*********  リベンジャー    第61話「予選」 ********* 「コイツら・・・・・・・全員出場者?」 「あんた・・・・・・・ホンット何も知らないのね・・・・・・・」 巨大な円形状スタジアム、つまりメインスタジアムの裏手。 そこに4つ、メインスタジアムほどではない、そこそこの大きさのスタジアムがある。 この4つのスタジアムは“本選”で使われるスタジアム。 今、彼らがいるのはさらにその4つのスタジアムの裏手・・・・・・・・・。 金網で仕切られた、いくつものバトルフィールド。 このバトルフィールドで、“予選”が行われる。 金網の前にいる、人の波、波、波・・・・・・・・。 出場者プラス観戦者でできた人垣。 その人垣の中に、彼らは紛れていた。 「よーするに、コイツらの誰でもいいから戦って、勝ち星3つ掴めばいいんだろ?」 「誰でもいいってワケじゃないけど・・・・・・勝ち星3つってのはあってる」 コウはやはり、大会パンフレットに全く目を通していないらしい。 ユウラも呆れ顔でとりあえず教えてやっている。 「・・・・・・・・今、何時だ?」 「12時55分」 カイはしきりに時間を気にしている。 早く予選が始まって欲しいのか、うずうずしている様にも見える。 1時丁度、マイクを持ったポケモンリーグスタッフが姿を現した。 簡単な予選の内容を説明し、ついに予選が始まった・・・・・・・。 「ガラガラ!骨棍棒!!」 少年の声で、骨好きポケモン・ガラガラが飛び掛った。 その手にした骨を、相手ポケモン、ハッサムに打ち下ろす。 「カゼマル!受け止めろ!!」 カゼマルは全く慌てることなく、右腕を頭の上に構えた。 ガキンと音がして骨がカゼマルの腕に叩きつけられたが、カゼマルは微動だにしない。 カゼマルが一瞬で消えうせた。 そして・・・・・・・・。 「疾風撃!」 ガラガラのトレーナーが気がついたときには、既にガラガラは倒れ、戦闘不能となっていた。 「ガラガラ戦闘不能!ハッサムの勝利!  よってこの試合、カイ・ランカル選手の勝利!」 審判の声が響いた。 「おっし!まずは一勝!」 「エビワラー!連続パンチ!」 パンチポケモン・エビワラーがその鋭いパンチを相手のエレブーの顔面にヒットさせた。 休むまもなく、エビワラーはさらにパンチを打ち込む。 顔面に拳を受けているのにもかかわらず、エレブーは全く反撃しない。 まるでサンドバックである。 エレブーのトレーナー・・・・・・・コウも、全く指示を出さない。 「これで終わりだァ!爆裂パンチ!!」 エビワラーのトレーナーであろう少年が声を張り上げた。 エビワラーが腕を大ぶりに構える。 今まさに打とうとしたとき、突如エビワラーの視界が真っ暗になった。 司会ゼロの原因は、エレブーの掌。 今まで打たれ続けていたエレブーが突如とした行動を開始した。 「え!?な・・・・・エビワラー!」 「ヘヘ・・・・・!」 コウがせせら笑うと、エレブー・・・・・・エレクがエビワラーの顔面を鷲づかみした腕を持ち上げた。 エビワラーはこれでもかとじたばたするが、まるで効果なし。 エレクは掴んでいないほうの腕・・・・・・左腕を振りかぶった。 その拳に、電気を宿して。 「エレク!今まで殴られた分、100倍にして返してやれ!雷パンチ!!」 パンチポケモンのエビワラーが、パンチで吹っ飛んだ。 「エビワラー戦闘不能!エレブーの勝利!  よってこの試合、コウ・コードロー選手の勝利!」 「よっっっっっっっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!  しょーーーーーーーーーうりぃ!!!」 「ジット!!高速移動!」 ティナの声で、ピジョットのジットが高速で旋回する。 相手ポケモン・・・・・・・くちばしポケモン・オニドリルはそのスピードについていけてないようで、ただただおろおろするばかり。 そして・・・・・・・・・。 オニドリルは背中に衝撃を感じた。 その衝撃に押され、そのまま急降下するオニドリル。 相手のピジョットが自分の背にのしかかったことに気がついたときには、既にオニドリルの身体は地面の上で倒れていた。 「オニドリル戦闘不能!ピジョットの勝利!  よってこの試合、ティナ・ラディス選手の勝利!」 「やった・・・・・・!」 ティナが胸を撫で下ろしほっとしていると、横の金網内バトルフィールドでドカッと物音がした。 見れば、フィールドの真ん中にかるがもポケモン・カモネギが倒れており、その横にヤミカラスが立っていた。 ヤミカラス・・・・・・・クロのトレーナー、ユウラはティナの視線に気付くと、歯を見せて二コッと笑った。 「ンがぁぁぁぁぁ・・・・・・」 「・・・・・・・・うるせェ・・・・・・・・」 カイはコウのその地響きのようないびきを鼓膜に受け続け、寝付けないでいた。 とりあえず起き上がり、コウのベットの横に立ち、そして・・・・・・・。 