シリーズ・ケンカ せべん! けんか? 剣か? 県下? 献花? 喧嘩。 ケンカ! ……え?何が言いたいかって? いえ、とくに意味はないんです。 書き出しのネタが切れただけなんです。 ………せつない。 ま、いつものように例の二人の様子を観察してみましょう。 「……」 「……」 ホットウォーと対極を為すコールドウォー。 冷戦、冷たい戦争。 今のサトカスずばりそれ。 「……」 「……」 重い空気。 光すら屈折しそうなほどに重い空気! ええ、そりゃもう!! 怖い! マジで怖い!! 静かなケンカがこんなに怖いとわ!!! 誰かなんとかしろってんだ! 「まあいつものことだし」 冷静だな、タケシ君。 「だってほら、いつもの事だし」 いつものこといつものことってあんた…… いつもはもっとこう…叫びあうと言うか罵り合うと言うか…そんなじゃない? 「ああ、初期段階はな」 初期団塊? 昭和二〇年代前半のことかね? 「ちがうって。まあつまりだな、サトシとカスミのケンカの流れは三段階に分けられるんだよ。 まあサトシとカスミに限った事じゃないんだけどな」 ほうほう。 で、どのような? 「まずはじめにお互い口やかましく罵り合う」 ふむふむ。 いわゆるいつものよくあるかつ、よくネタにされる状態ですな。 「そう。で、次はお互い口を利かずに無視を決め込む」 今現在の段階なわけですな。 「そのとおり。で、だな、この段階はさらに二つに分けられるんだ」 あ、わかった。 頭が熱いまんまで相手の事を心の中で罵り合ってる段階と、 「相手の言ったことを冷静に判断して自分なりに反省、 そしてどうやって謝ろうかって事を考えてる段階ってわけだ」 ですね。 で、その後は最終段階なわけですけど…… 「そうだな……後三十分位したらで休憩するつもりだから…そのときかな?」 なるほど。 でわでわさっそく! 時よすすめ〜!! ってなわけで三十分後でごわす。 「ふう…大分歩いたしちょっと休憩しよう」 タケシ君の提案に思い思いに腰を下ろします。 サトシ君はちらちらとカスミちゃんの様子を窺っています。 一方のカスミちゃんもちらちらとサトシ君の様子を窺っています。 そろそろでしょうか? そろそろなのでしょうか? 「ああ…そろそろだ」 お! サトシ君とカスミちゃんの目が合った! ……ああ、慌てて目をそらしちゃったよ。 「……サトシが行動に出るぞ」 ほへ? 「…タケシ、オレちょっとその辺見てくる。ピカチュウの事頼むな」 「ああ」 おお! タケシ君の言った通りだ! ……あれ? でもこれじゃ仲直りできないじゃん。 「まあ見てろって」 千葉ロッテ? 「……」 ………ああ、タケシ君に無視されてしまった。 ぐすん。 「タ、タケシ、あたしちょっと散歩してくるから。トゲピーお願いね」 「ああ」 おやや? カスミちゃんもどっか行くみたいだぞ? 「どっかじゃなくって、サトシのとこだよ。後追うか?」 もち! 「もちって…まあいいけど。ピカチュウ、トゲピー、おとなしくしてろよ」 まじでたのんますよ、お二人さん。 「ぴっか!」 「ちゅき!」 さてさて、サトシ君は発見できたわけですけど…カスミちゃんいませんよ? 「じきに来るよ」 ってゆーか、さっきまったく別方向に歩いていきませんでした?彼女? 「でも来るんだよ。さっき合図してたし」 あいず? 「ほら、サトシとカスミの目が合ったとき、目だけで合図してたんだよ」 んなあほな。 可能何ですかい、そんな事? 「あの二人ならできるんじゃないか?」 さいですか。 しかし合図とは…イエスノー枕じゃあるまいし……。 「……まあ似たようなもんだ……来たぞ」 わ!ほんとだ! ほんとにカスミちゃんきましたよ! ……なんか話してますけど…聞こえませんね。 あ、なんかサトシ君照れてますね。 カスミちゃんも頬を染めちゃって…… 「初々しいねぇ〜」 あんた、何でそんな親父クサいセリフを…… 「親父臭いって言うな!…そろそろ山場だ」 山姥(やまんば)? ん?なんか二人見詰め合って………これは…まさか!! ………ああ!やっぱり!! キスしやがったあの二人!! キスで仲直りってあんた……どこぞの歌じゃあるまいし…どうよ?タケシ君? 「まあ…いつもの事だ」 「って事はいっつも覗いてたのか」 「あたしたちのこと」 「げぇ!!?サ、サトシ!カスミぃ!!」 い、いつのまに接近されたんだ!? 怖い…二人が怖い!! 「タケシ、ちょっと話があるんだ」 「ええ、お話よ、お話」 「お、おい!たすけてくれ!」 私はナレータ……無理な相談です。 「そそそそそんな!」 まあ……念仏くらいは唱えてあげますから。 迷わず成仏しておくれ。 おわり