誰だ・・・・・・・?お前は・・・・・・・・。 俺に何か用か? 俺はお前みたいなヤツ知らないぞ・・・・・・? ん・・・・・?何だ?その手に持っている物は? それで何をする気だ・・・・・・・? あ?何言ってやがる。俺を実験台にするだって・・・・・・・・? わ!?何しやがる!やめろっ!! ************  リベンジャー  第33話「鋼鉄の宝玉」 ************ 「お!核が復活したみたいだな、アイツ」 ゲンガーは起き上がった。 自分もよく知っている、ウバメの森。それはわかった。 自分の眼前に広がる光景の中に、神社が見える。 この神社も幾度となく見たことがある。 たしか・・・・・・・人間の女とネイティオが住んでた気がする。 だが、見慣れないものが見える。 3人の人間の姿が見える。 そういえば、ここのところずっと眠っていた気がする。 そういえば、あいつらは何処だ? ゲンガーがあたりを見回し、自分の仲間を探す。 仲間はすぐに見つかった。 すぐ近くの森の中からこちらをうかがっている。 まるで何か恐ろしいものでも見るような脅えた目で。 『どうした・・・・・?お前ら』 『オ、オヤビン・・・・・・?』 ゴーストたちはまだ脅えている。 『元に戻った・・・・・のか?』 『は?何言ってやがる、俺はいつもどおりだぜ?』 ゴーストたちはお互いに顔を見合わせたあと、ゲンガーに向かって飛び出していった。 『オヤビ〜ン!』 『いつものオヤビンだァァ〜!』 ゴーストたちはゲンガーと戯れたあと、楽しそうにゲンガーとともに立ち去っていった。 そんな光景を見て、コウが言った。 「な〜んだったんだろうな、あいつら」 コウの質問に、カイが答えた。 「ど〜でもいいだろ、そんじゃシノさん俺たちもう・・・・・・・・・ってアレ?シノさんは?」 「あ・・・・いない」 カイの質問に、ユウラが簡単な答えを返す。 そのときだった。 神社のふすまがスーッと開き、中からシノが現れた。 両手に小さな木箱を抱えている。 「コレをそなたに渡さなければならない」 「俺?」 カイは聞き返しながら木箱を受け取った。 カイがふたを開けようとすると、中身を見にコウとユウラが木箱を覗き込む。 カイが静かに木箱を開けた。 木箱の中には綿が詰められていて、その真ん中に奇妙な鉄の玉が入っていた。 今まで両手で持っていた木箱を片手で持つ。 カイが木箱から玉を取り出そうとすると、シノが両手を差し出した。 カイは無言で木箱から玉を取り出すと,空の木箱をシノに返した。 改めて、カイが鉄の玉を見つめる。 銀色にきらめくその玉には、黒いインクのようなもので奇妙な模様が描かれていた。 よく見ると剣にようにも見えるその模様は、何処か神秘的な雰囲気を漂わせていた。 「なんスか?コレ」 「これは・・・・・・“フルメタルコート”」 「フル・・・・・・メタルコート・・・・・ですか?」 シノが言い放った微妙に聞きなれない品物名に、ユウラが首をかしげる。 「メタルコートっつったらたしか、ストライクをハッサムに、イワークをハガネールにする特殊な道具じゃなかったっけか?」 「あんたよく知ってたね・・・・・」 あまり賢そうに見えないコウが薀蓄を言い出したのでユウラが少し感心する。 「たしかにそうだが・・・・・・・コレはその中でかなり特殊でな、ストライクにしか反応しない」 「ストライクにしか・・・・・・?」 「さらに言えば、コレを使っただけでストライクがハッサムに進化するわけでない。  この・・・・・フルメタルコートは、持ち主を試すのだ」 「試す?」 「私も詳しいことはわからない・・・・・・・が、私なりに考えたのだが、これは持ち主・・・・・つまりストライクの力量を測り、  ある一定に強さに達したとき、初めて進化できるのではないかと思われる」 「へー!」 「カイよ、そなたのストライク、カゼマルを出してくれ」 「・・・・・・」 シノに言われ、カイは黙ってボールを軽く投げた。 中からカゼマルが出現する。 ・・・・・・・刹那。 グニャ!! カイの手の中にあったフルメタルコートが、突然粘土の様にグニャグニャになり、宙を浮いたのである。 「なんだこりゃ・・・・・・!」 「おお!スゲぇ!」 「な・・・・・!!?」 「これは・・・・!」 カイ、コウ、ユウラ、シノの順に驚きの声をあげる。 そして――― バシィ!! グニャグニャ状態のフルメタルコートは一直線にカゼマルに迫り、まるで首輪のようにカゼマルの首に巻きついたのである。 巻きついたと言っても、まったく隙間がないわけでもなく、何センチか余裕を持って巻きついている。 そんな奇怪な光景を見て、コウが言った。 