俺は・・・・・・・・何をしている? この力は・・・・・・何をするためのものだ? 人を・・・・・・・殺すためのものか? ・・・・・・・・違う。 この力は・・・・・・・・。 アイツに絡む呪縛を・・・・・・解き放つためのもの。 なのに俺は・・・・・・何をしている? ***********  リベンジャー  第38話「生か死か」 *********** 「カゲロウ!大文字!」 「しゃらくせェ!!」 カゲロウが放った大文字を、ブラッドは口から吐き出した岩で粉砕する。 「今度はこっちからいくぜぇ・・・・・・!」 ブラッドがカゲロウに向かって走り出した。 ブラッドの豪腕が、豪快な風切り音と共にカゲロウに迫る 『ク・・・・・・!』 カゲロウはブラッドの豪腕の下に潜り込むと、 「カゲロウ!爆裂パンチ!」 『おお!くらえェ!!』 パンチを放ったばかりで隙だらけのブラッドに、カゲロウの爆裂パンチが迫る。 が、またしてもブラッドが消えうせた。 先ほどライラたちを葬ったあのスピードで。 そして再び現れた場所は、もちろんカゲロウの背後。 「カゲロウ!“尾炎爆”!」 カゲロウは尻尾の炎にエネルギーをため出すと、背後のブラッドに向かって振り切る。 「!?ぐあ・・・・・・!!」 ブラッドに尾炎爆がヒットし、爆発を引き起こす。 不意打ちをくらわせるつもりが、思わぬ反撃をくらい後ろに倒れこむ。 「!かかった!!」 「・・・・・・・?」 カイの謎の歓喜の言葉に、ブラッドは頭の上に?マークを浮かべる。 が、すぐにその言葉の意味を理解することになる。 ゴオォォォォォォウ!! 「!?何・・・・・・・!?ぐあぁぁぁぁ!!」 ブラッドの倒れている地面が、チリチリと何か燃えるような音がしたかと思うと、突然地面から炎が吹き上がりブラッドを包み込んだ。 「ウ・・・・ぐあぁぁ!これは・・・・・・一体・・・・・・・!」 「苦しそうだなァ・・・・・・・ブラッド。  教えてやろうか?そいつはカゲロウの十八番、“陽炎”だ。  その炎はテメェが立ち上がれなくなるまで燃え続けるぜ!」 「な・・・・・に・・・・・・・!!?」 『ま、テメェがその炎の中でダウンするのを待ってるほど・・・・・・・』 そんな声がブラッドの背後から聞こえてきた。 炎にまとわれ付きながらブラッドが振り返ると、そこには先ほどまで自分の前にいたはずのカゲロウの姿があった。 『俺の気は長くねぇんだよ!!』 カゲロウのその鋭利なつめが、ブラッドの後頭部に突き刺さった。 「!?ぐぁ・・・・・!こ・・・・・・このやろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 『!?うあ!』 突然ブラッドに腕をつかまれたかと思うと、カゲロウはオーバースローでカイの元へ投げ飛ばされた! 「!カゲロウ!」 カイはカゲロウを抱きかかえるようにキャッチする。 「お、おいカゲロウ!大丈夫か!」 『ク・・・・・・ああ、大丈夫だ」 一方、ブラッドはというと・・・・・・・・。 「カ・・・・・!ハァ、ハァ・・・・・・・・」 何とか陽炎から脱出したブラッドは、自分の後頭部に手をやる。 後頭部に感じる、異常な激痛。 本来、岩ポケモンは血を流さない。 が、身体のどこかが欠けるだけで、岩ポケモンは異常な激痛を伴うという。 ブラッドはその激痛に対し知らん振りを決め込み、立ち上がった。 「!カゲロウ、来るぞ!」 『・・・!なんだよアイツ、まだ動けんのかよ』 カゲロウにとって先ほどの戦いはかなり優勢だった。 そのため、カゲロウには自信の炎が心にともっていた。 「フ・・・・・クククク・・・・・・・・」 またしても、ブラッドが無気味な声で笑う。 「久しぶりに・・・・・・・本気を出せそうだ・・・・・!」 ブラッドが凶悪な口をカッと開いた。 その仕草を見て、カゲロウも戦闘態勢を取る。 「“ホットサンドブレス”!!」 ブラッドが口から大量の砂を吐き出した。 技名からして、かなりの熱を帯びているに違いない。 「カゲロウ!火炎放射で押し返せ!」 カゲロウが口から火炎放射を吐いた。 