************  リベンジャー  第47話「復讐者たち」 ************ 「何者だ」 「んー?俺が何者かって?」 カゲロウが地面に降り立ち、カイを降ろす。 カイはジンの横に立った。 「ジンの仲間・・・・・・・・じゃ不服か?」 「名を名乗れ」 エデンは両手を地面にだらんと下げているように見えるが、かなり力がこもっている。 戦闘態勢を崩そうとしない。 「カイ・ランカルだ」 「・・・・・・・・今の貴様の目的は?」 「仲間のピンチを救う・・・・・・・・ってトコだな」 「ならば・・・・・・・・・敵と認識していいのだな?」 「どうとってもらっても構わねぇよ」 カイはエデンを挑発しているように見ていたが、ジンに目を移す。 「・・・・・・・とりあえずその物騒なものしまえよ、ジン」 「あ・・・・・・・・・ああ、そうだな」 ジンは右手に灯っていた黒い炎に目をやると、力を抜き炎を消す。 手に炎が灯っていたのにもかかわらず、カイがそのことに触れなかったことにジンは少し不思議に思ったが、とりあえずそのことは置いておく。 「状況説明しろよジン。未だに何が起きてるかわかりゃしねぇ」 「・・・・・・・・ルーラァズの存在は?」 「聞いた」 「ならば、ヘヴンの存在は?」 「詳しくは知らねぇが、ルーラァズのボスってことは知ってるぜ。  あと、そいつがポケモンだってこともな」 「・・・・・・・今目の前にいる白いポケモンの名はエデン。種族名はミュウツー。  そして、ルーラァズのボス、ヘヴンと瓜二つのポケモンだ」 「・・・・・・・・・瓜二つだからってこいつがそのヘヴンってヤツと関係があるとは思えねぇが?」 「・・・・・・・・ミュウツーは・・・・・・・・・・世界に2匹しか存在しない」 「何ィ!?そんなレアなポケモンなのか!?」 「そうゆう意味ではない。  ミュウツーは・・・・・・・・・造り出されたポケモンだ。  いわゆる人造ポケモンだ。詳しいことはあとで話す。  今はこいつを倒し、ヘヴンの情報を聞き出すのが先決だ」 「ふーん・・・・・・・・つーかお前、何処でルーラァズの存在を知ったんだ?」 「野性ポケモン保護指定区域でうろうろしていた怪しい黒ローブの連中を締め上げて吐かせた」 「そーか・・・・・・で、今やられたばっかってことか?」 「う、うるさい!」 「まぁいいさ。  とにかく、こいつをブっ倒せば、ヤツの情報が手に入るんだな?」 カイはエデンを改めて睨みつけた。 「俺の・・・・・・・・・母さんの命を奪った張本人の情報が・・・・・・・・!!」 「何・・・・・・・・?」 ジンはカイの言葉に驚きを隠せないでいた。 エデンも、驚愕の表情になっている。 が、すぐに冷めた表情になり、 「・・・・・・・・ここにも、復讐の炎で心を無くしたものがまた1人・・・・・・・」 「・・・・・・!!」 エデンのその言葉は、カイには酷く馬鹿にした口調に聞こえた。 カイが顔を歪ませ、歯軋りさせる。 「・・・・・・・・・・ジン、離れていろ!カゲロウ!竜激波!!」 「グオゥ!!」 カゲロウは軽く羽ばたくと、口から巨大な火球、竜激波を放った。 エデンは左腕からシャドーボールを打ち出し、相殺する。 竜激波とシャドーボールは確実に大きさでは竜激波のほうが勝っていたが、威力は互角のようだ。 「次!地震!!」 カイが鋭い指示で、カゲロウが羽ばたくのを止め、そのまま急降下する。 衝撃波が起こり、地面を白い衝撃が伝っていく。 エデンが左手を上げる。 すると、そこに紫色の炎が灯った。 「地を掛ける破壊の衝撃・・・・・・・・」 エデンが呪文のような言葉を呟くと、左手を振り下ろした。 「ギガクラッシュ!!」 指が地面に突き刺さると同時に、手の炎が先ほどの地震の様に地面を走る。 地震とギガクラッシュがお互いに相殺しあうと思いきや、なんとギガクラッシュが地震を貫きカゲロウに迫る。 