「・・・・・・・・どうコメントにたらいいかわかんねぇんだけど・・・・・・・・」 「・・・・・・おそらく、フルメタルコートはカゼマルを主と認めたようだ」 「・・・・・・・・・これでいつかはハッサムに進化するってことッスよね?」 カイの質問に、シノがしばらく黙り込んだ。 数秒後、シノが口を開いた。 「・・・・・いや、進化するとは限らない」 「へ?」 首に巻きついたフルメタルコートを刃の先でいじっていたカゼマルだが、進化するとは限らないと言われ眉間にしわを寄せる。 「先ほども言ったが、フルメタルコートは持ち主を試す・・・・・・。  もしもカゼマルが一生フルメタルコートの実力規定に入らなければ、進化することは・・・・・・・・・」 その時だった。 シノの首元に、カゼマルの刃が添えられていた。 静かに添えられたその刃は、本人のやる気を現すようにギラリと煌く。 「・・・・・・・本人は進化する気マンマンらしいが?」 カイが口元に笑みを浮かべながら言う。 「・・・・・・そうらしいな。さぁ、その物騒なものを下げてくれないか?」 「・・・・・・・・」 カゼマルが無言で刃を首筋から放す。 そして地べたに座り込み、またフルメタルコートをいじりだした。 「・・シノさん、聞きてぇことがあんだけど・・・・・・」 カイが突然、シノに質問する。 「何だ?」 「あの石版、何か書いてあるみてぇだけど、なんて書いてあるんスか?  全然読めねぇんだけど・・・・・・」 カイが石段付近にあるあの謎の文字が記された石版を指差しながら言う。 「ああ・・・・・あれか。読めないのも無理はない。  あれは確か、千年以上のものかもしれないと言われるほどの代物だからな」 「千年以上!!?」 「そんな・・・昔のものなんですか!?」 「専念?何に専念すんだ?」 ゴス! ワザとにしか見えないコウの聞き間違いに、ユウラが拳の制裁を入れる。 「てかアレ・・・・・・全然風化してねぇ気がするんだけど・・・・・・。  千年以上のものなら原型とどめてなくても不思議じゃないような・・・・・」 「あの石版には・・・・・・・鋼の神の最期の言葉が記されている」 「鋼の神の最期の言葉・・・・・・・ですか?」 「最期の言葉・・・・・・ってことは、死んだのか?神が」 「そう・・・・・・・殺された」 「はぁ!!!!???」 「殺された!?神がか!?」 「てかさっき向かうところ負けナシとか言ってなかたっけか!?」 「神様を殺すなんて・・・・・・・」 3人は驚きの顔を隠せない。 「いいか?これから言うことをよく聞け。  特にカイ、お前はフルメタルコートを託された時点でその“運命”に従わなければならないのだからな・・・・・・」 その昔、このあたりを鋼の神が居座っていたのはさっき話したな? たしかに鋼の神は向かうところ敵ナシだったのだが・・・・・・・。 ある日、鋼の神の目の前に小さなポケモンが現れた。 1mに満たない小さな・・・・・・黒いポケモンだった。 鋼の神は鋼ポケモン以外の者は森に立ち入ることを禁止していた。 そのことは鋼ポケモン以外のものにもよく知られていることなので、誰も近づこうとするものはいなかった。 が、やつは来た。堂々と鋼の神の目の前まで。 明らかに鋼ポケモンに見えない黒いポケモンを、鋼の神はひき帰させようとした。 鋼の神は戦闘好きとは言われているものの、ただ迷い込んでしまっただけのようなポケモンに手を出すほど落ちぶれてはいなかった。 鋼の神は黒いポケモンにひき帰すように言ったが、黒いポケモンは帰ろうとせず、逆にこう言ったそうだ。 しかも、人語で。 僕の夢を実現するのに、お前のような力を持ったヤツは邪魔なんだ・・・・・・。 死ね。 「・・・・・・それでどうなったんですか?」 ユウラはよほど先のことを知りたいのか、早口でシノに迫る。 「・・・・・・殺された、秒殺・・・・・・・・というよりも、瞬殺といった方が正しいかもしれない」 「マジでかよ・・・・・・」 「そのポケモンがその小さな腕を振るうだけで森は吹き飛び、瞬きするだけで空は荒れ狂い、脚を地に付けただけで・・・・・・」 シノが間をおいた。 3人はじっとシノが話すのを待っている。 「地は・・・・・割れた」 3人が同時につばを飲み込んだ。 3人顔を汗が流れ、地面に滴り落ちる。 「・・・では、本題に移ろうか。あの石版に書いてある、鋼の神の最期の言葉」 「そ、そうだ、俺が聞きてぇのはそっちだった」 「では、こっちへこい」 シノが歩き出した。 その後ろにカイたちが続く。 その行動を見てか、カゼマルも立ち上がりその後ろに続く。 もちろん行き先は、石版の前。 シノが石版の前に立ち、その後ろにカイたちが横に並んで立つ。 「いいか?読み上げるぞ」 「お、おう。