(注) この話の中では何匹かのポケモンが普通に話していますが、実際にこの物語上で喋れるポケモンはミューズやソルルなど、 限られていますので、ご注意ください。 ヒカリ:「ミューズ?」 瑞希:「何でここに…?」 寝起きが悪く寝ぼけていると思えるレックウザの暴走を止めるに止められずにいたヒロたちだったが、そんな彼らの前に現れたのは 謎の生き物と共に現れたミューズたちだった。 ミューズ:「ミュウが連れて来てくれたの 後は私たちが何とかするから、なずなちゃん、みんなと下に行ってて!」 なずな:「う、うん!」 なずなはミューズの気迫に負け、ヒカリたちの意志を無視して姿を消した。 そして天井が崩れた事によって最上階になった、天空の塔の50階にはミューズたちとレックウザ、そしてミュウが残った。 といっても、ミュウだけはどこから取り出したのか、クッションの上に寝転がり、ジュースとサングラスで休んでいる。 ミューズ:「あんた…何やってるの?」 ミュウ:「ん? のんびり見物だけど?」 この直後、ミューズの爆裂パンチが飛んだ。 ミュウはテレポートでかわしたが。 ミュウ:「だって、戦うのは僕じゃなくて君らだよ 進化できる力も持ってるんだしさ、僕がレックウザに何かやっても意味なさそうだもん じゃ、ここにいると危険みたいだし、頑張ってね」 そしてテレポートで姿を消してしまったミュウ。 ミューズを含め、ここにやってきたポケモンたちは、その勝手さに怒りを覚えていた。 だが、そんなことをしている暇はない。 レックウザは自分の縄張りにやってきた自分たちを狙っているのだから。 きっぴー:「ミューズ、早く何かしないと、僕達やられちゃうよ」 ミューズ:「ちょっと待って 蓮華のポケモン図鑑で…」 ミューズはポケモン図鑑を出し、すぐに仲間達に指示を出し始めていた。 トレーナー抜きのポケモンバトルが今、始まる。 第3章 27.災害の終わり… ミューズ:「レックウザは飛行・ドラゴンタイプ! だからタマちゃんの力で行くよ!」 タマ:「凍える風!」 トドクラーのタマの凍える風がレックウザの顔に向かっていく。 すると苦手な攻撃が向いたと気づいたのか、レックウザは周囲の空気を操って自分の周りに空気の壁を作り始めた。 タマ:「攻撃が通じてない!」 ドラ:「多分あの壁はオゾンだな 奴がよくいるっていうオゾンを身体に纏う事で攻撃から身を守る気だぞ」 ニド君:「だったらあの壁を壊すっきゃないな ミューズ、どうすんだ?」 ミューズ:「タマ、てんてん、ドラ、あなたたちの力を借りるわよ! タマは吹雪、てんてんは超音波、そしてドラはアイアンテールよ!」 タマの吹雪がオゾンを凍らせると、レディバのてんてんの超音波が氷にひびを入れていく。 同時に中にいるレックウザも苦しんでいるようだった。 そこにコドラのドラがアイアンテールでぶつかったことによって、レックウザを包んでいた氷は跡形もなく粉々に割れていった。 ミューズ:「ダネッチ、取り押さえるわよ!」 ダネッチ:「うん!」 レックウザは超音波とオゾンを凍らされたことによる寒さによって苦しんでいた事もあり、一気に割れた氷の中から飛び出した。 しかし、ミューズとダネッチの蔓の鞭がそれを阻むように押さえつけていく。 そこにロコンのきっぴーが焦って火炎放射を放ち、別方向ではタマが出番だと思って吹雪を放った。 だが、レックウザの力はミューズたちの予想をはるかに超えていたため、レックウザの竜巻によって弾かれてしまっていた。 ミューズ:「もうちょっとだったのに…」 きっぴー:「僕達の今の力じゃまだ抑えられないのかな?」 力の差を思い知る一同に対し、レックウザは雄たけびを上げて空に舞い上がり、そして急降下を開始していた。 どうやらレックウザの『空を飛ぶ』攻撃らしい。 ミューズ:「何かでアイツを翻弄するしかないわよ きっぴー、私のマジカルリーフに火をつけて!」 