今日はいつもと何も変わらないハズだった。 いつも通り、歩き続けて、街について、食料調達して、行けそうなら次の街まで行って・・・・・・・。 だが、そんなプランも、崩壊都市、ジュエルタウンで打ち崩される・・・・・。 ************  リベンジャー  第35話「偽りの組織」 ************ 「もうすぐで、鉱山都市、ジュエルタウンだ」 「うおっっしゃぁぁぁぁ!!金取りまくりだぁぁぁぁぁ!!」 「バーカ、この鉱山は国の天然記念物だ。  手ぇ出したら一発で警察沙汰になっちまうぞ?」 「何ぃぃぃぃ!!?マジかよクソ・・・・・・結構本気で取る気だったんだけどな・・・・・・・」 「一気にローテンションになったな・・・・・」 「・・・・・・・・・・」 「・・・・・?どうした、ユウラ。お前もまたローテンションだな・・・・・・・」 ヒワダタウンでインセクトバッジを手に入れ、つながりの洞窟を抜けたカイ一行は、次なるバッジがあるキキョウシティに向かっていた。 ヒワダとキキョウの間には鉱山都市、ジュエルタウンがあり、そこで一時休憩し、それからキキョウシティに向かうことになっていた。 先ほどからハイになったりローになったりやたらと忙しいコウのテンションに比べ、ユウラのテンションはローに統一されていた。 首をもたげ、足取りも重い。 ちなみにユウラの肩にとまっているクロのテンションもローである。 「なぁ!金は取れなくてもよ、見学ぐらいは出来るよな!」 「そうだな・・・・・記念に見ていくか」 「出来ないよ」 コウとカイが立てたジュエルタウンでのプランを、ユウラが首をもたげたまま言った。 「何でだ?ユウラ。見学も出来ねぇのか?」 「・・・・・・見ればわかるよ」 「・・・・・?」 「!オイカイ!あの丘越えればジュエルタウンか!?」 「!あー、そうだな」 カイが手にした地図を見ながら言う。 「よっしゃぁぁ!一番乗りだぁぁぁ!!」 叫びながらコウが走っていく。 コウが丘を登りきろうとした。 「ジュエルタウン!とうちゃー・・・・・」 そこで、コウの言葉は途切れた。 「・・・・・・?コウ、どうした」 カイが丘を登りながら言う。 「・・・・・カイ、見てみろよ・・・・・・」 いつになく真剣な顔をしているコウを横目に、カイが丘を登りきる。 「・・・・・・!!」 そこには、まるで爆弾でも落とされたかのような、廃墟と化したジュエルタウンが広がっていた。 「・・・・・酷いな」 「ギンバネ島でも、ここまで酷くなかったよな・・・・・・」 ジュエルタウンはギリギリで原形をとどめていた。 今にも崩れそうなビル、屋根が吹き飛んだ家並み・・・・・・。 なかにはまるで放火されたかのような建物もいくつかあり、焼け跡が残っている。 ジュエルタウンのメインストリートと思われる道を、カイたちは歩いていた。 カイとコウが前を歩く中、後ろにいるユウラとクロは先ほどより増してローテンションになっている。 「一年くらい・・・・・・前かな。クロ」 「ああ・・・・・・そうだな」 突然、ユウラとクロが立ち止まって会話をはじめた。 お互い、首をもたげたまま。 カイとコウが振りる。 「ここ・・・・・・変わっちゃったね」 「ああ・・・・・・見る影もないがな・・・・・・」 「・・・・・なぁ、ユウラ」 すさまじくローテンションなユウラにカイが話し掛ける。 「お前・・・・・・・まさか・・・・・・・」 「・・・・・うん・・・・・・ここが・・・・・・・・あたしたちの故郷だよ・・・・・・・」 「なぁユウラ。話してくんねぇか?