ドクンドクンドクン 何だ? ドクンドクンドクン 俺の・・・・・・鼓動?にしちゃあダブって聞こえるな・・・・・・。 ドクンドクンドクン 俺の鼓動と・・・・・・フルメタルコート?モノにも鼓動なんてあるのか・・・・・。 ドクンドクンドクン じゃあ・・・・・・もう1コは? ******************  リベンジャー  第58話「剣士に宿る1匹の悪鬼」 ****************** 『な・・・・・・・に・・・・・・!?』 アサシンは愕然となった。 斬り裂かれ、再起不能になったはずのカゼマルが、ゆっくりと起き上がったのである。 身体を斜めに分断する巨大な傷から血を流しながらも、カゼマルは平然と起き上がった。 肩で大きく息をしており、口での息も荒い。 だが、その強靭な身体とは裏腹に、顔だけはおかしかった。 目を血走らせ、何かに脅えている。 『アサシン・・・・・・・』 声までも震えていた。 『逃げろ・・・・・・』 『・・・・・・・・何?』 カゼマルの理解不能の言葉に、アサシンは首をかしげる。 アサシンはとりあえず辺りを見渡したが、自分を襲うおうとする輩の姿は無い。 一体何から逃げればよいのだろうか? 『早く逃げろ・・・・・・』 『おい、何を言っている?一体何の・・・・・・』 『!かわせェ!』 その言葉と同時に、カゼマルが跳んだ。 大怪我をしているのにもかかわらず、かなりのスピードだ。 『!』 アサシンは慌てず騒がず、鎌に装備されたデスサイズでカゼマルの攻撃を受けとめる。 だが、そこで予想し得ない事態が起きた。 アサシンの鎌を包む氷の鎌、デスサイズに突如としてひびが生じ、音を立てて崩壊したのである。 カゼマルのもう片方の鎌が再び襲ってきた。 それをもう一方の鎌で受けるが、またもデスサイズは崩壊した。 あまりに唐突な出来事に、声がでないアサシン。 『早く逃げろ!お前じゃコイツには敵わない!!!』 アサシンを逃がそうとするカゼマルの頭部に反し、身体はアサシンを斬り裂こうと鎌を振り上げる。 両鎌による攻撃をアサシンは両鎌で受け止めるが、デスサイズを破壊しただけあって、アサシンの鎌をぐいぐい押してくる。 『何をやってる!早く逃げないと殺されるぞ!』 『貴様!言ってることとやってることがまったく正反対だぞ!』 『違う!何かが・・・・・・何かが俺の身体を操ってお前を攻撃してるんだ!  俺ではこんな重い攻撃は出来ない!実際戦ったお前が一番わかっているはずだ!』 『確かに・・・・・・そうだが・・・・・・グ!!』 カゼマルの身体を操る“何か”はさらに力を込める。 アサシンの身体が、吹き飛んだ。 岩に叩きつけられ、身動きできなくなる。 『く・・・・・・・』 『バカ野郎!!早く逃げろ!!』 “何か”は倒れたアサシンの前で、止まった。 デスサイズまでも破壊する鎌を振り上げる。 そして、振り下ろした―――――――― 反射的に目を閉じたアサシンは、自分の身体に何事も起こっていないことを確認すると、ゆっくり目を開けた。 そこには、アサシンの眼前で止まったカゼマルの鎌があった。 少しだけ、鎌が震えていた。 『誰かは・・・・・・・知らないが・・・・・・・』 カゼマルは苦い顔で、“何か”に問い掛ける。 『俺の身体で・・・・・・勝手なことをしてくれるな・・・・・・!!』 すると、カゼマルの鎌の震えが止まった。 同時に、身体の自由が聞くことに気付いたカゼマルは急いで鎌をアサシンから放す。 飛びのいて、己の身体を見つめる。 先ほどまでまったく言うことを聞かなかった身体が、今は自由に動く。 一体、何だったのか? アサシンはというと、身体を起こし、カゼマルを見つめる。 『大丈夫か?』 『あ・・・・・・ああ・・・・・・・』 『・・・・・・・私とお前の決着が、ついてなかったな』 『!?お前、その身体で続ける気か・・・!?』 『貴様も同じような条件だ』 アサシンは再びデスサイズを造りだし、カゼマルに突きつける。 『今、ここで私との決闘を仕切りなおしにすれば、さっきのことは無かったことにしてやろう』 『!・・・・・・・・・・・・・・・・』 カゼマルもそれに同意し、構えた。 だが、妙な構えである。 上半身を前に突き出し、さらに鎌の一方はだらんと下げ、もう一方は下げた鎌に対し90度にする。 