蓮華:「ユウキもゲット終わった?」 ユウキ:「ああ、意外と簡単だったかな」 蓮華:「うん、どうしてみんな、あんなに大変そうにしてたのかな?」 蓮華とユウキはさらっとこんな事を言っていた。 ミューズは再びハリセンを出そうとしたほどだった。 何故なら、グラードンとカイオーガがアレほどまで暴れられたのは蓮華とユウキの底なしの能力があったからなのだからだ。 しかも紅色と藍色の珠の力もある。 それが今はないために、蓮華とユウキがゲットするのも容易かったわけだ。 そうじゃなかったら、流石に能力者最強の蓮華でも簡単にゲットするのは無理であろう。 ミューズ:「それよりも、早く目覚めの祠があるルネシティに行く必要があるわよ」 蓮華:「あ、そうね」 ユウキ:「早く行こうぜ、姉さん!」 蓮華:「ええ!」 2人はピースとなっくんに乗り、先を急いだ。 そして、真っ白な岩山に包まれた、歴史が眠る神秘の街、ルネシティが姿を現していた。 そのルネシティの上空にはすでに雪美と氷雨、瑞希と共にレックウザが飛びまわり、目覚めの祠の前にも何人かの姿が見えた。 氷雨:「その様子、そしてこのすがすがしい天気から見ると、ゲットは上手くいったみたいね」 蓮華:「うん! ただ、ハイパーボール、使いきっちゃった」 ユウキ:「あれっ、姉さんはマスターボール持ってなかったのか?」 蓮華:「うん、…え、持ってたの? いいなぁ…」 蓮華は実際、マスターボールだけは見たことがなく、何故かもう一つ持っていたユウキを羨ましそうに見ていた。 だが、そうこうしている暇はなく、蓮華はせかされるように、ユウキとミューズと共に、目覚めの祠にやってきた。 哲也:「蓮華たちも来たし、ようやく始めるか」 健人:「そうだな」 蓮華:「…って、何をやるの?」 だが、蓮華とユウキ、ミューズは、教えられる前に気づいた。 目覚めの祠の前にはある石版があり、15の模様が石版の中で円を描いているのが分かった。 そしてその真ん中には、2つのボールを置く場所がある。 志穂:「そこにグラードンとカイオーガが入っているボールを置いて」 蓮華:「うん」 ユウキ:「分かった」 2人がボールを置くと、石版が少し光りだしていた…。 第3章 28.封印、そして最後の戦い〜全てが終わり、始まる〜 蓮華:「これは?」 志穂:「それぞれの模様は、私たちの能力を示しているの その能力の場所に、私たちの能力の力を注ぎ込む事で、石版に力が満たされ、 グラードンとカイオーガはここに封印されるのよ そして長い永眠に入るの」 ユウキ:「けど、また復活したりしないのか?」 律子:「それは大丈夫よ この石版は15の力が注がれる事で15に分裂し、様々な所に飛び散るの その一つは雪美さんが 所持して現実世界に持ち帰るから、決して復活する事はないわ ずっと、もう、互いが争うことがないようになるわ」 だが、その時に蓮華は気づいた。 ここには人間の姿になったミューズを含めても14人しかいないのだ。 蓮華:「一人、足りなくない?」 しかし、その心配はいらなかった。 蓮華のボールから飛び出したソルルが人間の姿になって立っていたのだから。 ソルル:「このマークは悪、すなわち闇の力を意味しているはずだ 俺がやるよ」 というわけで、ご都合主義という言葉が蓮華とユウキの頭に流れたわけだが、2人はその言葉を口に出すことはなく、封印の儀式が始まった。 一人ずつ、石版に力を注ぎ込んでいく。 