ここで何があったか・・・・・・」 真剣な顔で、コウがユウラの了解を求める。 「うん・・・・・いいよ・・・・・・・」 何歳かは正確には覚えてないけど・・・・・・・あたしは捨て子だった。 ジュエルタウンの孤児施設の玄関先に・・・・・捨てられてた。 毛布に包まれてたあたしは紙を握っていて、そこにユウラ・シアードって書かれてた・・・・・・。 歳も書かれてたみたいだけど、もう覚えてなくってさ・・・・・。 あたしはその孤児施設で育てられることになった・・。 その孤児施設にクロとクロの母親のファズっていうヤミカラスがいて・・・・・。 あたしたちは自然と仲良くなっていった・・・・・・。 そして今から約1年ぐらい前に、あたしはポケモントレーナーとして旅立つことにした・・・・・・。クロと一緒に・・・・・・。 小さな孤児の子達は泣きじゃくりながらあたしを止めてきた。 行かないで、僕たちと一緒にいてって泣きつかれてさ・・・・・。 だけど、あたしは旅に出たかったから・・・・・。 「あんたさ、ホントにあたしのポケモンってこと自覚してる?」 「さ〜?ど〜だろ〜な〜、お前のがんばり次第だな〜」 1年前のあの日、あたしたちは雑談しながらジュエルタウンの近くの森に差し掛かっていた。 そして、街を出てから、きっかり1分後・・・・・・・。 ドォン・・・・・・! 「!!?」 街のほうから何かの爆発音が聞こえてきた。 あたしたちは無言で、全速力で、引き返した。 まずあたしたちの目の飛び込んできたのは、業火に包まれたジュエルタウンだった。 火に包まれた街の中をあたしたちは進み、ついさっき旅立った孤児施設にたどり着いた。 手遅れだった。 施設は完全に崩れ、燃え盛る炎の中、あたしたちの思い出の詰まったたった一つの家・・・・・・・。 同時に、怒りが込み上げてきた。 この崩れようでは、中にいたみんなは助からなかっただろうと、あたしたちは推測した。 出来ればそんなこと考えたくなかった。 その時だった。 あたしたちの耳に、複数の人の声と足音が聞こえてきた。 (誰か・・・・・・生きてた・・・・・・・!?) あたしはふらふらとおぼつかない足取りで声と足音のしたほうへ向かっていった。 何か人影が見えたとき、突然クロがあたしの服を引っ張り、物陰へ隠れさせた・・・・・。 あたしは小さな声で抗議した。 「なにすんの!誰か生きてたのよ!別に隠れる必要は・・・・・・」 「バカ!よく見てみろ!」 クロに言われて、あたしは体を隠しながら先ほどの人影を観察した。 炎で見えにくかったけど、あたしの目には、あの黒い制服の集団が目に焼きついた。 「!?ロケット団・・・・!!?」 あたしはつい大きな声が出してしまった。 当然見つかり、逃げ回った。 何とか逃げ切ったあたしたちが見たものは・・・・・・・。 「あ・・・・・・!」 炎の中に見え隠れする、緑色の小さな山が見えた。 炎の中から山はのそのそと歩きながら出てくる。 「・・・・!?・・・・・・バンギラス・・・・・!!?」 その殺意に満ちた目を見たあたしたちの背筋は凍りついた。 脚が動かなかった。 あとから聞いたら、クロも全然飛べなかったんだって・・・・・・。 あたしたちは直感でこう考えた。 ・・・・・・全部・・・・・このバンギラスが・・・・・・・!!? バンギラスが、口を開いた。 それは、明らかに人語だった。 その言葉を聞いた瞬間、あたしたちは全速力で逃げ出した・・・・・・。 「もう・・・・・・怖くて・・・できれば話したくなかったんだけど・・・・・ここに来た瞬間に、思い出しちゃってさ・・・・・・」 ユウラはいつのまにか泣いていた。 