************  リベンジャー  第11話「灼熱の奥義」 ************ 「チッ・・・・・!」 カイのこめかみあたりから、一滴の汗が流れる。 カイの目の前にはうつ伏せに倒れているライラ、そして、その前には立っている巨大な鉄蛇ポケモン・ハガネールがその重そうな頭をもたげていた。 (シジマさんが言っていたのは、この事か・・・・・!) 事の成り行きはこうだった。 まずハガネールが出現。 ライラがすぐに爆裂パンチを打ち込もうとしたが、アイアンテールで迎撃される。 思いっきり吹っ飛ばされたライラにハガネールは地震で攻撃、たった2発でダウンしてしまった。 そして、今、バトル場にはカゲロウとハガネールが向き合っている。 「カゲロウ!ファイヤー・・・・ボール!」 「ハガネール!ドリルテイル!」 カゲロウが尾の炎を大きくすると、その炎は尾に少しだけ炎を残しハガネールへと発射された。 ハガネールはというと、その巨大な体の先端を回転させると、ファイヤーボールが向かってくる方向に向けた。 ファイヤーボールがドリルテイルにあたると、貫かれように霧散した。 「無理ですよ」 「何?」 ミカンが突然口をあけた。 その表情には落胆の色が見える。 「あなたのリザードと私のハガネールではレベルが違います。だから・・・・」 「うるせぇ!カゲロウ!連続ファイヤーボール!」 「・・・・無理だって言ってるのに・・・・」 カゲロウが火球を打ちまくるが、ハガネールは簡単に防御してしまう。 (くそ・・・・このままじゃヤバイ・・・・・) ・・・・・・・・ “アレ”しか・・・・・・ないか・・・・ 「カゲロウ・・・・あの技・・・・・やるぞ」 「・・・・・・」 カゲロウが意を決しその指示に従うことにした。 カゲロウが口に炎をともすと、ミカンとハガネールが構えを取る。 「・・・・・・?」 ミカンとハガネールの目が点になる。 カゲロウはハガネールとの間の地面を炎で少しだけあぶっただけだった。 それだけだった。 「・・・・・・・・」 カゲロウは全く動かなかった。右腕を地につき、瞼を閉じて、うつむいていた。 「・・・・・一体何を・・・・?」 ミカンには全くわからなかった。 カゲロウはほとんど動いていない。少し地面を焼いただけ、ただそれだけである。 ハガネールの巨体が、警戒しながらカゲロウに近づいていく。 そして、ハガネールが先ほどカゲロウが焼いた地面のあたりまできた次の瞬間! 「!?」 突然ハガネールの下の地面から、巨大な火の手が上がり、ハガネールを包み込んだのである。 「!?グオォォォォォォ!」 ハガネールが炎から逃れようとのた打ち回るが、まるで意思を持ってるかのように、炎はハガネールに絡み付いて離れようとしなかった。 「い、一体何が・・・・!?」 「・・・・・“陽炎”・・・・・・」 「・・・・え・・・・?」 「この技の名前さ。  本来、陽炎ってのは春や夏に地面から空気が透き通った炎の様に立ち上がる現象のことを言うんだが、俺のカゲロウが放つ“陽炎”は本当に地面から炎を立ち上がらせる技なんだよ!」 燃え上がっていた“陽炎”もようやくおさまり、中から全身真っ黒焦げになったハガネールが姿を現した。 ハガネールの巨体が、豪快な音とともに倒れていった。 「びっくりしました」 「何が?」 「まさか、あんな技を使うなんて思いもよらなかったから・・・・」 「まぁ・・・・な」 「これがスチールバッジです。お受け取りください」 「へへ・・・・どうも!」 「これから、どこへ?」 「すぐにエンジュシティに向かう。そこにもジムがあるから」 「それなら、途中に牧場があるんです。旅のトレーナーをよく泊めてくれるんですよ。立ち寄ってみてください」 「ふーん、どうもありがと!じゃあ、俺もう行くから」 「がんばってくださいね」 「ああ、あんたもな!」 ジムから去っていくカイの後ろ姿が消えるまで、ミカンは最後まで見送った。 その顔は負けた悔しさよりも、歓喜の表情が大きかった。 目指すは、伝説が行き交う町、エンジュシティ。   つづく    あとがき なんかあわただしく終わっちゃいました。 オリジナル技、“陽炎”登場しました。 このあともジャンジャン登場します。 次回予告・第12話 緑の剣士