シリーズ・ケンカ ないん! 例の二人はいつもいつもケンカばかり。 ケンカして。 仲直りして。 またケンカして。 また仲直りして………… 「それならはじめっからケンカするなよ…」 な〜んて。 細めの少年が怒ったり呆れたりしそうなものなのですが……まあ、そこはそこ。 お約束と言うことで。 ではではそんなわけで。 今回もまた二人のケンカの様子を刮目して見てみましょ〜。 …いや、刮目するほどでもないんだろうけどね、どうせ。 きっかけは些細な事だったのじゃよ。 きっかけは……虫ポケモン。 そう、虫ポケモンだったのじゃよ。 いつものように旅を続けるサトシ達仲良し3人組の前に、一匹のキャタピーが現れたのじゃ。 まあ当然の如く、 「きゃぁぁぁぁぁ!!む、むしぃぃぃぃぃ!!!」 「「のわぁ!?」」 絶叫するカスミ嬢。 カスミ嬢の大声に耳を塞ぐサトシ君とタケシ中年――いやいや、タケシ少年……やっぱり中年じゃろうか? まあそんなことなどうでもいいのじゃが。 キャタピーはといえば大声に驚き慄(おのの)いてとっとと逃げてしもうた。 そんなことがあったわけなのじゃよ。 で…… 「カスミ!そんなことでいちいち大声出すなよ!」 「だって〜…」 「だってじゃないよ!」 「…何よその言い方!?」 そう、その瞬間ゴングが鳴ってしまったのじゃよ。 二人の戦いの火蓋を切って落とすゴングが。 「いきなり虫が出て来るんだもん……怖いに決まってるでしょ」 「虫じゃなくって虫ポケモン!キャタピーだろ!?何が怖いんだよ!?」 最初はサトシ君優位で話は進んでおった。 しかし、それはほんとに最初のうちだけじゃった。 「怖いものは怖いのよ!」 「だからって…」 「じゃあ聞くけど!サトシには怖いものがなにも無いの!?嫌いなものがなにも無いの!!?」 「え?いや、そんなことは…」 「好きなものは!?憧れるものは!!?あるでしょ!? でもその理由を言えって言われてはっきり言える?言えないでしょ? それと同じよ!怖いものは怖い!嫌いな物は嫌い!!」 「うう……」 男が女に口で勝とうなんぞ不可能と言うものなのじゃよ。 忘れてはならんぞ、全国津々浦々の同志(男性)諸君。 「い〜い!?あたしは虫が嫌いなの!!ついでにあんたもね!誰にだって苦手な物はあるんだし、 不得手な事もある。他人のそういった所を指摘する事はできてもその事を非難する権利は誰にも無いの! 誰にもね!おわかり!?おこちゃまなサトシ君!?」 「うううう……」 「ま、まあまあまあまあ!カスミ落ち着けよ。サトシも十分反省してることだしさ。な?」 「ふん!どうだか!!」 不機嫌そうにそう言ってカスミ嬢は顔を背けてしもうた。 哀れなのはサトシ君じゃ。 物凄い落ち込み方をしておる。 「あ〜……サトシ、気にするな」 「……」 「まあなんだ。カスミは虫の事になると容赦無いからな〜…」 「……」 「こう言っちゃなんだが…サトシじゃ10年たってもカスミには敵わないだろうからな…」 タケシ少年はサトシ君をそう言って慰めるが…まだまだ若いのぉ〜タケシ少年も。 わかっておらん。 サトシ君はカスミ嬢に言い負かされて落ち込んでおるわけではない。 嫌いと言われて落ち込んでおると言うのに……。 とはいえども。 まあじきに二人共仲直りをする事じゃろうて。 サトシ君もカスミ嬢も言いすぎた面はあるわけじゃし、互いに非が無いわけではない。 それになにより。 ケンカと言っても所詮じゃれ合いの延長。 甘噛みの連続。 まあつまり……痴話げんかじゃからのう。 すぐに仲直りする事じゃろうて。 そう、すぐにな…… ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・・ ・・ 「きゃぁぁぁぁぁ!!