ぼろぼろと涙をこぼしていた。 「そのバンギラス・・・・・なんて言ってたんだ?」 カイがユウラに聞くと、ユウラは目をこすり涙を処理し、顔をあげた。 そして、ユウラが口を開けた瞬間、まるで待ってたかのように、何処からか声が聞こえてきた。 「運がいいなぁ・・・・・・って言ったのさ・・・・・ククク・・・・・・」 人とは思えない、恐ろしく低い声。 その声がしてきたと同時に、ユウラの顔が凍りついた。 そしてその場にペタンと座り込んでしまう。 声はカイたちの後ろから聞こえてきた。 カイとコウが急いで振り返る。 そこにいたのは・・・・・・・。 「・・・・・・!!?」 「な・・・・・!?」 そこには、彼らの過去をめちゃくちゃにした、あのバンギラスが立っていた・・・・・・。 「てめぇは・・・・・・!!」 カイの手が自然と腰のボールに伸びる。 「クククク・・・・・・・・」 突然、バンギラスが低い声で笑い出した。 「そろいもそろって・・・・・・・・バカな連中だな、テメェら」 「あ!?ンだとコラァ!!」 コウが身構え、腰のボールの1つを手に取った。 「まぁ落ち着け・・・・・・・。いい事を教えてやろうと思ったのによ・・・・・」 「・・・・・そのいい事ってヤツを聞く前に・・・・・・俺から聞きたいことがある」 コウとユウラに比べ、突然の事態にあまり驚いていないカイが、堂々とバンギラスに質問する。 「お前たちロケット団は・・・・・・一体何をしようとしてるんだ!  人の大切なものをことごとく破壊しやがって・・・・・・・・・・!!」 「!ロケット団ねぇ・・・・・・・ククク、懐かしい響きだな」 「!?どういう事だ!」 「めんどくせぇからよ・・・・・・・まとめて説明してやろうか?てめぇらにとってウレシイ情報をよぉ・・・・・」 「何・・・・・・・・?」 バンギラスは一呼吸置くと、先ほどより若干ボリュームを上げた声で、告げる。 「我が組織の名は“ルーラァズ”!我等がボス、ヘヴン様を筆頭に築き上げられた世界最強に組織だ!  ロケット団なんてのはとうの昔に滅びた何の栄光もねぇ腐った組織なんだよ!」 「ルーラァズ・・・・・・?ヘヴン・・・・・・・・?」 「全っ然・・・・・・・聞いたことねぇな・・・・・・・」 聞き覚えがない組織名と謎の名前で、カイとコウの頭は困惑する。 「そりゃあ聞くワケねぇだろうな・・・・・・・裏のさらに裏の組織なんだからよ・・・・・・。  ついでに教えてやろうか?ルーラァズの結成前・・・・・・つまりロケット団だった時のボスは一応サカキだったんだけどな。  ・・・・・・・裏ではすでに組織はヘヴン様が牛耳ってたのさ。  あの方は素晴らしいぜ・・・・・・・・頭だけで何の力もねぇサカキと違い、ヘヴン様は知識、統率力、そして戦闘力・・・・・・・組織の誰も追いつけない力を持っている。  あの方こそ、この世を総べる最高の人間・・・・・・いや、最高の“ポケモン”だ!」 「!?ポケモン!?」 「ポケモンが・・・・・・・人間の組織のボスなのか!?」 「クククク・・・・・・驚くのも無理はねぇか・・・・・・・。  この街を襲ったときルーラァズがロケット団の制服を身にまとっていたのはカモフラージュさ。  ロケット団を偽って行動してりゃあサツの連中はあの制服を目印にして俺たちを探すからな。  任務終了後は制服を脱いでルーラァズ公認制服ともいえるローブを羽織ればいい。  そうすりゃ追っ手を軽くごまかすことが出来る。それと・・・・・・・・」 「オイ」 「あ?なんだ人の話もろくに聞けねェのかてめぇらは」 段々説明口調になってきたバンギラスを、カイがたった一言でとめる。 