シリーズ・ケンカ つー ケンカするにゃー訳がある。 これ、必要十分条件。 「人の事をばかにしやがって!」「なんかむかつく!」「顔が気にくわねぇ!」 「社会主義がナンボのもんじゃい!!」「マルクスに毒された犬どもがッ!!」 「重力に縛られた愚かなる人間ども!!」「鬼畜米英!」 やばい表現が多々あったように思うが気にしないでいただこう。 気にするな。 気にしないでください。 気にしないで? 気にする? …ごめんなさい、気に障ったのなら謝ります。 ……ホントに気にしないでね? まあそんなこんなで(どんなこんな?)、今日もこの二人のケンカを見て見よう。 きっかけは旅の途中ふらりと立ち寄った茶店。 いまどき珍しい茶店。 峠の途中にあったぜ茶店! ということは峠の茶屋って事なのかい!? そんな茶店で少年少女が注文したのはあつ〜いお茶とお饅頭。 朱染めの敷物が敷かれた雅な長いすに腰掛けてお茶をすすって一言。 「「しぶっ!!」」 「うまい」 うまいと言ったのはタケシ少年のみ。 サトシ少年とカスミ嬢の御両人は舌を出して文字通りしぶ〜い顔をしている。 糸目のタケシ少年は勝ち誇ったような笑みを浮かべる。 「ふふん、この良さがわからないとは…二人共まだまだお子ちゃまだな」 その言葉にむっとしたサトシ少年とカスミ嬢。 反撃開始。 「タケシが老けてるだけでしょ」  グサ! 「趣味が炊事洗濯だしな」  ドス! 「そもそも女好きって所が親父よね、すでに」  ガス! 「ってゆーか目細いし。見えてんのか?それで?」  ザク! 「……」 「「勝った」」 タケシ爆沈。 サトカス連合大勝利! 意気揚揚とお饅頭に手を伸ばす二人。 手と手が触れ合って「あ…」「ご、ごめん!」なんていや〜んなこともなく、パクリとお饅頭を口にする。 笑顔のサトシと眉をひそめるカスミ。 「やだ、これつぶあんじゃない。おばあさーん!こしあんのお饅頭ないんですかー?」 「こしあんなんて邪道だ!饅頭はつぶあんに限るぜ!」 「やーよ。つぶあんは歯になんかくっつくんだもん。あ、ありがとうございます」 おばあさんからこしあんのお饅頭ののった盆を受け取り、さっそく食べる。 「ん〜!これこれ!」 「…邪道だ」 尚もぼそぼそ言い募るサトシを鼻で笑う。 「ふんっ!なーにが邪道よ。邪道でもこしあんのほうがおいしいのよ」 「いーやつぶあんだな」 「こしあんよ!!」 「つぶあん!!」 食べかけのお饅頭をお互いの眼前に突きつけあって力説する。 サトカス連合崩壊!!サトカス戦争勃発!!! 「邪道邪道って、こしあんのお饅頭食べた事あるわけ?」 「そっちこそつぶあんの饅頭をしっかり味わった事あるのかよ?」 「……」 「……」 お互いないようです。 「なら…」 「ああ…」  パクリ! お互い相手の持った食べかけのお饅頭を一口。 その瞬間、撃沈していたはずのタケシが一言。 「あ、間接キス……」 「「……」」 サトシ少年とカスミ嬢は真っ赤になって俯いてしまいました。 タケシ、リベンジ成功!! 満面の笑みを浮かべてお茶をすする。 「やれやれ、間接キスぐらいで真っ赤になるとは、まだまだお子ちゃまだな」 「「間接キスもした事ないくせに」」 「シクシクシクシク……」 タケシ再び撃沈。 サトカス連合再結成、そして勝利……。 勝って負けてまた勝って。 人間は戦うために生まれてきたんだなぁ…なんてピカチュウが思ったかどうかは定かではない。 おわり