***************  リベンジャー  第70話「どちらが強いのか」 *************** 「あ・・・・・ジンとキキ」 カイは反射的に、朝食を楽しむコウたちに気づかれぬように呟いた。 ポケモンリーグが開幕して早数日、今日からポケモンリーグ決勝トーナメントが始まる。 それぞれのブロックを勝ち抜いた8人のトレーナーが、セキエイ高原中央にあるメインスタジアムでぶつかり合う。 そのレベルは、ジムリーダーをも凌駕するほど。 おそらく、スタジアムの客入りは予選をはるかに超える大賑いになるだろう。 スタジアム前のメインストリートの両脇に並ぶ出店も、今日は売るぞとばかりに張り切っている。 カイ、コウ、ティナ、ユウラ、ジンの5人も、予選トーナメントを勝ち抜き、決勝トーナメント出場権を獲得していた。 (ヤバイな・・・・・・・・) カイがそう心の中で呟いたのには訳があった。 先日、ジンはコウたちに反感を買ってしまっていた。 そのため、朝っぱらから重い空気を吸いたくないカイは、何とかこの状況を打開するべく策を練っていた。 だが、その策も浮かばずジンたちがテーブルの前まで来てしまった。 ジンたちに気づいた途端、コウたちは朝食に手をつけるのを止め、そっぽを向いた。 重い。 重い空気が、そのテーブルを包んだ。 「よ、ようジン、キキ」 カイは何とかこの重い空気を吹き飛ばそうと、笑顔でグローリー兄妹にあいさつする。 「・・・・・・・・・」 「お、おはようございます!」 ジンは相変わらず無表情で、キキはすこし恥ずかしそうに朝の挨拶をする。 コウたちはそっぽを向いたままだ。 「その・・・・なんだ・・・・」 ジンの様子がいつもと違うことにいち早く気づいたカイは、頭の上に疑問符を浮かべる。 「この前のことは・・・・・・謝る。言い過ぎたと反省している・・・・」 「?」 予想だにしないジンのその言葉にコウたちが振り返った。 皆、一様にポカンとしている。 一瞬の静寂の後、最初に口を開いたのはユウラだった。 「ま・・・・・わかってくれれば・・・・ねぇ?」 ユウラがコウとティナに目をやる。 「なーんだよジン!お前結構いいヤツじゃんか!  お前の性格からして一生謝んねぇと思ってたんだけどなー!」 「・・・・謝ってくれれば、許してやらないことも無いけど?」 「・・・・・・だそうだ。よかったな、ジン」 「・・・・・・・・・・」 ジンは相変わらず無表情で、何も返さなかった。 昨晩、ジンは部屋でキキにこの前、カイたちに“偽獣”について話した事、ついつい彼らをバカにしてしまったことを話した。 するとキキはそれはお兄ちゃんが悪いと指摘。 キキに言われ、ジンは渋々謝ることにした。 「で、いきなり話が変わるんだが」 「へ?」 「お前達、決勝トーナメントの組み合わせ表はもう見たのか?」 セキエイ高原ポケモンセンター。 受付の真上に設置された、横長の電光掲示板。 その掲示板に、組み合わせ表が表示されていた。 8人による、ポケモンリーグ決勝トーナメント表。 カイたち一行は、その掲示板を眺め、自分達の名前を探していた。 「あ・・・・・・・」 4人が一斉に呟いた。 カイ・ランカルVSコウ・コードロー ティナ・ラディスVSユウラ・シアード まず、向き合ったのはカイとコウだ。 しばらく睨み合う2人。 コウが唐突に、右拳をカイに突きつけ、そして、 「ぜってー勝つ!!」 と叫んだ。 カイも右拳を突き出し、そして、 「俺ァ負ける気は微塵もねぇ」 拳と拳をゴチンと打った。 「・・・・・・初めて戦うね」 「うん・・」 こちらはいたって静かな女2人。 「・・・・・・ユウラ、遠慮はいらないから全力できてよね。  まぁ私は最初から手を抜く気は無いけど」 「あ、あたしだって!」 セキエイ高原メインスタジアム。 その観客席は、人で埋め尽くされている。 高レベルなポケモンバトルを一目見ようと集まってきた人がほとんどだ。 ポケモンリーグ決勝戦、一回戦第二試合。 既に前の試合が終わっており、今現在、フィールドには誰もいない。 だが観客達の興奮は収まっていない。 先ほどの高レベルな試合を見て、かなり盛り上がっている。 カイ、コウ、ジン、キキは何とか確保した席に座り、バトルが始まるのを待ちわびていた。 ティナVSユウラの試合を。 カイ、コウにしてみれば、この試合にはとても興味があった。 ティナはカイが一番よく知っている。 ユウラはコウが一番よく知っている。 ジンは最初は興味は無かったが、このバトルを見ておく必要があった。 実はこの試合の勝者が、自分と戦うことになるのだ。 彼は既に決勝トーナメント一回戦を勝ち抜いていた。 決勝トーナナメントにもかかわらず、ジール1匹で。 観客達の興奮が冷めないのは、ジンの圧倒的な強さを目の当たりにしたからだ。 「ではこれより、ポケモンリーグ決勝トーナメント、一回戦第二試合を始めます!」 両手に赤と青の旗を持った審判が大声で宣言すると、観客達の興奮率がさらに高まる。 それぞれのゲートから、ティナとユウラが入場してきた。 両者とも、緊張のオーラを全身に宿している。 ユウラは最近きていたジャンパーを着ておらず、以前着ていた白のフリースを着ている。 決勝トーナメントから、バトルの地形が毎回変化することになっている。 草、岩、氷。 このどれかを属性とする、“属性フィールド”。 完全なるランダムで決定する。 今回、“属性フィールド”は“岩”に決定した。 一面岩だらけの、ゴツゴツしたフィールドだ。 2人は睨み合う。 だが、両者と元も額に汗をかいている。 どちらが強いのか。 その言葉が2人の頭を駆け巡る。 「構え!」 審判の声で、2人がゆっくり腰のボールに手をかけた。  つづく  あとがき クロ「ハーッハッハッハ!」 YAN「あ、また来た。別のヤツよこすんじゃなかったのか?」 クロ「フッフッフ・・・・・今回は俺だけじゃないぞ!」 コウ「そのとーり!俺様も来てやったぞ!」 YAN「うるさいのが増えただけだろ!もっとこう・・・・静かな常識人連れて来い!」 コウ「ああ!?俺の何処が常識人じゃねぇってんだ!?」 YAN「言動全てにおいて常識の欠片もないだろ!」 クロ「バカやってねぇでそろそろあとがき開始しねぇか?」 YAN「お前がこんなヤツ連れてくるからだろ!」 クロ「キレすぎだぞ。で?どうなんだ、今後の展開は」 YAN「まぁテキトーに」 コウ「テキトーかよ!」 YAN「まぁそれなりに考えてあるから少しだけ安心しとけ」 クロ「何だ!?その少しってのは!心なしか不安になるぞ!」