残りは数人という状況で、哲也、美咲、なずな、ヒロ、瑞希は40階までやってきた。 先ほどから何かが崩れる音がいくつかしたために、下では激しいバトルが行われているのだろうと感じていた。 ヒロ:「次は風のエキスパートという事だが、やはり残るのは君たちか?」 哲也:「ええ」 美咲:「そのつもりよ」 なずな:「本当なら私が残りたいんですけどね、私のポケモン3体しかいないし…連絡係だから…」 実質、この分だと最上階でのバトルはヒロ任せになるのだが、やばくなったら瑞希となずなが救援を呼びに行く事になっていた。 ヒロ:「気をつけろよ」 美咲:「それはあなたも同じです」 哲也:「俺たちの使命は大変だけど、ここを頑張らないと終わりませんからね」 そして40階の部屋にたどり着くと、今までとは違う部屋の様子に息を呑んだ。 ひび割れた床がとても多いのだ。 ただ、階段に続く道はひび割れていない。 しかし、一度に渡れるのは2人までと書かれていた。 どうやら用意周到らしい。 哲也:「行って下さい」 美咲:「私たち、簡単には負けたりしませんから」 ヒロ:「分かった」 なずな:「気をつけてくださいね」 瑞希:「皆さんの無事を祈ってます」 哲也と美咲に見送られてなずな、ヒロ、瑞希が階を登っていくと、床は崩れ落ちたのだった。 そして、今までのネオアース団の制服とは違い、ヒワマキシティのナギのバトルコスチュームと同じような姿をした青年が 現れていた。 美咲:「あなたが風のエキスパートね!」 ??:「そうだ! 僕はイルグ、風のエキスパートだ 君たちを倒す事が僕の任務 楽しませてもらうからな!」 同時に風が吹き荒れ始めていた。 美咲:「長時間の戦いは不利そうね」 哲也:「相手は慣れているようだが、俺たちにはちょっとな」 実は美咲と哲也は一つだけあることを気にしていたのだ。 この階より少し前から、空気が薄くなっていたことに。 長時間の戦いを空気の薄い場所でやった場合、なれていない二人には不利である。 速い所、戦いを終わらせる必要があるのだった。 第3章 25.風の戦い〜それは裏切りから始まった〜 イルグ:「さて、それでは出てくるがいい 僕の長年のパートナー、チルタリス! そしてテッカニン!」 まず出てきたのはチルタリスとテッカニンだった。 美咲:「相手は飛行タイプが多いけど、私のポケモンはほとんどが飛行タイプじゃないから」 哲也:「それは最初から分かってる」 美咲:「それじゃ、できるだけ援護してよね」 哲也:「…それも分かってる」 美咲:「そう、なら出てきてね、ラッタ!」 哲也:「お前の相方がよく疲れるって言う理由が分かった気がする」 美咲:「何よ」 哲也:「別に ピジョット、行ってくれ」 対して美咲がラッタを、哲也がピジョットを出した。 ピジョットはミューズと同様に喋る事が出来るのだが、バトル中は喋らない事にしているらしく、出てきたときも言葉を口にしていなかった。 だが、美咲と哲也の掛け合いを見ていたイルグの様子がどこかおかしい。 イルグ:「俺の前でそう仲良くするな」 美咲:「どうしてよ」 イルグ:「仲がいい奴など、この世に存在するのはいけないからな 所詮、いつかは裏切られる この俺のように」 哲也:「お前がそうだったとしても俺たちにはそれはない!」 イルグ:「言い切れるのか? ではその思いを無にしてやるよ 俺の言葉に耳を貸さないものは処刑するしかない」 先ほどまでは温和そうな雰囲気を出していたイルグだが、いきなり自分を俺と呼び、口調もガラリと変わっていた。 美咲:「昔、何かあったみたいね」 哲也:「それ以外にないな」 イルグ:「うるさい! だが、そう言っていられるのか?」 気づいてみれば、テッカニンの姿しかなく、チルタリスはどこにもいなかった。 ただ、部屋の中でおかしくなっている部分があるとすれば一つ。 何故か人口雲と思われるものがいくつか、天井に浮かんでいた。 イルグ:「チルタリスは体の特徴を利用して雲の中に身を隠せる そしてその間はテッカニンが動く! テッカニン、高速移動だ」 テッカニンが高速で動き、ラッタとピジョットの周囲を飛びまわっていた。 美咲:「スピードにはスピードよ! ラッタ、電光石火!」 