いつでもいいぞ」 カイが少々あせりながら言った。 黒き魔物再びこの世に目覚める時、大地は割れ、空は狂い、世界は闇に包まれる・・・・・・。 同時にこの地に“闇を切り裂く力”操る聖戦士現れる。 その者に“鋼鉄の宝玉”授けよ。 さすれば、緑の剣士、紅の剣士となりて闇を切り裂き、世界は光に包まれる・・・・・・・。 3人は黙ってシノが話す伝承を聞いていた。 その中で、カイだけが笑っているようにも見えた。 「闇を斬る力・・・・・そして緑の剣士とはカゼマルのこと、鋼鉄の宝玉とはフルメタルコートのこと、そして聖戦士とは・・・・・・・」 シノが振り返った。 その顔は、真剣そのものだった。 「カイ、お前のことだ」 シノがカイを指差しながら言った。 妙に真剣な顔つきで話し掛けづらいシノだったが、ユウラが勇気を出して言った。 「あ、あの、黒き魔物って・・・・・・」 ユウラの言葉に、シノが頷きながら言う。 「そう・・・・先ほど話した“黒いポケモン”のことだろう・・・・・・」 4人が急に黙りこくってしまった。 ユウラは自分と同じように黙りこくっているカイとコウを見ながら、こんなことを考えていた。 コウはこういうシリアスな話聞いてもなんとも思わないんだろうな・・・・・・・。 カイは逆には責任感じてるんじゃないかな・・・・・・今の話聞いてたらまるでカイがその“黒き魔物”っていうすごい力を持つポケモン相手に戦わなければならないみたいで・・・・・・・。 ユウラは心の中でカイを心配する・・・・・・が。 「だぁっーっはっはっはっは!!」 突然カイが笑い出した。 3人と1匹が目を丸くする。 「べ〜つのよ!そんな難しいこと考えてたって始まらねぇさ!  その辺旅してりゃあその内わかってくんじゃねぇの?」 カイのかなりアバウトな性格に、3人と1匹は唖然となっている。 「あ・・・・・・もしかして、無責任すぎたか?」 カイが少しかしこまりながら言う。 「フフフフ・・・・・・・・ハハハハハ!  たしかにな!ワケわかんねェこと考えてたって始まらねぇか!  オメェらしい考えだな!カイ!」 コウが馬鹿笑いしながら言う。 「いや、お前に言われたかねぇが・・・・・・・」 「・・・・・・・変な連中だったな、セイレーン」 「・・・・・コォー・・・・・・・」 シノとセイレーンは石段の頂上から、森に中に自然にできた道を歩く3人を見下ろしていた。 3人は誰か面白いことを言ったのか、みんな腹を押さえながら笑っている。 「あんなあどけない少年少女が、巨大な敵を相手に戦っていくとは、最初は考えられなかったが・・・・・・・・」 シノが3人を見つめる。 「あの笑いは・・・・・・・大物の風格・・・・・・というヤツだろうな・・・・・・」 「・・・・・・・・・・」 カイたちを1匹の鳥が上空から見下ろしていた。 鎧鳥ポケモン・エアームドだった。 その上に、1人の少年が立っていた。 紫のローブで体を包み、背丈はカイたちより若干低め。 耳にかからないサラサラの金髪。 このあたりでは珍しい、緑色の瞳。 まだ幼さい顔つき。 少年が、ボソリとつぶやいた。 「・・・・・・あのデス・ゲンガーを倒すなんて・・・・・・・」 少年が何故かコウの首をしめているカイを見つめる。 「・・・・・・またあの命令、下されるのかな・・・・・・ホーク」 「・・・・・ギィー」 ホークと呼ばれたエアームドが、半ば悲しそうに鳴く。 「・・・・・・・・・」 「もう・・・・・・・人は殺したくないのに・・・・・・・」  つづく  あとがき クロ「・・・・・・最近なんかミョ〜にシリアスだな・・・・・・」 YAN「悪いか?」 クロ「いや別に悪くはねぇけどよ・・・・・・・そういや前回言ってたよな?    “今夜十二時、誰かが死ぬ”って・・・・・・・」 YAN「オイオイオイオイ・・・・・・・誰もそんな殺人事件風には言ってないぞ・・・・・・?」 クロ「あり?なんっつってたっけ?」 YAN「誰かに死んでもらうってカンジのこと言った気がする・・・・・・」 クロ「あ〜そうだったそうだった!な〜んだそんなことか・・・・ってスンゲェ重要じゃ〜!」 YAN「自分でボケて自分でツッコミいれんな・・・・・・。    それにあんまり気にしなくていいぞ?メインメンバーじゃないから」 クロ「!フ〜・・・・・・なんだよあせらすなよ・・・・・・ちょっぴりビックリしちまったじゃねぇか・・・・・・・」 YAN「あ、ちなみにポケモンはメインメンバーだからな」 クロ「ふ〜ん・・・・・・まぁ別にいいけどなってよくねぇよ!」 YAN「だから1人漫才すんなって・・・・・・」  次回予告  ついに黒の組織の首領が動き出す・・・・・・! 第34話 ヘヴン(仮)