健人:「俺の力は闘力 人に勇気と努力を与えるべき力」 菜々美:「私の力は音を生む力 それは、生命の感覚を宿す力」 鈴香:「私の力も音 だけど、私の音は歌う事、声を育む力 すなわち、生命の息吹を育む力」 悠也:「俺の力は風 爽やかな風を伝う力」 志穂:「私の力は熱き炎、そして光る雷 それは自然の温もりを示す力」 律子:「私の力は儚き光 けどその光は、弱気儚い美しさを見せる力」 ソルル:「俺の力は深き闇 ただし、闇は光の大切さを教え、そして知るための力」 蓮華:「私の力は植物、そして植物を宿す大地を宿す そして、母なる大地の恵みを与える力である」 涼治:「俺の力は風、そして氷 それは、自然の厳しさを生命に教える力」 哲也:「俺の力も風 だが、この風は集う風、風が吹くことを意味する力」 玲奈:「私の力は明るき光 それは、自然と生命の神秘を魅せる力」 ミューズ:「私の力は植物 それはいつまでも生き続けることを示す力」 ユウキ:「俺の力は慈愛の海 それは、生命を包み込む優しさの力」 美香:「私の力は炎 炎は暖かさを伝える力 だけど同時に、炎による恐怖を教える力よ」 翼:「俺の力は水、そして風 この力は生きる厳しさを教え、それに立ち向かう成長を示すための力」 こうして、15人の力が石版に宿った時、石版は15個に分裂し、涼治の力を宿す石版を、雪美が手に取っていた。 それ以外の石版は世界中に散っていき、これにより、グラードンとカイオーガは封印された。 それは彼らがよく知っている。 何故なら、15の石版が消えた直後に、グラードンとカイオーガが入っているボールも、いずこに姿を消したのだから。 その直後、蓮華たち15人は、その場所から姿を消し、天空の塔の最上階に立っていた。 そこには瑞希、氷雨、雪美もいて、彼らの前にはレックウザと共に、1匹のポケモンがいた。 蓮華:「氷雨さん、これは…?」 氷雨:「封印が終わったから、最後にレックウザがジラーチを召喚してくれたの」 ユウキ:「ジラーチって、確か願いを一つだけ叶えてくれるって言う、幻のポケモン…」 雪美:「そうよ でも今回は特別に2つ 1つはみんなも思うはずよ このグラードンとカイオーガによって破壊されたホウエンの大地と海を 元に戻す事 じゃないと、ホウエンは復興されないわ」 ユウキ:「分かった 俺が頼むよ ジラーチ、1つ目のお願いだ この災害によって、事件によって破壊されてしまった大地と海を、ホウエンの 大地と海を元に戻してほしい!」 すると、ジラーチは光り出し、そして光が止んだ。 美香:「…なんか、戻ったって感じがしないわよね」 玲奈:「しょうがないわよ 私たちはここにいるんだもの」 その時、ナナから連絡が入った。 蓮華:「ナナ、どしたの?」 ナナ:「さっき雪美さんから聞いてはいたけど、やっぱりジラーチの力ってすごいわね」 どうやら、ナナが言うには、確かにホウエンの地が元に戻っているというのだ。 しかも流されてしまったはずの建物や燃えてしまったはずの緑も全て、グラードンとカイオーガが復活する前の状態に戻っていたのだと。 哲也:「ポケモンの神秘だな」 律子:「流石って言う言い方しかないわね それで、最後の願い、どうするの?」 その時、レックウザが語り出した。 レックウザ:「そなたたちに言う事がある 元々はジラーチの力は1つだけ ただし、今回は特別だ お前たちを元の世界に返し、 同時に再びこの地に来られる様、異次元をつなぐ扉を作るように願ってはどうだろうか?」 つまり、再びナナの家と蓮華の家をつなぐ、あの扉が作ることが出来るというわけだ。 再び、ドアをくぐるだけでポケモン世界に来る事ができるのだ。 これは蓮華たちには願ってもみないことだった。 