あの 銀色の光は太陽の光を反射しているんだよ。      銀色に光る    神社前の長い石段に腰を下ろして、おいでと小声で言うと真っ黒なぬいぐるみが飛びついてきた。  満足そうに私の膝上に座るぬいぐるみは、私の相棒ジュペッタ。ゴーストタイプのポケモンは基本的に人間に対しての 警戒心が強いと言われる。私のジュペッタも、最初はなかなか懐いてくれなかった。もっとも、その頃はまだカゲボウズ だったのだけれども。  今は、こんなに懐いている。 どうやらさびしがりやで甘えたがりやらしい。ジョーイさんに指摘されるほどであるから 恐らく、相当なのだと思う。    しかし、と思う。  ジュペッタを思いっきり抱きしめてみる。服の布越しに伝わってくる温もりは…ない。  当然だ。ジュペッタは、ぬいぐるみである。中は、綿なのである。血液がなければ、葉緑体もない。  似たような、種類としてはビリリダマやコイルなど、彼らもまたジュペッタと同じで、血液も葉緑体も所持していない。  だが、彼らは『電力』を動力にしているという。そう、考えれば納得がいかないこともない。  だとすると、ジュペッタは何を動力にしているのだろうか。  一説によると、ゴーストタイプの主な動力源は『恨み等の感情』ではないかといわれている。  そうか。それも納得がいくような…まぁ、よい。  私は、腰の帯に手を伸ばす。二つのモンスターボールを取り外した。  ボールから迸った赤い光が、二体のポケモンの形を成す。  元気かと、私は彼らに問う。  彼らは、私の問いに答えるように不思議な音を発した。    ネンドールとドータクン。  彼らもジュペッタと同様、私の相棒だ。体が大きく街中では、一緒に連れ歩くことが出来ないのでボールに入れているが たまにこうして深夜、月の光を浴びに来るのである。  月の光を浴びるのは、彼ら共通の性質であるという。だから、満月の夜には場所によってたくさんのネンドールやドータクンを見ることが出来るらしい。  しかし、何故彼らが月の光を浴びるのかは分かっていない。    これから、先は私の勝手な創造であり、正確性も信憑性も皆無だ。  ネンドールとドータクン。彼らは、古代使われていた祭具にそっくりでである。  だから、私は彼らのもとはそれらの祭具ではないかと考えている。  その祭具に何らかの力が宿り、彼らは自分で動くようになったのでは、と。    ここで、先ほどの話を思い出してほしい。そう、動力の話だ。  お分かりのように彼らには『電力』もなく、恐らく『感情の力』というものもないだろう。当然、血液や葉緑体もない。  だとすれば、なんなのであろうか、と。  私は『月の光』ではないだろうかと思う。    実際に、ルナトーンは『月の光』を、ソルロックは『陽の光』を浴びて力を発揮するらしい。  『月の光』は、古くから神秘的な光ととらえられてきた。  もしかすると、本当に神秘的な力を持っているかもしれない。  彼らは、その力を自らの力として具現化して動いているのかもしれない。  まあ、全ては私の勝手な妄想であるのだけれど。  そんな考えも科学的じゃなくて素敵じゃないか。  彼らに手を伸ばした。喜んでいる……ような気がする。  感情が分かりにくいのだが、ないわけではない。……多分。  彼らに関してはまだまだ分からないことばかりである。 「お前らに、直接聞けたらいいのになぁ」  ネンドールとドータクンが揃って「?」という仕草をした。  ジュペッタがそれを見て、けらけらと笑う。  そんなジュペッタに、私も苦笑した。  ネンドールの青銅の体に月の光が当たって、青く光る。  月は私たちを照らす。  その光景は、とても美しく綺麗で、とても不思議な光景だった。