長く延々と続いていた階段がようやく終わりを告げ、なずなとヒロ、そして瑞希の3人がたどり着いたのは、何もない広々とした部屋だった。 だが、少し離れた場所に一つの階段があり、更に上に続いているのが分かる。 なずな:「あの上にレックウザがいる…」 ヒロ:「そうだろうな」 なずな:「いえ、確実に向こうにいます」 なずなはそれを確実に分かっていた。 この50階に到達するまで、徐々に勘付いて来ていたのだ。 なずな:「能力者の直感かもしれないけど、レックウザは大空を飛びまわり空気の濃い場所にいることが多いから、空気を自在に操る私のような能力者には 感じるのかもしれません」 ヒロ:「そうか」 その時、室内に足音が響いた。 上に続く階段から、誰かが降りてきたのだ。 いるとすればネオアース団の誰かしかいない。 3人が身構えていると、姿を現したのは一人の青年だった。 彼は金髪の短髪に強い目力を持つような筋の通った顔つきをしていた。 ??:「ついにここまで来てしまったか まぁ、誰かがここに到達してしまうだろうとは思っていたがな」 なずな:「あなたは何者?」 瑞希:「ネオアース団の幹部ですか?」 なずなと瑞希が問いかけると、彼は2人に向かって真っ直ぐな目を向けた。 すると、なずなも瑞希も身体を貫かれたような気がして圧倒されてしまっていた。 ヒロ:「おい、大丈夫か?」 なずな:「う、うん…」 瑞希:「なんか、すごい人です…」 ヒロに呼ばれてハッとして正気に返ったものの、2人はまだその場に立ったまま動けないようだ。 彼の様子から、ヒロは誰なのかに気づいた。 ヒロ:「お前がネオアース団のボスだな これまでに会ったネオアース団の奴らとは全く違うからな」 ??:「よく分かったな そうさ、俺がネオアース団を束ねる総帥のレムドだ レックウザがもうすぐ目覚めようとしている それまでお前達の相手をしてやるよ」 レムドはニヤリと笑い、ヒロを真っ直ぐに見ていた。 ヒロは目があった瞬間、なずなや瑞希と同じように、レムドのオーラに、そして視線に圧倒されて動けなくなってしまっていた…。 第3章 26.マスターの対決〜裏と表のダブルバトル〜 瑞希:「キャア〜!!」 ヒロは瑞希の悲鳴を聞いてハッとした。 気づくと瑞希がヤミラミの攻撃を受けて姿を消していた。 どうやらゴーストタイプの攻撃は、幽霊の瑞希にはゴーストつながりで効果的だったのだろう。 ヒロ:「お前…今何をしたのか分かってるのか?」 レムド:「ああ、邪魔な物体を倒したまでさ 君も俺にとっては邪魔なだけだな ヤミラミ、シャドーボールだ!」 しかし、ヒロに向かってくる攻撃は、背後からの別の攻撃で相殺されていた。 なずなの能力による攻撃だった。 レムド:「そうか 能力者もいたね でも、君には攻撃しなくてもいいか」 なずな:「どういう…って、いやぁ!」 なずなは突如、地面に引きずり込まれていた。 足元にベトベトンが姿を現し、なずなをベトベトンの身体の中に沈め始めたのだ。 ヒロ:「なずな!」 レムド:「あの子の心配をしている時間はあるかな?」 ヒロ:「何だと?」 レムド:「何故なら、君ももう動けないのさ」 ヒロは言われて足を動かそうとした。 しかし、足というよりも体が全く動かない。 まるで何者かに縛られているかのように。 ヒロ:「お前、一体何をしたんだ!」 レムド:「簡単さ 君の影には既に俺のゲンガーが入り込んだ そしてそのゲンガーをソーナンスによって縛り付けたことで、 ソーナンスの特性による『影踏み』によって君自身も動けなくなったのさ さてと、それではまず、君から処刑しようか 君のような、将来性のあるトレーナーを消すのは惜しいが、俺の前に邪魔立てするものならば仕方がないからな」 レムドは指を鳴らそうとした。 ヒロ:「待て! 