蓮華の母スズカと弟のユウキはポケモン世界にいる以上、現実世界では死亡した事になっている以上、現実世界に帰って暮らすことは無理である。 でも、ポケモン世界を行き来できるようになれば、蓮華はいつでも、母親に、弟に会いに来る事が出来るのだ。 それに、蓮華以外にも、あの扉を復活させたいと思う者はいないわけではなく、その場の全員がそう思っていた。 だから、蓮華はその願いを言おうとした。 蓮華:「最後の願い、それは…」 しかしその直後、蓮華たちの足元で爆発が起きていた。 氷雨:「何!?」 瑞希:「どういうことですか?」 驚く一同だが、その時、物陰から何かが飛び出した。 そして、彼らにとっては一番近くにいると思われるユウキと律子に襲い掛かってきたのだ。 蓮華:「ユウキ!律子!危ない!」 蓮華は叫び、駆け出そうとするが、地面で続く爆発が蓮華たちを近づけない。 レックウザも攻撃を放とうとしたが、目の前に現れたイシツブテたちの不意打ちを受けて放つことが出来なかった。 そして、律子に向かってマニューラの爪が、ユウキに向かってヘルガーの放つ紅蓮の炎が飛ぼうとしたときだった。 ミューズ:「ユウキ!」 ソルル:「律子!」 2人の前にはミューズとソルルが飛び出し、それらを阻んでいた。 ミューズは炎を受けながらも、蔓の鞭でヘルガーを跳ね飛ばし、ソルルはマニューラを弾き飛ばす。 でも、それはポケモンの姿ではなく、人間の姿で行ったことだった。 さっきの封印の儀式の時と変わらず、2人の姿は人間のままだった。 それが、2人に思ってもみない事を行っていた。 ミューズは炎によって火傷を負い、更にヘルガーの爪で切り裂かれていて、ソルルもマニューラに身体を貫かれていたのだ。 ポケモンの姿だったら避けれたのかもしれない。 けれど、そうではなかったことが、明暗を分けたらしかった。 マニューラとヘルガーが倒れると同時に、ミューズとソルルもその場に崩れ落ちていた。 すると、舌打ちが聞こえ、物陰からはなんと、レムドとボムが姿を現したのだ。 蓮華:「今の、あなたたちがやったのね ボムは分かるけど、あんたは何者!」 瑞希:「みんな、アイツがネオアース団のボスよ」 唯一あのレムドとの戦いに居合わせた瑞希が言うと、レムドは笑い出していた。 レムド:「ふっ、せっかくジラーチを奪おうと思ったのだが、マニューラもヘルガーも野生に戻ったせいで、どうでもいい奴を襲ってしまったか」 蓮華:「どうでもいい奴、ですって?」 レムド:「ああ、俺にとってはそこにいる奴らなど、ゴミに等しいな」 蓮華:「あんたにミューズとソルルの何が分かるのよ!」 レムド:「知る気もないさ それにしても、ここに永くいても意味がないな ボム、逃げるぞ」 ボム:「はっ!」 レムドとボムは、ケーシィを使って逃げようとした。 だが、咄嗟に蓮華が、そして蓮華を追いかけて涼治が彼らに飛びかかり、共に姿を消していた。 後に残ったのは、血を流して倒れるミューズとソルル、そしてそれを囲む一同の姿だった。 ただ、何故か瑞希と雪美の姿もなかったが…。 ユウキ:「ミューズ、俺のために…」 ミューズ:「泣いちゃ…ダメだよ 男の子…でしょ?」 ユウキ:「で、でも、俺、まだ言ってないよ お前のこと…」 ミューズ:「もう、分かってる…から …何も、言わなくても…分かるよ」 律子:「ソルル、しっかりして! 私が助けるから!」 ソルル:「…無理するな …俺は、お前が無事だからいい…」 律子:「でも…!!」 ソルル:「泣くなよ …泣かれると、…死……れな……だろ?」 ミューズとソルルの呼吸が徐々に減っていき、顔色が徐々に蒼くなっていく。 