きっぴー:「う、うん!」 ミューズがマジカルリーフを放つと、そこにきっぴーの火の粉によって火が灯っていく。 普通なら燃えてしまうはずなのだが、何故かマジカルリーフは炎を纏ってレックウザにぶつかっていった。 でも、それでもまだハエが当る程度に過ぎないようで、レックウザのスピードは止まらない。 だが、そんなときに勇敢なポケモンがいた。 なっくん:「僕に任せて! 砂嵐!」 ナックラーのなっくんがレックウザに向けて砂嵐を放ったのだ。 レックウザの特性は戦闘中の全てのポケモンが天気の影響を受けなくなる『エアロック』なので砂嵐は行っても意味がない。 だが、レックウザの目を一時的に砂をぶつけることで晦ますには十分な効果があった。 なっくん:「さらに岩石封じだ!」 なっくんは砂嵐で目を晦ませた後、降下のスピードが弱まったレックウザに対して岩石を出現させて身体を封じようとした。 しかし、それはレックウザの原始の力で逆に跳ね除けられてしまった。 でも、レックウザにダメージを与える事が出来た事には変わりない。 ドラ:「全く、無茶なことしやがって」 なっくん:「でも、今ならチャンスができたよ 今ならやれる!」 なっくんに向いていた原始の力を鉄壁で守ったドラが怒るが、なっくんはまだまだ性格の通り、向かっていこうとし、 同時に光りだしていた。 ダネッチ:「これがミュウの言ってた進化の力…?」 ミューズ:「かもしれない 多分、進化はいつでもできるのよ ただ、それに見合うだけ、もっと動く必要があるのかも…」 光が収まると、なっくんはナックラーからビブラーバに進化していた。 タマ:「それじゃ、なっくんに続こうよ!」 きっぴー:「そうだ!」 なっくんが進化を果たしたことで、他の仲間達が沸き始めた。 そしてタマときっぴーが吹雪と火炎放射を放つ。 そこになっくんの龍の息吹が加わった。 炎は兎も角、氷タイプとドラゴンタイプの力はレックウザの弱点そのもののため、レックウザは押され始めていた。 なっくんの使った岩石封じの影響もあり、素早さが少し遅くなったことも関係して、攻撃が当てやすくなったのだ。 しかし、レックウザの龍の息吹で反撃を始めていた。 ミューズ:「互角…いえ、徐々に押されてるわ…」 ニド君:「ヤバイな…、このままだと不味いぞ」 ドラ:「早くしないと下で俺たちを待つ奴らも限界になるかもしれないしな」 焦りを感じ始めるミューズたち。 だがその直後、てんてんが超音波で攻撃に加わり始めたのだ。 ミューズ:「てんてん、危険よ!」 てんてん:「でも、何かしないと始まらないよ」 きっぴー:「確かに、蓮華を助けるためにやってるんだよ」 ダネッチ:「だったら僕も頑張る!」 ドラ:「確かに、ここで焦ってても始まらないな」 ニド君:「まずはこいつを抑える それだけのために来てるんだしな」 ミューズ:「確かに…そういえばそうよね …いつも私が蓮華に言ってた事、忘れてた」 そして、ミューズを除く7匹が光り始めていた。 蓮華を助けたい想い、レックウザをおとなしくさせたい想い、そして今できることで頑張りたいという意志が組み合わさって、 彼らがミュウから与えられた力を発動させたのだ。 きっぴー:「僕の炎でレックウザを閉じ込めるよ!」 キュウコンに進化したきっぴーが炎の渦を放つ。 だが、炎の渦はレックウザの破壊光線で相殺されていた。 しかし、そのレックウザの背後にはニドキングに進化したニド君が回りこんでいた。 ニド君:「俺のメガホーンを受けてみろ!」 ドラ:「俺の気合パンチもだ!」 てんてん:「俺の連続パンチも結構イケルぞ!」 さらにボスゴドラに進化したドラの気合パンチと、レディアンに進化して性格も少々変わったんじゃないかと思われるてんてんの 連続パンチもレックウザにぶつかり、3つの衝撃を受けたレックウザはよろけていた。 