俺を処刑する前に聞きたい お前はどうしてこんな事をしてるんだ!」 レムド:「…仕方がない 教えてやろう 俺は元はお前と同じでポケモンリーグを優勝し、四天王たちをも倒してきた だが、お前はそれで 満足なのか?」 ヒロ:「何がだ?」 レムド:「ポケモントレーナーの頂点に立ち、チャンピオンとしてトレーナーとバトルをしたり、マスターの栄誉を受けるだけで十分だというのか?」 ヒロ:「違うのか? トレーナーにとっては名誉な事であり、同時にもっと強くなろうと思うものだ」 レムド:「だが、俺は違ったのさ」 レムドはおかしそうに笑いながら話し続けた。 ヒロはレムドの過去に驚きながらも、何かの手が出来ないかを考えていた。 レムド:「トレーナーの頂点に立てるのなら、表の世界の頂点は頂いたも同然さ だったら今度は裏の世界の頂点にも立ち、最後には世界を全て自分の ものに出来るほどの力を持とうと考えた そのために俺はポケモン協会との消息を絶ち、裏の世界に飛び込んだ まだ12の時だった そして10年が立ち、ようやく俺は今、3つの力を手にしようとしている グラードン、カイオーガ、そしてレックウザ、これらの力を手にし、 俺はもうすぐで世界を俺のものに出来るというわけさ」 ヒロ:「そのためにこんなことをしたっていうのか?」 レムド:「悪いか? まぁ、君のような奴は悪いというだろうな だから聞く気はない では、今から君の処刑を始める 君は調査によると、意識のみがこの世界に来ているだけの人間だということだ さっきの幽霊みたいに、ゴーストタイプの技を使えば 消滅も可能だろうな」 レムドは指を鳴らした。 するとヒロに向かって、3体のヤミラミがナイトヘッドを放っていた。 一瞬の事で、なずなさえもその状況を見ているしか出来なかった。 そして、ヒロはその場に崩れ落ちた。 なずな:「嘘…」 レムド:「簡単だったな やはり容易く終わりを迎えたか 次は君の番だ」 レムドはヒロの身体を蹴り飛ばし、なずなに近づいて来ていた。 なずなは恐怖に震えて動く事が出来ず、震えて声さえも出なかった。 しかし、その時だった。 突然ヒロの体が光り始め、すっと姿を消したのだ。 レムド:「何っ! おい、今のは君がしたのか?」 レムドはなずなを見るが、なずな自身も分からずに首を振る。 だが、レムドはなずなが何かをしたと想い、なずなの首に手をかけていた。 レムド:「何も喋らないとは悪い子だな お仕置きが必要だね」 なずなのピンチになり、ボールからはメタモンやヤミカラス、ムウマが飛び出すのだが、レムドのヤミラミたちによって阻まれて、なずなを 助けられずにいた。なずなも、ここでやられると想い、目を瞑っていた。 でも、全く何も痛みを感じさせてこない。 そのため、薄々目を開けてみると、レムドの顔に一筋の傷が出来、血が流れていた。 そして、レムドの視線の先にはヒロの姿があったのだ。 なずな:「嘘…」 レムド:「お前…死んだはずじゃなかったのか…?」 驚く2人だが、ヒロは何も言わずに、手から球体を出し、レムドに放っていた。 レムドは咄嗟になずなを壁にするのだが、球体はなずなを避けてレムドに当り、レムドは遠くに飛ばされていった。 なずな:「…すごい」 そんな圧倒するなずなの元にヒロがやってきた。 ヒロ:「大丈夫か? すぐに戻ってこれてよかったよ」 なずな:「あ、あの…、ヒロさんは能力者だったんですか?」 なずなを心配するヒロだが、なずな自身はヒロに尋ねていた。 ヒロが放ったのはどう見ても自分がよく使う空気の波動と同じものだった。 それが一番気になっていたのだ。 しかし、 ヒロ:「いや、さっきまでは違ったんだ ただ、みんなと同じ現実世界に戻ったと思ったら、またここに戻ってきててさ そしたら君が襲われていたから無我夢中で何かが出来ないかって思ったら、能力が使えてたっていうか…」 詳しいことはヒロ自身も分からないようだった。 