鶴と心優しい青年の話、あなたは知ってますか? 異界迷作劇場 鶴の恩返し編 ある所に一人の青年がいました。 名前はサトシ君。 とっても心優しい青年。 でも彼は貧乏でした。 ええ、清貧というやつです。 そんなある日、サトシは山からの帰り道にあるものを発見しました。 罠にかかった一羽の鶴。 禁猟区なのに、まして鶴は法律で狩猟が禁止されているのに!! もちろん、そんな鶴をサトシが見捨てて置けるはずありませんでした。 「ったく、こんな人里近いとこにトラバサミ仕掛けるなんて…なに考えてんだか。 人間は良心をなくしちゃったんだなぁ……っ!よし、外れた。 後は傷の手当てをしてっと。よし、これでいい。じゃあな、もう捕まるなよ」 罠を外す際にサトシは指先を切ってしまいましたが、鶴に笑顔を見せました。 鶴はお礼を言うかのようにサトシを何度も何度も振りかえりながら飛び去っていきました。 その晩。 サトシがそろそろ寝ようかな〜と思い布団の用意をしているとコンコンっとノックの音。 こんな夜更けにいったい?はっ!?もしや盗人!?と思いながら戸を開けるとそこにはかわいい女の子が。 「ど、どうしたのこんな夜更けに?」 「あの、道に迷ってしまって…一晩だけ泊めて頂けませんか?」 「…ってゆーか、君ここまでどうやってきたの?」 「え!?」 「こんな夜遅くに女の子一人で」 「そ、それは…」 「しかも明りも持たずに――」 「うるさーい!」  ゴス! 「み、右ストレート!?」 「ごちゃごちゃ言わずに泊めてくれればいいの!!わかった!?」 「は、はい」 「そう、それでいいのよ。あ、あたしカスミよろしくね♪」 「……」 いやー何が何やら。 武力でもってサトシを制し、一夜の宿を勝ち取ったカスミ。 戸を開けちゃったばっかりにパンチを食らったサトシ君。 その上布団まで取られてしまいました。 当然同衾(どうきん)、合歓(ごうかん)なんてさせてもらえるわけなく…散々です。 彼は冷た〜い床の上に寝ることになりました。 その後…一晩だけという約束はどこに行ってしまったのか、カスミはサトシの家に居座りつづけました。 もともとお人好しの(失礼)サトシ。 カスミに「今日も泊めて」と言われれば「なにかわけありかな?」なんて思って泊めてあげたし、 正直なところ、一人暮しで寂しかった…というところもあったのかもしれません。 一方のカスミは「ばかばか!何で右ストレートなんてかましちゃったのよ!これじゃ 出てけって言われてもしょうがないじゃない!!」……なんて思っていたのに。 サトシは苦笑しながらも泊めてくれ、その上布団まで提供してくれた。 「やっぱり優しい人だ」カスミはそう思い、サトシの好意に甘えるように家に居座りつづけました。 時は流れ……季節は冬。 例年よりも早く雪が降ってくる。 サトシは頭を悩ませていました。 金がない。 食料もあまり余裕がない。 いや、本当なら人一人何とか冬を越せる程度の蓄えはあったのですが。 しかし、今は二人なんです。 カスミ。 ある日飛びこんできた少女。 彼女を養う必要がありました。 彼女は、色々と無茶をしました。 料理をすると言ってかまどを爆砕しかけた事もありました。 お風呂を沸かすと言って危うく茹で上げられそうにもなりました。 迷惑でした。 けれど、迷惑だけど迷惑じゃありませんでした。 一人寂しく毎日を過ごしていた頃に比べれば格段に楽しかったんです。 そのツケがこんなところで出てしまうとは…… けれど… 「どうしたの?」 「ん?なんでもない。それよりそろそろ夕食にしようぜ」 「あ!じゃああたし作るね!」 「……失敗するなよ」 「わかってるわよ!」 カスミは舌を出して料理の準備をはじめました。 後ろ姿を眺めるサトシの目は優しいもの。 確かに、生活は苦しい。 けれど…カスミが居てくれれば、それでよかった。 それだけでよかったんです。 よかったのですが… ある晩、 「…ねえサトシ」 「ん?」 「生活…厳しい?」 「!!?」 「あたしのせい、だよね?」 「そんなことないって。