なっくん:「これでトドメだ!」 タマ:「多分…大丈夫だね」 ダネッチ:「…お前ら、これやりすぎじゃないか?」 ミューズ:「いいじゃん、いいじゃん、これでトドメ!」 そこにダネッチは心配しているが、3つの攻撃がレックウザに放たれていった。 フライゴンに進化したなっくんの破壊光線に、トドゼルガに進化したタマの絶対零度、そしてフシギバナに進化したダネッチと ミューズによるソーラービームである。 能天気なためにタマは絶対零度が一撃必殺の技だと知りつつも放っていた。 これにダネッチは心配していたのだ。 ダネッチの性格も、フシギバナへの進化で微妙に変わったのではないかと思えた。 そして3つの攻撃を受けたレックウザはそのまま、塔の残っていた壁にぶつかり、そしてむくっと起き上がっていた。 だが、 レックウザ:「………ん? んああああ〜!! 久々によく眠ったな…」 レックウザは確かにミュウが言ったとおり、本当に寝起きが悪くて寝ぼけていただけらしく、今までのバトルのことは知らないらしく、 よく眠ったと淡々と喋っていた。 これにはミューズたちも唖然である。 ただ、タマだけは「ねっ?大丈夫だったろ?」と言っていたが。 数時間後、レックウザは目の前のポケモンたち、特にミューズによって今の状況を説明されていた。 レックウザ:「なるほどな 最近異常気象が多いと思ったら、またグラードンとカイオーガの奴らが目を覚ましてたのか しかも、よりによってまた悪い奴らに利用されてやがる」 ミューズ:「だから、力を貸してくれない?」 レックウザ:「ああ、いいぜ」 レックウザはミューズたちの頼みを聞き、ミューズたちを背中に乗せて飛び立った。 志穂:「…どうやら、来たみたいね」 海:「そのようですね」 天空の塔の島でネオアース団を追い払った一同は、幻島に集まっていた。 そこはセレビィの力と志穂の力が合わさる事で、未だにこの時間軸に姿をさらしていた。 だが、セレビィと志穂の表情が徐々に険しくなって来ているため、そろそろ時間の問題ではないかと思われていた。 同時に…、 晃正:「こ、これ以上はまずいっすよ」 フヨウ:「もうちょっと抑えるのよ もう少しなんだから!」 浅香:「で、でも、私たちの能力にも限界が…」 カゲツ:「倒れるなよ もうちっとの辛抱なんだからな!」 清香:「そうだよ、私たちの使命だよ 確かに体の力は抜けてきてるけど…」 プリム:「諦めてはいけません 私たちが頑張らないと、彼らの力はこのホウエンを、そして世界中を破壊しても変わりません!」 レジロック、レジスチル、レジアイスを使ってグラードンとカイオーガの力の放出を封じている晃正たち3人も、四天王の力を借りても 流石にそろそろ限界かと思えていた。 そこに、一同の思いを乗せるかのように、一匹の大きなドラゴンがやってきた。 哲也:「アレがレックウザ…」 綾香:「ようやく、来てくれたみたいですね」 美咲:「ワタルさんとゲンジさん、絶対後で悔しがるんじゃない?」 来美:「確かに…レックウザはドラゴンタイプだからね…」 この地にはナギやワタル、ゲンジの姿はなかった。 何故なら、ルナや輝治も含め、ポケモンGメンやジムリーダー達は、倒したネオアース団員を連れてポケモン協会本部へと向かってしまったのだから。 そして、レックウザの咆哮が聞こえたとき、グラードンとカイオーガの暴れる物音や波動が静まり返っていた。 雪美:「す、すごい…」 泉:「私たちでも抑えれなかったのにね…」 双葉:「同感…」 そのすごさは、世界を揺るがせる力を持っていてもおかしくない3人でさえも驚かせたのだが…、 氷雨:「久しぶりね、レック!」 氷雨だけはレックウザに手を振っていた。 健人:「氷雨さん?」 菜々美:「まさか…知り合いとか言うんじゃ…」 氷雨:「だから、レックは私の知り合いよ」 衝撃の事実である。 