『(ぐあ・・・・!!一体・・・・・・なんだ!?今の衝撃は・・・・・・!)』 ゴルバットの意識は、そこで途切れた。 ************  リベンジャー  第28話「襲った理由」 ************ 「!」 「お・・・・・目ぇ覚めたか」 ゴルバットは状況の理解の苦しんだ。 岩山に寄りかかった少年、その横に座ってポケモンフードをかじっているサンド、ヤミカラスとリンゴ争奪戦を繰り広げる少年。 そして、極めつけは・・・・・。 少年たちに倒されたはずの仲間のゴルバットたちが、少女からポケモンフードをもらっていた。 「????」 「ハハ・・・・・さすがにすぐ状況把握は出来ねェよな・・・・・・・。  いや、悪かったな・・・・・、食い物見つからなくて、仕方なく俺たちを襲ったんだろ?」 「・・・・・・・?」 ゴルバットが最近の出来事を頭の中で検索する。 確かに、例年に比べ今年はあまり食料を手に入れることができなかった。 しかし、いくら食料が手に入らなかっただけのことで、“人間を襲え”と言った覚えはない。 「・・・・・・・・」 ゴルバットはおいしそうにポケモンフードを食い荒らすゴルバットたちを見つめる。 「!」 そのうちの1匹が、ゴルバットの視線に気がついた。 同時に、顔面蒼白になる。 『お前ら・・・・・・・俺に無断で・・・・・・!?』 ゴルバットは震え上がった。 他のゴルバットもそのやり取りに気がつき、翼で器用につかんでいたポケモンフードを次々に落とした。 『そうなんだな・・・・・・?』 ゴルバットが1歩歩み寄った。 他のゴルバットたちもそれに合わせ、1歩後ろに下がる。 『そうなんだな〜〜〜〜〜?』 ゴルバットがピンク色の翼を広げた。 同時に、他のゴルバットたちは身の危険を察知したのか、わらわらと逃げていった。 『逃げんじゃねェェェェェェェ!!』 『ギャァァァァァァァァァァァァ!!!』 『すまないことをした』 ゴルバットがカイたちに向かって深々と頭を下げた。 ゴルバットの後ろには、ボロボロになって倒れたまま痙攣しているゴルバットたちの姿があった。 『ウチの野郎共が迷惑かけたみてェだな・・・・・・』 「迷惑かけた・・・・・・だってよ」 「そんなことねぇよ、俺らなりに楽しめたからな」 「オメェスゲェ電光石火すんなー!エレクたちもあれぐらいできたらいいんだけどなー!」 カイが笑いながら、クロとコウがそれぞれ半分ずつリンゴをかじりながら言った。 その時だった。 『だ・・・・・だてよぉ、ボス、俺たち耐切れなかったんだよ』 『耐切れなかっただぁ・・・・・?』 ゴルバットが振り向いた。 『だからって襲っていいなんて俺ぁ許した覚えはねぇぞ・・・・・・』 『い、いや!だって・・・・・・・』 『俺たちの問題は俺たちで解決すんのが掟・・・・・・』 「あーーーーーー!!そうだ忘れてた!!」 突然コウが叫んだ。 「オイお前らぁ!!」 今まで地面に下ろしていた腰を持ち上げ、そして、右腕を左の指で指差した。 よく見ると、右腕に4つの穴があった。 「俺の血ぃ返せェェェェェ!!」 「返せるかぁ!!」 ユウラが座ったままコウの尻にバシッと平手打ちでツッコミをいれた。 「のあぁぁ!!?」 コウが尻を押さえながらその辺をのた打ち回った。 「だぁっはっはっはっは!なぁーにやってんだテメェは!」 クロがコウに向かって叫んだ。 いつのまにかコウが落としたリンゴを左翼でつかんでいる。 「うう・・・・・・・こんなに痛ぇと・・・・・こんなに痛ぇと・・・・・・・」 突然、コウが立ち上がった。 「叫びたくなるじゃねェかぁぁぁ!!ウオオオオオオオ!!」 「なんでだよ!?」 クロがすかさずツッコミをいれた。 「だぁっはっはっはっはっは!いいぞ!叫べ叫べ!ついでに踊れぇ!!」 カイが場を盛り上げる。 「よっしゃぁぁぁぁ!!ギンバネ島に伝わる秘伝の踊り!“ルージュラダンス”をとくと見よぉぉぉぉ!」 「そんなんねぇだろ!」 「おっし!俺も付き合うぞ!コウ!」 いつのまにかリンゴを食べ終えたクロが踊りに乱入する。 それにつられてゴルバットたちが踊りだした。 カイ、ユウラ、サンド、ボスと呼ばれるゴルバットが観客になり、コウたちの意味不明な踊りを繰り広げる。 いつのまにか、岩山地帯はバトルフィールドから宴会場に変わっていた。 時と場所は変わり、明朝、コガネシティ側の森の入り口に、カイたちはいた。 ゴルバットたちも、その後ろからついてくる。 「ここでいいぜ・・・・・・ありがとな、送ってくれて」 「う・・・・う・・・・・またな〜〜〜〜ライバルたちよぉぉ・・・・・・・!」 クロがウケを狙ってか狙わないでか、泣きながらゴルバットたちに翼を振る。 『お〜〜〜〜う!!』 『元気でな〜〜〜〜!!』 