!」 渚:「ギャロップ、ペリッパーを炎の渦で包み込んで!」 ハンテールがキングドラの口を噛み付いたために、キングドラは痛みから攻撃を放てなくなっていた。 同時にペリッパーも炎に焼かれて傷ついている。 しかし、ペリッパーの最後の水鉄砲がギャロップの足場を崩し、ギャロップを水に落としていた。 渚:「ギャロップ、戻るのよ!」 咄嗟にボールに戻す渚。 しかし、これでギャロップは戦えなくなった。 ウォルス:「ペリッパーももう戦えないな キングドラ、それなら水に潜るんだ!」 残された岸の一角に座り、足を組みながら指示を出すウォルス。 渚と玲奈はププリンとプリンに浮き輪代わりになってもらって戦いをつづけていた。 玲奈:「ハンテール、あなたも水に飛び込むのよ!」 ウォルス:「それは遅いな キングドラ、ダイビングだ」 ハンテールはキングドラのダイビングを受けてしまった。 しかし、その直後にハンテールはキングドラに再び噛み付き、キングドラを倒していた。 これで両者共に6体を倒した事になる。 玲奈:「もうあなたにポケモンは残っていないわよ」 渚:「おとなしく捕まってください ネオアース団にいなくても、あなたはトレーナーとして過ごせるくらいの技量を持ってるはずです」 玲奈と渚はウォルスを説得するが、ウォルスはその様子がおかしいのか、笑っていた。 ウォルス:「僕が普通のトレーナーに戻る? そんなことはありえないよ」 玲奈:「どうしてですか?」 ウォルス:「簡単なことさ それはポケモン協会が許さないね 僕は一度、ホエルオーのくしゃみによって起きた津波から子供達を守った ことがある しかしそのホエルオーのトレーナーは協会のものだった ポケモン教会はその事実を覆い隠そうとし、僕にも事実の隠滅を させようとした 僕がその承諾を跳ね除けたら、彼らは僕がホエルオーのトレーナーだと仕立て上げ、僕からトレーナーの資格を取り上げて しまったのさ そんなことがあってから、僕は裏の世界で生きてきた 君たちがどれだけ言ったとしても、僕はもう、表に戻る気はない さてと、これ以上、君たちと遊ぶのは疲れたよ 君たちを消す時間が来たようだ」 突然、途中から声が変わるウォルス。 今までとは違い、冷血な冷酷な声だけになっていた。 渚:「何をする気?」 ウォルス:「簡単だよ 君たちはこの水中で死を迎えるだけさ マリルリ、行くよ」 ウォルスはマリルリを出し、同時に室内全体に水が及んでいた。 玲奈:「能力解放よ!」 呼吸が出来ない渚は玲奈に引っ張り込まれ、小さな貝の中に連れ込まれた。 それは人が2人入れるくらいしかない貝の形をしたシールドの中だった。 玲奈:「これが私の能力よ ここからポケモンに指示を出すの サクラビス、お願いね!」 渚:「サニーゴ、頑張ってきて!」 2人はマリルリに備えてポケモンを放つ。 するとウォルスは、マリルリの口から出した泡によって水中ボンベの代わりを作り、呼吸をしていた。 ウォルス:「僕の本来の戦術は水中戦 マリルリ、バブル光線だ!」 普通のバブル光線とは違い、広範囲に泡が向かってくる。 そしてサクラビスもサニーゴもダメージを受けていた。 避けようにもバブル光線の範囲が広すぎて避けられないのだ。 渚:「サニーゴ、トゲキャノンで泡を壊すのよ!」 玲奈:「サクラビス、泡がなくなったら突進よ!」 サニーゴのトゲキャノンで泡を壊し、サクラビスが真っ直ぐに向かっていく。 しかし待ち受けていたのは、マリルリのアイアンテールだった。 尻尾のアイアンテールによって、サクラビスは大きく吹っ飛ばされて、壁に激突していた。 と思えば、念力でダメージを緩和したらしい。 ウォルス:「なかなかやるな ならばマリルリ、ハイドロポンプだ!」 今度はハイドロポンプが向かってきた。 それも渦を描く様に円を描きながら、新体操のリボンのような動きで向かってくる。 玲奈:「サクラビス、サイコキネシスで軌道を変えるのよ!」 サクラビスが軌道を変えようとしたが、抑えるのに精一杯らしい。 