********* リベンジャー 第25話「激怒」 ********* 『ヤァ!』 ライラの雷パンチがゴルバットを殴り飛ばす。 「ドンドンいくぞコラァ!」 クロのドリルくちばしがゴルバットを射る。 『オラァ!』 カゲロウの切り裂くがゴルバットを切り倒す。 『ウオォォォォォ!』 フォーグのシャドーボールがゴルバットを打ち落とす。 『ハ!』 クーラルのサイコキネシスがゴルバットを地面に叩き落す。 『エイ!』 ランディの火炎放射がゴルバットを包み込む。 数分後、ゴルバット軍団、壊滅。 「なぁーんだ、クロ。お前結構強ェじゃねぇか」 「へ!俺をナメねぇほうが身のためだぜ?」 「ご苦労様!ランディ、フォーグ!」 『へへへ・・・・・・!』 『あんな連中、弱すぎてトレーニングにもならん・・・・・・・』 カイがクロの頭をくしゃくしゃになでながら、あることに気がついた。 「・・・・・・・・!オイ、上見てみろよ」 「何?またゴルバット?」 「バカ、違うって。見ねぇのか?きれいだぜ?」 「え・・・・・・・・?」 カイ以外の全員が上を見上げた。そこには・・・・・・・。 「わぁ・・・・!」 「おおー!」 無気味なほどはっきり見える満月があった。 森の中では木の枝や葉っぱが邪魔になって見えなかったのだ。 「・・・・・・・・ん?」 カイが突然うめいた。 「どうしたの?」 ユウラが問う。 「オイ・・・・・・よく見てみろ・・・・・!」 「?」 カイが月を指差しながら言った。 ユウラたちが夜空に浮かぶ満月を目を凝らして見つめる。 すると、満月の光を背に何かが落ちてくる。いや、正確には、飛んでくる。 「・・・・・・な!?」 「オイオイオイオイ!まだいたのかよ!」 そう、満月を背に飛んできたのは、1匹のゴルバットだった。 「へへ・・・・!まだやられ足りねぇってか!?そんならとことんやってやるぜ!!」 クロが勢いよく飛び出した。 「くらいやがれ!ドリルくちばしぃ!!」 クロの体が回転し、まさしくドリルのように突っ込んでいく。 その時、カイがある違いに気がついた。 「・・・・・・!!クロ!待て!そいつは・・・・・!」 「くらえ!!」 今まさにドリルくちばしが当たろうとしたとき、ゴルバットがクロの突進をひらりとかわすと、クロの背中に蹴りを入れた。 「・・・・う!・・・うお!?」 クロは飛び出したときと同じ勢いで地面に突っ込んだ。 地面にはまった頭を無理やり引っこ抜き、くらくらする頭を抑えながらうめく。 「・・・ゲホ!ぺ!ぺぺ!クソ・・・・!この俺にケリいれるたぁいい度胸じゃねぇか!!」 そう言って、クロが着地したゴルバットの方に向き直る・・・・・が。 「な・・・・・!?こいつは・・・・!」 「だから待てって言ったんだ・・・・・・。一筋縄じゃいかねぇな・・・・・こりゃ」 そう、飛来したゴルバットはただのゴルバットではなかった。 そこらの珍種ポケモンとは比べ物にならないほどのレア度を誇るポケモン、緑色のボディにピンクの羽を持つゴルバット、いわゆる色違いのポケモンというヤツだ。 「コイツはまた・・・・・・・妙に派手なゴルバットだな。  さっきの連中の親玉ってトコだな」 ゴルバットが倒れているゴルバットたちを横目でチラリと見た。 そしてすぐにカイたちの方に向き直ると、羽をばたつかせ、上空に飛び上がった。 ・・・・・・・刹那。 「な・・・・・・!?」 ゴルバットがその場で消失した。その場から消えうせるように消えてしまった。 そして、次の瞬間。 ズバ! 「!?グ・・・・・!」 何かがカイの横を通り抜けたかと思うと、カイのほほに赤い線が浮かび上がった。 赤い線はタラリとほほを伝って地面に落ちる。 「速い・・・・!気をつけ・・・・・・」 その時、カイは見てしまった。 ユウラの背後から迫るゴルバットの姿を。 「ユウラ!あぶね・・・・・」 カイが叫ぼうとした、その時だった。 「・・・・・・!?」 ゴルバットとユウラの距離が1メートルに満たない状態で、ゴルバットの体が空中で静止してしまった。 見えない力で押さえつけられ、じたばたするゴルバットだが、そのあがきも無駄に終わる。 「え・・・・・・な、なに!?」 ユウラがやっと状況を把握した。 振り向いて、ゴルバットを凝視する。 「へ・・・・・・遅ぇんだよ、まったく・・・・・」 カイが森を見ながらぼやいた。 森の中から、ゴルバットと激闘していたコウが姿を現したのだ。 