冬はいつもこんなもんだよ」 「……」 「さ、もう寝ようぜ」 「…うん」 そう言って布団に入るサトシ。 その隣にカスミが身体をもぐりこませます。 結婚したわけじゃなかったけれど、いつしか二人は夫婦のような関係になっていました。 そしてある日……そう、運命の日。 「ねえサトシ、あたし反物作る」 「は?」 「向こうの部屋の機織(はたおり)機使えるよね?」 「使えるけど、家に糸なんかないぞ?」 「大丈夫…けど、ひとつだけ約束して。絶対部屋を覗かないって」 「はぁ?なんで?」 「お願い…」 「……」 「サトシ……」 「…わかった。覗かない」 「ありがと」 カスミは奥の部屋の戸を閉め、機織をはじめました。 糸もないし、機織機の手入れもろくにされていないのにはたして布が織れるのか? そもそも覗くなとはいったい? 疑問だらけのサトシですが… 『お願い……』 そう言って上目使いに自分を見たカスミのことを思うと。 強く言うことはできませんでした。 カスミの作り上げた反物はそれはそれは素晴らしいものでした。 その証拠に、サトシが町に反物を売りにいくと飛ぶように売れました。 予約できないかと聞いてくる人がいるほどでした。 そのおかげで何とか冬を越すことができそうだったですが。 「カスミ…やつれてないか?」 「そんなことないわよ」 「いや、やつれてるって」 「大丈夫、心配しないで。それよりまた反物作らないと…」 「あ、おいカスミ!」 サトシが声をかけるもカスミは奥の部屋に篭ってしまいます。 すぐに機(はた)を織る音が聞こえてきました。 サトシは腕組みして考え込みます。 確かにカスミの作った反物のおかげで生活は楽にはなりました。 でも、カスミは何故かやつれてる。 衰弱しています。 なぜ? 機を織るのはそんなに辛いこと? いや、そんなことはないはずです。 けれど、機を織るようになってからカスミはやつれはじめています。 さらに気になる言葉。 「部屋を覗かないで」 なぜ? 見られると何か問題が? サトシは決心しました。 カスミが篭っている部屋の障子。 そっと、少しだけ開け、中の様子を窺います。 そこには……自らの羽根を使って反物を作る大きな鶴が。 思わず「あっ!?」と叫んだサトシの声に鶴が振り向きました。 「あれだけ見ないでって言ったのに……」 言葉と同時に鶴の姿が少女の、カスミの姿へと変化しました。 そして悲しげな表情でサトシを見つめます。 「これは…いったい……?」 「前に鶴を助けた事あったでしょ?覚えてる?」 「あ、ああ」 「あたしはあの時の鶴。どうしても恩返しがしたくて人の姿を借りてやってきたの」 「……」 「でも、それも今日で終わり」 「!!? どうして!?」 「本当の姿を知られてしまったから。もうここには居られない」 「なんでだよ!?オレはそんなの気にしないって!」 「それでもだめなの!」 カスミはそう言い放ち家から出ていきます。 サトシも慌ててその後を追いました。 「カスミ!」 「…さよなら。短い間だけど楽しかったよ」 「なんだよ……そんなのありかよ」 「……」 「なんとか言えよ!」 「……」 「オレ、また一人になるのかよ…」 「あ…」 「やっと一人じゃなくなったと思ったのに……」 「…ごめんね」 涙に潤んだ目でそう言ったカスミは鶴へと姿を変え、空に舞いあがりました。 サトシは尚もなにか言い募ろうとして…やめました。 もう、どうする事もできないんです。 もう、どうでもいいんです。 何をしたところで…待っているのは孤独な日々なんですから。  ボテ 何かが雪の上に落ちる音。 サトシが振り向くと少し先で雪に埋もれている鶴…カスミの姿が。 何事かとサトシは大慌てで駆け寄ります。 「おいカスミ!どうしたんだ!?」 「なんか…身体が重くてうまく飛べない…」 「身体が重い?」 「うん。お腹の辺りが」 「……ふとった?」  ゴス! 「み、右ストレート!?」 「なんてこと言うのよ!!」 「で、でも事実お腹の辺りが始めてあった頃に比べるとふっくらと…」 「……認めたくないけど事実ね。