な〜る・・・・・・・・・。 あいつが言ってたのはこのことだったのか・・・・・・・。 力が漲ってきやがる・・・・・・・・・・。 でも、アイツ、一体何者だったんだろう・・・・・・・・・・。 閻魔・・・・・・・・じゃなかった、ホウオウっつったけか・・・・・・・・・。 生と死を治める者・・・・・・・・・。 何者だ・・・・・・・・・・? ******************  リベンジャー  第40話「天から還りし不死身の竜」 ****************** 夜が来た。 ジュエルタウン・・・・・・いや、廃墟上空を、漆黒の夜空が覆い尽くしていた。 今にも降り出しそうな、そんな雲。 1人立っているポケモン、リザードンのカゲロウ。 瓦礫の中でカゲロウの蘇生を素直に喜ぶ仲間たち。 呆然となっていたカイの顔にも、今では笑顔になっていた。 そして、瓦礫から微量の砂埃が充満していた。 カゲロウはしばらくの間その瓦礫を睨みつけていたが、唐突に振り向いた。 その目線には、カイの姿が。 「・・・・・・・・・」 カゲロウは言葉が通じないため、行動で自分の意志を示そうとした。 カイに手を差し伸べる。 「・・・・・・・悪ィな」 カイはその手をとり、何とか立ち上がる。 カゲロウはカイが立ち上がると、次にライラのほうに向かって歩き出した。 瓦礫に半身埋もれかけたライラ。 『大丈夫か?怪我のほうは?』 『何とか大丈夫だよ・・・・・・・カゲロウ、一体何が起きたんだ?  生き返るし、怪我も消えてるし・・・・・・・・』 『やつを倒したら話してやるさ』 カゲロウはリング、スピン、クーラルの順に声をかけていく。 スピンとクーラルは驚愕の声を発した。ちなみにリングは何故か泣きついてきたが、それを突き放し、カゼマルの横へ差し掛かった。 『!カゼマル、その眼・・・・・・・・』 『ん?これか・・・・・・・』 カゼマルが右の刃の峰で血を流している左目の瞼を押さえつけた。 カゲロウが“一時的”に死んだとき、カゼマルがブラッドに斬りかかった。 2度ほどを斬撃を放ったが、ダメージはさほど無く、地面に叩きつけられた。 地面といっても、コンクリートだったため、割れたコンクリートの破片がカゼマルの瞼を掠めていたのだ。 『心配するな。掠めただけだ。失明には至らん。激痛はするがな』 『な〜んだ、掠めただけか。心配させんなよまったく・・・・・・・』 『人の心配をする前に自分の心配をしたらどうだ?落ち武者』 『・・・・・・誰が落ち武者だコラ』 カゼマルの右目が不意にまだ埃をまとわせている瓦礫を睨みつけた。 『やつはまだ死んでいない。すぐに起き上がる』 『ああ・・・・・・わかってら』 瓦礫の上から、小さな石ころほどの瓦礫がころころと落ちてきた。 中で、何か動いたのだ。 『カゲロウ』 『ん?』 『・・・・・・・死ぬなよ』 『・・・・・・・・・・・・・・』 カゲロウは無言でカゼマルの下から離れていく。 そして、あの瓦礫の前にある程度距離をおいて立ち止まった。 『死なねぇよ』 瓦礫が吹き飛んだ。 粉々になった瓦礫があたりに散りばめられる。 その中から這い出てくるバンギラス、ブラッド。 「くっそ・・・・・・・・・。何だったんだ、今のは・・・・・・・・」 ブラッドがおそらく強打したであろう後頭部を摩りながらぼやく。 カゲロウに爪を突き刺されたこともあり、後頭部はかなりイカレていた。 ブラッドが前を見据えると、そこには信じがたい光景があった。 「・・・・・?何・・・・・・!?ちょっと待て・・・・・!