そのテッカニンに対してラッタが電光石火で向かっていくが、テッカニンの特性は加速。 そのためになかなか攻撃は当らない。 しかし、必死でラッタは向かっていっていた。 イルグ:「うるさいハエだ テッカニン、切り裂く攻撃で足場を崩してやれ」 テッカニンはひび割れた床を壊し、ラッタは動けるスペースを限定された。 こうなると後々のバトルもきつくなる。 そう呼んだ美咲は電光石火の指示をやめる。 しかし、その直後、ラッタに向かって天井から攻撃がやってきた。 美咲:「バブル光線で相殺するのよ!」 咄嗟の指示で何とか相殺されるものの、チルタリスも動き出したのだ。 イルグ:「チルタリス、ピジョットに火炎放射だ!」 火炎放射の発射はスピードが早く、火にあぶられてしまうピジョット。 同時にテッカニンのスピードスターがラッタに向かって飛んでいた。 美咲:「相手が早くちゃ攻撃が当らないし…」 哲也:「ピジョット、ラッタを乗せて飛ぶんだ!」 ピジョットは電光石火で炎を振り切り、ラッタを乗せてチルタリスに向かった。 テッカニンが向かってくるものの、ピジョットの背中から放出されるバブル光線がテッカニンにぶつかっていく。 イルグ:「ふん、そんなことでチルタリスは倒せないぞ チルタリス、影分身だ!」 影分身でピジョットの電光石火をかわし、再び火炎放射が放出された。 哲也:「もう一度電光石火だ!」 美咲:「ラッタ、同時にバブル光線よ!」 バブル光線が放出されながらピジョットが飛び、火炎放射はバブル光線に当り、霧を作っていた。 そして霧によってチルタリスの本体の影が浮かび上がる。 哲也:「今だ、ピジョット、電光石火でチルタリスに近づけ!」 イルグ:「させるか! チルタリス、龍の息吹だ!」 しかし、チルタリスにはピジョットの姿が分からず、龍の息吹が別方向に飛んでいた。 そしてテッカニンに当ったらしく、イルグはチルタリスに怒っている。 哲也:「今のうちだな、美咲!」 美咲:「ええ、ラッタ、チルタリスに必殺前歯よ!」 ピジョットがチルタリスに近づき、ラッタはチルタリスに飛び移る。 そして必殺前歯がチルタリスの首に食い込んだ。 そのとき、テッカニンがようやく霧を吹き飛ばし終えていた。 イルグ:「テッカニン、チルタリス、さっきの屈辱を示してやれ! 竜の息吹と破壊光線だ!」 哲也:「ピジョット、ツバメ返しでかわせ!」 美咲:「ラッタ、壁を蹴って電光石火よ!」 テッカニンから破壊光線が、チルタリスから龍の息吹が放たれる。 しかし、それはピジョットとラッタが何とかかわしていた。 そしてテッカニンにツバメ返しが当り、ラッタの電光石火もチルタリスを攻撃できていた。 イルグ:「くそっ、チルタリス、ゴッドバードだ!」 哲也:「ピジョット、影分身!」 ここまで来ればお約束なのか、イルグは怒り狂っていた。 そのため、ゴッドバードも外し、ピジョットの破壊光線に倒れていた。 しかも運悪く、テッカニンはチルタリスが落下してきた事により、同時に倒れていたのだった。 イルグ:「くっ…」 哲也:「冷静なバトルをしないものに、勝つことは出来ないのさ」 美咲:「少しは冷静さを思い出したら?」 ポケモンを戻しながら言う2人。 敵とはいえ、そういうことをいうのは2人の優しさからだった。 それに気づいたのかイルグはハッとしているが、それでも何かを忘れてはいない様子。 イルグ:「冷静さか アイツもそう言っていたな」 美咲:「アイツ?」 イルグ:「ああ、僕を裏切った奴さ そいつは、彼女は今、僕のことなんか忘れてジムリーダーをしている」 哲也:「ジムリーダー?」 イルグ:「そうだ でも、君らには言う気はしない 聞きたければ、次のバトルで勝手から言うんだな」 イルグはそう言って、2つのボールを投げた。 出てきたのはオオスバメとバタフリーだった。 だが、さっきとは違って冷静さを取り戻している以上、イルグに油断は禁物。 美咲:「ジムリーダーの裏切りは気になるわ 絶対に聞くんだから」 哲也:「そうだな 思い違いというものもあるし」 美咲:「それに…裏切りほど嫌なものはない! アーマルド、行って!」 哲也:「ヨルノズク、お前が行け!」 