む、むしぃぃぃぃぃ!!!」 「のわぁ!?」 絶叫するカスミちゃん。 カスミちゃんの大声に耳を塞ぐサトシ。 一方、不意に出てきたゴキブリはと言えば大声に驚き慄(おのの)いてとっとと逃げてしまいました。 まあともかく。 そんなことがありまして。 そんなわけで…… 「カスミ!そんなことでいちいち大声出すなよ!」 「だって〜…」 「だってじゃないよ!」 「…何よその言い方!?」 そう、その瞬間ゴングが鳴ってしまいました。 二人の戦いの火蓋を切って落とすゴングが。 「いきなり虫が出て来るんだもん……怖いに決まってるでしょ」 「たかがゴキブリだろ?何が怖いんだよ!?」 最初はサトシ優位で話は進んでいました。 しかし、それはほんとに最初のうちだけでした。 「怖いものは怖いのよ!」 「だからって…」 「じゃあ聞くけど!サトシには怖いものがなにも無いの!?嫌いなものがなにも無いの!!?」 「え?いや、そんなことは…」 「好きななものは!?憧れるものは!!?あるでしょ!? でもその理由を言えって言われてはっきり言える?言えないでしょ? それと同じよ!怖いものは怖い!嫌いな物は嫌い!!」 「うう……」 男が女に口で勝とうなんて不可能と言うもなのです。 そこの所お忘れなきように、全国津々浦々の同志(男性)諸君。 「い〜い!?あたしは虫が嫌いなの!!誰にだって苦手な物はあるんだし、不得手な事もある。 他人のそういった所を指摘する事はできてもその事を非難する権利は誰にも無いの! 誰にもね!おわかり!?あなた!?」 「うううう……」 「ま、まあまあまあまあ!カスミちゃん落ち着いて。サトシも十分反省してることだし。ね?」 「ふん!!」 ハナコさんの仲裁も空しく、カスミちゃんは不機嫌そうにそう言って顔を背けてしまいました。 サトシ君はやれやれと言った様子で頭を掻いています。 「もう!サトシ、もっと他に言い方あるでしょ?」 「……」 「カスミちゃんの虫嫌いにも理解を示してあげなきゃだめよ。それにあたしだってゴキブリは嫌いよ」 「……ねえママ」 「ん?」 首を傾げるハナコさんにサトシ君は感慨深げに、どこか遠くを見つめるように口を開きました。 「今から何年か前にもこうやって、虫の事でカスミと言い争った事があったんだ」 「?? それがどうかしたの?」 「タケシがその時にさ、「サトシじゃ10年経ってもカスミには敵わないだろうな」って。 そう言ってたんだけどさ、その通りだなぁ〜と思ってさ」 「…そうね」 「あの頃と、全然変わってないって事か。オレも、カスミも」 「そうでもないでしょ?」 「え?」 ハナコさんの言葉にサトシは驚いたようにハナコさんの顔を見ます。 ハナコさんはにこにこ笑顔で続けます。 「サトシも、カスミちゃんも色々変わった筈よ。目に見える部分も、見えない部分も。ちがう?」 言われてみれば…先ほどのカスミちゃんのきつい物言いも、 昔はあった決定的なきっつい一言がなかった気がするし、なにより。 今、自分からカスミに謝りにいこうとしている事実。 二人の関係。 確かに変わっています。 確かに変化しています。 いえ、違います。 成長したんです。 二人共。 「……そうだね。オレ達、少しずつだけど成長してるんだ」 そう言ってサトシは笑顔を浮かべました。 ハナコさんも笑顔です。 「そうよ。さ、謝ってらっしゃい」 「ん…」 その後、二人はじきに仲直りをしました。 仲直りした二人を見てハナコさんは一言。 「昔から言うものね。夫婦喧嘩は犬も食わないって」 その言葉に、サトシとカスミは照れたように、けれど、とっても幸せそうに笑いました。 おわり