ただ、もう一つ変わった部分があった。 なずな:「現実世界に戻ったってことは…さっきまでは意識体だったんですよね?」 なずな自身も詳しいことは知らず、ナナでさえもヒロが意識だけの存在とは知らなかったのだろう。 ヒロも同じなのだが、今は能力も使えるということで、肉体があるということなのだろうか。 それをなずなは聞いたのだ。 でも、説明が不十分だった事で、ヒロは一瞬戸惑い、そしてようやく意味が分かり、話し始めた。 ヒロ:「あ、ああ、…俺、昔事故に遭ってさ、多分、風使いの一族にやられたんだと思うんだ それで家族を失って、ずっと植物状態で 病院で眠っていたみたいなんだ でも、ついさっき、一瞬その身体に戻ったかと思ったら、記憶が戻って、早く戻らないとって思ってたら、 ここにいたんだ」 なずな:「それじゃ、今はちゃんとした人間に戻ってて、同時に記憶も戻ってるってことですか?」 ヒロ:「そうなんだ」 その時なずなは声には出さなかったのだが、驚きを感じていた。 思い出したのだ。 現実世界でヒロを見かけたことを。 なずな:「(そういえば、お母さん達が勤めてる病院に植物状態の人がいたっけ その人、ヒロさんだった…)」 酸素マスクなどをつけていることや包帯などで顔が見えなかった部分もあったが、なずなはヒロがあそこにいた人物だと察したのだった。 そこに、再びベトベトンが襲ってきた。 レムド:「話は済んだか?」 どうやらレムドがようやく起き上がったらしい。 ベトベトンの他にはヤミラミの姿があった。 レムド:「少し手加減をしすぎたよ 君たちを抹殺するには手緩かったね ベトベトン、ヤミラミ、彼らを倒してくれ」 レムドが指を鳴らすと、ヤミラミが闇に姿を消し、ベトベトンが地面に溶け込んでいった。 なずな:「ここはやるしかないですよ」 ヒロ:「そうだな …だが、コイツには普通にポケモンバトルをしても、向こうが真っ向勝負をしてくれそうにないぞ」 なずな:「だったら、正々堂々とのバトルをしない以外にないですよ」 なずなは既に3体のポケモンを倒されてしまっていたため、ジュペッタを出していた。 ヒロもヌマンジを出していたが、闇の中からいくつかのシャドーボールが放たれてくる。 なずな:「ジュペッタ、嫌な音よ!」 ジュペッタが嫌な音を発して闇の中に潜んでいるヤミラミをおびき出そうとするのだが、その直後、ジュペッタの下からベトベトンが現れていた。 ヒロ:「ヌマンジ、濁流でジュペッタを援護しろ!」 ヌマンジが濁流を放つのだが、ベトベトンは一瞬でジュペッタを飲み込んでしまい姿を消していた。 そのために濁流は誰にも当らずに空を切ってしまう。 なずな:「ジュペッタが…」 ヒロ:「くそっ、薄暗い事を向こうが優位に使っている こっちには不利だな」 なずな:「でも、何とかしないと」 ヒロ:「あぁ、パッツル、テミア、力を貸してくれ!」 ヒロはパッチールのパッツルとロゼリアのテミアを出し、フラッシュを使って辺りを照らさせようとしていた。 しかし、ボールから飛び出した直後、2体は何者かの攻撃で倒されてしまっている。 ヒロ:「何っ!?」 レムド:「残念だが、君が何をしようとしていても無駄だよ そのヌマクローも、もう戦えないしね」 ヒロはヌマンジを見ると、その場で崩れ落ちていた。 背後に気配を感じて振り返ってみると、喉元に鋭いものを突きつけられてしまう。 なずな:「ヒロさん…!! …キャー!」 ヒロのピンチを察したなずなも、何者かに拘束されていた。 レムド:「君たちは気づかなかったみたいだけど、既に君たちは、俺のポケモンによって囲まれていたのさ だからどんな攻撃をしようとしたとしても、 俺のポケモンに倒されていたのさ」 そして2人は徐々に相手の正体を知ることになった。 