とある建物の屋根の上に2羽のポッポがとまっていた。未発達な小さな声を使って話をしていた。 が、そんな2羽の会話も、自分たちのとまっている建物から聞こえてきた声でかき消されてしまった。 ************ リベンジャー  第9話「10秒バトル」 ************ 「リング!電光石火!」 「ニョロボン!心の目だ!」 ものすごいスピードで走り回るリングを、ニョロボンは心の目でしっかりと捉えていた。 「いけ!」 リングがニョロボンに電光石火のスピードで威力が上がった体当たりを仕掛けようとした、次の瞬間! ボグッ! 鈍い打撃音と共に、腹に痛みを覚えるリング。 よくよく見れば、電光石火が中断されている。 「!」 ニョロボンが放った爆裂パンチは、リングの腹に見事に命中した。 「・・・・・」 しかし、自分のポケモンが弱点攻撃をされたというのに、カイはまったく動じなかった。 逆に、不気味すぎるほど冷静だった。 『・・・4・・・5・・・』 『?』 ニョロボンはパンチを突き上がらせるように放ったため、リングの体はニョロボンの拳の上に乗ってしまっていた。 そして、突然リングがニョロボンの拳の上で数字をカウントし始めていた。 『・・・6・・・』 『一体何のつも・・・』 『・・・7!サイコキネシス!』 リングの目がカッと見開かれた。リングの顔とニョロボンの顔の間の空間がゆがむ。そして、次の瞬間! カッ・・・・・・!! ズドン!! 突然、ニョロボンの体がリングから突き放されるように宙を待った。 が、ニョロボンもそう簡単にはダウンしない。受け身を取り、リングのほうに顔を向ける。 『・・・・!?いない!?』 そこには何もいなかった。横や上を見ても、リングの姿はなかった。 そのかわり、リングの声だけが聞こえてきてた。 『・・・8・・・9・・・』 「な・・・!?しまった!ニョロボン!後ろだ!」 『な!?』 『10!』 シジマの指示は一瞬遅れた。 メリッという音がしたときには、ニョロボンの背中にリングの頭がめり込んでいた。 『サイコキネシスは・・・・囮か・・・・!』 『10秒、ジャストだ』 ニョロボンの体がその場に崩れ落ちた。 「ニョ、ニョロボン戦闘不能!ブラッキーの勝ち!よってこの勝負、挑戦者、カイの勝利!」 「いよっしゃあ!カンッペキだぜ!リング!」 「ギュラララララ!(あったりまえよ!)」 カイが走ってリングにところに駆けつけた。それに気づいたリングも、走ってカイに飛びついた。 「へへ・・・・!」 「ギュララ・・・・!」 「よくやったなニョロボン、さあ、ボールの中で休んでいろ」 シジマがニョロボンをボールに戻した。その表情には、負けた悔しさより、いいトレーナーがリーグへの新しい一歩を踏み出した喜びが勝っていた。 「驚いたな」 「え?」 「まさかブラッキーに負けるとは思わなかったな」 「・・・・もともと、コイツを使う気はなかったんだけど・・・・」 「?」 「使わなかったら、噛み付かれそうだったし」 「ワハハハハハ!面白い連中だな、お前たちは」 「へへ・・・!」 「おっと」 シジマが何か思い出したような仕草を見せる。 「おい、あれを・・・・」 「ハイハイ、もう用意してありますよ」 シジマが何か言いかけた隙に、先ほどカイを出迎えた女性・・・・あとでシジマの奥さんだとわかった・・・・が何か石ころほどの小さな物体を持ってきた。 「ほれ。これがポケモンリーグ公認バッジ、ショックバッジだ」 「へえ・・・・」 カイがシジマからショックバッジを受け取った。初めて手にしたバッジ、そのバッジを見るカイの顔は、喜びに満ち溢れていた。 「ありがとうございます!」 「お前さん、次はどこへ?」 「アサギシティへ向かいます。そこにもジムってあるんですよね?」 「ああ、あるぞ。さて、このタンバジムリーダーシジマからアサギジム戦のアドバイスをしてやろう」 「アドバイス?」 「アサギジムは、今のバトルと同じ、2対2で行われるんだが、2匹目のポケモンに注意しろ」 「・・・どのくらい?」 「詳しくは言えんが、全力をぶつけるつもりで戦え」 会話の中、カイはアサギジムリーダーの実力がどのくらいすごいのか、わくわくしてきたが、やはり、あの疑問だけは解決していなかった。 (アサジジムのリーダーも、こんないかつい顔してんのかな・・・・?) こうしてカイは再び海へ出た。途中、ギャラドス達が仲間を連れて仕返しにきたのを電撃で蹴散らし、カイとクーラルは進んでいった。 目指すは、港町、アサギシティ。  つづく  あとがき タンバジム戦、終了しました。 次、すぐにアサギに入ります。(早!)