でもそのせいで――うっ!」 「ど、どーした!?」 「…吐きそう」 「へっ!?な、なんでいきなり?」 「わかんない、けど…気持ち悪い……」 「……………」 ふとサトシはある事に思い当たりました。 「なあ、ひょっとしてすっぱいものとか欲しくならないか?」 「…そう言われれば欲しいような…………まさか!!?」 「………身に覚えあるよな?」 「………あたしにあるんだもん、あんたにもあるでしょ?」 「………(///)」 「………(///)」 二人は真っ赤になってしまいました。 その後二人は結婚し、子宝にも恵まれ幸せに暮らしましたとさ。 めでたしめでたし♪ あとがき…のようでそうでなさそうな…登場人物+αによる………作品解説? 作者「ちょっとどきどき異界迷作劇場!!」 タケシ「つまり、どーいう話なんだ?」 作者「昔話とか童話をアレンジしまくって、まあ……なんだ」 タケシ「例の連中のらぶらぶバカップル話にしたい、と?」 作者「うん。そゆこと」 タケシ「まあ……がんばれ(やれやれ)」 作者「さて!今回の話は鶴の恩返しでした!!」 タケシ「正確には鶴女房だな、この展開だと」 作者「そのたうり!!鶴の恩返しはじさまとばさまが出てきます。 一方の鶴女房は青年が出てきて鶴と結婚するんですよね〜」 タケシ「流れ的には 1、鶴を助ける。 2、鶴がやってきて(鶴女房の場合結婚して)一緒に暮らすことになる。 3、鶴が機を織り、時期に正体がばれる。 4、さよなら って感じだからな。 話の細かいところは違うけど大まかな流れは踏んでるな」 作者「文句の付け所のないええ話になったなぁ〜、なんて自画自賛」 ???「まちなさい!!」 作者「何者だ!?」 ???「わたしはアルトマーレの絵描き娘」 作者「そのフレーズは…カノン!?」 カノン「その通り!ちょっと作者!」 作者「なんじゃらほい?」 カノン「ちょっとはその無い頭働かせなさいよ!!」 作者「ひ、ひどい!!」 カノン「鶴が女に化けて出てくるのよ!?だとしたらヒロインはわたしでしょ?」 サトシ「そーいやラティアスはカノンに化けてたよなぁ」 作者「おや、今ごろ登場ですかサトシ君」 カノン「さあ答えなさい!なんでヒロインがわたしじゃないの!?」 カスミ「そんなの決まってるじゃない。アニメのポケモン、略して「アニポケ」の ヒロインがあたしだからよ!」 カノン「って!カスミはアドジェネになったらいなくなったじゃないの!」 カスミ「な、なんですってぇ!?」 タケシ「ま、まあまあ二人とも」 カスミ、カノン「「糸目は黙って!!」」 タケシ「シクシクシクシク……………………」 サトシ「ひっでー…おい作者何とかしろよ」 作者「ふえ!?え、あ、あ〜……カノンお嬢さんカノンお嬢さん」 カノン「なによ!?」 作者「え〜、冷静に考えてください」 カノン「??」 作者「仮にこの話でカスミ以外をヒロインにするとしたら確かにあなたです」 カノン「だったら!」 作者「ただし!!正確にはあなたの姿にもなることができるラティアスが主役!! だってあなたはラティオスになれない!?」 カノン「!?」 作者「サトシの元を訪ねるカノン(ラティオス)!サトシと仲良くなるカノン(ラティオス)!! サトシの子を産むカノン(ラティオス)!!!鶴になって飛んでいくカノン(ラティオス)!!!! それでもよろしいのですか!?」 カノン「あ〜!!も、盲点だったわ!!」 作者「と、いうことで一件落着。めでたしめでたし」 タケシ「……でもその理屈で考えるとカスミだって鶴にはなれないわけだから、 結局誰でもよかったんじゃないのか?」 作者「…………」 カノン「……」 カスミ「………」 サトシ「…何、この空気?」 作者「しーゆー!!」 カノン「まちなさーい!!」 ←作者を追いかける。 カスミ「カノンこそまちなさーい!!」 ←カノンを追いかける。 サトシ「結局なんだったんだ?」 タケシ「サトシはもてるってことだよ」 サトシ「え?なんで?」 タケシ「………………鈍いにも程があるぞ」 サトシ「???」 終幕