ゴルバットたちが森へ帰っていく中、1匹だけ帰っていこうとしないゴルバットがいた。 色違いのゴルバットだった。 『クロ』 「あん?」 『そこの人間たちに伝えてほしいことがある』 「なんだ?言ってみろよ」 ゴルバットがクロにポケモン語で何かを話すと、振り返り、ゴルバットたちを追いかける。 「何て・・・・・言ってたの?」 ユウラがクロの顔を覗き込みながら言った。 「“お前たちのような人間ははじめて見た。  人間は皆、欲望まみれな連中だと思っていた。  大抵、人間共の後ろには闇が見えていたが、お前たちの後ろには・・・・。”」 クロが微笑しながら言った。 「“光が見えた”・・・・・・てさ」 ユウラが言う。 「イイコト言うじゃん、アイツ」 「あ・・・・・・・そうだ、聞くの忘れてた。おい、コウ」 「んー?なんだ?」 それまで後ろを向いていたコウが振り返る。・・・・が。 「お前・・・・・・・何食ってんだ?」 コウは口にパンをくわえていた。 「何・・・・・って見てわかんね?あんぱん食ってんだよ」 「俺が聞きてぇのそんなことじゃなくて、何で今パン食ってるのかってことだよ」 「そんなの簡単じゃねぇか」 「・・・・・・?」 「腹が減ったからだ!」 コウがやけに自信満々に言った。 が、そんな自信にまみれた顔をしてられるのも3秒ともたなかった。 カイのハイキックが、コウの顔面に直撃した。 「ぐおにゅらぁぁぁぁぁ!!?」 派手に吹っ飛ぶコウを尻目に、 「よっと」 カイが空中回転していたあんぱんをキャッチすると、ユウラに手渡した。 「あの馬鹿に食料持たせた俺が馬鹿だった。  ユウラ、お前が食料管理してくれ。あいつに任せたら一週間分の食料が1日でなくなる」 「うん」 「・・・・・・ってちょっと待てやぁぁぁぁぁぁ!!!」 「お、いつの間に復活してたんだ?コウ」 「くっそ・・・・・・てめぇ相変わらずプロのキックボクサーみてぇ蹴りしやがって・・・・・・・顎外れるかと思ったじゃねぇか!」 「そりゃてめぇの勝手だろ・・・・それに顎は外れねぇよ、デコ狙ったんだからな」 「そういう問題じゃねェだろ!」 「ね・・・・・ねぇカイ」 「あん?どした、ユウラ」 「コウに聞くことあったんじゃないの?」 「おー!そうだ、また忘れるとこだった。コウ、お前バッジ4個持ってんだよな」 「いって〜〜・・・・・あ?あ、ああ、そうだけど?」 「てことは、タンバ島に行ったあと、コガネのほうに行ったのか?」 「お、おう、なんでわかったんだ?」 「お前のことだから、海流に飲まれてアサギに行けず、コガネに流されたんだろ?」 「(ギク!)」 コウが昨晩のゴルバットのように顔面蒼白になった。 「やっぱりな・・・・・・コガネでバッジを手に入れた後、このあたりを一周してバッジ4個・・・・・・やっとつながった」 「で?結局何が言いてぇんだ?」 「なんでエンジュに行かねぇんだ?」 「へ?」 「お前次に行くのはエンジュだろ?ギンバネ島から旅立ってバッジ4個、んであの森にいるのはおかしいよな?  エンジュに行くにはあの森は通らなくていいはずだ」 「だぁーーーーっはっはっはっは!!」 突然コウが笑い出した。 そして、すぐに真顔になり、叫んだ。 「そうだよ!迷い込んじまったんだよ!ワリィか!?」 「何キレてんだよ・・・・・・・」 「もうイイじゃん!そんな話!」 ユウラがまだ何か叫ぼうとしているコウの口を手でふさいだ。 「あたしはもうバッジ8個あるからどこいったっていいし、コウは間違ってこっち来ちゃったし、  カイはまだ全然バッジないみたいだし、このまま3人で旅しようって昨日決めたじゃん!」 ユウラが二人をなだめていた、そのときだった。 「あ・・・・・・・」 「ギュウ・・・・・・」 カイの足元に、昨日ともに戦ったサンドが立っていた。 「なんだお前、もしかして、一緒に行きてぇのか?」 「ギュウ!ギュウ!」 サンドがうれしそうに鳴き声をあげる。 「でもな・・・・・・」 カイがしゃがみ、サンドと話しやすくする。 「俺の旅はな、普通のポケモントレーナーの旅じゃねぇんだ。  とてつもなくデケェ相手を倒すための旅なんだ。  死ぬかもしれない・・・・・・それでもくるか?」 サンドが頭を下げしばし黙り込む。 そして、頭を上げ、満面の笑みで、 「ギュウ!!」 と鳴いた。 カイは無言でボールを取り出し、そっとサンドの頭をたたいた。 サンドの体が光になり、ボールの中へ吸い込まれていった。 カイが立ち上がった。 「そんじゃあ・・・・・・行くか!」 「うん!」 「よっしゃあ!」 3人は歩き出した。 コガネシティは、もう目と鼻の先にある・・・・・・・。  つづく  次回予告 コガネ目前で、彼らに緊急事態が発生していた・・・・・・。 第29話 ゾンビ