律子を始め、玲奈たちが必死でヒーリングをしようとしたが、全く効果がないようだった。 氷雨:「…レック、ジラーチのお願いはまだできるわよね?」 レックウザ:「ああ、だが…」 氷雨:「蓮華ちゃんにとっては別の意味で別れをさせることになるわ でも、私と違って、彼らは復活する事がない 作られた命、そしてその命から生まれた命は、また復元されない だから、願い事をさせてね」 レックウザ:「…分かった」 氷雨:「ジラーチ、あの2人にポケモンの命を与えるのは無理だと思う もうすぐその命は消えてしまうから だから、あの2人に人間としての 命を作ってあげて 彼らのポケモンとしての生命は消えるけど、人間としての生命は消えないでしょ?」 氷雨は、ジラーチに願い事を告げた。 一瞬、ジラーチも複雑そうな顔をした。 そんな願い事をかなえることになるとは思っても見なかったのだろう。 しかし、ジラーチはその願いを叶え始めていた…。 〜…一方…〜 レムド:「くそっ、お前たちが飛びついたせいで、出る場所が狂ってしまった」 ボム:「私たちの逃走を成功させるために、あんた達は生かしておかないよ!」 レムドとボム、そして蓮華と涼治は、干潮時の浅瀬の洞穴にやってきていた。 蓮華:「ミューズとソルルの痛み、教えてあげる」 涼治:「生命の命を奪うことがどんな事かもな」 蓮華と涼治はボールに手をかけた。 しかし、ボムがボールに手をかけるのに対し、レムドはそれを無視して洞窟の奥に歩き出していた。 レムド:「ふんっ、俺はポケモンバトルはする気がない ボム、どちらかはお前に任せる 後で例の場所に来るんだぞ」 ボム:「はっ!」 そしてボムはクロバットとラプラスを放ってきた。 しかし、クロバットの翼で打つをなっくんの鋼の翼が、ラプラスの冷凍ビームをタマの冷凍ビームが迎え撃つ。 蓮華:「涼治、あいつを追って 私はコイツとは因縁があるの」 涼治:「分かった!」 涼治はレムドを追って行き、蓮華はボムに向かっていく。 ボム:「ふん、レムド様の力を知らないくせにあの小僧を放つとはな」 蓮華:「涼治は負けないよ ダブル怪盗コンビにはね」 ボム:「どうだろうな クロバットはエアカッター、ラプラスは水鉄砲だ!」 2つの攻撃はなっくんを集中的に狙っていた。 だが蓮華も負けてはいない。 蓮華:「タマ、吹雪よ!」 ボム:「ふっ、それがどうした! クロバットは吹き飛ばし、ラプラス、サイコキネシスだ!」 蓮華は吹雪によってクロバットを倒し、同時にラプラスにも少なからずダメージを与えようとした。 しかし、ラプラスのサイコキネシスによって吹雪はその軌道を変えられ、吹き飛ばしによって返されていた。 そしてこの吹雪によって、なっくんが倒されてしまったのだ。 蓮華:「なっくん!」 ボム:「まだ終わってない! ラプラス、滅びの歌だ!」 そしてラプラスの滅びの歌が洞窟を響き渡り、クロバットも倒れたが、同時にタマが倒されてしまっていた。 蓮華:「くっ…、だったら…」 蓮華はボールに手をかけようとした。 だが、背後からの何者かの攻撃を受けてしまう。 それはゴローニャの体当たりだった。 その衝撃でボールを取り落とし、倒れる蓮華。 ボム:「これで終わりだな あの時は必要だったが、もうお前は必要ない この洞窟ごと消えてもらおう ゴローニャ、大爆発だ!」 ゴローニャは大爆発を起こした。 その爆発の影響で飛ばされてしまう蓮華やなっくん、タマ。 そして、彼らの上に大量の岩が落下しようとしていた…。 涼治:「待て! エアームド、スピードスターだ!」 その頃、レムドを追う涼治はエアームドで攻撃を仕掛けていた。 