テメェは確か・・・・・・」 ブラッドの身体がわなわなと震え出した。 「殺した筈だろう・・・・・・・・・!!?」 『勝手に殺すんじゃねぇよ』 腕を組み、堂々と胸を張るカゲロウ。 「・・・・・・・まさか、これがヘヴン様が言っていた“蘇生進化”・・・・・・・!?」 『?テメェなんでその言葉を知ってんだ・・・・・・?』 「ふん・・・・・・・まぁいいさ、蘇生進化・・・・・・・その力見せてもらおう!  進化したことでテメェには飛行タイプが加わった!そのおかげでテメェはさらに岩タイプの攻撃に弱くなったハズだ!くらえ!“大岩雪崩”!」 ブラッドが脚を振り上げ、すさまじいスピードで振り下ろした。 術者自身であるブラッドほどの巨大な岩が3つ浮かび上がり、カゲロウに迫る。 カゲロウは動かない。 度胸が無いものであればすぐに逃げ出してしまいそうな巨大さを誇る岩を眼前にして、カゲロウの顔は自信にまみれていた。 「!?カゲロウ!回避しろ!」 後ろからカイの指示が飛ぶが、カゲロウは避ける素振りをまったく見せない。 それどころか、横を向き、カイに笑顔を見せ付けていた。 その笑顔を、こう言っていた。 ―――心配するな――― カゲロウは顔を戻し、大岩を睨みつけた。 そして、右腕を突き出した。右腕と岩との間の距離がゼロになる・・・・・・・。 ドゴォオン! カゲロウはそのまま右腕で岩を殴りつけた。 ひびが生じ、粉々になる大岩。 大岩の残骸の隙間から、残り2つの大岩が見えた。 大岩の残骸を跳ね除けて迫ってくる大岩1つを、今度は左腕で殴りつけた。 右腕同様、粉々になる大岩。 最後の大岩が、カゲロウの眼前に迫る。 今度は腕を使わず、顔を突き出した。 口が開き、中から無数の牙が顔を覗かせていた。 その牙で大岩に噛み付いた。 大岩全体に亀裂が生じ、分解する。 その大岩が破壊されたとき、ブラッドは我が目を疑った。 いない。 大岩を砕いた本人が、忽然と姿を消してしまった。 ブラッドは横に目をやり、カゲロウの姿を探すが何処にもいない。 次にブラッドはぐるりと顔を回し、自分の真後ろを睨みつけた。 が、そこにもカゲロウの姿は無い。 ついにブラッドは自分の犯した重大なミスに気が付いた。 先ほどまで戦ってポケモンはリザードである。リザードなら、姿を消したのなら背後に回った可能性が高い。 だが、今の相手はリザードンである。 ブラッドは、ゆっくり真上を見上げた。 「!な・・・・・・・・・・・・・・!!?」 視界いっぱいの炎。 その炎が、カゲロウの尻尾の炎だと気付くのに、時間を要しなかった。 『さっきは蚊ほどしかダメージが無かったろうが・・・・・・・・・・・・今度は本気でいくぜ!』 カゲロウの尻尾の炎が、ブラッドの顔面に接触した。 『尾炎爆!』 爆発。 顔から煙を立たせながら仰向けに倒れるブラッド。 『まだまだァ!』 カゲロウはそのまま尻尾をブラッドのどてっぱらに振り下ろす。 またも、尾炎爆。 爆発後、煙まみれになるブラッド。 それを顔をしかめ、見下ろすカゲロウ。 『オイ・・・・・・・テメェ、本気でやってんのか?』 「何を・・・!テメェ、そんなに俺が弱いって言いてぇのか?」 ブラッドが上半身を起こしながら、険しい顔して言う。 『なんて言うか・・・・・・テメェの動きはどこかギクシャクしてるように見える。  さっきの大岩の攻撃も、破壊するほどでもねぇスピードだった』 「何が言いてぇ・・・・・・・・・・!」 『テメェの攻撃はどこか迷いがある』 「あ?」 『テメェ・・・・・・・・殺したくねぇんだろ?