俺は生まれたときから孤独だった。 “色が変”、この言葉を幾度となく聞かされた。 そのうち、俺はどんどん人目を避けるようになった。人とはいえないが・・・。 俺は生まれ故郷を離れ、今、この名もない森にいる。 まだ進化も経験していない俺にとって、未開に地で生きていくことなど不可能だった。 意外だった。森の連中はあっさり俺を受け入れた。 “色が変”な俺を。 そこで俺はがんばって修行した。 そして今、俺は進化し、ひとつの群れを指揮している。 そんな俺の仲間たちをこんな目にしたこいつらを、俺は許さない。 だが・・・・・・・なんだ?コイツの力は。 鍛えに鍛えた俺の電光石火を、いとも簡単に捕らえやがった。 それに、あの顔は何だ? まるで鬼みてぇな顔しやがって・・・・・・。 コイツは・・・・・・・一体・・・・・・? ***********************  リベンジャー  第26話「目には目を、素早いヤツには・・・・・・」 *********************** カイとゴルバットは睨み合っていた。 カイは腰のボールに手をかけ、ゴルバットは右足を前に出しいつでも飛び立てるようにしている。 カイが動いた。 腰のボールをすばやく手にとり、前方に投げつけた。 同時に、ゴルバットが飛ぶ・・・・・・はずだった。 ボールから飛び出した緑色の物体は、すさまじいスピードでゴルバットに近づき、一気に斬り裂いた。 ゴルバットの身体が回転しながら宙を待う。 「ギュバ・・・・・・・・!?(何・・・・・・・・・!?)」 「おお!?スゲェ!」 「はや・・・・!」 コウとユウラが驚きの声をあげる。 緑色の物体・・・・・・・ストライクのカゼマルはすぐに反転すると、またすさまじいスピードでゴルバットに斬りかかる。 が、ゴルバットも黙ってやられるわけにはいかない。 空中で体制を立て直すと、目を光らせ、怪しい光を放つ。 カゼマルは目を閉じ混乱を避けると、閉じたままジャンプし、第二の斬撃を放つ。 斬撃はゴルバットに正確に斬りかかったが、ゴルバットは簡単に回避した。 2匹が着地し、睨み合う。 「ヤバイな・・・・・・」 コウがうめいた。 「え?何で?いい勝負じゃない?」 「いや・・・・・・ヤバイのはカイのほうなんだよな・・・・・」 「え?」 「カイがブチギレかけてんだよ」 「は?」 「カイがブチギレるとよぉ・・・・・・止め様がねぇんだ。  まだキレちゃいねぇがよ、今の状態はかなり危険だ・・・・・・・・・」 そう、カイの顔は、3年前のあの日、カイが見せた【鬼】の顔になっていた。 「カゼマル!疾風撃!」 カゼマルがすさまじいスピードで切りかかる。 が、またもゴルバットは余裕で交わす。 「カゼマル!例の技いくぜ!」 カゼマルが無言でうなずいた。 「とりあえず・・・・・・電光石火!」 カゼマルがゴルバットよりも一段階上のスピードで飛び回る。 『ク・・・・・・・・!』 ゴルバットはカゼマルを目で追うが、まったくついていけていない。 突然、ゴルバットの周りを飛び回っていた緑色の閃光がやんだ。 ゴルバットは何が起こっているかわかっておらず、眼をパチクリさせてる。 「なんだあの構えは・・・・・・」 「さぁ・・・・・・」 カイはもちろん、コウとユウラもカゼマルの居場所は確認済みだった。 カゼマルがゴルバットの後方5mのあたりにいた。 腕を後ろに回し、うつむいたまま動かない。 「カゼマル!“風牙”だぁ!!」 ゴルバットがカゼマルに居場所に気がついた。 慌てて振り返るが、ときすでに遅し。 カゼマルは高速移動でゴルバットのすぐ後ろに迫ると、腕を後ろから大ぶりに振り上げた。 が、2本の刃はゴルバットのすぐ後ろの空気を斬っただけだった。 「は!?」 「何で斬らねぇんだよ!?」 その時だった。 いつのまにかカゼマルの姿がゴルバットの正面にあった。 「へ・・・・・・・?」 コウとユウラ、そしてクロとエレクの声が重なった。 ライラだけが、すべてを知っているようで、まったく動じなかった。 ・・・・・・刹那。 スバババ!! 突然、ゴルバットの体が跳ね上がった。 「おお!?」 「何!?」 「なんだぁ!?」 ゴルバットの体が地面に落ちた。 「“風牙”・・・・・いったいどんな技だったんだ・・・・!?」 「知りたいか?」 コウの言葉を聞いてか、カイが言った。 「“風牙”は、まずかまいたちのエネルギーを刃に貯め、後ろの回し、振り上げる。  これによって、かまいたちが放たれ“下の牙”が出来上がる。  さらに振り上げた刃を振り下ろすことによって、“上の牙”が出来上がる。すると・・・・・・」 「風でできた“下の牙”と、刃でできた“上の牙”が同時に襲い掛かる。  四つの刃が上と下から襲い掛かる形が、獣の牙に似てるから“風牙”・・・・てカンジか?」 「ビンゴ」 カイが振り返り、顔に笑みを浮かばせながら言った。 そこには、先ほど見せた【鬼】の顔はなく、いつもの笑顔に戻っていたのを見たコウは、心の底からホッっとしていた。 コウとユウラ、そしてライラ、エレク、クロが駆け寄ってきた。 「オウオウオウオウ!スゲェじゃねぇか!あのゴルバットをたおすなんてよ!」 クロがカイの頭の上に乱暴に乗りながら言った。 「ああ・・・・・カゼマル、よくやったな」 「・・・・・・・・」 カゼマルは何も語らず、笑っていた。 カイはそんなカゼマルの姿を見て少し笑った後、地面に落ちたまま動かないゴルバットの方に目を移した。 「未完成の技とはいえ、かなりの破壊力を持つ“風牙”をモロにくらったんだ。しばらくは目を覚まさないな」 「あ、あれで未完成なの・・・・・・?」 ユウラが口走った矢先、思いも寄らない出来事がカイたちを襲った。 「あ!?」 「カイ!あぶねぇ!」 「・・・・・・!!」 いつの間にかゴルバットが起き上がり、またすさまじいスピードでカイたちに向かって突進してくる。 今まさにゴルバットの電光石火がカイに直撃しようとした、そのときだった。 ドゴ!! 突然飛んできたその茶色い球状の物体は、激しく回転しながらゴルバットに突撃し、ゴルバットを吹き飛ばした! 「!!!??」 ゴルバットはなすすべもなく、岩山に突っ込んだ。今日2回目の出来事である。 球状の物体は地面に落ちると大きくバウンドした。 1メートルほど跳ね上がった物体は、すでに球状ではなくなっていた。 その小さな救世主を見たカイの目が点になった。 「お、お前は・・・・・・・」 謎の小さな救世主の正体は、ゴルバットに遭遇する間にカイが助けた、たった1匹のサンドだった。 サンドは着地すると、カイたちの方を見て、少しだけ、笑った。  つづく  あとがき オリジナル技、“風牙”の初めての登場でした。 これからはカゼマルの主力技になっていくと思います。 ちなみにこれ、“ふうが”と読んでしまうかもしれませんが、正確には“かぜきば”と読みます。  次回予告 突然現れたサンド、その真意、そして実力は・・・・・!? 第27話 知らなかった(仮)