しかし、サニーゴはその隙に動いた。 転がる攻撃によってマリルリに突っ込んだのだ。 ウォルス:「何っ!」 この攻撃でマリルリは倒れてしまったらしい。 すると、同時に入り口と出口を覆っていた壁が姿を消した。 どうやら、今まで水を阻んでいた壁は、マリルリの光の壁だったらしい。 阻まれていた壁が姿を消すと、水は下に向かって流れ始めていた。 ウォルス:「こうなれば、逃げるのみ ピカチュウ、波乗りだ!」 ウォルスは更にピカチュウを出し、ピカチュウと共に波乗りをしながら水に乗っていく。 玲奈も渚も、この勢いには追いつけなかったが、ここに小さな伏兵がいた。 渚のププリンだ。 渚:「ププリン、天使のキッスよ!」 ププリンの天使のキッスはピカチュウに当り、ピカチュウが混乱すると同時に、足元にあったボードのようなものが姿を消していた。 ウォルス:「くそっ…!! これでやられるわけには…」 だが、ウォルスの運命はここまでだった。 彼の背中に強い打撃が当り、ウォルスは意識を失ったのだから。 原因は渚の最後の一匹、プリンの転がる攻撃によるものだった。 渚:「ようやく、倒せる事は出来たわね」 玲奈:「ええ…、でも、さっき聞いたこと ナナの知ってることかしら?」 その時に、玲奈のポケギアが鳴った。 それは、偶然にもナナからだった。 玲奈:「どうしたの?」 ナナ:「ねえ、幹部と戦った?」 玲奈:「ええ、ポケモン協会にトレーナーの資格を奪われた人とね」 ナナ:「やっぱりいたんだ…」 どうやらナナの知る人物のようだ。 渚:「どういうことなの?」 ナナ:「私も知らなかったのよ 今はいない協会の人間の数人が勝手にやったの でもね、気づけなかった だから、ずっと探してたの」 玲奈:「そう …でも、この人、もう表には戻りたくないようよ」 ナナ:「でも、後で連れてきてね」 渚:「分かった」 そこでポケギアは切れた。 ナナは責任を取ろうとしているようだ。 何も知らなかったとしても、協会の人間としての責任を取ろうと。 だが、一つの疑問は残った。 玲奈:「ねえ、ナナって本当は何歳かしらね」 渚:「う〜ん…、もしかしたら、結構20過ぎてるかも…」 玲奈:「年齢を変えられるって言うし、…5年前の姿とか言ってたけどね」 渚:「言えてるかも」 その頃、他のメンバーは30階に着いていた。 そこは正に生い茂るジャングルの中のようで、足元は砂漠のような砂が敷き詰められていた。 哲也:「ジャングル…大地のエキスパートって所だな」 秀治:「…ってことは、残るのは俺だな」 哲也の一言から自転車を止めたのは秀治だった。 秀治は地面の能力者、いわば大地の能力者ということになるだろう。 だが、同時に美咲の背中から飛び降りたものもいる。 電気の能力者の希である。 希:「私も残るわ 秀治の使うポケモンには地面タイプが多いけど、向こうが水タイプを出したらやられちゃうでしょ? 私は電気タイプを持ってるから、多少は力になれるわ」 美咲:「分かったわ、気をつけてね」 哲也:「秀治、しっかりな」 ヒロ:「暴走するなよ」 秀治:「うっせえ!」 そして一同が行ってしまうと、草むらの影から一人の少女が現れた。 もし美咲がこの場に残っていたら気づいただろう。 彼女は、一度ツツジと美咲に敗れたはずのミカリだったからだ。 ミカリもレイム、ウォルスと同様に幹部の制服を身につけていたが、今回は黄緑色の制服に、マントの色はこげ茶だった。 これで草むらに隠れれば、ジャングルに溶け込んでいて分からないだろう。 ミカリ:「あなたたちが私の相手のようね」 希:「ええ、あなたが大地のエキスパート?」 ミカリ:「そうよ」 秀治:「どうでもいいけど、まだポケモンを放ってこないのか? こっちは早く戦いたいんだけどな」 秀治が言うと、ミカリは高笑いを始めた。 まるであざ笑っているかのように。 秀治:「何がおかしい!」 ミカリ:「あなたたちの相手なら、もう出ているわ 私の味方、それはあなたたちの周囲に生えている植物達よ!」 