「うお!?やっべ!カゲロウ、飛べ!」 カイの驚き混じりな声で、カゲロウが慌てて飛んだ。 ギガクラッシュはカゲロウの真下を通過、目標を見失い爆発する。 エデンが立ち上がった。 「・・・・・・・・・・先ほどから疑問になっていることがある」 「あぁ?」 「グン?(あん?)」 突然のエデンの言葉に、カイは「?」という顔になる。 カゲロウも不思議に思い、カイの横に着地する。 「・・・・そこのリザードン・・・・・名をカゲロウといったか?」 『おう』 「お前たちは・・・・・・・・何故人間の言いなりになる?」 『は?』 「・・・・・・・・・何故それほどの力をもっていながら、人間の言いなりになる?  その力があれば、お前の横にいる人間を消すのは容易なことだろう?」 カイとカゲロウが目を合わせた。 お互いにこめかみを掻きながら、考える。 考えがまとまり、カイが口を開こうとしたが、先にカゲロウが話し出した。 『お前バカじゃねぇの?』 「何?」 『何で仲間を消す必要があるんだ?」 「仲間?笑わせるな。  仲間が何故命令する?お前たちは何故従う?  指示を受け、それを実行する義理はない筈だ」 『それが俺たちのやり方だからよ。  簡単に言やぁ俺たちはみんな不器用なのさ。こうゆうやり方じゃなきゃコミュニケーションが取れないんだよ』 「・・・・・・・・・他の人間や、ポケモンたちもか?」 『さぁな、俺が信じてる人間たちはみんなそうゆう連中ばかりだ。  ま、世の中にゃあちょっと間違ったコミュニケーション取ってるやつらがいるけどな』 「・・・・・・・・・・・人間たちに質問する」 「ん?何だ、何でも答えてやるぜ」 「・・・・・・・・・貴様らはポケモンたちのことをどう思っている?」 顔を見合わせるカイとジン。 同時に視線をエデンに戻し、口を開こうとした、その時、 「ンなモン仲間に決まってンじゃねぇかァ!!!」 カイたちの後方から聞こえてくる、カイには聞きなれた陽気な声。 声の主は、夜空を飛ぶカイリューの背中に乗っていた。 満面の笑顔だ。 「コウ!?」 コウが降り立ち、そして、 「クロスチョーーップ!!」 コウがカイの後頭部にクロスチョップをくらわせた。 「いって!何すんだ!」 「バカ野郎!答え決まりきった質問されて迷ってんじゃねぇ!」 とりあえず叫び終わり、そして少し大人しくなるコウ。 ジンの顔を見た後、エデンに目をやり、最後にカイを見る。 「え〜と・・・・・・・・俺、叫んだりしてよかったか?」 「ああ・・・・・・・俺の言いてぇこと言ってくれたからな」 「カイ、何だ?そいつは」 「ん?あ、そうかコウとジンは初対面だったな。  紹介するぜジン、こいつはコウ・コードロー。オレンジ一色の服装と、妙なテンションが目印だ。  コウ、こいつはジン。エンジュシティで会ったんだ」 「正確にはジョウト西の海上だがな。  あと、俺のフルネームはジン・グローリーだ」 「おう!よろしくゥ!!」 コウは意気揚揚と手を差し伸べ握手を求めるが、ジンはそれを思いっきり無視する。 眼中にない、そんな目をしている。 「・・・・・・・・カイ、こいつ本気で殴っていいか?」 「やめとけ・・・・・・」 その時、後方から足音がしてきた。 人2人分の足音だ。 よく聞けば、走っているようにも聞こえる。 3人と2匹が振り返る。 そこには、膝に手をつき、全身で息をしているティナとユウラの姿があった。 「あんたたち・・・・・・!何・・・・・・・・してんの・・・・・・・!?」 ティナが走ってきて苦しいのか胸をおさえ、何とか声をあげる。 「え〜と、ジンが戦ってるのを目撃して、やられそうだったから助けた。  んで、勝てばヘヴンの情報が手に入るってやつと戦って、今質問タイム」 「?ジン?」 「あ、こいつ」 カイがジンを指差す。 「あ、どうも」 ようやく疲れが取れてきたティナとユウラがジンに頭を下げる。 