*************  リベンジャー  第27話「知らなかった」 ************* 『オイお前、この森の住人の1人だろう?  何故森の住人がテメェの仲間をボコボコにした連中を助ける?」 『・・・・・・・・』 ゴルバットの質問に、サンドは何も答えない。 カイたちは2匹の会話を無言でも守る。 『・・・・知らなかったんだ・・・・・・・』 サンドがその重い口を開いた。 『知らなかった?』 『人間がこんなにやさしいなんて・・・・・・知らなかった』 『・・・!?やさしいだぁ!?人間がか!?  珍しいポケモンを見たら食い物見つけたカビゴンみてェに群がってくる人間が!?やさしい!?  ハ!フザけんな!俺がこの世で一番嫌いな連中を教えてやろうか!?  人間さ!!俺も過去になぁ、追われ続けたんだよ!このワケわかんねェ色のせいでな!  仲間からも言われ続けたんだよ!“色が変”ってな!!  仲間からは馬鹿にされるわ人間に追われるわ!』 『でも、今は違う』 『・・・・・・・・わかってんじゃねェか・・・・・、俺の忌まわしい過去をよぉ・・・・。  そんな俺を受け入れてくれたこの森の仲間たちはなぁ、かけがいのない家族なんだよ!その仲間をコイツらは・・・・・・!!』 『違う・・・・・』 『あ?』 『この人たちは違う!根に挟まって動けないでいた僕を助けてくれたんだ!  君の仲間を攻撃したのは、きっと理由があったんだよ!』 『理由!?そんなものあるワケねェだろ!ただ楽しんでやってるだけさ!  そこにいる連中はなァ、ポケモンたちの敵なん・・・・・』 「ゴチャゴチャうっせェぞゴラァ!!」 『『!?』』 今まで黙って話を聞いていたクロが、突然怒鳴り散らした。 「!?ちょ、ちょっとクロ?突然どうしたの?」 ユウラがあせって質問するが、クロはゴルバットとサンドの方しか見ていない。 「黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって!それじゃまるで俺たちがわりィみてぇじゃねぇか!」 『外野は黙ってろ!』 「お、おいクロ・・・・・」 「アン!?なんだよカイ」 「あいつ・・・・・一体なんて言ってんだ?」 「簡単にいやぁな・・・・・俺たちのことヨダレ垂らしたカビゴンだって言ったんだよ!」 「ぬわぁにぃ!?テメェ勝手なこと言ってんじゃねぇぞ!」 明らかにおかしいクロの訳を、そのまま間に受けたコウが怒鳴った。 ゴルバットはというと、ありえない訳に怒る気も起こらず、ただ呆然と立ち尽くしている。 「・・・・・ゴルバットの様子から見て少し訳が食い違ってるのはわかるが・・・・・他にわかったことが2つあるな」 カイがゴルバットを睨みつけた。 「あのゴルバットが何か勘違いしてるってことと・・・・・・」 次にサンドに目を移した。 「コイツが俺たちの味方してくれてるってことだ」 サンドが振り向いた。そして、力強くうなずいた。 そして、突然、カイが叫んだ。 「サンド!砂嵐だ!」 サンドが命令に従い、丸くなってその場で激しく回転した。 すると、サンドを中心に砂嵐が巻き起こった。 『グ・・・・・・!』 ゴルバットが翼で自分の顔を覆い隠した。 が、その翼はすぐにどかすことになる。 『・・・・・ん?』 砂嵐が、突然やんでしまったのだ。 そして、その場にいる全員が、異変に気づく。 『な・・・・・?』 「アレ・・・・・・?」 「いねぇな・・・・・・」 「ああ・・・・・確かにいねぇ・・・・・・」 そう、砂嵐に中心にいたはずのサンドの姿がどこにも見当たらないのである。 『どこに・・・・・』 そして、次の瞬間! ボゴォ! 「!?」 ゴルバットの後ろから奇妙な音が響いた。 ゴルバットが急いで振り返るが、間に合わなかった。 「サンド!切り裂け!」 ザシュ! ゴルバットの体がふらついた。 サンドはジャンプでゴルバットを飛び越えカイの前に着地すると、すぐにゴルバットの方へ向き直る。 ゴルバットは踏みとどまると、切り裂かれた背中を右翼で抑えながらサンドを睨みつける。 