しかし、突然背後の壁が崩れだし、その衝撃でエアームドと共に岩壁にぶつかってしまった。 涼治:「いってぇ…」 レムド:「ふっ、怒りばかりで周りを見ていなかったな」 涼治:「何だと?」 涼治が振り返ると、そこにはダグドリオの姿があった。 どうやらダグドリオの岩雪崩らしい。 これで引き返すことはできなくなってしまっていた。 レムド:「そのエアームドも戦うのは難しいだろうな」 涼治:「くそっ…」 勢いよく岩壁にぶつかったことで、エアームドは目を回していた。 涼治はエアームドを戻し、別のボールに手をかける。 しかし、それが阻まれていた。 レムドの横にいるチャーレムが、ユキワラシを掴んで立っていたのだ。 ユキワラシは明らかに野生のようで、逃げようとしているがチャーレムがそれを許さない様子。 レムド:「どうした? こいつのことか?」 涼治:「そのユキワラシ、どうしたんだ!」 レムド:「そこにいたから捕まえただけさ …こいつを助けたいのか?」 涼治:「当たり前だ! 嫌がっているじゃないか!」 レムド:「分かったよ」 レムドはチャーレムに、ユキワラシを放り投げさせた。 ユキワラシは突然の事に驚いて固まっていて、このままでは落下してしまう。 そのため、涼治がユキワラシを助けようと走りこんだ。 だがその直後、おなかに強烈な一撃を受けていた。 涼治:「ぐはっ! …この野郎」 ユキワラシは受け止めたものの、チャーレムの飛び膝蹴りを受けたらしい。 さらに壁にぶつかったことで、背中や足を痛めたらしい。 立ち上がろうとしても立ち上がれずにいた。 その時、洞窟が大きく揺れだした。 これはボムによる大爆発の影響ではない。 満ち潮が始まったのだ。 レムド:「どうやらここまでか 満潮のようだ おまえはそこでじっとでもしていろよ」 涼治:「ま…待て…」 レムド:「ふっ、汚いゴミがいつまでもついてくるつもりなのか?」 レムドが指を鳴らすと、ダグドリオが涼治に向かって飛びかかってきた。 しかし、そこに大量の水が流れ込んできた。 そのためにダグドリオは倒れて、涼治は一時は助かっていた。 レムド:「処刑は免れたか だが、もうお前はここからは逃げられないな」 レムドはランターンを出した。 どうやらダイビングを使うようだ。 涼治もヒトデマンを出して続こうとする。 突然の出来事で怖がっているユキワラシを高い場所に置くと、涼治はダイビングをしようとした。 だが、その直後、涼治とヒトデマンは、強力な電撃に襲われていた。 涼治:「うっ…これは…」 レムド:「やられても立ち上がろうとはな 雑草の如く立ち上がるのはすごいことだが、お前と遊んでいる暇はないのさ」 それはランターンのスパークだったらしい。 そして、涼治とヒトデマンは、さらに流れ込んできた波に飲み込まれていた…。 数時間後、ボムとレムドがいたのは、トクサネシティの宇宙センターだった。 そこには多数の作業員が縛られ、口をふさがれて転がっている中、多くのネオアース団員たちが動き回っていた。 レムド:「準備は好調のようだな」 ボム:「はい、双子のジムリーダーはポケモン協会の命によりこの場を離れていましたから、この場所をのっとるのは簡単なことでした」 レムド:「そうか それにしても、このゴミは邪魔だな」 レムドは近くにいた作業員の一人を思いっきり蹴飛ばしている。 苦しみもがく彼の表情を、レムドは満足げに見ていた。 レムド:「ボム、こいつらを片付けろ」 ボム:「はっ!」 ボムはフーディンを出し、縛られた作業員達を適当な部屋にぎゅうぎゅうに詰め込んで鍵をかけた。 