ヒロにトゲを突きつけ、同時に身体を締め付け始めたのはノクタスとアーボック。 ヌマンジを倒したのもノクタスのようだ。 そしてなずなはサワムラーによって拘束され、パッツルとテミアはヤミラミたちの攻撃を連続で受けたらしい。 更にベトベトンも2体いることが分かってきた。 レムド:「俺は一応ポケモンマスターとして過ごしてきただけあるからな ポケモンの育成は普通以上の力でやってきた だからこいつ等は俺が指を鳴らすだけで簡単に動いてくれるのさ それに、俺は暗視スコープを持っているから、君たちの動きを把握するのも 容易だったよ さて、最後はゲンガーの破壊光線で行こうかな」 レムドの前にゲンガーらしき影が浮かび上がっていた。 そしてゲンガーに力が徐々に集まっていくのが分かる。 レムド:「本当の終わりだな」 だが、破壊光線が発射された時に、同時に天井で爆発が起き、3つの光線が発射されていた。 そして4つの光線がぶつかりあい、大爆発が起きた。 レムド:「何っ…」 なずな:「今のは…」 と、そんな3人の目の前でレムドのポケモンたちが宙に浮かび上がり、一斉にレムドの背後にある壁に向かって叩き付けられていった。 レムド:「何っ!? 今のはサイコキネシスなのか!?」 レムドはこの事態に驚いていた。 ヤミラミやノクタスは悪タイプを兼ねているために、エスパータイプの技は通用しないのだ。 そのためにサイコキネシスで浮かび上げられることはないはずなのだ。 だが、今のはサイコキネシスではなかった。 それを教えたのは壁の中から現れた少女によって教えられた。 瑞希:「今のは私の力、ポルターガイストによってです 私、机や椅子とか、いろいろなものを持ち上げて動かせちゃうんです さっきのお返しですよ」 瑞希が出てくると、同時に天井からも3人のトレーナーがポケモンと共に舞い降りてきた。 瑞希:「ヤミラミの攻撃を受けた時、ちょうど外に出ていたので、救援を呼んできました」 ヒカリ:「私たちも参戦するわ」 ユウ:「コイツがまさかこんな奴だったとは、俺たちも驚かされたぜ」 ライ:「せっかく来たんだし、やるだけやってやるよ」 救援に来たのはナナシマのヒカリ、ユウ、ライの3人だった。 それに、ヒカリとユウはレムドを知っているようだった。 やはり元スペース団にレムドもいたからだろうか? 裏組織を転々としていたと聞くため。 だが、そのレムドは全く動じていなかった。 レムド:「何が来たかと思えばお前たちか だが、こうなると流石に不利だな 天井には穴が開いてしまったし、こうなるとヤミラミによる攻撃も そこの幽霊に封じられてしまう 仕方がないな ここはポケモンバトルで勝負をしてやる 3回のダブルバトルだ いいな?」 レムドはそう言うと、すぐにポケモンを放ってきた。 出てきたのはドーブルとルージュラだった。 ヒロ:「よし、ラチア、行ってくるんだ!」 ヒカリ:「まずは私からよ バシャーモ、お願いね!」 ヒロがオオタチのラチア、ヒカリがバシャーモを出した。 すると、すぐにレムドのポケモンは襲い掛かってきた。 レムド:「ドーブル、神速だ! ルージュラは吹雪!」 ドーブルが神速でラチアを一瞬で弾き飛ばし、吹雪がバシャーモに猛威を振るう。 吹雪の力は普通以上の強力さなのか、バシャーモをすぐに雪で埋めてしまっていた。 ヒロ:「ラチア、守る攻撃で落下の衝撃に備えろ!」 ヒカリ:「バシャーモ、火炎放射で雪を溶かすのよ!」 ヒロとヒカリはポケモンを助ける指示を与えるのだが、攻撃の指示は叫べなかった。 相手の力が自分たちを圧倒していると感じたからだ。 でも、だからといって諦めるわけには行かない。 