*********  リベンジャー  第71話「全力」 ********* 「ク・・・・・・強ぇし速ぇ・・・・・!」 「ヒュオオオオッ!!!」 顔をしかめるクロに対し、その相手であるピジョットのジットは甲高い声を上げ、旋回しながらクロに迫る。 2匹はスタジアム内を軽快に飛び回り、空中バトルを繰り広げる。 ティナ。ピジョットのジット。 ユウラ。ヤミカラスのクロ。 パワー、スピード、スタミナ。 全てにおいて、ジットはクロに勝っていた。 だが、そんなクロにもジットに負けない部分がある。 自分のトレーナー、ユウラの影響で手に入れた策士としての力。 「ジット!翼で打つ!」 「うおっ!?あぶねっ!」 両翼を目いっぱい広げ、襲い掛かってくるジットをすれすれで避けるクロ。 すぐに体制を立て直し、ジットに目をやるが、既にジットは旋回し、こちらに顔を向けている。 クロはジットの攻撃後、後ろから攻撃しようかと作戦を立てていたが、ジットのスピードはかなりのもので、特に攻撃時は格段にスピードアップしてくる。 いくらキレ者トレーナーを持っても、このスピードではそれも役に立たない。 ユウラは考える。 この超スピードのピジョットを、どうすれば倒すことが出来るか。 「クロ!黒い眼差し!」 クロの持つ技の中でとりあえず捕縛効果がある技を指示するユウラ。 が、超スピードのジットには通用しない。 「翼で打つ!」 ティナの声。ジットの攻撃。 「オウム返し!」 クロが眼前に反射壁を作り出し、ジットを迎え撃つ。 が、ジットはクロがオウム返しを展開しているとわかった途端、旋回して攻撃を中断する。 「・・・・・・!」 「ユウラ、私のジットがただの攻撃バカじゃないってことを教えてあげるわ。  ジット!“風乱舞”!」 「ヒュオウ!!」 ジットが空中で止まると、クロに向かって風起こしを放った。 ダメージは然程ないが、連発してくるためクロからすればかなり邪魔である。 「ク・・・・・・なろぉ!」 クロが強引に風起こしのど真ん中に突っ込んだ。 無論突破するためだったが、パワー不足で跳ね返され、再び元の位置まで戻ってくる。 「だぁ〜ちっくしょう!オイユウラ!何とかしろ!  吹っ飛ばされねェようにフンバるのがやっとだ!」 「そ、そんなこと言ったって・・・・・・。  ・・・・ッッ!!クロ!」 「ゲッ!?あンの野郎!」 ユウラとクロが目にしたもの。 それは、風起こしを連発しながらもゴットバードのエネルギーをチャージしているジットだった。 ジットの全身が光り輝いている。 「フフ・・・・・!ジット、そのまま“風乱舞”を続けて。  クロにはこっちの特攻してくる策はないから安心してチャージしていいわよ」 「ヒュオオオウ!」 「オイオイオイオイ!メチャクチャヤベーじゃんか!  どーすんだよユウラ!」 「・・・・・・・・・・・」 一方、こちらは観客席のカイ達。 「・・・この戦いはティナに軍配だな」 「・・・・・・・・・・」 「ユウラさん・・・・・・・もう手は残されてないんでしょうか?」 「だいじょーぶ!ユウラはいざとなりゃあおもしれーバトルすっからな!  ただじゃやられねーよ!」 「・・・・・・・・・そういやコウ。お前、ユウラと旅してたんだよな?」 「ん?そーだけど?」 「で、どーだった?発展あったか?」 「バ・・・・・ンなモンあるかァ!!」 「え・・・・コウさん、ユウラさんと2人っきりで旅してたんですか?」 「2人旅で何も目覚めないとは鈍感な男だな・・・・」 「・・・・・なんかジンに言われると妙にハラ立つんだけど・・・・・!」 「ゲ・・・・・!」 クロがそう呟いた理由。 それはジットのゴットバードのエネルギーチャージが完了したからだ。 「オイどーすんだよ!  このままじゃあ思いっきり吹っ飛ぶのがオチだぜ!?」 「わかってるよ!わかってるんだけど・・・・・」 ユウラは見つけることが出来ないでいた。 ゴットバードに対抗するにはどうしたらよいのか。 クロはゴットバードに対抗できるような大技は持ち合わせていない。 ・・・・・・・・・・影分身。 「・・・・・!そうだクロ!オウム返しで対抗するのよ!」 「はぁ!?バカ無理言うな!どーやってオウム返しで・・・・・」 「・・・・・・・・そろそろね、ジット、ゴットバード!」 「ヒュ・・・・・オオオオオオオ!!!」 