今までの苦労はなんだったのだろうかと思えるほど…。 ナナ:「氷雨さん…あの、知り合いなら起こしてきてくれれば…」 氷雨:「仕方ないわよ だってさっきのさっきまで出られなかったし、レックがここに住んでるとは思わなかったからね だって、私がレックに会ったの、現実世界だもの」 どうやらこのレックウザは現実世界のオゾン層にも来る事があるらしい。 世界と世界をつなぐ入り口は、よりのもよって変な場所と場所を通じているようだ。 それは兎も角、今何をしなきゃいけないかといえば、蓮華とユウキの奪還だった。 でも、グラードンとカイオーガがおとなしくなったとはいえ、2人がいるのは核の中。 誰の能力を使ったとしても、体内まで光を照らすようなことができる能力者はいなかった。 鈴香:「それじゃ…あのままなの?」 氷雨:「一つ、やれることがあるとすれば、音の能力者による力の共鳴ね」 雪美:「確かに、音の力をあわせることで、私たちの想いを伝える事は出来るはずよ」 泉:「菜々美ちゃんと鈴香ちゃんにかけるしかなさそうね」 双葉:「音と歌か…、泉、あなたも手伝ったら?」 泉:「…分かった」 そして、菜々美が普段メガホンとして使っている武器を、能力によってハープに変えていた。 同時に、鈴香もメガホンをマイクに変えている。 ミューズ:「あれは?」 律子:「初めて見る形ね…」 美香:「うん、だって滅多に使わない力だもん 音の能力者は、その能力を具現化することによって相手に響かせる力に変えることができる そして、菜々美のハープはヒーリングの力を持つと共に、蓮華ほどじゃないけど、癒しの力を持ってるから ただ、あの能力はね、 体力を物凄く消耗するの だから菜々美は滅多に使わないの」 律子:「それじゃ、力を送る?」 美香:「そういうこと」 能力者たちは自分の持っている力を菜々美と鈴香に送り始めた。 同時に蓮華を助けたいという想いも、力と共に伝わっていく。 その想いを音に変え、歌に変えて、音の力はグラードンとカイオーガに伝わっていった。 菜々美のハープが響かせる音色は、起きたばかりのレックウザや、バトルで倒れていったはずのポケモンや、ポケモンの攻撃で傷を負った モコナたちの怪我をも治していく。 そして、鈴香が能力を放出すると共に歌い続ける歌が、徐々にグラードンとカイオーガの中に響いていった。 誰かを癒し、そして目覚めてほしい想いの力によって。 また、そこに泉による海の慈愛を、海の聖なる生命の神秘を称える歌が加わった。 けれど、加わったのは泉だけではなかった。 鈴香に似て鈴香の声とは若干違う声が一つ、そして蓮華の声に似て若干違う声が一つ、加わったのだ。 ハッとして振り向く一同の前には、スズカと、鈴香に似た女性の姿があった。 鈴香:「嘘っ…、お母さん…」 美羽(ミハネ):「鈴香、そして皆さん、続けるのです あなた方の心は、徐々に伝わりつつあります」 2人の登場に、一瞬音が止んだが、再び続けられた。 菜々美のハープの音色に乗せ、4人の歌声が響いていく。 それにより、グラードンとカイオーガの争いを続けようとする、大暴れを使用とする目の色も、徐々に変わり始めていた。 バイツとベイルによって施された術が解け始めているのだ。 そんな中、その状況をさらに助けるように、2人の煙のような少女と女性がグラードンの中に入っていった。 瑞希:「蓮華ちゃん、起きてください」 氷雨:「いつまでも相手の術によって取り込まれてちゃダメよ あなたはいくつもの試練を乗り越えてきたはず あなたの大切な人はまだ生きているわよ さぁ、起きて!」 グラードンの心へと入った瑞希と氷雨は、そこでグラードンの心の中で眠っている蓮華に声をかけた。 心の中にも、能力者たちの、そして幻島に集まった者たちの想いが響き渡っていた。 