『テメェ・・・・・・・・一体どっから現れやがった!?』 『・・・・・・砂嵐は目くらましじゃないんだ』 『なに・・・・・?』 『僕のとった行動はこうさ。まず、砂嵐で“自分の姿”を隠した。  そして穴を掘り、本格的に姿を隠した。掘った穴は砂嵐の砂が消してくれる。  あとは後ろから突然現れてきり切り裂いただけだ』 『ありえねぇ・・・・・・』 『え・・・・・・?』 『この森にすむサンドは比較的あまり強くないハズだ。  なのに何でこんな高等な作戦が思いつくハズが・・・・・・・』 『僕が考えたんじゃない』 『何?』 サンドが振り向き、カイをしばし見つめる。そして、再びゴルバットの方へ向きなおした。 『・・・・・・・この人が、教えてくれた作戦さ』 『コノ・・・・・・!』 「よっしゃぁぁぁぁぁぁ!やっちまえ!サンド!」 「ブッたおせぇぇぇぇ!」 「がんばれー!サンド!」 サンドはゴルバットの周りを転がり続けていた。 ゴルバットの体は傷だらけだったが、サンドも変わりはなく、傷だらけだった。 ゴルバットは自分の周りをすさまじいスピードで転がり続けるサンドを目で捕らえられず、イライラしていた。 だが、このイライラが命取りとなった。 「!今だ!サンド!」 カイはゴルバットが見せた一瞬の隙を見逃さなかった。 サンドはそれまでゴルバットを円形状に走り回っていたコースを外れ、ゴルバットに向かって猛ダッシュする。 「!?」 サンドの攻撃はゴルバットの頬を掠めただけだった。 これだけなら、再び円形状に回って隙を見つけることができた。 しかし、サンドにはコースに戻ることができなかった。 理由は簡単だった。 彼は転がることができなかった。 体力が限界にきたわけでない。 ゴルバットに突進したときカウンターを受けたわけではない。 では、なぜか? 「あ・・・・・・」 「い・・・・・・」 「う・・・・・・」 クロ、コウ、ユウラがまるで打ち合わせでもしてあったかのように、順番にうめいた。 サンドの体は、崖から飛び出し、今まさに落ちようとしていた。 「え〜〜〜〜〜〜!!?」 2人と1匹が同時に叫んだ。 「サンド!あぶねェ!!」 カイに叫ばれ、サンドが球状からノーマル状態に戻った。 そして、自分のおかれている状況をはじめて認識した。 「〜〜〜〜〜〜!?」 サンドが言葉にならない声をあげる。 サンドの体が重力に法則に従い、まっすぐ落ちていった。 「サンド!!」 カイが崖の上からサンドの姿を確認する。 サンドの姿は意外に早く確認できた。 サンドは崖の上から約10メートルの地点で急な傾斜に爪を引っ掛け、何とか助かっていた。 「お前、器用だな・・・・・・」 カイがつぶやいた、その時だった。 突然ゴルバットがカイの横を通り過ぎ、崖の下で絶対に落ちまいとがんばっているサンドに突進する。 『その体制じゃあ交わせまい!』 ゴルバットとサンドの距離が1メートルをきった時、ゴルバットの耳に何者かの声が響いた。 「オメェ・・・・・・・そろそろくたばれや・・・・・」 ドゴ! その何者かの攻撃が、ゴルバットに直撃した。 ゴルバットに体にビリビリした衝撃が走る。 そして、攻撃をくらった衝撃でそのまま崖の側面にたたきつけられた。 ゴルバットの意識が、そこで途切れた。 「お前ら、ベストタイミングででてくるな」 『このぐらい、朝飯前だよ』 「よ〜く考えたらよ、コイツに任せないであのまま俺たちがやればよかったんじゃないか?」 崖の下からでてきたのは、クロ、そしてクロの背中に乗ったライラだった。 クロの足には気絶したゴルバット、ライラの背中にはまだ落ちたときの恐怖が残っているのか、びくついた表情のサンドの姿があった。  あとがき ゴルバット撃破!ていうか遅! いったい何話分使ってんでしょーか・・・・・・。 1匹の敵になんでこんなに長引いたんだろう・・・・・・。  次回予告 ゴルバットが目を覚ましたとき、彼の前には・・・・・・・。 第28話 襲った理由(仮)