ここ、エンジュシティの天気は妙だった。 雲が町全体に広がっていて、いつ降り出してもおかしくない状態だった。 町の日は人々はただの曇りだと思っていた。 しかし、それは間違いだった。 この天気は、とある前兆だった。 ************  リベンジャー  第16話「2つの再会」 ************ 「・・・・・」 カイはとある塔の入り口の前に立っていた。 いや、塔というのは少しおかしい。2階より上がない。 この塔は“焼けた塔”。 町の人々の話では、この塔は昔、謎の大火事のよって2階より上は丸焼けになってしまったそうだ。 そんなもう何も残っていないはずの塔の前に、カイは1人たたずんでいた。 何かあるわけではない。 誰か待ってるわけでもない。 カイはポケモンセンターで休憩した後、すぐにジムに向かう予定だった。 しかし、カイの足は自然とその“焼けた塔”へ進んでいった。 何かに導かれるように・・・・・・・。 天気は、黒雲・・・・・・・・。 「・・・・・・」 カイは少し考え込んだ後、塔の中へと入っていった。 1階はなかなか、いや、かなり広かった。 昔起きたという大火事で、柱や壁が崩れていて、入り口がすぐにわかるようになっている。 「・・・・何でこんなとこ入ったんだろ・・・・」 カイは頭を書きながら少しぼやいたあと、回れ右をし、塔から出ようとした。 ・・・・刹那。 「・・・・・はやく・・・・・ろのは・・・・」 「・・・・・・!!?」 カイの耳に聞き覚えがある声が飛び込んできた。 3年前のあの日、自分の町を破壊したポケモンを操っていた、あの、白服の男の声・・・・・。 カイは今まで首にかけてあったヘアバンドを本来あるべき場所・・・・頭に移した。 パーカーの袖をひじまで捲くり、背負っていた灰色のリュックを近くの柱に立てかけた。 そして、腰にあった中身のある5つのボールのうち、2つを手にとりカイは声がしたほうへと歩いていった。 先ほどの声の内容がだんだん鮮明になってくる。 そして、カイの耳にはっきりこう聞こえた。 「この塔のどこかに“銀色の羽”があるんだ!とっとと探せ!!」 さらにその姿も見えてきた。 3年前と同じ「R」のマークがはいった上下の白い服、黒い手袋とブーツを身につけている。 あの時は怒りに我を忘れてしまってよく見ていなかった顔もよく見える。 鋭い目つき、逆立った黒髪。 さらによく見ると、ゴーリキーレベルの筋肉質。 その白服の男が、周りでガレキをどけて何かを探している30人ほどの黒服の男たちに命令していた。 「どうした!まだ見つからんのか!?」 「し、しかしガトウ様!塔の崩れ方が並ではなく、この中から“銀色の羽”を見つけ出すのはかなり困難です!  それに、崩れたのはかなり昔のこと、たとえあったとしてもきっともう誰かに・・・・」 「言い訳は無用!すぐに探し出せ!」 「ハ、ハイ!」 「全く・・・・、ん?何だ貴様!!」 白服の男・・・・ガトウがカイの存在に気がついた。 問い掛けられても答えない少年を、ガトウはややイラ立ちながら見つめる。 少年が、ボソリと、ガトウの耳が聞き取れないぐらい小さな声で、こう呟いた。 「殺してやる・・・・・・・・・!」 「!」 カイが突然右手に握っていたボールを投げた。 中から現れた風の剣士、ストライクのカゼマルは一気にガトウに斬りかかる。 ガキン! が、ガトウが出したくわがたポケモン・カイロスのはさみにブロックされた。 「小僧・・・・俺達にケンカを売るとはいい度胸・・・・」 「カゼマル!押し返せ!」 「シャーーーー!!」 カイはガトウの言葉に耳を貸さずに、カゼマルに指示を出した。 そんなカイに応えるかのように、カゼマルが鎌にこめる力を強くする。 ズガン! カゼマルがカイロスを塔の隅まで突き飛ばした。 「な・・・・!?オイ!このガキを取り押さえろ!!」 男たちは作業を止め、腰のボールに手をかけた! 「邪魔だ!カゲロウ!炎の渦!」 左手のボールから現れたリザードのカゲロウは男達に炎の渦を放ち、封じ込めた。 「・・・・・・!!?貴様、どこかで・・・・」 「ああ・・・・・3年前だろう・・・・?」 ガトウが3年間のあの日のことをすべて思い出した。 「・・・・・!!!!貴様、あの時の・・・・!!」 「ああ・・・!あの日から、俺はお前たちへの復讐を夢見て修業してきた・・・・!  そして、今、ここで復讐する!覚悟しろ!ロケット団!!」 「その復讐、ちょっと待った」 「!?」 「な、何だ貴様!」 カイとガトウが近くにあったガレキの山の頂上を見上げた。 いつのまにか炎の渦から開放されたロケット団員達も、そのガレキの山の頂上を見上げた。 そこには、青いジャンパーに黒いズボン、耳に少しかかるほどの長さの銀髪、どんな人間やポケモンよりも鋭そうな目つきをした少年が立っていた。 「お前は・・・・あの時の・・・・・!」 「・・・・また会ったな・・・・」 エンジュシティ上空を漂っていた雲が、よりいっそう黒くなっていた。   つづく  あとがき カイの最大のライバルとなる銀髪の少年がやっと再登場しました。 次回はバトルしまくりです!! 次回予告・第17話 共闘