シリーズ・ケンカ すりー ケンカをするな…とは言わない。 大いに結構。 好きなだけやりたまへ。 けれどケンカにはルールと言うものがある。 やっちゃいかん事をやったら反則負け。 刃物を持ち出す、第三者をまきこむ、核搭載ミサイル発射、コロニー落とし…… やっちゃいかんよ、こんな事。 ちなみに、相手にやらせてもいかんからね。 さて、この二人の場合はどうなのだろうか? 「右だ!」 「左よ!」 「こっち!」 「こっちよ!」 右だ 左だ 上だ 下だ あっちだ こっちだ そっちだ どっちだ。 道決めで今日も今日とてケンカ中のサトシ少年とカスミ嬢。 「ちなみに右に行けば森の中。ポケモンが一杯いるだろうね〜。左に行けば海に出る。 この時期の海は綺麗だろうね〜」 説明ありがとう、タケシ少年。 サトカス好きの方は説明をご覧になればわかるだろうが一応説明させていただく。 サトシはポケモン大好き!! カスミは水辺大好き!! と、まあそんなわけで。 両者一歩も譲らない。 けどねお二人さん、譲り合いの心は大切ですよ。 謙譲の精神無き者に幸せはきませんよ……………たぶん。 「…こうなったらこれで決めましょう!」 「棒か…それが倒れた方へ行くんだな。いいぜ、その話乗った!タケシもいいよな?」 「ああ」 「じゃあ、いくわよ…えい!」  ポテ 「「「……」」」 ああ、よりにもよってもと来た道を指し示すとは……。 「よし、次はオレが…それ」  ビュン!……ヒュー……ゴス!! 「ぐはぁ!」 サトシが天高く放り投げた棒はタケシの脳天直撃クリティカルヒット。 「避けろよタケシ!」 「その前に一言まず謝るのが筋ってものだろうが…」 頭を押さえてタケシが唸るがサトシはどこ吹く風。 「こうなったらジャンケンだ」 「そうね、白黒はっきりさせるにはそれが一番だわ。棒なんかに頼ったのが間違いだったのよ」 「まったくだ。誰だよ、棒使うなんて言い出したのは?」 「タケシよ」 「タケシか」 「お、俺ぇ!!!??」 実際はカスミです。 タケシ少年えっらい冤罪をこうむっております。 「じゃあ行くぞ!」 「ええ!」 「「じゃーんけーん!」」 ポンと同時に出された手。 サトシはグー。 カスミはチョキ。 「やっりぃ!オレの勝ち!」 「あ…」 喜びはしゃぐサトシとは対照的にカスミは悲しそうに眉をひそめます。 「約束だからな!オレの行きたい…ほ…う…………」 「行きたい方に行くからな!」そう言おうとして…口篭もる。 なんか…カスミが泣きそう。 しょぼーんとしてしまっていて、眉もいわゆるハの字。 抱いているトゲピーまでしょんぼりしている。 「あ〜……」 サトシ少年はぽりぽりと頭をかく。 けど勝負は勝負。 勝った自分には戦利品を手に入れる権利がある。 だからってインフレを巻き起こすほどの賠償金を要求しちゃいけませんぜ。 結果第二次大戦が起こったわけですしね。 「よし、じゃあ行くか」 「うん……って、サトシ?」 「あ?なんだよ?」 「なんだよって…そっちは海に出る道…」 「そうだな」 「そうだなって…」 「オレがこっちに行きたいんだ。んで、オレは勝負に勝った。なんか問題、および文句ある?」 ぷいっとそっぽを向くサトシ少年。 照れまくりですな。 一方のカスミ嬢。 最初は驚いた様子で、徐々に喜びに、そして笑顔に。 「…ありがとう」 「な、なにいってるんだ?オレは…そのだな……」 「ありがとう…」 「……ああ」 満面の笑顔で、頬を赤く染めてにっこり微笑みかけられ、サトシ少年は一言そう言うので精一杯。 タケシ少年とピカチュウが「サトシやるぅ〜…」なんて表情で見ている事にも気づくわけなどない。 勝者には戦利品を得る権利があり、ある意味でそれは義務でもある。 罪には罰を……。 ちなみにこの場合、サトシ少年の戦利品はカスミ嬢の笑顔。 サトシはポケモン大好き!! カスミは水辺大好き!! で・も・ね。 サトシはカスミが大好き!! カスミはサトシが大好き!! 両思いでいいかんじ!!の二人でした マル おわり