美咲はアーマルド、哲也はヨルノズクを放つ。 すると、ポケモンが出ると同時にオオスバメとバタフリーは向かってきていた。 イルグ:「バタフリーは痺れ粉、オオスバメは影分身から電光石火だ」 哲也:「ヨルノズク、見破る攻撃から突進だ!」 美咲:「アーマルド、水の波動で痺れ粉を吹き飛ばすのよ!」 室内を痺れ粉が充満し始め、オオスバメは影分身をしながら向かってくる。 だが、アーマルドの放つ水の波動が痺れ粉を吸収しながらバタフリーに向かい、オオスバメはヨルノズクに本体を見破られて 突進を受けていた。 しかし、水の波動はバタフリーに軽やかにかわされていた。 イルグ:「こう来るとはな それならオオスバメ、低空飛行で鋼の翼だ バタフリーはサイケ光線を放て」 イルグはオオスバメとバタフリーに指示を放つ。 鋼の翼によってアーマルドを倒し、ヨルノズクをバタフリーに攻撃させようという手だろう。 だが、最初に動いたのは美咲だった。 美咲:「アーマルド、泥遊びで視界をふさぐのよ! そして泥かけ攻撃!」 アーマルドの足元から泥が掘り起こされ、そしてそのまま泥がオオスバメに向かう。 そこにヨルノズクに向かうはずのサイケ光線も向かってきた。 イルグ:「何っ」 哲也:「ヨルノズクの念力で軌道を変えたのさ ヨルノズク、そのままサイケ光線をオオスバメに当てるんだ!」 美咲:「アーマルド、向かってくるオオスバメにメタルクローよ!」 泥かけは当らなかったものの、サイケ光線とメタルクローがオオスバメを襲い、そしてオオスバメは地面に身体を引きずらせるようにして 倒れたかに見えた。だが、根性で起き上がったオオスバメは、ヨルノズクをツバメ返しで倒してしまっていた。 哲也:「ヨルノズク!」 イルグ:「体格の違いがここで現れたな バタフリー、アーマルドにメガドレインだ!」 美咲:「させないわよ! アーマルド、原始の力!」 哲也はヨルノズクに駆け寄り、バタフリーはアーマルドに向かっていく。 しかし、アーマルドは原始の力によって周囲に落ちている岩や瓦礫を操り、バタフリーを倒していた。 イルグ:「…共に戻れ まだ全てのポケモンが倒されたわけではない だが教えてやるよ 俺が誰に裏切られたのか」 オオスバメとバタフリーが倒れ、イルグがポケモンを戻すと、先ほどの続きを話し始めた。 イルグ:「昔は俺もヒワマキジムにいた しかし、俺のチルット、さっきのチルタリスは野生のポケモンに襲われたんだ それは野生のアブソルだった そいつによってチルットはカマイタチを受け、翼に鋭い傷を負っていた」 そのためにイルグは復讐を試みた。 だが、そのアブソルを守ったのが、今のジムリーダーのナギだというのだ。 哲也:「そんなこと…」 イルグ:「ないとは言い切れない アイツは昔から、アブソルを大切にしてたからな 僕もアブソルは災害を知らせるポケモンだと気づいていた だが、そのポケモンが災害を運んできた そう考えられずにはいられなかったんだ それに、カマイタチを放てたポケモンは、あの場所には そいつしかいなかった」 美咲:「それでアブソルを攻撃しようとして、アブソルをナギさんが守ったのね」 イルグ:「そうだ 僕が必死で説得しても、ナギは僕を倒してでもそいつを守るといっていた そして僕は、ナギに倒された アイツは、一生友達として過ごし、互いにジムリーダーとなろうという夢と絆を踏みにじった」 イルグの口調は徐々に荒々しくなり始めていた。 怒りが体中から溢れている様だ。 イルグ:「しかも、アイツは最後にこう言った これ以上アブソルを攻撃するなら、ヒワマキから俺を追放するとな だから俺の方から出て行ったんだ あいつに裏切られるとは思わなかったからな あいつは、俺のチルットのことも考えずに、 ずっと風は自分の味方だと言ってやがる 俺はそれが許せない だからレムド様の下につくと決めた もう、この話はいいだろう」 イルグはそう言って、再びポケモンを放つ。 今度はライボルトとエアームドだった。 これで6体全てが出揃うようだ。 哲也:「次が最後だな」 美咲:「そうかもね …ナギさんのことは信じられない きっと誤解だと思う」 哲也:「俺もそう願いたいが、その前にコイツを何とかするぞ」 美咲:「ええ …キュウコン、行くのよ!」 