*************** リベンジャー 第24話「オレンジ野郎の死闘」 *************** 「あーーーーもう!あいつらしつこいったらありゃしない!」 「オイお前らァ!しつけぇヤツは嫌われんだぞ!?ぜってェあいつら彼女いねぇな!!」 彼らは走っていた。暗い森の中を。 彼らは走っていた。いつ終わるとわからない闇の中を。 ユウラとクロは全力で走りながら(飛びながら)愚痴をこぼしていた。 後ろからくる追っ手から逃れるために。 「お前らあんまりしゃべんな・・・・・・。体力余計に使うだけだぞ?」 「そーそー!ていうかお前らなんでそんなに疲れてんだ?おかしくね?」 「いやお前らのほうがおかしくねェか!?なんでそんな余裕なんだよ!?」 息切れし始めたユウラとクロとは反対に、カイとコウ、ライラとエレクはまったく息切れしていないどころか、彼らはまったく全力では走っておらず、むしろかなり余裕があるようだ。 「ギュババババババ!」 後ろからくる追っ手・・・・・・ゴルバットの放つ奇妙な鳴き声が、カイ達の耳に突き刺さる。 「ラチがあかねぇな・・・・・」 「まったくだ」 「どうするよ?」 「どうするって言ったってよォ・・・・・・・後ろ向いたら黒い眼差しで逃げれなくなるし・・・・・・」 「ねぇ」 「ん?なんだ?」 「あんたたち・・・・・・・・ほんとなんでそんな余裕なの?」 「は?」 「後ろにいるのが何かわかってんの!?ゴルバットよ!ゴルバット!  しかもすごい数だし!」 そう、確かにゴルバットの数はハンパではない。 逃げる直前に見たときは、森の天井を埋め尽くし、月の光がまったく漏れないほどだった。 「こっちも質問したい」 「あ!?何よ!」 カイが口を開いたと同時に、ユウラが半分怒鳴りながらカイの声を掻き消した。 「お前らなんでそんな動揺してんだ?」 「・・・・・・は?」 「ジムバッジ8個全部持ってんだろ?あれくらい倒せる力ぐらいあるんじゃないか?」 「そんなこと言ったってさ!あんなすごい数はじめてだモン!ねぇ、クロ!」 「あんな連中相手してたら命いくつあったって足りねェよ!」 「フーーーーーン・・・・・・・」 「俺たちもっとめんどくせぇやつら相手にしてきたよな」 「おう!ギャラドス10匹とか・・・・・・・ドククラゲ30匹とか」 「え・・・・・・・・」 カイとコウのその言葉に、ユウラとクロは言葉を失った。 「あんたたち・・・・・・一体何者なの・・・・・・・!?」 「あーーーーーーーもうめんどくせェ!!」 突然コウがブレーキをかけ、止めると後ろを振り向いた。 「な!?コウ!」 「ちょっ・・・・・・・!?あんた何を・・・・・・!」 カイとユウラも足をとめる。 「カイ!森から出ればお前の独壇場だよな!?」 「まぁ・・・・・ここよりはハデにやれるが?」 そう話してるうちにゴルバットたちが追いついてしまった。 当然、追いつくと同時に黒い眼差しをかける。 「あーーー!追いつかれた上に黒い眼差しで逃げれなくなったじゃない!どうすんのよ!  こんなとこで血全部吸われて干物みたいになるのはごめんだからね!」 「オイどうすんだよ!コウ!責任とりやがれ!」 「今からとんだから黙ってろ」 そう言って、コウが腰のボールに手をかけた。 同時に、エレクも戦闘体制をとる。 「おいコウ・・・・・・お前まさか・・・・・・・」 カイがコウにその“まさか”の内容を実行しようとしてないか確認を取る。 コウは何も答えない。 どうやらその“まさか”を実行するようだ。 「なぁカイ・・・・・・・・」 コウが口を開いた。 「これぐらいブッ飛ばせなかったらよ・・・・・・“野望”は達成できねェよな・・・・・・・。それに・・・・・・・・・」 「“俺たちのモットー”に反するよな・・・・・・・・ここで逃げたらよ・・・・・」 「・・・・・・・!」 「エレク!フラッシュだ!」 「ベ・・・・・・・ベーーーーーーー!!」 エレクの体から閃光が放たれ、暗い森の中を一瞬で白一色にした! 「いけ!カイ!」 「よっしゃ!任せろ!」 「え・・・・・ちょ、ちょっと!」 カイが光の中をユウラの手を引いて走り出した。 「ピカ!」 「うお!?オイコラライラ!なにすんだ!」 ライラもクロの翼をくわえると、全速力でその場から脱出した。 光がやんだ。 その場に残っていたのは、コウとエレク、そして大量のゴルバットのみ。 ゴルバットたちは何が起こったのかわからないようで、眼をパチクリしている。 「フラッシュでゴルバットたちの黒い眼差しの解除成功っと。  さぁってっと・・・・・・・」 コウがボールを1つ手にとり、地面にたたきつけた。 「景気よくイッパツハデにいくぜ!リュウ!破壊光線だ!」 ボールから飛び出したドラゴンポケモン・ハクリューのリュウが、ゴルバットたちのド真ん中に破壊光線を打ち込んだ。 あたりを再び光が包み込んだ。 「ねぇ・・・・・・・いくつか聞きたいことがあるんだけど」 「ん?何だ」 カイとユウラ、ライラとクロは、ゴルバットたちがフラッシュで目がくらんで黒い眼差しを解いた隙を突いて逃げ出していた。 