ジットが光の塊となって、勢いよく飛び出した。 「・・・・・・・な〜るほど」 「ね!?これならいけるでしょ!」 「ああ・・・確かに・・・・。相変わらずオメェは無茶させるぜ、全く・・・・!!」 「ヒュオオオオオオオ!」 ジットはまるでジャンボ機のように辺りの空気を乱しながら、相変わらずの超スピードで迫る。 すぐに、クロとの距離がゼロになる・・・・。 「オラァ!!」 ジットのゴーっトバードがクロに炸裂する瞬間、クロがオウム返しを発動させた。 ゴットバードがオウム返しに炸裂した瞬間、ビカッとまぶしいぐらいの光が迸った。 ゴットバードが、オウム返しを貫いた。 そして、クロの身体も貫いた。 「!?え!??」 「ヒュオ!?」 有り得ない。 いくらゴットバードが協力とはいえ、クロの身体を貫くほどのパワーはない。 だとすれば・・・・・・。 「な・・・・!」 中途半端な声を上げたのは、カイ達だけではない。 そのスタジアムにいた全ての人間が、思わずアッと声を上げた。 ジットに貫かれたクロの身体が、霧のように霧散したのだ。 そして・・・・・・。 「くらいやがれェェェ!!」 ドゴ!! 突如上から出現したクロが、ジットの無防備な背中にドリルくちばしをくらわせた。 ドリルくちばしのダメージと勢いで、そのまま地面に叩きつかられるジット。 「ピジョット戦闘不能!ヤミカラスの勝利!」  ティナ選手、残り5体!」 審判の声で、スタジアムが再び盛り上がった。 「い、今何が起こったんだ!?」 まだ状況をつかめていないコウ。 「ゴットバードがオウム返しに炸裂する瞬間、クロがなんかやったんだよな・・・・・」 ややわかりかけているカイ。 だが、この兄妹は違う。 「影分身・・・・・」 キキがボソリと呟く。 「お兄ちゃん、今のって影分身じゃ・・・・・」 「ああ・・・・・そうだな」 ジンがサラリと返す。 「インパクトの瞬間、クロは影分身をその場に残し、上空へ逃げた。  まぁ影分身とは言えただの残像、オウム返しにエネルギーを注ぐことは出来ない。  もちろんエネルギーを供給されないオウム返しはすぐに貫かれた。  ジットはそのままクロをも貫いてしまったと思い込み、動揺する。  そこを本体が奇襲をかけたわけだが・・・・・・・」 あの状況であんな作戦を思いつくとはな・・・・・・。 技と技がぶつかり合うときの光で姿をくらませるとは・・・・・。 状況判断力では、俺達の誰よりもズバ抜けている・・・・・。 「ハァーッハッハッハッハ!!  俺様にかかりゃああんな鳥野郎イッパツだぜェ!」 「・・・てアンタも鳥でしょうが」 余裕モード全開のクロ。それに静かにツッコむユウラ。 ジットをボールに戻したティナは、しばらく考え込む。 クロは油断している。 今なら・・・・・・・。 ティナがボールを放った。 ボールから現れた“ソイツ”の存在に、クロは気づくことが出来なかった。 気づく前に、殴り飛ばされたのだから。 クロは吹っ飛ぶ。鼻血を出しながら。 ティナのボールから現れた“ソイツ”を確かめるために目をやった瞬間、殴り飛ばされた。 ボールが地に落ちた場所と、クロがいた場所は結構離れている。 なのに、殴り飛ばされた。 「おお!?なんだァ!!?」 コウが相変わらずでかい声で驚く。 「速い・・・・・・・・」 ジンが静かに驚く。 「・・・・・!?」 キキがさらに静かに驚く。 「・・・・・・早速いったか」 カイだけが、驚かなかった。 「ナイス、ボルク」 「フゥゥゥン!!!」 やたらと低い声で、ティナのバクフーン、ボルクが吼えた。 「・・・・・・・・エ!?クロ!!?」 ようやくクロが吹っ飛ばされたことに気づいたユウラ。 だが、既にクロの体はボロ雑巾のように地面に転がっていた。 「ヤミカラス戦闘不能!バクフーンの勝利!  ユウラ選手、残り5体!」  つづく  あとがき YAN「ん?何だ、今回はアイツらいないのか。まぁ静かでいいか・・・・・」 コウ・クロ「隙ありィィ!!」 ドゴッ! YAN「ぐは!ク・・・・・後頭部に同時に蹴りをいれるとは・・・・。さてはお前ら特訓を・・・・・!?」 コウ「いや、してねぇから!」 クロ「そろそろこの小説も終りかな・・・・・。今回短いし・・・・・」 コウ「なんか作者のテンションもおかしいしな・・・・」 YAN「・・・・いつも通りなんだけど・・・・・・」