ミカリの声と共に、ジャングルからはポポッコとウツボットが姿を現していた。 ミカリ:「植物の力を教えてあげるわ! 宿木の種に、蔓の鞭よ!」 秀治と希に対して、攻撃が向かってきた。 しかし蔓の鞭はハサミギロチンによって切り裂かれ、宿木の種は水の波動によって吹き飛んでいく。 それは秀治のグライガーと希のナマズンによるものだった。 ミカリ:「いや〜ん、せっかくの攻撃なのにぃ!」 秀治:「下らん子供っぽさを出すな バレバレだぞ、わざとだって」 ミカリ:「ちぇっ、何それ せっかくやったのに…」 希:「同じような事をする子がいるから慣れてるのよ ナマズン、水の波動よ!」 水の波動がポポッコに向かうが、ポポッコの周囲に現れた花びらが水の波動を四散させた。 ポポッコの花びらの舞だ。 ちなみに、秀治と希が慣れている理由に当てはまるのは蓮華である。 ミカリ:「もう、そっちが攻撃するならこっちも行くよ! ポポッコ、更に眠り粉!」 秀治:「させるかよ、グライガー、砂嵐で吹き飛ばせ!」 ポポッコは眠り粉を放ってナマズンとグライガーを眠らせようとしていた。 しかし、砂嵐が起きて、眠り粉は逆に吹き飛ばされる。 そしてポポッコを眠らせていた。 様子からしてぐっすり眠り、当分起きる様子はないらしい。 ミカリ:「そんなぁ! ウツボット、行くのよ!」 (実は)パートナーであるポポッコが倒れてしまい、怒ったミカリはウツボットに指示を出す。 そしてウツボットは、身体の中から強力な溶解液を噴出した。 しかし、グライガーには軽く避けられている。 やはり空が飛べるか飛べないかでは、全く違うようだ。 ミカリ:「それならナマズンに蔓の鞭よ!」 しかし、蔓の鞭は逆に巻きつけられていた。 ナマズンのひげに。 希:「そのままくすぐる攻撃よ!」 くすぐられてか、ウツボットは微妙に震えていた。 そこにグライガーが真っ直ぐ飛び出した。 秀治:「お前の相手はナマズンだけじゃない! グライガー、ハサミギロチンだ!」 そしてグライガーのハサミギロチンが確実に決まり、ウツボットは倒された。 希:「呆気なかったわね」 秀治:「確かにな」 ミカリ:「あら、そう? それはあなたたちが油断しているから感じるだけよ」 秀治:「どういう意味だ?」 ミカリ:「こういうことよ」 ミカリが指を鳴らすと、2人の目の前でグライガーとナマズンが崩れ落ちていた。 秀治:「何っ、こっちか!」 希:「きゃっ!」 さらに、崩れ落ちると同時に秀治と希にも攻撃が飛んだのだ。 咄嗟に避けたのだが、秀治の足元には鋭い針が刺さり、希の足元の床がドロッと溶けていた。 そして現れたのは、ノクタスとラフレシアだった。 ノクタスのミサイル針と、ラフレシアの溶解液だろう。 ミカリ:「ずっとこの場所にいて、出番を待っていたの ポポッコが倒れた時からノクタスは動いてたけど、気づかなかったようね」 秀治:「くっ、…だったらネイティオ、頼むぞ!」 希:「草タイプには効果は薄いけど、サンダース、お願い!」 秀治と希はミカリのあざ笑う口調を跳ね除けるようにポケモンを放った。 秀治:「ネイティオ、影分身だ!」 ノクタスの攻撃から避けるために、影分身で攻撃を避けようとするネイティオ。 だがこの際にネイティオはある策を放っていた。 同時にサンダースはノクタスとラフレシアに対し、体の針を飛ばした。 希:「サンダースのミサイル針よ ラフレシアは毒を持つから効果は薄いけど、ノクタスには効果は抜群でしょ?」 しかし、ノクタスは砂嵐を起こして攻撃から隠れ、同時に針を砂嵐で吹き飛ばしていた。 さらにラフレシアが粉を放出していた。 ミカリ:「毒の粉よ これであなたたちが倒れるのも時間の問題ね」 砂嵐に毒の粉が含まれた事で、希と秀治は咄嗟に顔を覆う。 そしてネイティオとサンダースは毒の粉で表情をしかめていた。 砂嵐に包まれているために毒を受けてしまったようだ。 ミカリ:「うふふ、次にラフレシア、痺れ粉もまくのよ!」 