森の中でポケモンバトルが展開された。 ポケモンバトルといっても、野生ポケモン同士のバトルだった。 バトルは一方的だった。 1対30前後というあまりにもわかりきったバトルだった。 そう、わかりきっていた。 1匹のストライクが、倒れた無数のストライクの中心に立っていた。 **********  リベンジャー  第14話「風の刀」 ********** 「す、すげぇ・・・・」 カイはこの言葉以外口から出てこなかった。 自分が助けたストライクがここまで強いとは思わなかったからだ。 しかし、ここでカイの脳裏にある疑問がよぎった。 ここまで強いこいつを倒したあのストライクって・・・・・。 『オイ・・・・・いるんだろ?』 傷だらけのストライクが木々を見つめながらつぶやいた。 誰の姿も見えない、虚空に問い掛ける。 『出てこいよ・・・・ヤイバ』 木が風でゆれた。 そして、しばらく沈黙が続いた。 森の中で何かが動く気配を、カイは感じ取っていた。 そして、 ズガン! 突如現れた謎の物体が、傷だらけのストライクに斬りかかった。 が、いくら傷だらけとはいえ、簡単にやられるほどストライクは弱くはなかった。 襲い掛かった謎の物体のもつ刃をがっちり刃でガードしていた。 そして、ストライクにしては太目の声がしてきた。 『名もねぇストライクが・・・・気安く俺の名を呼ぶんじゃねぇ!』 『別にいいだろう・・・・・後、俺の名前が無いのも仕方が無いだろう。 ・・・・生まれたときから親はいないのだからな』 突如現れたその謎の物体を見て、カイは叫んだ。 「お、お前は!?」 襲い掛かったのは、あのストライクだった。 あの時、自分と同じようにストライク達のいじめシーンを観覧していた額に傷を持つストライク、群れの親玉だった。 『俺の部下をこんなにしやがって・・・・・何様のつもりだ!?』 『別に・・・・そこの人間がこいつらに襲われてたとこを助けただけだ』 2匹のストライクがお互いに刃をはじいて距離をとった。 『まさか、ストレス解消かなんかか!?俺に勝てねぇからって、俺の部下をボコボコにするのはどうかと思うが!?』 『・・・・・なんでだ?』 『あ?』 『俺はこいつらより強いのに・・・・何でお前は認めない!!』 傷だらけのストライクが飛んだ。 その自慢の刀をヤイバに向け、襲い掛かる。 が、追い討ちだったにもかかわらず、簡単にガードされた。 『素早さだけは、1人前だな』 『こんの・・・・!馬鹿力め・・・・!』 またも傷だらけのストライクが飛んだ。 『かまいたち!』 ストライクが刀にためてあった風のエネルギーを前方に打ち込んだ。 2つの刃から放たれた風の刃は十字にクロスし親玉に襲い掛かる。 『フン!』 何を血迷ったのか、親玉はかまいたちに向かってジャンプした。 ズガガン! 親玉は刃で風の刃を受け止めると、はじき返した! 『く!』 ストライクはよけ切ることができず、かまいたちをもろに受けた。 『グ・・・・・!』 『とどめだ!』 親玉はジャンプした勢いでストライクを突き飛ばした! ガン! ストライクの体は後方にそびえ立っていた大木に打ちつけられた。 傷だらけの体がさらに傷だらけになった。 『教えてやろうか・・・?俺がてめぇを群れにいれねぇ理由を・・・・!』 『・・・・?』 大木に背を任せたまま、ストライクはヤイバを虚ろな眼で睨む。 『てめぇは今まで何度も俺に挑んできた・・・・!  50回・・・・いや、もう3ケタいっちまってるんじゃなぇか!?  そんな勇敢な剣士みてぇなてめぇを群れにいれねぇ理由を聞きてぇかっつってんだよ!!!』 『・・・・・・!』 『聞く気はあるみてぇだな・・・・、まぁ教えてやろう・・・。  いいか?俺が今必要としてるのは、部下からの忠誠心なんだよ!わかるか!?  俺はいつか軍隊のような群れを作るつもりだ。軍隊には指揮官が必要だ!  その指揮官がこの俺!ヤイバなのだ!そうすれば、どんな群れも打ち倒し、乗っ取ることができる!いつか、人間にだって勝てるようになる!  そこへてめぇみてぇな忠誠心のかけらもねぇやつを入れるわけにはいかねぇんだよ!』 『・・・・・・!』 『てめぇがいくら努力しようとも!いくら強くなろうとも!結果的には何も変わらねぇのさ!  てめぇは自分の努力の結末を知らずに努力し続ける、大馬鹿野郎なんだよ!』 努力しても何も変わらない・・・・・・だと・・・・? 俺は・・・・・。 『オイオイオイオイ!そろそろ俺たちの仲間を馬鹿にすんのはもうやめときな!この指揮官野郎!』 突然、ヤイバの耳に聞きなれない声が飛び込んできた。 ヤイバが声がしてきたほうに顔を向ける。 そこには、声をあげたらしきリザード、その横にはピカチュウ、後ろにゴルダックとブラッキー、さらにその後ろにはヘアバンドを首にかけ、腕組みをした少年が立っていた。 『あんだ?てめぇら・・・・』 『俺たちは・・・・・そいつの仲間さ!』  つづく  あとがき うわ!ヤイバ、ものすごい悪役っぷりだなオイ! セリフがまさしく悪役の鏡・・・・・。 次回予告・第15話 仲間