哲也:「飛行タイプを出すつもりだったが今はコイツだ ニドキング、行け!」 美咲はキュウコン、哲也はニドキングを放った。 イルグ:「ライボルトはスパーク、エアームドは鋼の翼だ!」 ライボルトがキュウコンに、エアームドがニドキングに向かってきた。 普通ならニドキングに直接攻撃をすると毒のとげに刺されるのだが、エアームドは鋼タイプのために毒が効かない。 それを見込んでのことだろう。 美咲:「キュウコン、鬼火よ!」 だが、鬼火によってライボルトとエアームドは翻弄されていた。 さらにキュウコンがニドキングに飛び乗ると、ニドキングは大きく足を曲げ、ジャンプして地面に振動を送る。 ニドキングの地震攻撃である。 これによって床がドンドン崩れ落ちていくが、美咲は火の鳥の姿になることで、哲也は背中の翼を出現させることで助かっていた。 それにイルグはまだポケモンを持っていたらしく、ピジョットに乗って助かっている。 しかし、地震攻撃はライボルトを一撃で倒していた。 イルグ:「避雷針の特性を行かせると思ったが、相手が悪かったか しかし、そいつらをこれ以上動かすわけには行かない エアームド、まきびしだ!」 エアームドは地面に大量のまきびしをばら撒いた。 まきびしは地面に足をつけるポケモンの動きを封じると同時に、踏んだポケモンにダメージを与える役割を持っていた。 哲也:「くそっ…」 美咲:「これじゃ、思うように動けない…」 イルグ:「今だ、ニドキング、破壊光線だ」 そしてエアームドの放つ破壊光線がニドキングを倒してしまった。 しかし同時に、イルグは倒す相手を間違えた事に気づく。 美咲:「うふふ、残念でした キュウコン、エアームドに火炎放射よ!」 破壊光線を放った反動で動けないエアームドは火炎放射を浴びて倒れるのだった。 哲也:「美咲、今のうちに先に進むぞ」 美咲:「ええ!」 ナギとの関係の事はまだ気になるが、2人はイルグを倒した以上、ここに留まる理由がなく、先を急ごうとした。 しかし、とてつもない強風が美咲と哲也を吹き飛ばしていた。 ピジョットの風起こしである。 哲也:「ここまで強い力とは…」 美咲:「風を操る哲也が吹き飛ばされるなんて、普通じゃないわ…」 イルグ:「そうか 風使い一族が言っていたのはお前の事か お前がいるってことは、奴らは抹殺に失敗したということだな ならば、全てを聞いた今、お前らがここにいる理由はない 僕の力で君たちを抹殺しよう 僕の最大の任務は君らの抹殺だからな」 そしてピジョットが襲い掛かってきた。 しかし、ピジョットは何かの力に止められていた。 フーディンのスプーン2本による力だった。 イルグ:「何っ、ピジョットの電光石火を防ぐとは…」 哲也:「それだけじゃないぞ! フーディン、至近距離からサイケ光線だ!」 フーディンの重ねあわされたスプーンから光線が飛び、ピジョットは跳ね飛ばされた。 さらにそこに電磁砲が飛び、ピジョットも崩れ落ちるのだった。 哲也:「これは…美咲か」 美咲:「ええ 私も一緒に戦ってるってことを忘れないでよ さて、イルグ、あなたの負けよ さっさと復讐なんか諦めたら?」 イルグ:「諦める、だと?」 美咲:「ええ、復讐なんていいものじゃないわ 復讐したって何も始まらない」 イルグ:「分かった口を叩く気か?」 美咲:「分かった口を叩いてるわけじゃないわ 私は一度、スペース団にいた そして裏切りも体験してる だからよく分かってるもの」 イルグ:「スペース団員か …そういえば、火の鳥の姿になれる団員の事を話してるやつがいたな お前の事だったとは」 美咲:「(多分、マユミたち辺りだろうな…)」 イルグ:「お前が裏切りを起こしている以上、俺に何かを言えるのか?」 美咲:「言えるよ でもその前に、あなたは本当にアブソルがチルットを攻撃したのを見たわけ? 見ていないなら、そんなことで 彼女やアブソルを責める理由はないわよ」 イルグ:「だが…」 その時だった。 窓から何かが飛び込んできたのだ。 それは、ナギとソルルだった。 ナギ:「もういい ルイグ、私も誤解していた お前に謝りたい」 どうやら、イルグ(本名はルイグらしい)がいると感じてやってきたのだろう。 