が、“ホットサンドブレス”は火炎放射を軽く貫き、カゲロウに頭からかぶさった! 『ぅ・・・・・・!?ぐああああ!!!』 ホットサンドブレスがカゲロウにかぶさると、カゲロウがすごい勢いでもがき始めた。 「!?カゲロウ!」 「う・・・・・ガ・・・・・・・」 苦しみながら、カゲロウが立ち上がった。 カイを心配させまいと、カゲロウが笑顔で振舞う。 「カ、カゲロウ・・・・・お前、無理すんじゃねぇぞ」 『だ・・・・・大丈夫だ・・・・・心配すんな・・・・・・』 カイにポケモンの言葉は分からない。 が、カイにはカゲロウが何と言っていたかなんとなくわかっていた。 大丈夫だ、そう言っている。 同時にカイはもう1つ、カゲロウが隠している何かを感じ取っていた。 詳しくはわからない。 が、明らかにカゲロウが劣勢になっていることだけがわかっていた。 (ク・・・・・・・体中が・・・・・・痺れてきやがった・・・・・・。  あの砂には・・・・・・麻痺効果があったのか・・・・・・・!?) 「フ・・・・・・・・・クックック・・・・・・・・・」 ブラッドが、ふんぞり返って笑いだした。 「さぁ・・・・・・。そろそろ死んでもらおうかァ!! “ダークソウルブレス”!!」 次にブラッドは、口から奇妙なものを吐き出した。 黒い、霧のようなもの。 よく見ると、黒い霧は奇怪なことに、無数の頭蓋骨のような形をしており、迎え撃つカゲロウから見ればそれはまさに“死霊”そのものだった。 (・・・・・・・!くらっていいことなさそうだなありゃ・・・・・・・!) カゲロウはとっさに危険を察知すると、サイドステップでかわす・・・・・・・が。 ダークソウルブレスはまるで生きているかのように、カゲロウのサイドステップに合わせてカーブ、カゲロウを包み込んだ。 「!!カゲロウ!」 ダークソウルブレスが晴れた。 そしてそこに残っていたのは、傷つき、倒れ伏せたカゲロウ。 肩が上下しているところを見ると、死んではいないようだ。 「さてと・・・・・・任務を遂行しますかねぇ・・・・・・・・・!」 ブラッドがカイに向き直った。 そして、その凶悪な口を開く。 もう見慣れたエネルギーが、次々と口元へ集まっていく。 「死ねェ!!」 破壊光線が、放たれた。 「あ・・・・・・あぶねぇ・・・・・・・」 破壊光線は見事に外れた。 カイは横っ飛びで破壊光線を回避した・・・・・・のだが、破壊光線は近くの廃屋を見事に吹き飛ばしていた。 バラバラに吹き飛ぶ廃屋の破片を見ながら、ごくりと息を飲む。 そのときに飛んできた瓦礫で、カイは左足をやられ、動けなくなっていた。 「外したか・・・・・・・・。だが、致命傷だな」 ブラッドが、再びエネルギーをチャージし始めた。 “ターゲット”を、抹殺するため。 カイが無言で抹殺の準備を続けるブラッドを睨みつける。 もう、それしか出来なくなっていた。 片足をやられては、逃げることも出来ない。 カイは、自分の“弱さ”を、改めて確信する。 「今度こそ・・・・・・・・・終りだ」 ブラッドが、発射した。 今まで幾度となく人を殺してきた、破壊光線を。 カイが目を閉じ、死を覚悟した。 (・・・・・・?) いつまでたっても、死は見えてこなかった。 いや、まだ自分は生きている。 破壊光線はどうなった? 動けない人間一人、ヤツは仕留められなかったのだろうか。 確かに、発射音は聞こえた。 着弾音も。 自分の着弾したのなら、吹き飛ばされた後、永久に起き上がれぬ状況になっているはずだ。 カイが、恐る恐る目を開ける。 「何・・・・・・・!!?」 「あ・・・・・・」 ブラッドとカイの驚愕の声。 破壊光線をさえぎる形で立っていたのは・・・・・・・・。 「カゲ・・・・・・・ロウ・・・・・・・?」 ダークソウルブレスを受け、再起不能となったはずのカゲロウが、カイをかばい、破壊光線を受けたのであった。 カゲロウは立ったまま、体中から煙を上げていた。 そして、どさっという音とともに、仰向けに倒れた。 「カゲロウ!」 カイがカゲロウの元へ駆け寄った。 それと同時に、ライラとカゼマルも駆け寄ってきた。 