秀治:「させるか! ネイティオ、ナイトヘッドだ!」 ネイティオはラフレシアの攻撃を遮断する。 しかし、砂嵐に身を隠したノクタスのだまし討ちが、ネイティオにダメージを与えていた。 ミカリ:「うふふふ、ネイティオはエスパータイプよ ノクタスの攻撃、結構効いてるのよね ノクタス、さらにニードルアームよ!」 だが、サンダースの電光石火がノクタスを弾き飛ばし、同時に砂嵐が一時的に止んだ。 希:「今よ、サンダース、雨乞いで雨を降らし、毒の粉を洗い流して!」 このチャンスを待っていたかのように、希は雨を降らさせる。 すると、ノクタスの動きがはっきり分かるようになっていた。 今までは砂がくれしていたが、雨によって姿が分かりやすくなったのだ。 秀治:「今だ、ネイティオ、ラフレシアを翼で打て!」 希:「サンダース、ノクタスに雷よ!」 そしてネイティオとサンダースの攻撃は、ラフレシアとノクタスを倒すのだった。 草タイプには電気タイプの攻撃は効果が少ないのだが、雨が降っていることとノクタスのトゲの鋭さが、雷のダメージを大きくしたようだ。 しかし、それと同時にネイティオもサンダースも、毒の粉のダメージで倒れてしまうのだった…。 ミカリ:「うふふ、もう終わりかしら?」 秀治:「まだまだ」 希:「まだ、負けたわけじゃないわ」 秀治と希はボールを構えた。 しかし、やはり既にミカリはポケモンを出しているようで、背後から襲いかかってきた。 でも、その攻撃は弾かれていた。 ネイティオの未来予知が救ってくれたらしい。 ミカリ:「こんな時に未来予知が来るなんて…」 そして相手はサンドパンとキレイハナだと気づけた。 よりによって、蓮華のポケモンとかぶっているとは…。 秀治も希も、蓮華にこの組み合わせでバトルを挑まれた覚えがあり、別の意味で厄介さを感じていた。 ミカリ:「あら、ポケモンを出さないのね サンドパンはその男に引っかく攻撃、キレイハナはその女にヘドロ爆弾よ!」 サンドパンは秀治に襲い掛かる。 しかし、秀治が出したウソッキーが、引っかく攻撃を受け止めていた。 キレイハナもヘドロ爆弾ごと、ヌオーの水鉄砲に吹っ飛ばされる。 秀治:「ウソッキー、そのまま爆裂パンチだ!」 希:「ヌオー、ウソッキーを援護するのよ 狙いを定めて水鉄砲!」 キレイハナが吹っ飛ばされている間に、ウソッキーはサンドパンを殴り飛ばし、ヌオーの水鉄砲がサンドパンを倒していた。 しかしその直後、室内は甘い匂いで充満していた。 花びらが舞い、甘い香りに包まれるため、秀治と希の緊張感も徐々に薄れてしまっていた。 ミカリ:「あらら、引っかかってくれたわ キレイハナ、そのまま痺れ粉よ」 その時秀治はその声を聞き取ったのだが既に遅く、ウソッキーとヌオー、そして秀治と希は痺れ粉を受けて、その場に倒れてしまうのだった。 ミカリ:「簡単ね キレイハナ、ついでにギガドレインでヌオーを倒してよ ウソッキーはその後」 ミカリはこの状況にあっけないと想い、ヌオーを倒した。 しかし、突然ウソッキーが起き上がり、キレイハナを蹴飛ばしていた。 ウソッキーの『けたぐり』である。 ミカリ:「何ですって!」 ミカリは驚いてウソッキーを見、そして倒れている秀治を見ると、秀治が徐々に起き上がってきた。 秀治:「お前の声を聞き取り、クラボの実を持たせてよかった… ウソッキー、物真似でトドメだ」 ウソッキーは、口からヘドロ爆弾を吐き出し、純粋な草タイプのキレイハナを攻撃し、倒していた。 だが、ウソッキーもそこで崩れ落ちていた。 キレイハナがメガドレインでも使いかけたのだろう。 希:「…私たちが能力者じゃなかったら、痺れ粉で倒れていたわね」 秀治:「ああ でもこれで、お前のポケモンはみんな倒したぞ」 ミカリ:「そう思う? 実はまだいるのよね」 ミカリは笑いながらボールを取り出し、フシギバナを放ってきた。 そして同時に、入り口と出口がフシギバナの葉っぱカッターによって崩されていた。 