瑞希:「蓮華ちゃんのために、必死で頑張った人は少なくないんです 蓮華ちゃんのお母さんも弟さんもまだ生きてます」 氷雨:「あなたの弟を助けるには、あなたの力が必要なのよ」 蓮華:「……私の、弟?」 瑞希:「そうですよ 蓮華ちゃんの弟です」 氷雨:「あなたは弟を見殺しにしたと思ってる でも、あの時、あなたの弟は瓦礫に飲まれる前にポケモンのテレポートによって 助かっているのよ でも、今彼は闇に飲まれているわ 闇の中に染まった心を光で助けられるのはあなたの力よ 私たちが出来るのは、 あなたを目覚めさせる事だけだから だから、起きなさい」 その時、蓮華に対して、もう一つの声がかかった。 スズカ:「蓮華、早く起きなさい あなたのやるべきことをするのよ」 それはスズカの声だった。 蓮華:「…私……の、やるべきこと…」 スズカ:「そうよ あなたは今まで本当に頑張ってきたのね あなたに会えてよかったわ」 蓮華:「……お…お母……お母さん…、…ユウキ……!!」 こうして、ようやく蓮華は目を覚まし、同時にグラードンから光が溢れた。 蓮華の能力、癒しの光が更に解放されたのだ。 それは幻島を、カイオーガを、そしてホウエン全体を覆うほどの光だった。 光に包まれると、グラードンとカイオーガによって傷ついたポケモンや人々を回復させていき、同時に大地に緑を復活させ始めていた。 また、カイオーガの中にいるユウキをも包みこんでいた。 ユウキ:「…ね、姉ちゃん……?」 ワタル:「…どうやら、植物使いのあの子が復活したようだな」 輝治:「そのようですね これで、この災害も収まると思います」 ルナ:「うふふふ、確かにお姉ちゃんが最強だって言うべきだけあるわね」 そして、数時間に渡って輝き続けた光が止み、更に数時間経った時、蓮華とユウキは目を覚ましていた。 蓮華:「ん…」 ユウキ:「こ、ここは…?」 蓮華とユウキの周囲には、幻島にいたはずの一同の姿があった。 ただ、2人がいたのは幻島ではなく、天空の塔のある島の上だった。 2人を助けた直後、セレビィと志穂に限界が来て、一同はこの場所までやってきたのだ。 氷雨:「ようやく起きたわね」 ミューズ:「しかも、心配かけすぎよ」 ナナ:「でも、目を覚ましてくれてよかった」 女性陣はほとんどが泣いていた。 蓮華:「…ごめんなさい」 ユウキ:「ゴメン…」 自分が何をやってきていたのかは、ほとんど記憶にないものの、グラードンとカイオーガの中にいたときの記憶を断片的に持っているからか、 2人は頭を下げる。 しかし、その頭を思いっきり叩いたのは、他ならぬミューズだった。 ミューズ:「あのね、謝るのはまだ早いのよ!」 蓮華:「どういうこと?」 ミューズ:「2人が起きたのは嬉しいんだけど、まだグラードンとカイオーガは暴れてるんだからね!」 蓮華とユウキは蒼くなった。 鈴香:「今、清香先輩たちが頑張って押さえ込んでるんだけど…」 律子:「目が覚めたら、元の野生に戻っちゃって、本質に戻っちゃったのよ」 美香:「つまり、本来の姿ってこと」 哲也:「元々、奴らは暴れまわるような奴らだからな レックウザも疲れたとか言ってまた眠りに行ってやがるし」 氷雨:「レックなら、私が起こしてくるわ」 ナナ:「だから、蓮華とユウキ君はグラードンとカイオーガを捕まえてきてね」 蓮華:「どうして?」 ナナ:「だって、彼らは眠らせてあげなきゃいけないでしょ? 彼らを封印するための場所があるの」 蓮華:「どこ?」 ナナ:「今彼らが向かおうとしている、目覚めの祠よ そこにはまだ誰も使ったことがないけど、グラードンとカイオーガを封印し、 彼らを永遠に眠らせるための場所があるの 能力者の力が必要なのよ」 蓮華:「分かったわ」 ユウキ:「…分かった」 蓮華もユウキも一応納得し、トロピウスのトロに2人で跨るとグラードンとカイオーガの元に向かうのだった。 