「その・・・・・組織がどうのこうのとか・・・・・・あの方がどうのこうのって・・・・・ブッちゃけどうでもいいんだよ・・・・・」 「ほう・・・・・?何が言いたい」 「・・・・・・・俺たちの島をメチャクチャにして・・・・・・んでもってユウラの街もぶっ壊して・・・・・・・」 カイがキッとバンギラスを睨みつけた。 カイがキレたときに見せる、【鬼】の顔で。 「俺の母さんを殺したのは・・・・・・・てめぇなんだろ・・・・・!?」 同時に、放心状態になっていたユウラが我に帰った。 そして、カイの方に目をやる。 (俺たちの島を・・・・・・メチャクチャ・・・・・・!?) 「・・・・・・・随分と、俺を恨んでいるようだな・・・・・・・」 「当たり前だ」 カイが即答する。 「・・・・・と、そうだ。コレも言っとかなきゃな」 バンギラスがまたを置いた。 「俺の名はブラッド!ルーラァズ最高三幹部の一人、ロット・バズアルのパートナーポケモンだ!  そして、ヘヴン様からロットを通じ、俺に指令が下された!」 「指令・・・・・・?」 「教えてやろう・・・・・俺が授かった指令の名は・・・・・・・」 3人が息を飲んだ。 「カイ・ランカル抹殺指令だ」 「!?てめぇ何で俺の名を・・・・・・!?」 「ククク・・・・・・ルーラァズの情報網をナメてもらっちゃ困る。  貴様はエンジュシティでの我らの活動を邪魔した経歴があるんだ・・・・・。 狙われて当然だろう?」 バンギラス改め、ブラッドがバカにした口調ではき捨てた。 「さてと・・・・・・・任務を遂行しますかね・・」 ブラッドが1歩前に歩み出た。 が、それと同時にコウとユウラが前へ出る。 「・・・・・ん?俺ァてめぇらには用はねぇぞ・・・・・・・?」 「俺は用があるんだなぁ、コレが」 先ほどのブラッドがしたように、コウもまたバカにした口調で言った。 「あたしにとってかけがいのない仲間たちの仇、とらせてもらう!」 ユウラがボールを手にとり、構えた。 その表情は、怒りと憎しみで煮えたぎっていた。 「俺を・・・・・・倒そうってか・・・・・・?」 「それ以外にどう取れるってんだよ」 そう言いながら、コウもボールを手にとり、構える。 ユウラが構えたまま、カイの方をチラリと見る。 いつの間にか腕を組み、うつむいていた。 ピクリとも動かない。 ユウラが視線をブラッドに戻した。 「一気に決めるぜ!ユウラ!」 「OK!絶対に・・・・・・倒す!!」 「できるんならなぁ・・・・・・・・」 ブラッドが、不気味なほど低い声でそう言った・・・・・・・。 ウソをつき続ける、自分が憎くて・・・・・・・・。 あんなヤツに様を付けること自体、腹が立って・・・・・・・・。 濡れ衣を着せられてるような気がして・・・・・・・。 何だか・・・・・・・・。 ガラにもなく、悲しくなって・・・・・・・・。  つづく  あとがき クロ「オイYAN!最近俺の出番が少ねぇぞ!どーゆうこった!」 YAN「あー・・・・・・まぁそのうち出番くっからまってろや」 クロ「そいつはァいつの話なんだよ!」 YAN「次回にでも・・・・・・」 クロ「何!?次回だと!?よっしゃぁぁぁあああ!!暴れまくってやるぜ!」 YAN「まぁやられ役だと思うけど・・・・・・・」 クロ「ふ〜ん・・・・やられ役ね・・・・・やられ役・・・・・・ってぬぅわんだとぉぉぉぉ!!」 YAN「一瞬納得してなかったか・・・・・・・?」  次回予告 いつの日かの惨劇が、コウたちに降りかかる・・・・・・・!! 第36話 力の差(仮)