コウの横にはエレクとリュウ、そして念力ポケモン・フーディンが立っていた。 「遅ぇだぁ!?どっちかってぇと早ぇ方だろ!」 そう言いながら、コウが岩のバトルフィールドに降り立った。 「ディン、ぜってー逃がすなよ」 ディンと呼ばれたフーディンが、突き出した腕に力をこめる。 どうやら金縛りでゴルバットの動きを封じ込めているようだ。 「リュウ!破壊光線だ!」 コウが叫ぶ。 同時に、リュウの頭の角にエネルギーが集中していく。 エネルギーが満タンになったのと同時に、破壊光線を放った。 「・・・・・・・」 ゴルバットは空中で静止したまま飛んでくる破壊光線を睨みつける。 そして、突然破壊光線から目を離すと次にディンを睨みつけた。 「!?クォ・・・・・・!」 突然飛んできた眼光にたじろいたのか、ディンは金縛りを解いてしまった。 その隙に、ゴルバットはまた超スピードで飛び回り、破壊光線を回避した。 目標を見失った破壊光線は岩山に激突し、岩山を粉々に粉砕する。 「クッソ・・・・・・・!はずしたか!」 「速過ぎだろ!コイツゴルバットの限界超えてんじゃねぇか!?」 「グチってねぇで考えろ!こいつを倒す方法を!」 彼らは岩のバトルフィールドの真ん中で限界を超えたゴルバットを相手に苦戦していた。 ゴルバットはカイたちの間をすさまじいスピードで飛びまわり、翻弄する。 ライラ、エレク、クロ以外のポケモンは皆、ただ的を増やすだけだということで、今はボールの中にいる。 「カイ、実は俺、お前に言ってなかったことがある」 「あ!?なんだコウ!こんな時に・・・・・」 カイが半ば怒りながらコウを睨みつける。 「なんかこう・・・・・・・ちょっとかっこよく登場しおいてこんなこと言うのはちょっとアレなんだけど・・・・・・」 「・・・・・・・・?」 と、突然コウが頭をクラクラさせながら言った。 「何回も血ぃ吸われて立ってんのも精一杯・・・・・・」 「イヤ遅いだろ!?症状でんのがよ!ていうかさっきの威勢はドコいったんだ!?」 「ちょっと2人とも!そんなコントやってなくていいからこの状況打開する方法考えなさいよ!」 その時だった。 カイの背後にいつのまにかゴルバットが迫っていた。 しかし、本人は気づいていない。 「あ!カイ、後ろ!」 「あぶねぇ!」 ユウラとコウの叫び声がカイの耳に突き刺さる。 「へ?」 カイが振り向いた。 「!?おわ!」 突っ込んできたゴルバットをカイは上体そらしで交わした。 「ふぅ!あぶね・・・・・え・・・・・?」 カイがあることの気がついた。 頭部に装着してあったヘアバンドに手を伸ばす。 ヘアバンドを頭から取り外し、しげしげと眺める。 しばらく、呆然と立ち尽くした。 「オ、オイ、カイ!?どうした!?」 「ねぇ、どうしたの?」 コウとユウラがヘアバンドを見つめる。 そして、コウとユウラもその異変に気がついた。 「あ・・・・・」 2人の声が重なった。 ヘアバンドに、3センチほどの切り傷があった。 その傷を、カイは見つめ続ける。 また後ろからゴルバットが迫っていることも知らずに。 「あ!カイ、また!」 「何やってんだ!?カイ!よけろ!」 コウとユウラがその場から離れながら叫ぶ。 が、カイはまったく聞こえていないのか、少しもよけようとしない。 ゴルバットが、カイのすぐ後ろに迫っていた。 「カイ!」 「よけろぉ!!」 カイが振り返った。 「てめぇ・・・・・・!!」 カイが右腕を突き出すと、そのまま飛んできたゴルバットの顔面を鷲づかみにした! 「・・・・・・・!!?」 その表情、鬼の如く。 「おお!」 「すご・・・・・!」 そのままゴルバットを握りつぶすかのように、カイは腕に力をこめる。 「ギュ・・・・・!?」 ゴルバットの顔が苦痛に満ちていった。 「俺に大事な宝に・・・・・・!」 カイがゴルバットをつかんだ右腕を振り上げる。 「なにしてくれてんだァァァァ!!」 カイがまるで野球ボールでも投げるかのように、オーバースローでゴルバットを投げ飛ばした。 ゴルバットはすさまじいスピードで岩山にたたきつけられた。  つづく  あとがき カイがブチ切れました(笑) 色違いのゴルバットは、ゲームのほうではじめて捕獲した色違いのポケモンで(捕獲時はズバット)、なんとなく出してみたくなりました。  次回予告 カイが全力でゴルバット撃破を狙う・・・・・! 第26話 目には目を、すばやいヤツには・・・・・・。