蓮華:「それにしても、何か嬉しいな 弟が出来て」 ユウキ:「俺も蓮華が姉さんだったのはなんか嬉しいよ しかも生きてたし」 蓮華:「あの時、私が発電所の地下に落ちたときに助けてくれたのは、ユウキだったんだね」 ユウキ:「俺も今思い出したよ、姉さん」 蓮華:「ユウキ」 と、その時再び、ミューズが飛び出して二人の頭にハリセンをお見舞いした。 ユウキ:「いってぇ〜…」 蓮華:「ミューズ、ちょっとは感動の再会をさせてよ」 ミューズ:「…だって、もう少しで2人がキスしそうだったんだもん」 蓮華:「するわけないでしょ!」 蓮華は真っ赤になって否定するが、ユウキは少し残念そうな顔をしている。 実際、顔がすごく近づいていたのだ。 まぁ、実は2人とも姉と弟で再会のキスくらいいいかと思いかけたのは事実だった。 蓮華:「でも、ハリセンはやりすぎじゃないの?」 ミューズ:「だって、ユウキの唇は渡したくないもん!」 蓮華&ユウキ:「え…?」 ミューズ:「あ…」 3人の間に、妙な空気が流れた。 ユウキ:「それって…」 ソルル:「つまり、ミューズはお前が好きだってことだな」 なっくん:「(そうそう)」 そこになっくんとソルルがボールから飛び出し、ソルルが人間の姿に変わってユウキに言う。 なっくんが思いっきり頷くため、ソルルは振り落とされそうになるのを必死で耐えていた。 蓮華:「…ミューズとユウキが……って、ソルル!?」 ミューズ:「あ、そういえばソルルの姿、蓮華は見るの、初めてだったね」 ソルル:「悪い、言ってなかったな」 蓮華はソルルの様子に驚いていた。 同時にミューズはソルルの後ろに座り、同じように人間の姿になっている。 ミューズ:「ソルルはね、律子ちゃんとくっついたのよ」 ソルル:「お、おい!」 蓮華:「嘘っ!?」 流石に蓮華は驚き続けていたが、トロとなっくんがニヤニヤしているのを見ると、まさしく事実らしい。 蓮華はソルルをじっと見つめていた。 ユウキ:「なぁ、話してるところで悪いんだけどさ…ミューズ、今の言葉って…」 ミューズ:「うん、メウロには悪いけどね、私、ユウキのことが好きだよ」 ユウキ:「……あ、ありがとう …あのさ、答えは後でいいか?」 実際は今言われたかったミューズだが、その言葉に頷いていた。 何故なら、グラードンとカイオーガの姿を見つけたのだから。 晃正、浅香、清香の3人と共にレジ3体がグラードンとカイオーガを押さえつけている姿も見られる。 ユウキ:「姉さん、俺、先にいってるよ」 ユウキはボーマンダのボウスを出し、カイオーガに向かっていった。 蓮華:「それじゃ、私たちも行くよ みんなの力借りるから …でも、ソルルはトロと一緒に休んでて」 ソルル:「…俺達の力は必要ないのか?」 蓮華:「そうじゃないけど、私の頭の中の公式を正しく進めたら、ちょうどいいメンバーがいたの 私、彼らにかけてみたいから」 ソルル:「分かったよ、蓮華、しっかりやれよ」 蓮華:「うん …それにしても、ソルルに説教されるとは思わなかった」 ミューズ:「確かにね 蓮華にとっては物凄い事かも」 ソルル:「おい!」 ミューズ:「あ〜、赤くなってる 恥ずかしいんだ!」 ソルル:「…」 そして蓮華はなっくんに乗り、グラードンに向かっていった。 ユウキがカイオーガの前に回りこむと、カイオーガはユウキの姿を見て、敵だとみなしたのか、ハイドロポンプを放っていた。 ユウキ:「ボウス、破壊光線だ! そしてリンス、君に決めた!」 カイオーガのハイドロポンプが破壊光線によって相殺されると、プクリンのリンスがカイオーガの上に落ちる。 ユウキ:「リンス、天使のキッスだ!」 しかし、天使のキッスはカイオーガの潮吹きによってリンスが打ち上げられてしまったために成功しなかった。 だが、ユウキは更に、ジュプトルのリョクを追加した。 ユウキ:「カイオーガに一斉攻撃だ! ボウスは破壊光線、リョクは種マシンガン、リンスは吹雪!」 