ドカ かかと落し(裸足) 効果ゼロ。 頬にかかと落しを受けたとも知らず、もくもくといびきをかき続けるコウ。 カイはため息をつくと、ハンガーにかけてあったパーカーを手に部屋を出た。 「・・・・・・・・・・・・」 その少女は深夜、南の海が見渡せる丘の上にいた。 腰まで伸びた綺麗な青い髪が、風に揺られなびく。 いつもはツインテールにしているのだが、今は無防備な状態だ。 その肩には自分の兄がよく着用しているジャンバー。 腰をおろし、少女は南の海を眺める。 深夜のため真っ暗な海。 吸い込まれそうなその真っ暗な海を、少女は黒い瞳で見つめる。 ここに来れば、あの人に会えるような気がした。 まるで根拠のない勘だが、少女は来られずにはいられなかった。 そして、背後から足音が聞こえてきた・・・・・・・・・・。 「!カイさん・・・・・・・・?」 「・・・・・?キキじゃねぇか、何やってんだ?」 現れたの青髪の少年、カイだった。 ヘアバンドを首にかけ、ポケットに手を突っ込んだまま歩いてくる。 「隣・・・・・・・・・・いいか?」 「あ、ハイどうぞ」 カイはキキに隣に腰掛けると、キキと同じように海を眺めた。 「・・・・・・・・・全然、眠れなくてな。  キキは何でこんなトコにいんだ?」 「あ・・・・・・・・・・えっと・・・・・・私も・・・・・・・・・です」 「ふ〜ん・・・・・・・・そうか」 あなたを待っていたから、とはいくらなんでも言えなかった。 2人はしばらく、無言で深夜の海を眺める。 (うう・・・・・どうしよう、運よくカイさんと2人きりになれたのに・・・・・・・。  話題が浮かばない・・・・・・・・・・) キキはカイを飽きませまいと必死で話のネタを探るが、何も浮かんでこない。 とりあえず浮かんだことといえば・・・・・・・・・。 「あ・・・あの!」 「ん?」 「予選突破・・・・・・・・・おめでとうございます・・・・・・・・・」 「・・・・・・・?ああ・・・まぁあれくらい俺たちにかかればチョロイもんよ。  ジンも、当然突破したんだろ?」 「ハイ、3連勝で・・・・・・」 「やっぱりなァ・・・・・・・まぁ俺たちも3連勝だったんだけど」 またも、話が途切れた。 キキは再び脳みそをフル回転させ、話のネタを検索する。 「あの・・・・・・・1つ、質問していいですか・・・・・・・・・?」 キキは以前から気になっていたことを聞くことにした。 「?何だ?」 「えっと・・・・・・・その・・・・・・・・」 キキはしばらくモジモジした後、意を決して口を開いた。 「何で初めて会ったとき・・・・・・・・初対面の私にあんなに優しくしてくれたんですか・・・・・・?」 「・・・・・・・・・そんなもん当たり前じゃねぇか」 「え?」 「困っている人がいたら助けてやる・・・・・・・・・って俺の父さんがよく言ってた」 「はぁ・・・・・・・・・」 「人として常識だろ?」 「・・・・・・・・・・そうですね・・・・・・・・・」 またも、途切れた。 話のネタを検索していると、今度はカイから話を振ってきた。 「キキってさ・・・・・・・・」 カイはそう言うと、突然キキの顔に自分の顔を近づけた。 突然のことにキキの顔が真っ赤になる。 顔と顔の距離、約10センチ。 カイは顔を離すと、何の躊躇もなく、 「意外とカワイイな」 「・・・・・・・・・・・え!!?」 あまりにも意外な言葉。 キキは耳まで真っ赤にする。 「フスベでもさ・・・・・・・・・結構モテてんじゃねぇの?」 「!いえ・・・・・・・・全然・・・・・・・・」 「・・・・・・・まぁキキに近づくやつがいたら全部ジンに追い返されそうだけどな」 「・・・・・・・・・好きな人なら・・・・・・・・いるんですけど・・・・・・・」 「え!?マジ!?で、どうしたんだ?告った?」 「そ、そんな勇気は・・・・・・・私にはないから・・・・・」 「ふ〜ん・・・・・・・・・でもよ、キチンと言わないと相手には伝わんないぞ?」 「え?」 「こう・・・・・・思い切ってさ、告白してみりゃいいじゃん。  まぁ1回フラれたからって死ぬわけじゃねぇんだし」 ・・・・・・・・・・・・・どうしよう・・・・・・・・・・・・・・ 「・・・・・・・少し・・・・・・・・」 「?」 「少しだけ・・・・・・・・勇気が出ました」 「!そっか・・・・・・・・・・。  じゃあ俺もう行くわ。相手してくれてありがとな」 カイが立ち上がった。 来た道を反対方向に歩き出す。 「あ、あの!」 キキの声で、カイは振り返った。 「?どうした?」 「えっと・・・・・あの・・・・・・・」 キキは頬を少し赤くして、 「・・・・・・・おやすみなさい」 「!おう!おやすみ!」 ダメだ・・・・・・・・・全然勇気ナシ・・・・・・・・。  つづく  あとがき 予告通り、短いです(爆)。 なんかいい雰囲気でした(オイオイ)。 次回からやっと面白くなる・・・・・・・・かもしれません。