シリーズ・ケンカ ふぁいぶ たとえばこんな実話。 新鮮そのもの。 食べたらうまかろう。 生牡蠣(かき)をポン酢で食べようとしていた男。 外出から帰ってきて冷蔵庫をあけてみると…牡蠣がない。 な、なぜに!!?と慌てると友人が一言。 「あ、冷蔵庫の中のもの少しもらったぞ。鍋にして食ったから」 「……牡蠣は?」 「うまかった」 「(怒)」  ゴツッ!! 「いってぇ!?なにしやがんだ!?」 「(怒)」 「やる気かこらぁ!!」 ………嘘か誠か? そんなことを繰り広げたらしい。 …又聞きだから多分嘘だと思うけど。 ともかく、食い物の恨みは恐ろしいということだ。 さてこの二人の場合…… 「……」 「……」 「……」 「……」 いつになく静かな導入に作者もビックリ。 だがしかぁし!! みつめあう…のか睨み合うのか? とにかく、朝食がのったテーブルを挟んで対峙するサトシ少年とカスミ嬢の間に漂う雰囲気は 恋人の発する甘いそれではなく、戦士の発する張り詰めた緊迫感。 ちなみにその頃タケシとピカチュウは別のテーブルでブレックファーストの真っ最中。 サトシとカスミの事はほっといてます。 「…塩こしょう」 「…しょうゆ」 「……」 「……」 お互い一言だけつぶやいてまた沈黙。 テーブルの上には朝食。 問題はその中の一品。 目玉焼き。 眼球を焼いたわけではないといっておこう。 玉子を焼いたもの、付け加えるのならハムつき。 つまりハムエッグ。 それに…いかなる調味料を添付するか? これは人類の永遠の命題ではなかろうか? 「…塩こしょう」 「…しょうゆ」 「塩こしょう!!」 「しょうゆ!!」 サトシが塩こしょう派。 カスミがしょうゆ派。 他にもマヨネーズとかケチャップとかソースとか…… おそらく初対面の相手であってもこの話で三時間は会話が持つだろう。 「目玉焼きには塩こしょうって昔から決まってるだろ!!?」 「誰が決めたのよそんなこと!?家じゃしょうゆだったの!!」 「塩こしょうの方がうまい!!」 「しょうゆよ!玉子御飯にもしょうゆでしょ!?だからしょうゆ!!」 「じゃあゆで卵にもしょうゆかけるのかよ?」」 「そ、それは…」 作者はかけます。 が、そんなことはお構いなし。 サトシ少年とカスミ嬢はお互い塩こしょうとしょうゆを持って睨み合います。 すでに食事を終えてしまったタケシとピカチュウ、トゲピーは傍観です。 いい判断です。 ここで第三者が口を出すとさらにややこしくなる可能性があります。 「…あ」 「どうしたの?」 サトシが不意に上げた声にカスミが疑問を口にします。 「オレ、思ったんだけどさ」 「うん?」 「玉子御飯にはしょうゆだろ。それでゆで卵には塩。それで……」 「目玉焼きには?」 ごくりとつばを飲み込むカスミ。 サトシは緊張の面持ちで言葉を告げる。 「両方ってのはどうだ?」 「……」 「……」 「……」 しばしの無言の後、お互い手に持った調味料を自分と相手の目玉焼きにかける。 そして、しょうゆと塩こしょうのかけられた目玉焼きを食べて一言、 「「おいしい」」 いや〜よかったよかった仲直り。 にこにこ笑顔でもう冷たくなってしまった朝食を食べはじめました。 たとえ冷たくなったって、二人でわいわいと食べる朝食はおいしいですね。 おわり