すると、レムドは近くにあったマイクを手に叫ぶ。 レムド:「それでいい 弱いものは存在している意味がないからな さて、ネオアース団員たちよ、準備を終え、ロケットに乗り込め これより最終段階に入る 今すぐロケットにより飛び立ち、ポケモン協会が打ち上げた特殊な宇宙ステーションを乗っ取るのだ そして我々の開発した電波を放出し、全ての生き物達が我々の支配下になるようにするのだ!」 その言葉と共に、団員達は作業を終わらせて次々にロケットに入り始めた。 レムド:「それにしてもうまくいったな」 ボム:「ええ、ボスの作戦がここまでとは思いませんでした 私はグラードンとカイオーガ、そしてレックウザの支配しか知りませんでしたが、 それが失敗した時の手立てまで考えていましたとは…」 レムド:「簡単なことさ まぁ、うまくいってもいかなくても、最終的に宇宙センターを乗っ取り宇宙に出ることは可能だったからな」 そして、2人もロケットに乗り込もうとしていた。 しかし、2人が足を進めようとした直後、ロケットに通じる通路が、どこからか発射された光線によって遮断されてしまっていた。 レムド:「何っ!?」 ボム:「こ、これは…」 2人が見上げると、そこにはカイリュウに乗った蓮華と、スターミーに乗った涼治がいた。 レムド:「お前ら…」 ボム:「浅瀬の洞窟と共に死んだはずじゃ…」 驚くレムドとボムだったが、彼らの目の前には、さらに幽霊の瑞希と雪女の雪美が姿を現していた。 瑞希:「蓮華ちゃんは私の力で助けました」 雪美:「私も、水を凍らせて涼治君を助けるくらい、朝飯前よ」 蓮華と涼治を助けたのは、この2人だったのだ。 テレポートで姿を消してしまったとはいえ、怪盗をさせたときに涼治をサポートした雪美は涼治のいる場所を直感できた。 そして蓮華の力も感じ、近くにいた瑞希と共にこっそりと救援にきてくれたのだ。 しかも、雪美の持ってきた水の石が、涼治のヒトデマンをスターミーに進化させていた。 蓮華:「あなたたちの全ての悪事も、もうここで終わりよ」 涼治:「おとなしくするんだな」 涼治が言うと同時に、スターミーからはユキワラシが飛び出し、レムドたちが乗るはずだった、多くの団員が乗っているロケットを 氷の彫刻に変えていた。 レムド:「お前たち、よくも…! オニドリル、クロバット、奴らを倒せ!」 ボム:「ゲンガー、お前も続け!」 蓮華:「させないわよ! カイリュウ、雷よ!」 涼治:「スターミー、サイコキネシスだ!」 怒りに燃えるレムドとボムはポケモンを放つが、オニドリルとクロバットはカイリュウの雷によって落下し、ゲンガーもスターミーの サイコキネシスで倒れていった。 レムド:「くそっ、ここまでか!」 レムドは煙玉を放とうとした。 しかし、煙玉は、どこからから飛んできたサイケ光線によって弾かれ、さらにボムの持っていたボールが何者かに掠め取られていた。 レムド:「何者だ!」 美香:「私よ! 蓮華、涼治君、安心して ミューズとソルルは助かったわよ!」 蓮華:「本当?」 美香:「ええ!」 現れたのは美香だった。 サーナイトとオオタチの姿もある。 煙玉を弾いたのはサーナイト、ボムのボールを泥棒で盗んだのはオタチの進化したオオタチだろう。 さらに、続々と海を筆頭に、トレーナー達がやってくるのも見えた。 レムド:「くっ…」 ボム:「だが、まだ私のポケモンはいる! マタドガス!」 しかし、ボムのポケモンが煙を吐こうとしたのだが、煙が充満したのはレムドとボムのいる一定の場所で、同時に何かが思いっきりぶつかるような 音が響いていた。 ナナ:「これ以上は逃がさないわよ おとなしくしたら?」 