ミカリ:「これでもう袋のネズミ あなたたちはここで倒させてもらうわ」 秀治:「勝手な野郎だな」 希:「あなたの思い通りには行かないわよ!」 ミカリ:「どうかしら? フシギバナ、葉っぱカッター!」 フシギバナの葉っぱカッターは普通に秀治と希に向かってくる。 どうやらミカリは人に攻撃を向けることにも躊躇しないようだ。 しかし、葉っぱカッターは2人の前に現れた光の壁で阻まれた。 希のキリンリキの光の壁だった。 そして、秀治のサンドパンが飛び出していく。 秀治:「サンドパン、スピードスターだ!」 ナギとの特訓で攻撃力をあげたこともあり、スピードスターは葉っぱカッターを切り裂いてフシギバナに向かっていった。 そんな時、希が秀治に対して何かを耳打ちした。 実は気がついたのだ。今までの攻撃によって地面が少し脆くなっている事に。 希:「(だから、地面に攻撃を与えてフシギバナを下に落とすのよ)」 秀治:「(分かった)」 そして希と秀治は攻撃を始めた。 秀治:「サンドパン、砂嵐だ! そしてスピードスターを放つんだ!」 だが、砂嵐はとてつもない閃光によって消されていた。 フシギバナの日本晴れだ。 ミカリ:「同じサンドパンを持ってるんだから、あなたの攻撃はバレバレよ フシギバナ、ソーラービームよ!」 秀治:「サンドパン、守る攻撃でかわせ!」 ソーラービームはサンドパンに向いたが、守る攻撃によってかわされてしまい、逆にソーラービームは地面に当っていく。 さらに、キリンリキのサイケ光線がフシギバナに向かっていった。 しかし、フシギバナは全然平気な顔をしていた。 ミカリ:「悪いけど、私のフシギバナの体力は多いから、そんな攻撃ですぐに倒れたりはしないんだよ」 希:「そう、でも、少しは足止めをしたわ 秀治!」 秀治:「おう! サンドパン、地震だ!」 サンドパンは地震を起こした。 それによって地面には大きくひびが割れていく。 だが、破壊はしなかった。 ミカリ:「あらあら、何をしようと思ってたのか、ようやく分かったわ でも、それじゃ無理よ」 希:「まだよ! キリンリキ、地震!」 ミカリは不発だと思いかけた。 しかし、キリンリキの地震もあり、ようやく地面が壊れ、フシギバナとミカリは崩れる床と共に落下していくのだった。 希:「キリンリキ、サイコキネシスで私たちを守って!」 実は床の崩壊、部屋全体に起きていたのだ。 そのために秀治と希も巻き込まれたのだが、希のキリンリキのサイコキネシスが2人を守っていた。 さらに、希のライチュウのメガトンパンチは崩れ落ちてくる瓦礫を壊し、2人を守っていた。 しかし、今回も結局先に進めず、秀治と希は上に向かったメンバーを不安に思うのだった。 その頃、下ではナナが、綾香や玲奈の報告を受け、手帳を取り出していた。 雪美:「それは?」 ルナ:「確か、ポケモン協会関連の事件で被害を受けた人のことを記した手帳だよね?」 ナナ:「ええ、多分、ネオアース団はポケモン協会に恨みを持ってる人物が多いはずよ あったわ!」 そこにはレイム、ウォルス、ミカリのことが載っていた。 ルナ:「ウォルスって人は、お姉ちゃんが探してた人だよね このミカリって人は、逆恨みだっけ?」 ナナ:「うん、協会の人だって語った人の詐欺に遭ってる レイムさんは会ったことがあるよ あの人はポケモン協会の人が起こした 事故で大怪我をした事があったもん 私、お見舞いに行ったけど、入院した病院から姿を消してた こんな所で会うとは思わなかった」 雪美:「それで、ポケモン協会も含めて世界を洗い流し、一からはじめようって事かしら?」 ナナ:「分からない ただ、気になるのはついさっき、ナギが上に向かったこと」 実は数分前、ナギがチルタリスを出して上空に上っていったのだ。 それにはなぜか、ソルルが続いていた。 ルナ:「きっと、何かがあるんだよ」 雪美:「そうね 人には色々あるし…」 そしてその頃、空の戦いと呼ぶべき、風のエキスパートとのバトルが起ころうとしていた…。