といっても、すべてのゴルバットがカイたちの行動に気づかなかったわけではなく、先ほどからカイたちの後ろから15匹前後のゴルバットたちがカイたちの後ろから追いかけてきている。 「・・・・コウは大丈夫なの?あのすごい数を1人で・・・・・・・」 「大丈夫だ」 カイはユウラの質問にやたらと自信たっぷりに答えた。 「あんな連中にやられるほど、コウはあまくない」 「・・・・・・・・だけど!」 「いくつかと言ってたが、他はいいのか?」 「あ、えーとさ、さっきコウが“森から出たらお前の独壇場だよな”って言ってたよね?」 「ああ」 「それってさ、“森から出れば100%勝てる”ってこと?」 「・・・・・・・100%とは言えないが・・・・・・・・・80%ってトコだな」 「あとは・・・・・・・・“俺たちのモットー”って何?」 「・・・・・・・・・え?」 カイの顔がこわばった。 あまり聞かれたくない質問のようだ。 「・・・・・・・・・言ったらコウに殺されるからヤダ」 「ふーーーん・・・・・・・・あ、これが最後の質問」 「何だ?」 「あんた達ってさ・・・・・・・一体何者なの?」 「俺たちが何者かって・・・・・・?」 「俺も気になってた」 今までずっと黙ってカイたちの会話を聞いていたクロが口を開いた。 「どう考えたっておかしいぞ?あんな軍団目の当たりにして全然ビビらねぇんだからよ」 「・・・・・・・・・・」 しばらくカイが考え込む。 「あんなのに負けてたら・・・・・・・・奴等にゃ勝てねェんだよ」 「奴等・・・・・・・・?」 「お!見えてきたぜ」 カイが前方を指差しながら言った。 ユウラとクロが遠くを目を凝らして見つめる。 すると、森の向こうから光が漏れ出していた。 「出口・・・・・・ってことは!?」 ユウラがカイの顔を見ながら嬉しそうに言った。 カイが口元に笑みを浮かせながら答えた。 「ああ・・・・・・・・俺の、独壇場だ・・・・・・!」 森の外、森の出口・・・・・・・この言葉は誤りだった。 森の中になんと谷が広がっていた。 岩の山がいくつもあり、ここでポケモンバトルすれば、盛り上がること間違いなしという感じのフィールドだ。 カイたちから見て左のほうに崖があり、底が見えないほどだった。 「へぇ・・・・・結構イイ感じじゃんか」 「勝てるの!?ホントに!」 カイたちはフィールドのど真ん中に立っていた。 ここでゴルバットたちを待ち伏せする作戦なのである。 「俺を信用しろって・・・・・・・。カゲロウ!クーラル!」 カイがボールを2つ放った。 中からリザードのカゲロウと、ゴルダックのクーラルが飛び出し、横一列に並ぶ。 さらに2匹の前にライラが立ち、向け打つ準備は万端になった。 「ユウラ、援護頼む」 「う、うん」 ユウラがひとつ頷くと、ボールを2つ放った。 中から子犬ポケモン・ガーディと、ガス状ポケモン・ゴーストが出てきた。 「ランディ!フォーグ!頼むよ!」 「ウオン!」 「コォォォォォォォォォォ!!」 ランディと呼ばれたガーディがかわいらしい声を、フォーグと呼ばれたゴーストが不気味な声をあげた。 「あ、さっきの質問に答えてなかったな」 「・・・・・・・え?」 「俺たちが何者かって質問」 「あ・・・・・・・忘れてた」 「俺たちは・・・・・・・・・」 カイが答えようとしたそのときだった。 森の中から、15匹ほど・・・・・正確には17匹のゴルバットが飛び出した。 ゴルバットたちはすぐにカイたちの場所を確かめると、一斉に襲い掛かる! 「チ・・・・・もう来たのかよ」 ライラ、カゲロウ、クーラルが身構えた。 「カゲロウ、炎の渦!クーラル、渦潮!」 2匹が技を放った。 が、対象はゴルバットたちではなかった。 炎の渦と渦潮は、なんとライラを包み込んだ! 「え・・・・・!?」 「な・・・・・・・!?何やってんだ!?」 ユウラとクロが驚きの声をあげる。 「まぁ見てろって」 「ライラ!“異雷の渦”だ!!」 「ピ・・・・・・カーーーー!!」 ライラが渦の中心で電撃を放った。 電撃は二つの渦に絡みこみ、二つの渦が合体した。 炎、水、電気の三属性を持った渦は、たちまち沢山のゴルバットたちのうち10匹を包み込んだ。 「すご・・・・・・!」 「マジかよ・・・・・・・!」 ユウラとクロが2度目の驚きの声をあげた。 渦が消えた。 空から気絶したゴルバットたちが次々と落ちてきた。 「俺たちは・・・・・・・」 最後のゴルバットが落ちると同時に、カイが振り向いた。 「リベンジャー・・・・・・復讐者さ」 「・・・・・・復讐者?」 ユウラが困惑の顔になる。 カイがまた振り向き、残ったゴルバットたちを睨み付け、ビシッと指差し、 「おめぇら・・・・・・・ケンカ売る相手間違ったな?」 カイが勝利を確信しきった顔で言い放った。  あとがき 3匹の合体攻撃が出ました。 前々から合体攻撃は考えてあって、どこで出そうか迷ってたんだけど、ゴルバットたちに犠牲になってもらいました。(オイオイ・・・・・)  次回予告 ゴルバットたちを倒したカイたちの前に現れたのは、たった1匹のゴルバットだった・・・・・・。 第25話 意外な強さ(仮)