イルグ:「ナギ…お前…」 ソルル:「その前に俺の話を聞け」 イルグ:「何っ、言葉を話しただと!?」 イルグはソルルが喋った事に驚いていた。 ソルル:「そんなに驚くな …あのときのことを俺は今でも覚えている だが、お前は勘違いしていただけだ あの時チルットを襲ったのは俺ではない 近くを通ったカイロスやヘラクロスの集団だ 俺はカマイタチでチルットを守ろうとしたが、逆に倒されてしまった そのうえにチルットは鋭い切り裂く 攻撃で傷ついてしまい、お前に誤解される羽目になった」 どうやら、あの時のアブソルというのが、ソルルのことだったらしい。 ソルル:「俺はナギと親しかった だからナギは、俺の傷を見て、お前が俺を攻撃した事を許さずにいた 親しかったポケモンが傷つき、お前が勘違いの まま攻撃した事を許せず、ナギはお前を突き放してしまったんだ」 イルグ:「そんな…」 ソルル:「だが、あの日をさかいにナギはお前を心配していた お前に謝ろうと思っていた 必死で探していたが、お前は既にいなく、 ナギは孤独に耐えながらジムリーダーの修行を積んでいたんだ」 イルグ:「…」 ソルルは一時期、ナギとカゲツの元にいたことがある。 それ故に、ソルルはナギの事を詳しく話していた。 ナギ:「…お前に対して怒りしか持てなかった自分が恥ずかしい」 イルグ:「ナギ…」 そして、ソルルのおかげで2人の溝は埋まりつつあるのだった。 しかし、哲也と美咲は気づいた。 先ほどのピジョットの攻撃で、先に向かう階段が崩れ落ちてしまっている事に。 哲也:「これじゃ、上には行けないな」 美咲:「うん…大丈夫かな? ヒロさん…」 一部では互いに謝りあうナギとイルグがいて、階段のそばには上に向かった仲間を心配する哲也と美咲の姿があるのだった。 そんな時、下では更に変わった現象が起きていた。 謎の球体が姿を現したのだ。 ミューズ:「…あなた、誰?」 ミューズが蔓の鞭でたたくと、球体は透明になり、中の生き物が姿を現した。 それは何と、ミュウだったのだ。 ミュウ:「僕はミュウ 空から戦いの様子を見てたよ グラードンとカイオーガは幻島で戦ってて、君たちはここでレックウザを 待ってるみたいだね すごい戦いだと思うよ 僕、感心しちゃうもん」 なんとも他人行儀に話すミュウ。 どうやら戦いは見物するものだと決め込んでいるようなものらしい。 ミューズ:「冷やかしに来たの?」 ミュウ:「そんなわけないよ 教えに来たんだ レックウザは爆睡してるから、今起こしたらきっと寝ぼけて攻撃してくるよ」 ミューズ:「嘘…やばいわね」 ミュウ:「うん、ヤバイよ」 普通に頷くミュウは、この直後に蓮華のグラエナのポチに頭を叩かれていた。 ミュウ:「痛いなぁ」 ミューズ:「ふざけるなってことよ それで、本当にそれだけのために来たの?」 ミュウ:「いや、もう一つ、手伝いに来たんだ」 ちなみに、この会話で実際にミュウが喋っているわけではありません。 ミュウの鳴き声は『ミュウ』であり、これは翻訳です。 それをお忘れなく。 ミューズ:「手伝いに?」 ミュウ:「そう、君たちの中で進化してないのがいるでしょ? 僕が力を貸すから、レックウザと戦ってよ そうすれば戦う途中で 進化することが出来るよ その力を僕が与えられるもん」 そして続けて言った言葉は、あるポケモンの逆鱗に触れた。 ミュウ:「だって、僕、そのニドリーノの進化、面白くなかったから退化させたことあるもん」 つまり、トキワジムでニドキングになれたニドリーノが、退化した事を意味している。 ミューズ:「え、あれってあなたがやったの?」 ミュウ:「うん! 面白いでしょ?」 この直後、ニド君の角で突くがミュウを狙い、ミュウは避けたものの、リュウが呆れて龍の息吹を放ち、さらに蓮華のポケモンの袋叩きに遭っていた。 ミュウ:「そんなに怒る事かな?」 ミューズ:「怒るわよ で、どうするの?」 ミュウ:「今から僕のサイコキネシスで、君たちを上に運ぶね それじゃ、行くよ!」 ミュウは、ミューズと共にきっぴー、タマ、ダネッチにドラ、ニド君、なっくん、そして、てんてんを連れて上に舞い上がり始めるのだった…。