月は太陽にあこがれるものなのだろうか? もし、あこがれたのだとしたら……月はどうしたいのだろうか? お悩み相談 〜グリーンさんとレッド君編〜 「うひゃひゃひゃひゃひゃ!!」 俺の前でレッドが腹を抱えて笑っている。 何がそんなにおかしい? 「あ…悪い悪い。つい、な」 むっとする俺の表情に気づいたのかレッドが謝ってくる。 「けどあんまりにも意外だったからな。お前がイエローのこと好きだってことは うすうす感づいてたけど……まさかそんな事考えてるとはな」 「黙れ」 「黙っていいのか?それじゃ相談の意味がないんじゃないのか?」 「…」 そう言われ、言葉に窮する。 確かにその通りだ。 悔しいがレッドのさせたいようにさせるしかない。 「…続けろ」 「オーケイ、じゃあ話を一度整頓するぞ。お前はイエローのことが好き。 けどほんとに好きかどうか分からないって事だよな?」 レッドの言葉に俺は頷き、口を開く。 「……あいつは、俺と正反対だ。明るく、優しく……太陽を連想させる」 「お前は暗くって素っ気無いもんな」 馬鹿にされてる気がして睨みつけるが、奴のへらへらした顔を見ていると怒りも失せる。 「そんなイエローにあこがれてるのか、うらやんでいるのか、嫉妬しているのか…」 「あるいは、惚れてるのか……それがわかんねぇんだな?」 「ああ。お前はどう思う?」 「知るかバカ」 ……… 「まあ落ち着けよ。考えてみろって、俺の言ったこと間違ってるか?」 「…なんだと?」 「自分の気持ちは自分にしかわかんない。自分のことなんだぜ?他人に分かるわけねえじゃねえか。 仮に分かったとしたら嫌だろ?」 「…確かにな」 だとしたら、レッドに相談した事は無駄だったということか? 「俺に相談したのは無駄だったとか思ってるだろ?」 「!!!?」 なぜ…? 「分かるって。俺達親友だろ?」 「戯言を」 「ひでえこと言うなぁ…まあいいけどさ。じゃあ赤の他人からのアドバイスを一つ言わせてもらうとだな」 そう言ってレッドは自分の胸に手を持っていく。 「自分の心に正直になれ。多分だけど、お前認めたくないんだよ。イエローへの気持ちを」 「……」 「イエローへの気持ちを認めたら弱くなると思ってるんじゃないのか、お前?」 「そんなことは…」 「誰かを好きになるとそいつの一挙手一投足に目を、心を奪われて 自分が自分じゃないようになっちまうから。だから認めたくないんじゃないのか?」 「……」 レッドの言葉に…俺は何も言えなかった。 正直…思い当たるふしがある。 自分の心は自分のものであってほしい。 誰かに奪われたくはない。 奪われてしまったら…弱くなる。 「いいじゃねえか。ちょっとぐらい弱くなったって」 「バカなことを言うな」 「ちょっと弱くなったらそれをカバーできるくらい強くなればいいだけのことだろ?」 「!!?」 「自信がないのか?強くなる自信が?」 「……」 「…トランポリンと一緒なんだよ。最初は沈むけど、その後大きくジャンプするだろ? 弱くなった後また成長すればいいんだよ」 「成長して…強くなる……」 「そゆこと」 弱くなることにより、強くなる。 弱さを認める事によって強くなる。 つまり。 己の弱点を知り、その弱点をカバーする強さを身につけるということだろうか? 「……」 「最後に一つ。レッドのとっておきマル秘情報」 「?」 「イエローは多分お前のこと好きだぜ」 「なっ!!?」 顔が赤くなるのが自分でもわかる。 そのことに歯噛みする。 またレッドにからかわれると思ったのだが… レッドはふっと優しい笑みを浮かべる。 「無愛想で、素っ気無くて、クールさがかっこいいって……そんな風にお前を見てる女が多いけどよ、 イエローはちゃーんと、ほんとのお前を見てくれてるぜ」 「……」 「決断したら早いほうがいいぞ。決心が鈍るからな」 「ああ」 レッドに背を向け、苦笑する。 参った。 これじゃまだまだ奴には勝てそうもない。 さすがは俺の唯一のライバルにして…親友。 まだまだ勝てそうにない。 「おら!とっととイエローんとこ行けよ」 「…ああ」 そして……… 俺はイエローを呼び出した。 イエローが来るまでの間、必死で自分を落ち着けていた。 「グリーンさん!!」 来た。 「す、すいません、遅くなっちゃって」 「いや、俺が急に呼び出したんだ。気にするな」 「はい!それより何の御用事なんですか?」 俺は息を大きく吸い込む。 「…イエローよく聞け」 「は、はい!!」 先ほど走ってきたためだろう、イエローの顔が赤い。 ……かわいい。 だが、今はそんなことに気を取られている場合じゃない。 「イエロー、俺は――」 きっと、この一言で世界が変わる。