3つの力が同時に当り、カイオーガは苦しい表情を浮かべる。 しかし同時に青く光り始めていた。 カイオーガの『瞑想』である。 しかし、断片的な記憶のおかげでユウキは更にカイオーガを追い詰めていった。 ユウキ:「リンス、金縛りだ!」 リンスの金縛りによって瞑想が封じられた。 これによって、カイオーガの絶対的な防御の一つが封じられた。 ユウキ:「よし、メウロ、スモッグだ! リョクとリンスはピースに乗ってくれ!」 ユウキはブースターのメウロを出し、同時にトロピウスのピースを出してリョクとリンスを移らせる。 これ以上ポケモンを出したら、ボウスが落下しかねないからだ。 そしてメウロの吐き出したスモッグがカイオーガを包み込んでいった。 しかし、スモッグをカイオーガの潮吹きが打ち払う。 そこにボウスが向かっていった。 ユウキ:「ボウス、メウロ、同時に睨みつける攻撃だ! ピース、リョク、種マシンガン! リンスはハイパーボイス!」 睨みつける攻撃を受けてカイオーガは目を丸く広げて驚き、そこに種マシンガンとハイパーボイスが続く。 カイオーガは水に潜るのも忘れて動揺している様子だった。 ユウキ:「今だ、ラルス、絶対零度だ!」 このチャンスをユウキが見逃すわけではなく、ラルスの絶対零度で氷漬けにしていた。 普通なら一撃必殺で倒したことになるのだが、氷漬けになってもまだ動こうとしている所を見ると、やはりカイオーガは只者じゃないことが分かる。 ユウキ:「流石だな それじゃ、行け!マスターボール!」 そして、ユウキはマスターボールを投げ、カイオーガをゲットしたのだった。 蓮華:「なっくん、グラードンの攻撃に注意して接近よ!」 なっくんの姿を見つけて、グラードンもカイオーガ同様に敵がやってきたとみなしたらしい。 だが、グラードンが攻撃をする前に、グラードンにはカビゴンのゴンが向かっていった。 カイオーガは海の上なのだが、グラードンは特性の日照りが影響して、数メートル範囲は水分が蒸発しきった大地のようなものだったため、 ゴンは水に邪魔されることなく、グラードンに向かっていった。 蓮華:「ゴン、メガトンパンチよ!」 ゴンの一撃がグラードンに入り、グラードンは少し下がったが、地面を強く蹴り、地割れを起こしてゴンを沈めていた。 だが、ゴンの後にはヘラクロスのヘラクロが続いていた。 蓮華:「ヘラクロ、岩石封じよ!」 ヘラクロの岩石封じによってグラードンにはたくさんの岩がぶつかり、さらにメガホーンがグラードンをさらに後ずさりさせる。 だが、そこにグラードンの火炎放射が向かっていった。 でも、それを蓮華が考えていなかったわけはない。 蓮華:「コイッチ、ハイドロポンプ!」 グラードンの火炎放射はコイッチのハイドロポンプによって押され、さらにヘラクロの瓦割がグラードンの頭を殴りつけた。 それにより、グラードンは更によろけていた。 蓮華:「今よ、フィル、チリリ、サイコキネシス!」 よろけたチャンスを狙い、フィルとチリリのサイコキネシスがグラードンの動きを封じ、そこにアゲハに乗ったミューズが向かった。 ミューズは蓮華の力を託されていた。 ミューズ:「蓮華、やるよ! 必殺、ソーラービーム!」 そして蓮華とミューズのソーラービームが打ち出され、それによってグラードンは動かなくなっていた。 蓮華:「倒しちゃった…?」 ミューズ:「そんなことはないと思うけど…、蓮華、ゲットしないの?」 蓮華:「あ…そっか 行くのよ、ハイパーボール!」 蓮華はマスターボールを持っていなく、ハイパーボールを投げた。 こうして、ボールを4回投げ、ようやくグラードンをゲットしたのだった。 2人がグラードンとカイオーガをゲットした直後、ホウエン全域を覆っていた強力な日光と大きな雨雲は姿を消した。 ようやく、ホウエンを、そして世界を覆いつくそうとしていた災害に幕が閉じられた。 後は、封印だけである……。