羽根も同じように90度、だがこちらは直角に立てた羽根と、その羽根に対し90度といった具合だ。 その姿は、まさしく十字架である。 『・・・?妙な構えだな』 『・・・・・・・これが俺の切り札だ』 『!・・・・・・・そうか、では私も、切り札を使わせてもらおうか』  お互いに切り札ということで、次の一撃で終わらせないか?』 カゼマルはいいだろうとばかりに、コクリと頷いた。 いいか?これはハッサムに進化するまで使用禁止だからな。 ドクン 『行くぞ!』 アサシンの身体が円盤状になる。 これをストライクのまま使えば、ハッサムに進化しても、1回も使えなくなる。 ドクン 鎌が飛び出した。さらにデスサイズを装備している。 お前が教えて欲しいって言ったから教えてやったんだからな、言いつけは守れよ。 ドクン 円盤状になったアサシンの身体が浮き上がった。 回転し、氷の鎌を光らせる。 そのまま突進、鎌を振り回し、構えたまま動かないカゼマルに迫る。 悪いな・・・・カイ、お前との約束・・・・・・守れそうにない・・・・・・。 『くらえカゼマル!!“スピニングブレード”!!』 カゼマルはキッと回転しながら迫るアサシンを睨み、そして・・・・・・・。 『四刀流奥義!!』 『!』 その時、カゼマルのフルメタルコートがまぶしく光り輝いた。 『私の・・・・・・・敗因は・・・・・・・・なんだろうな・・・・・・・』 『さぁな』 全身斬り傷だらけで倒れたアサシンは、自分を負かした張本人に問うた。 『フン・・・・・・・・先ほどまで・・・・・・・・死にかけていた者の・・・・・・セリフじゃ・・・・・・ないな・・・・・・』 『今度はそっちが死にかけてるしな。  あまり喋るな、ホントに死ぬぞ』 『ああ・・・・・・・・・・・・・。  私の敗因は・・・・・・・・運の無さ・・・・・・・か・・・・・・?』 『しいて言えばそうなるな。  俺だって、あの瞬間に進化できるとは思っていなかった。  傷もすべて消えるしな』 真紅の体を持ったカゼマル・・・・・・・はさみポケモン・ハッサムが、アサシンを見下ろしながら言った。 既にその首に、フルメタルコートは消えていた。 左目の傷跡はしっかり残っている。 『俺は勝った気は無い』 『?何故だ・・・・・・・?』 『お前は俺の中に潜んでいた“何か”と戦い、体力を消費していた。  その後で俺がお前にとどめを刺した。  お前のその傷が俺によるものだけなら良かったが、その中には“何か”によるものがある』 『・・・・・・何・・・・・者・・・・・なんだ・・・・・・?』 『見当もつかん』 『そうか・・・・・・』 『・・・・・・俺がカイについてきたのには、理由があった』 『!理由・・・・・・?』 『俺には勝たなければならない敵がいる。  俺をコケにしたアイツに勝つまでは、負けるわけにはいかないのだ』 『野望・・・・・・・か?』 『その通りだ・・・・・が、他にもやることが増えた』 『?』 『俺の中に潜む悪鬼の正体を突き止めることと・・・・・・』 『・・・・・・・・』 『最強の座に着くことだ』 『お前はこれからどうする?』 『そのうち・・・・・・・・迎えがくる・・・・・』 『あの世からのか?』 『さえない・・・・・・ジョーク・・・・・だな・・・・・・』 カゼマルの身体と、何処からか飛来した影が重なった。 エアームド・・・・・・ホークである。 ホークは降り立つと同時にカゼマルを一瞥すると、アサシンをカギヅメのような足でがっしり掴み、そのまま何処かへ飛び去っていった。 1人取り残されたカゼマル。 何かぼんやりと考え事をしていたが、とりあえず下山することにした。 千年前に起きた、謎の殺戮事件。 夕闇に染まる平原に、膨大な量の人間とポケモンの死体。 辺りにはその人間たちが使っていたと思われる様々な武器が転がっていた。 その死体の平原の真ん中に1人立つ、赤い影、ハッサム。 その両手はもともと真っ赤だったが、その上から被った赤い血が、はさみの赤さを不気味に際立たせていた。 はさみから、真っ赤な血が滴り落ちている。 その惨殺劇を繰り広げたそのハッサムの名は・・・・・・・・。    ≪破壊王 ゼロ≫  つづく  あとがき また短かったです・・・・・・・。 全体的のかなり意味不明な第58話でした。 わかったこと、それはカゼマルがハッサムに進化したことのみ・・・・・(オイオイ)。