ヒロ:「ラチア、相手のスピードが早くても確実に攻撃を決めるんだ スピードスター!」 ヒカリ:「バシャーモ、ルージュラに電光石火よ!」 ドーブルに向かってスピードスターが、ルージュラに向かってバシャーモの電光石火が向かった。 しかし、レムドはその様子をゆっくり眺めてから指示を発した。 レムド:「遅いな ドーブルはハイドロポンプ、ルージュラはサイコキネシスだ」 ドーブルのハイドロポンプは電光石火を使っているバシャーモを弾き飛ばし、さらにサイコキネシスによって軌道を変えられた スピードスターがバシャーモを傷つけていった。 ヒカリ:「そんな…バシャーモ、ルージュラを睨みつけて!」 ヒロ:「ラチア、丸くなって転がる攻撃だ!」 バシャーモはルージュラを睨みつける事でサイコキネシスを止めたが、すでにスピードスターは当り終わっていた。 だが、ラチアは転がる攻撃でドーブルに向かっていく。 このままドーブルが弾き飛ばされるかと思ったが、逆にラチアが投げ飛ばされてしまっていた。 ヒロ:「何っ!」 レムド:「動きが遅いんだよ ドーブルの怪力に投げられるようではな」 ヒロ:「くっ…」 行う攻撃がどんなに確実に当るものや強いものだとしても相手には効果がない状態のため、ヒロもヒカリも圧倒され続けていた。 だが、2人はそれでも諦める気は全くなかった。 そしてアイコンタクトから、バシャーモが炎の渦を放った。 炎の渦はドーブルとルージュラを囲んでいく。 レムド:「そんな攻撃で何になる ルージュラ、吹雪で炎を消し去れ! そしてドーブル、神速のパワーを見せてやるんだ!」 炎の渦は吹雪によって消えてしまった。 氷タイプの攻撃が炎に弱くても、吹雪と炎の渦は威力が違うため、渦は消えてしまったのだ。 そしてドーブルは再び神速でラチアとバシャーモに向かっていく。 だが、これが作戦だとはレムドも気づいていなかった。 ヒカリ:「バシャーモ、オウム返しよ!」 オウム返しは相手が自分に放った技を行う技である。 だからバシャーモも神速を使い、力の差でドーブルを跳ね飛ばしていた。 ドーブルの能力値は元々低く、スケッチによって覚えた技でそれらを補ったとしても、同じ技で対抗した場合の力は能力値が大きいものには 与えられるダメージも低いのだ。そのため、ドーブルは跳ね飛ばされてしまったわけだ。 だが、バシャーモは更に攻撃を続けた。 ヒカリ:「バシャーモ、スカイアッパー!」 レムド:「ドーブル、神速でかわすんだ!」 レムドが叫ぶものの、ドーブルは跳ね飛ばされたショックで気を失っているようで、バシャーモのスカイアッパーを受けて動かなくなっていた。 レムド:「くそっ…」 ヒロ:「ドーブルばかりに目を向けてるつもりか?」 レムド:「何だと?」 ヒロ:「ラチア、転がる攻撃だ!」 レムドがドーブルに引きつけられている隙に、ルージュラに向かって転がる攻撃が向かう。 ルージュラは避けるものの、ラチアの転がるは避けても避けてもルージュラに目掛けて来る事には変わらなかった。 そして、転がる攻撃はルージュラを跳ね飛ばしていた。 ヒカリ:「これで終わりよ! バシャーモ、オーバーヒート!」 そこにオーバーヒートが放たれ、ルージュラは倒れるのだった。 しかし、勝ったと思った瞬間、バシャーモとラチアは強力な炎に包まれ、倒されてしまっていた。 ヒロ:「何っ!」 ヒカリ:「まさか…炎タイプの技でバシャーモが倒されるなんて…」 放ったのはドーブルのようだったが、放った直後にドーブルも倒れていた。 レムド:「やはりこの攻撃は、炎タイプ以外にはダメージも与えるようだな」 ユウ:「今の攻撃は一体…」 ライ:「なんか、マジですげえ攻撃だったな…」 瑞希:「はい…」 なずな:「何なんだろう…」 レムドの無差別攻撃があるといけないため、空から様子を見ていたユウ、ライ、瑞希、なずなも、その攻撃には圧倒されていた。 