ナナの結界がレムドとボムを結界の中に閉じ込めたからだった。 ナナの絶対防御の力を意味する結界は、テレポートさえも逃がさず、レムドとボムをようやく捕らえていた。 こうして、ネオアース団は全員捕獲され、ネオアース団は解散されたのだった。 〜数時間後〜 蓮華は、ミシロタウンで2人の人物に出会った。 それは、氷雨がジラーチに頼む事によって、人間に生まれ変わったミューズとソルルだった。 蓮華:「ミューズ、ソルル、助かってよかった」 ミューズ:「私も」 ソルル:「俺もだ …俺は人間になると同時に闇と影を操る能力者にもなっていた」 ミューズ:「私は、蓮華と同じ植物の能力者だよ でも…」 蓮華:「あ、そうだね」 2人が人間になった事は、すなわちポケモンじゃなくなるという事で、蓮華のポケモンではなくなったのだ。 蓮華:「せっかくの、一番のパートナーだったのにね でも、仕方ないよ」 ミューズ:「ゴメンね、蓮華」 蓮華:「ううん、いいよ 2人とも助かった事が嬉しいし、それに…2人には大事な相手が出来たでしょ?」 ミューズにはユウキが、ソルルには律子がいるのだ。 もう、蓮華と一緒というわけではいかない。 蓮華:「ちょっと、淋しくなるね」 ミューズ:「うん、でも、遊びに来てよね」 蓮華:「分かってるって」 ソルル:「俺は現実世界で暮らすんだよな…、…まっ、何とかなるな」 蓮華:「ソルルは当分、大変かもね でも、2人とも、絶対ユウキも律子も、悲しませちゃダメだからね」 ミューズ:「うん」 ソルル:「分かってるよ、それくらい」 蓮華:「…それじゃ」 ミューズ:「うん…」 ソルル:「…だな」 3人は共に別々の道を歩き出した。 実験によって生まれたミューズ。 ミューズは偶然にも蓮華と出会い、ひょんなことから喋れるようになった。 そして共に何度も苦難を乗り越えてきた。 そんな時に出会ったのがソルルだった。 アブソルは災害を呼ぶと多くの人々に考えられていたために、そのために、苦しい日々を過ごしてきたソルル。 そのソルルを助け、仲間に迎え入れた蓮華。 3人は、様々なものを乗り越え、そして今は、それぞれの道を歩き出していた…。 氷雨:「これで…全てが終わったわね」 雪美:「終わりましたね」 瑞希:「でも、もう何も起こりませんよね?」 氷雨:「大丈夫よ、約束したから あの2人を生まれ変わらせた時に…」 そう、蓮華、涼治、瑞希、雪美は知らないのだが、あの時、他の能力者も集まり、レックウザと約束をかわしたのだ。 『もう二度と、能力者による争いを起こさず、能力者も普通の人も、誰もがみんな、平和に暮らせる世界を作っていく』と。 そして、それを『維持』していくと。 氷雨:「だから、きっと大丈夫よ この世界も、現実世界もね」 雪美:「そうですね」 瑞希:「それに、みんな、帰れますもんね」 最後に1つ。 これはレックウザとミュウがジラーチに頼み込んだ事で成立したのだが、再び2つの世界をつなぐ扉があの場所に生まれたのだ。 レックウザが、そしてミュウが、自分たちの願いよりも、誰かを救いたいと思う願いを発動させた様子を見て、そうするべきだと感じたために。 氷雨:「そうね きっとまた、あの扉を通ることで、様々な事が生まれはするでしょうね(笑)」 雪美:「そうですね(笑)」 瑞希:「あ、何笑ってるんですか?」 氷雨:「ちょっとね」 雪美:「ちょっと、ね」 こうして、永い戦いが幕を下ろした。 風使い一族も妖怪の世界の長老によって力を封じられ、いつの間にか姿を消し、そして、いつもの普通の日常が始まろうとしていた…。