ジンもそれに習って軽く頭を下げる。 「仲間・・・・・」 エデンが一人、呟いた。 「エデンっつったけか?」 「?そうだが」 カイがエデンに突然声を掛ける。 「あんたは、何でヘヴンを探してるんだ?」 「・・・・・・・・・・殺すためだ。  私はそのために生まれてきたといっても過言ではない」 「・・・・・・・・・じゃあ俺たちと目的一緒だな!」 「何・・・・・・・?」 「俺は俺の母さんを殺し、町を半壊させたヘヴンをぶっ飛ばすつもりだ。  コウは別に親は殺されちゃいねぇ、町の仇をとるつもりだ」 「私もだよ!」 「ヘ?ティナ?」 「私もって言うか・・・・・・・・カイに付き合ってあげるって言うか・・・・・・・まぁそんなカンジ」 「あたしもヘヴンを探してるよ」 「え?ユウラも?」 「あたしは町を潰され、その上孤児院の家族たちまで殺された・・・・・・・・・。その仇を討ちたいんだ」 「なんかみんないつの間にか復讐者になってんな・・・・・・・・・。  あ、そういやジンは?」 「・・・・・・・理由は言えない。   だが、俺もお前たちと同じ復讐者だ」 「そっか・・・・・・・・まぁこんなカンジだエデン。みんな復讐者だ」 「・・・・・・・・・・」 「だからさ、お前、俺たちの仲間にならねぇか?」 「!?何を言うんだカイ!俺の話を聞いていなかったのか!?  こいつはどこかでヘヴンと繋がっている!ましてや仲間かもしれないのだぞ!?」 「まぁいいじゃんか、ヘヴンを探し出して殺すってんなら俺たちと目的一緒だろ?  だからさ・・・・・・・・いわゆる同士ってやつよ」 「そ、そうだが・・・・・・・・・」 カイの突然の言葉に、ジンは言葉を濁した。 「仲間・・・・・・・・か・・・・・・・」 「どうだ?何をするにも仲間がいたほうが都合いいだろ?」 「・・・・・・・・私に関わるということは、命すら狙われかねん。  ・・・・・・・・・・それでもいいか?」 「いい」 「!?ちょっと待ってよカイ!何!?コイツそんなヤバイやつなの!?」 「そうだぜカイ!出来ればこう・・・・・・・もっと安全な方向で・・・・・・」 カイの安易な考えに、ティナとコウは驚きの声を隠せずにいられなかった。 だが、当の本人は全く深く考えていないようで、 「まぁ何とかなるって」 と、安易に答えた。 「オイオイ・・・・・・」 「じゃあ復讐者同盟成立ってことでOK?」 「ああ・・・・・・・・・。  久しぶりだ、仲間といわれるものたちをもつのは・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・?」 唐突に、エデンが振り返り歩き出した。 「オ、オイ!ちょっと待てよ!仲間になったんならヘヴンに関する情報ぐらい話していけよ!」 カイがエデンをとめる。 エデンは振り返らずに答えた。 「仲間なら・・・・・・・・・・いつか話すことになる。  私はしばらく単独でルーラァズを追う。  いつか、また会いに来る・・・・・・・・・・」 エデンはそう言い残すと、静かに浮かび上がった。 そして、テレポートで消えていった。 取り残された5人と2匹。 さりげなく、ジンも歩き出した。 それをカイが追いかけ、肩を掴み止める。 「待てよジン、お前まで逃げんな。  お前にたっぷり話してもらうぜ、仲間だろ?」 「・・・・・・・・一部分のみ絶対に話すことが出来んが・・・・・・・・。  それでもいいか?」 「ああ、仲間だからな」 「仲間・・・・・・・か」 カイたち一同は、ポケモンセンターに向かっていく。 今日は妙に長く感じたと、カイは思った。  つづく  あとがき いろいろ謎がいっぱいの第47話でした。 特に謎なのはジンの右腕に灯った黒い炎ですね。 コレが明らかになるのはまだまだ先です・・・・・・・・・。  次回予告 第48話 ルーラァズ(仮)