レムド:「教えてやろう 一度スペース団時代にホウオウを捕らえようとした事がある 失敗してしまったがその時に聖なる炎を スケッチしておいたのさ だが、このドーブル自身、使えばダメージを削ってしまう捨て身の技 こういうときのために使わずにいてよかった さて、この勝負は引き分けだ 次に行くぞ」 レムドは技の説明をしてからポケモンをボールに戻し、別のポケモンを放ってきた。 今度はヤミラミとブーバーだった。 ヒロ:「またヤミラミか…」 ヒカリ:「次はユウの番だけど…今私がポケモンを出すと戦わなきゃいけなさそうだし…」 ヒカリは思い悩んで煙玉を使った。 そしてヒロを連れてフライゴンで飛び立ち、ユウと変わる。 ヒカリ:「当分、このフライゴンに乗っててください」 ヒロ:「分かった!」 ユウ:「それじゃ、ボーマンダ、行くぞ!」 ヒロ:「ルーニャ、頼むよ!」 ユウはボーマンダで行く事を決め、ヒロはフライゴンに乗った状態でトゲチックのルーニャを放った。 ヒカリは新たにチルタリスを持っているらしく、ライや瑞希と共にそれに乗っていた。 ヒロ:「ルーニャ、スピードスター!」 ユウ:「ボーマンダ、龍の息吹だ!」 空中からのスピードスターと龍の息吹は、ブーバーに向かっていく。 しかし、ブーバーの吐き出した炎がそれらを相殺し、さらにブーバーは煙幕を出して姿をくらましてしまっていた。 ユウ:「なっ!? これじゃ攻撃があてられないぜ…」 ヒロ:「空中からの攻撃で相手の攻撃を避けられると思ったが、これでは不利だな…」 その時、煙幕の中から火炎放射とシャドーボールが放たれてきた。 しかも、確実に当るように放ってきているのだ。 ヤミラミの特性が鋭い目であるために、煙幕はヤミラミには効果がないのだろう。 ユウ:「くそっ、これじゃ当てるどころかこっちが危ないぜ」 ヒロ:「ルーニャ、願い事をしながら避けるんだ! このままだと耐久戦になる!」 トゲチックのルーニャは火炎放射を避けながら願い事をしていた。 シャドーボールはゴーストタイプの攻撃なので、ノーマルタイプのルーニャには効果がないのだ。 だが、これが続けば願い事を使っても意味がないほどのダメージを与えられかねない。 ヒロはユウに声をかけ、手を打ち出した。 ユウ:「ボーマンダ、塔の天井に破壊光線だ!」 ヒロ:「ルーニャ、破壊光線で壊れた瓦礫を使って原始の力だ!」 天井が更に壊れた事で、空中からの反撃のチャンスも広がり、同時に原始の力がヤミラミとブーバーを攻撃していった。 これによって攻撃が途絶えた。 そのため、ヒロはルーニャと共に塔に近づいて攻撃を試みた。 しかし、その瞬間、ルーニャはとてつもない光に照らされていた。 どうやらヤミラミの「怪しい光」らしい。 ヒロ:「くそっ、手を出すのが速すぎたか…」 だが、ヒロを焦らせたのはこの後だった。 ルーニャは混乱して指を振り、大爆発を起こしてしまったのだ。 よりによって、起きてほしくない連続の不幸が。 ヒロ:「マジかよ…」 レムド:「そういってる暇があるのかな? ヤミラミ、シャドーボールだ!」 ヒロがルーニャを戻そうとしたが、レムドはそんな隙を与えずに、ヒロとフライゴンにもシャドーボールを打ち出してきている。 さらに、ヤミラミの黒い眼差しがフライゴンの動きを封じ、更に攻撃を続けようとしている。 それを救ったのはユウのボーマンダの火炎放射だった。 ユウ:「俺がいることを忘れるなよ ボーマンダ、龍の息吹だ!」 龍の息吹はヤミラミを倒し、そのままブーバーに向かっていくが、ブーバーは火炎放射でまだ対抗して来ている。 どうやら大爆発や様々な攻撃を受けたとしても、ブーバーはまだ戦えるだけの体力を残しているようだ。 