俺を。  まぁテメェの実力で俺を殺せるかどうかは別だが、テメェは知らず知らずのうちに力を押さえつけてるんだ。それに・・・・・・・・・』 その時、ブラッドの視界に変化が起きた。 視界がぼやけ、カゲロウの姿がまるでノイズのかかったテレビのようにぶれる。 そのまま、ブラッドの視界に奇妙な光景が映し出された。 暗闇にたたずむ、1匹の小さなポケモン。 その小さなポケモンは、ブラッドに見覚えがあった。 岩肌ポケモン・ヨーギラスだ。 それが、自分の幼い頃の自分だと気付いたブラッドは、ここがどこかすぐに気付いた。 夢の中。 幼い頃見た、夢の中だ。 今まで見た夢の中で、最も恐ろしい夢だ。 きょろきょろしている幼きヨーギラス。 今のバンギラスとしての姿は、人に会うたびに恐れられたが、この姿のときは逆に愛された。 ヨーギラスがぶるぶる震えながらうずくまった。 謎の暗闇に、恐れをなしたのだろう。 そのヨーギラスに耳に、人の声が聞こえてきた。 その声が聞こえた瞬間、ヨーギラスがその小さな足を懸命に動かし逃げ出した。 徐々に大きく聞こえてくる、人の声。 その声の内容が、はっきりと聞こえてきた。 1人では無く、何人もの声が重なった声だ。 ―――襲え・・・・襲え・・・・壊せ・・・・壊せ・・・・殺せ・・・・殺せ・・・・!――― ブラッドが我に帰った。 目をぱちくりさせ、きょとんとしているカゲロウ。 『お前・・・・・・・今意識がどっか飛んでなかったか?』 カゲロウの疑問。 その疑問は、カイをはじめライラたちも考えていた。 「俺は・・・・・・・・・・強い」 『は?』 「俺はお前を殺す!」 ブラッドが勢いよく全身を起こし、口を開いた。 そのまま破壊光線のエネルギーをためていく。 『・・・・・・・やめときな。テメェはさっきから破壊光線を連発してきたんだ。これ以上撃ったら体が・・・・・・・・・』 「死ねぇ!」 カゲロウの忠告を無視し、ブラッドは破壊光線を発射した。 破壊光線は、カゲロウが突き出した右腕にあたると、何事も無かったように消えうせた。 「な・・・・・・・・!?」 『こんな破壊光線じゃ・・・・・・・コイキングすら倒せねぇぞ』 「なん・・・・・・だ・・・と・・・・・・・・・?」 ブラッドがふらっとふらつき、仰向けに倒れた。 『無茶するからだ・・・・・・・・あれだけ破壊光線ブッ放してりゃ倒れもするわ』 カゲロウが歩み寄り、ブラッドに馬乗り状態になった。 どん。 「ぐえ」 ブラッドの上にどかっと腰を下ろすカゲロウ。 『もう戦えね敵をブチのめすのは俺の流儀じゃねぇが、テメェは別だ。  テメェを逃がしたら、テメェはいつか確実に俺たちを殺しに来るからな』 カゲロウが手を伸ばし、ブラッドの首を押さえつけた。 「ク・・・・・・・・・・!」 『あばよ。あの世で反省してな!!』 カゲロウが、拳を振り下ろした。 ・・・・・・・・・刹那。 カゲロウの耳に、何か声が届いた。 声の主は仲間たちだった。 カゲロウたちを見て、何か叫んでいる。 唯一聞こえたのは、カイの叫びだった。 「カゲロウ!右だァ!よけろォォ!!」 右? カゲロウが拳をいつの間にか止め、顔を右に向けた。 そこには・・・・・・・・・・・・・・。 光り輝く謎の発光体があった。 発光体は、すさまじいスピードでカゲロウに迫っていた。 発光体の正体は・・・・・・・・・・・・。    破壊光線。  つづく  あとがき カゲロウVSブラッドは終戦。 なんか慌しく終わりましたが・・・・・・・。 カイの出番あまり無し・・・・・・・。