他の3匹も駆け寄ろうと努力しているのだが、身体がいうことを聞こうとしないらしく、ただそこで見守ることしか出来なかった。 「オイ!カゲロウ!しっかりしろ!」 カイがカゲロウを抱き起こす。 尻尾の炎が、消えかけていた。 『!?カゲロウ!死ぬな!死ぬんじゃない!』 『オイ貴様!死んでいる場合じゃないだろう!?とっととその目を開けろ!』 ライラとカゼマルが必死にカゲロウに呼びかけるが、当の本人は、ほとんど意識がないようにも見えた。 そして・・・・・・・・・。 尻尾の炎が、消えた。 同時に、カゲロウを抱きかかえていたカイの腕が、ひとりでに離れた。 自分の腕から伝わってきたものが、脳に届き、そのことについて否定していた。 「冷てぇ・・・・・・・・」 カイがそうつぶやくと、ライラとカゼマルの顔から血の気がひいた。 炎ポケモンの体温が、急速に低下する減少。 これはまさに、そのポケモンの死を意味しているからである。 『貴様ァァァァァァァァ!!!!』 カゼマルが、ブラッドに向かって低空飛行で飛び出した。 「よせ!カゼマル!」 カイの言葉に耳を貸さず、カゼマルは一直線にブラッドに向かって飛んでいく。 『この地に貴様の骨を埋めてくれる!』 「フン・・・・・死にぞこないが」 飛んできたカゼマルに向かってブラッドは破壊光線を発射した。 が、カゼマルは破壊光線にあたる瞬間に、その場から消えうせた。 「!?どこに・・・・・・」 ブラッドが目を配らせカゼマルの姿を探す。 そして・・・・・・・。 『疾風撃!』 ブラッドの背後に現れたカゼマルは、ブラッドの背中に一撃を入れた。 そのままカゼマルはブラッドの前まで飛んでいき、振り返る。 「グ・・・・・キサマ・・・・・・」 ブラッドが体制を立て直している間に、すでにカゼマルはブラッドの懐に飛び込んでいた。 『風牙!!!』 4つの牙が轟音と共にブラッドに直撃する。 しかし、ブラッドはダウンしない。 それどころか、風牙はブラッドの蚊ほどのダメージしか与えていなかった。 「テメェも死ぬか・・・・・・・・?」 ブラッドのその言葉が聞こえたかと思うと、カゼマルの上から豪腕がのしかかった。 『う・・・・・・うわあぁぁぁぁぁああああ!!!』 ライラはカゼマルが埋もれるところを見届けるやいやな、すごいスピードで走り出した。 「!?ライラ!お前まで行くな!」 カイの声をむなしく、ライラは走りぬこうとする。 『カゲロウの仇ィィィィ!!』 ライラは一気にブラッドの懐に飛び込んだ。 『起死回生!!』 ライラの声とともに、ブラッドと腹に激痛が走った。 「グ・・・・・!!?」 『うあぁぁぁぁ!!』 次にライラは、ブラッドの背後から蹴りを入れる。 「う・・・ク・・・・・・・・・・・・!!!」 『次ィィィィ!!』 すぐにライラはブラッドの前に回り込むと、ブラッドの顔面に迫る! 「テメェも死にな・・・・・・・・ホットサンドブレス!」 ブラッドが、口から大量の砂を吐き出した。 『う・・・・・・わ・・・・・・・!』 ライラは思いもよらぬ攻撃をくらい、起死回生は中断された。 ライラが地面を転がる。 すぐに立ち上がろうとするが、体を奇妙な感覚が襲う。 (う・・・・・・動けない・・・・・!麻痺した・・・・・!?) 「さぁ・・・・・・邪魔者はいなくなったな」 ブラッドが1歩、カイに歩み寄った。 カイはというと、脚から血を流し、動けずにいた。 ブラッドがまた1歩、歩み寄った。 カイは、動けない。 『待て・・・・・・・!』 ブラッドの背後から、少しかすれた声がしてきた。 ブラッドが振り返る。そこには傷ついた体を押してまで闘おうとするクーラル、リング、スピンの姿があった。 『カイを・・・・・・・・殺させはしないぞ・・・・・・・!』 「・・・・・・ご苦労なこって・・・・・・・」 炎が、消えた。  つづく  あとがき うおぉぉぉぉ!カゲロウが死んだァァァァ!! どうしよォォォォ!(?) もう・・・・・・カイに勝ち目ないじゃんかよ・・・・・・・。(涙) 自分で決めたくせに・・・・・・・。(オイオイ)  次回予告 第39話 この世とあの世の狭間(仮)