だが、ボーマンダはブーバーに向かっていった。 ユウ自身も負けたくなかったのだ。 レムド:「ふっ、まだ来るつもりか ブーバー、火炎放射で止めを刺せ!」 しかし、火炎放射はボーマンダにかわされ、ボーマンダはそのままブーバーに突っ込んだ。 ユウ:「ボーマンダ、トドメのドラゴンクローだ!」 ブーバーの炎の身体によって火傷をしていても、ボーマンダはそれに耐え抜き、ドラゴンクローでブーバーを倒したのだった。 しかし、ボーマンダも流石にこれ以上は戦えない様子だった。 レムド:「くそっ、また引き分けか 俺の力を思い知らせてやろうと思っていたというのに…」 ヒロ:「残念だな 俺たちは相手が強くても負ける気だけはないんだ」 ユウ:「そういうことさ ヤバくても逆境だけは乗り越える必要がある」 ヒカリ:「私たちはそれを乗り越えてきました」 ライ:「さてと、次はアタイが行くよ クワクワ、出てきな!」 レムドが舌打ちをすると、ヒロやユウ、ヒカリがその言葉を覆すように続く。 そして最後のダブルバトルでライがカイロスのクワクワを放っていた。 ヒロは続いてピカチュウのボルケニーを出す。 レムド:「ピカチュウにカイロスか 弱そうだな」 ライ:「ふんっ、あんたにはクワクワの強さはわかんないんだよ」 ヒロ:「そうだな ボルケニーは見た目は小さいが、力は別格だ」 レムド:「だったらこれでもか? ミロカロスにパラセクト、格の違いというものを教えてやれ!」 レムドが放ったのは、ミロカロスとパラセクトだった。 ピカチュウのボルケニーはミロカロスと、カイロスのクワクワはパラセクトと激しいにらみ合いを展開し始める。 そしてバトルは始まった。 同時に、ヒカリとユウはなずなたちと共に空中に戻っていった。 ライ:「クワクワ、連続切りだ!」 ヒロ:「ボルケニー、高速移動でミロカロスの周囲を走り、電磁波で動きを封じろ!」 草タイプを兼ねるパラセクトは連続切りで圧倒され、ミロカロスは電磁波で麻痺していく。 しかし、カイロスはパラセクトの胞子によって麻痺してしまっていた。 ライ:「クワクワ!」 レムド:「ふっ、むやみに突っ込めば怪我をするだけだ ミロカロス、空元気だ!」 ヒロ:「しまった!」 クワクワは麻痺した直後にパラセクトの体当たりを受け、ボルケニーもミロカロスの空元気で吹っ飛ばされてしまった。 空元気は状態異常のときに攻撃力を上げて相手にダメージを与える技であり、ミロカロスは更に、特性によって防御力もあげていた。 電磁波を使ってミロカロスの動きを封じたはずが、逆にミロカロスを強くしてしまっていた。 レムド:「しまったと思えど、もはや遅い! ミロカロス、水竜巻だ!」 ミロカロスはハイドロポンプと竜巻を同時に発動し、水竜巻を作ってボルケニーとクワクワを攻撃した。 2人は水竜巻に包まれ、そして弾き飛ばされてしまう。 そこにパラセクトのヘドロ爆弾も襲ってきた。 カイロスは純粋な虫タイプなので、攻撃を続けて受ければすぐに倒されてしまう。 ライ:「くそっ…」 ヒロ:「だったら、ボルケニー、フラッシュだ!」 ボルケニーはフラッシュを放ち、ミロカロスとパラセクトの攻撃を遮断した。 そしてその隙に攻撃を再び開始した。 ライ:「クワクワ、ハサミギロチンだ!」 クワクワのハサミギロチンは、パラセクトを一撃必殺で倒す。 だが、パラセクトに近づいたことで、近くにいたミロカロスのアイアンテールを受けてしまった。 そのままクワクワは吹っ飛ばされ、ボルケニーに向かっていく。 ライ:「やべっ! クワクワ、そのピカチュウにぶつからないようにしろ!」 ヒロ:「ボルケニー、リフレクタだ!」 ライとヒロは同時にリフレクタと守る攻撃によってぶつかるのを避けようとした。 