*********  リベンジャー  第17話「共闘」 ********* エンジュシティの人々はこの日、外出を避けていた。 エンジュシティ近辺に住むポケモン達は、何か危険を察知したのか、わらわらと自分の巣へと帰っていった。 上空を漂う雲に変化が現れた。 “焼けた塔”を中心に、雲が渦を巻いていた。 そんなただよらぬ気配が漂う“焼けた塔”に導かれるように近づく2つの影があった・・・・。 「で?何で待ったなんだよ」 「簡単なことだ」 そういって、銀髪の少年がガレキの山から下りてきて、カイの横に立った。 「俺も、奴等に用がある」 「用?」 「お前と同じだ」 「・・・・・」 2人の間に沈黙が走る。 銀髪の少年が先に口を開いた。次にカイが口を開く。 「お前が何故奴等を恨むのかは知らんが・・・・・・」 「あんたが何であいつらに復讐するのか知らねぇけど・・・・・・」 「目的は同じらしいな」 「目的は同じっぽいな」 2人の間にまた沈黙が走った。 先にカイが口を開いた。 「復讐者同盟でも組むか?」 「・・・・・」 「オイ!勝手に話し進めんじゃねぇ!」 今まで黙りこくっていたガトウがついに怒鳴った。 ガトウの性格上、黙っていたほうが不思議である。 「そこの貴様!我らに逆らうとどうなるか、思い知るがいい!」 「ぐだぐだうっせぇよ、おっさん」 カイの突然の言葉に、ガトウはまた黙りこくってしまった。 不意に、カイの背中をつつくものがあった。 カイが振り向くと、そこにはカゲロウとカゼマルが立っていた。 「おお!お前らさっきはよくがんばったな!しばらくボールの中で休んでろ」 そういって、2匹をボールに戻した。 「お前・・・・名前は?」 「カイだ!ヨロシク!お前は?」 「・・・・・・ジンだ」 「ふーん・・・・、いい名前だな!」 「・・・・いい名前なんかじゃない・・・あいつがつけた名前なんか・・・!」 「・・・・ま、いいや!自己紹介もすんだところで、おっぱじめようか!」 ポタ・・・・。 「?」 カイが意気込んで腰のボールに手をかけようとしたとき、突然カイの頬に何か冷たいものがあたった。 雨だった。 たった1滴の雨だった。 カイは今まで気づいていなかった。 エンジュシティ上空に暗黒の雲が渦巻いていることを。 そして、次の瞬間、かなりの量の雨が降り出してきた。 しかし、カイ、ジン、ガトウ、その他約30名の中から雨宿りしようとするものは出なかった。 全員、自分たちの真上を見上げたまま、動こうとしなかった。 いや、正確には動けなかった。 上空にある物体に、全員が見とれていた。 カイが口を開いた。 「・・・・・ル・・・ギア・・・!!?」 その姿が、雷の光のよって全員の目に映し出された。 3年前のあの日、カイの前に現れ、その後、まったく姿を現さなかった“海の神”が、再び姿を現した。 「妙な胸騒ぎがしたので来て見れば・・・・こういうことか・・・・。  おのれロケット団・・・・!まだ私にことをこそこそとかぎまわるか・・・・。  我が故郷を荒らすものたちよ!今すぐこの場を立ち去るがいい!!」 ルギアがそう叫ぶと、その巨大な口を開いた。 巨大な口の中で、空気が渦巻いていく。 ・・・・刹那。 「ルギア!てめぇ手ぇだすんじゃねぇ!!」 突然、カイが叫んだ。 その声に驚いたのか、ルギアは口を閉じた。 「こいつらは俺たちが相手すんだぞ!てめぇ1回でも加勢してみろ!ただじゃおかねぇぞ!」 カイの言葉を、ルギアは黙って聞いていた。 今までルギアの顔に浮かんでいた怒りの表情が、消えうせた。 「それと!この雨もてめぇがやってんだろ!?とっととどうにかしやがれ!」 その言葉を叫んだ直後、雨と雷がやんだ。 しかし、まだ雷雲が残っている。 「・・・・今は手を出さんが、もしものときは加勢する。文句はないな」 「ああ!だが、その“もしも”って時はないけどな!」 カイはボールを手にとり、ガトウに突き出した。 「いろいろゴタゴタがあったが・・・・はれてバトルできるってワケだ!」 「カイ」 「ああ!?何だよのってきたのに!」 「役割分担だ」 「役割分担?」 「俺が周りのザコをやろう。おまえはガトウとかいうヤツをたたけ」 「いよっし!任せろ!」 「チ・・・・・!ガキどもが、この俺様に勝つつもりか・・・・!」 「オイコラ、デカブツ」 「ああ!?だぁれがデカブツだぁ!?」 「場所変えようぜ。ここはジンとクズどもでやらせようぜ」 「ほう、この俺様の部下をクズ呼ばわりするとはいい度胸だな」 そう言って、2人は歩き出した。 先ほどカイロスが吹き飛んだ辺りへ。 「カイロス!いつまで寝てやがる!とっとと起きろ!」 吹き飛ばされた勢いで気絶していたカイロスが、ガトウの怒鳴り声で目を覚ました。 「んじゃそろそろ・・・・始めるか!!」  つづく  あとがき バトルしまくりじゃなかった・・・・・。 次回は、多分バトルしまくりだと思います! 次回予告・第18話 初めての復讐