*********** リベンジャー  第12話「緑の剣士」 *********** 「なんだ?ありゃ・・・・」 パーカーの袖を捲り上げながらカイはつぶやいた。 カイはとある森の中の広場にいた。 半径10メートルほどの円形の広場で、片隅の木を背もたれにカイは座っていた。 カイの目の前では妙な出来事が起きていた。 緑の森の中でうごめく緑色のポケモン、薄い羽をもち、腕が鋭い鎌になっているポケモン。 かまきりポケモン・ストライク達が1匹の倒れたストライクをまるでいじめでもしているかのように足蹴にしていた。 (・・・・・・ん?) そのいじめを観覧するものが自分以外にももう1人いるのに、カイは気がついた。 ストライクだった。しかし、普通のストライクより一回り大きかった。 鋭い眼光を放ち、額にはいつ負ったか知らないが古傷があった。 カイと同じように気を背もたれにし、“いじめ”を観覧している。 無言。 何も、語らずに。 「助けたほうがいいよな・・・・・」 ボールを1つとりながら、カイはつぶやいた。 「いけ!クーラル!」 カイが走りながらボールを投げた。ボールは空中で開き、中から光が発せられた。 光の塊はすぐにゴルダック・・・・クーラルの形になる。 「?」 ストライク達がカイとクーラルに気づいた。 そして気づくと同時、低空飛行で襲い掛かってくる。 「・・・・10匹か。クーラル!渦潮!」 ストライクの数を一瞬で数えると、カイが指示を出した。 クーラルが腕を円形に振り回す。すると、クーラルを中心に渦潮が発生した。 「!?」 ストライク達は渦潮をギリギリでかわす。そして、何を思ったか、カイ達に背を向け飛び去ってしまった。 「オイ!大丈夫か!?」 カイが傷だらけのストライクに駆け寄った。 しかし、返事はない。肩が上下しているところを見ると、死んではいないようだ。 カイはふとあることを思い出し、1人観覧していたストライクの方へ顔を向けた。 しかし、そこには何もいなかった。 「すいませーーーん!誰かいませんかーーーー!?」 カイが傷だらけのストライクを抱えたまま、木造の建物の前で叫んでいた。 ここはモーモー牧場。ミカンが言っていた牧場とはここの事だろう。 「だれだぁ?」 突然、真横から思わず気が抜ける声がした。 振り向くと、そこには白髪でオーバーオールを着たちょっととぼけ顔のおじさんが立っていた。 「いや実は、薬を分けてもらえないかと・・・・・」 「・・・・んん?そのストライクは・・・・」 とぼけ顔だったおじさんの顔が突然、真剣な顔になった。 「・・・とりあえず、中にはいれぇ」 「え・・・あ、ハイ」 ストライクの体は本当に傷だらけだった。 どの角度からみても傷だらけだった。 ストライクの手当てを終えたカイは、椅子に座っておじさんが出してくれた茶をすすっていた。横にはおじさんが座っている。 「このストライクは・・・・」 「たくさんのストライクたちに袋叩きにされてたんだろぉ?」 「・・・・なんで知ってるんですか?」 「このストライクはなぁ、子供のときから1人だったんだぁ。 親といるとこ見たことないからなぁ・・・・。 仲間が欲しかったんだろなぁ、何度も何度もあの群れに入ろうと努力しとったんだけどなぁ・・・・。 全く入れてもらえる気配がなかったなぁ・・・・・」 「・・・・弱いからですか?」 「いんや、この子は強い。・・・・ただ、群れの親玉がなぁ・・・・」 「親玉?」 「袋叩きにしてたストライク達の他に、もう1匹ストライクがいなかったかぁ?」 「・・・・いました。額に傷を持つストライクが・・・・」 「そいつが群れの親玉だぁ。この子はきっとその親玉にやられたんだろうなぁ。  この子は1度も認められなかったなぁ」 「・・・・・仲間が欲しかっただけなのに・・・・なんであそこまで・・・・・!」 その日、カイはもう暗いからと、おじさんに泊めてもらった。 ちなみに妻と子供は街にミルクを届けに行ってたらしい。 ついにその日は、ストライクは目を覚まさなかった。  つづく  あとがき 緑の剣士との出会いでした。 ストライク達とのバトル、バトルっぽくなかった・・・・。 次回予告・第13話 勧誘(仮)