そのおかげで互いの衝突は避けられたが、そこに再び水竜巻が向かってくる。 レムド:「ふっ、互いの心配ばかりしていても始まらないぞ!」 ライ:「この野郎…」 ヒロ:「ボルケニー、もう一度フラッシュだ!」 ボルケニーがフラッシュをし、その隙にクワクワはミロカロスに攻撃をした。 ライ:「クワクワ、挟んで地球投げだ!」 レムド:「させるか ミロカロス、自分を竜巻で包み込め!」 クワクワは地球投げを決めようとしたが、ミロカロスの竜巻によって弾かれてしまった。 そしてクワクワはそのまま壁に激突してしまい、逆に宙に打ち上げられたミロカロスは、冷凍ビームで氷の滑り台を作り出し、そこを滑る事で ボルケニーに向かってきていた。 レムド:「そのまま突進だ!」 ライ:「させるかよ! クワクワ、しっかりしろ!」 ライはボルケニーを助けようとしたかったが、既にクワクワは倒れてしまっているようだった。 そのために、ヒロは最終手段に出た。 ヒロ:「攻撃は最大の防御、ボルケニー、ボルテッカーだ!」 ボルケニーはボルテッカーを発動し、スピードを速めて突っ込んでくるミロカロスに向かっていった。 これにレムドは避けさせようとするが、ミロカロスは麻痺している事には代わりなく、麻痺していた状態でこれまで戦っていたため、 すぐに身体を動かせるわけがない。 そのため、ミロカロスはボルテッカーによって跳ね飛ばされ、ついに倒れるのだった。 しかし、ボルケニーもその力によって倒れていた。 ボルテッカーは体力も消耗してしまうために。 レムド:「くっ…これまでか」 こうしてレムドとの対決は終わった。 ヒロもライもポケモンを戻し、ヒカリたちも戻ってくる。 だが、レムドは突然、先ほどの態度を変えてヤミラミを多数放って攻撃して来ていた。 ヒカリ:「きゃっ!」 ユウ:「マジかよ…」 ライ:「アイツ、態度を変えやがった!」 ヒロ:「最初からこのつもりだったのかもな」 実はそうである。 レムドは自分の力でヒロたちを圧倒できると思っていたが、ポケモン勝負は引き分けに終わってしまった。 そのために、レムドは最終手段を放ってきたのだ。 だが、レムドのポケモンがレムドを信頼してついてきているように、ヒカリたちのポケモンも彼女たちを信頼していた。 だから、ライのボールの中からコンコンが、ユウのボールからエレブーが飛び出したのだ。 ライ:「コンコン、大文字だ!」 ユウ:「エレブー、10万ボルト!」 炎と電気の攻撃がヤミラミを一掃し、同時にヒカリのジュゴンの放つ冷凍ビームがレムドを氷漬けにしていった。 ヒカリ:「これで終わりよ!」 しかしその時、ヒカリの足元で爆発が起きた。 ヒカリは吹っ飛ばされ、起き上がってみると、レムドの横にはボムが姿を現していた。 今のはボムのポケモンの自爆なのだろう。 ボム:「ボス!」 レムド:「ボムか 一時退却だ」 ボム:「はっ!」 そしてボムとレムドは再びどこかに逃げてしまうのだった…。 ヒカリ:「逃がしちゃった…」 ヒロ:「せっかく追い詰めたが、仕方ないだろうな」 二人が逃げてしまい、ガッカリするヒカリをヒロが慰める。 そこにヤミラミたちを片付けたユウたちが駆け寄ってきた。 ユウ:「それで、これからどうすんだ? レックウザ、起こすんだろ?」 ライ:「アタイたちの力も貸すよ」 なずな:「私も出来るだけ力を貸します」 しかし、その時だった。 塔自体が大きく揺れ始め、天井が崩れ落ちたかと思うと、大きな龍が姿を現したのだ。 ユウ:「こいつがレックウザ…」 ヒロ:「こんな時に…」 レックウザは正気ではない様子で、ヒロたちにめがけて破壊光線を放ってくる。 だがそこに、破壊光線を相殺する光が向かってきた。 ハッとして一同が目を向けたとき、そこには一匹の謎の生き物が、ミューズたちを連れて姿を現していたのだった…。