*********  リベンジャー  第72話「策士」 ********* 岩のフィールドを、何かが高速で移動する。 岩の間を縫い目を縫うように移動するその物体は、ボルクの周りを狂ったように回り続ける。 砂煙を巻き起こしながら走り回るその姿は、速すぎて全く見えない。 『クッソォ!!走り回ってねぇでかかって来い!  まぁ来た瞬間ぶっ飛ばすけどな!』 ボルクの応答に、その物体は返答しない。 不意にボルクを謎の衝撃が襲う。 『!ク・・・・・・・!』 その高速移動物体が、ボルクの真横を掠めて通り過ぎた。 だが、そのときチラッと攻撃者の姿が見えた。 大型の四本足のポケモン。 『コイツァ・・・・・!』 「ウインディ・・・・・!」 ボルクがその名を口にする前に、ティナがその名を口にした。 「フフ・・・・・!ティナ、あたしのウインディ、ランディはかなり強いよ!」 ユウラが不敵に笑う。 「神速か」 「まぁあのスピードならそれしか考えられねぇよな」 ジンの呟きに、カイはそう答えた。 高速移動をも超えるスピードを生み出す技、神速。 その名の通り、神のごときスピードは、何者にも追いつくことは出来ない。 「ボルク、地震攻撃!」 『オオ!任せろォ!』 ボルクが、片足を振り上げた。 そして、振り下ろした。 ボルクを中心に、フィールド全体に衝撃は響き渡る。 その威力は、辺りの岩を全て砕くほど・・・・・。 波状攻撃である、地震。 地上を移動しているポケモン相手なら、何処にいてもダメージを与えることが出来る。 地震が炸裂し、ウインディの動きが止まった瞬間、ボルクが飛び出し攻撃を加える。 これがティナの攻撃プランだった。 『な・・・・・に・・・・・!?』 またも、ボルクに神速が炸裂した。 地震をものともせずに。 倒れかけたボルクだが、何とか踏ん張る。 「え・・なんで!?地震でよろける筈なのに・・・・・」 「教えてあげようか?ティナ」 「!」 「あたしのランディはね・・・・・・・ちょっと変わった神速ができるの」 ボルクの周りを高速で移動していたランディが、再び、 『ぐあっ!』 攻撃。 「・・・・・・・!ボルク!もう一回、地震攻撃!」 『ク・・・・・・あンの野郎!』 ボルクが再び地震攻撃を放つ。 『グ・・・・・・』 またも、地震をものともせずにボルクに突進した。 「!まさか・・・・・。  ボルク!地震!」 『あ!?何でだよ!見てわかんねぇのか、地震を使ったら攻撃される可能性100%だっての!  もうちっと考えて・・・・・・・』 ボルクは通じるはずのない愚痴をこぼしながらティナに振り返る。 ティナのその眼は、真剣そのもの。 その気迫に押されたのかもしれない。 『チ・・・・・・ったく!わーったよ!』 ボルクは渋々了解し、片足を振り上げた。 その時、ティナは目撃した。 ボルクが片足を振り上げる様を見て、ニヤリと笑うユウラの姿を。 (・・・・・・・・・!やっぱり狙ってる・・・・!) ボルクが片足を振り下ろした。 先ほどと変わらない衝撃波が、フィールドを駆け巡る・・・・・・。 ボルクを取り囲むように巻き起こっていた砂煙が、消えた。 「右に避けて!」 『!?ク・・・・・・!』 ティナの指示に素直に従うボルク。 ボルクが元いた場所を、何者かが通り過ぎた。 無論、ランディだ。 ランディは攻撃に失敗すると、再びボルクの周りを走り出す。 『避けれた・・・・・・・・』 ボルクは見えない攻撃をかわせたことに、多少の歓喜を味わう。 「攻撃方法がわかった・・・・・・!いける!」 ティナは一呼吸置くと、 「ボルク!次で決めるよ!地震!」 『なんか意味あんのかわからねぇけど、お前を信じるぜ!』 ボルクが今日何回目かもう覚えていない技を、再び繰り出した。 そして、再び砂煙が消えた。 「ボルク!目の前に爆裂パンチ!!」 (え・・・・簡単にかわされると思うんだけど・・・・まぁいいや!) 『おお!くらえぇ!!!』 『へ!?』 「うそ・・・・・・・!?」 「やった!」 ボルクの爆裂パンチが、“何故か”何かにヒットした。 ボルクが自分の真上を見上げると、思いっきり吹っ飛ぶランディの姿があった。 実際にじっくり姿を見るのははじめてである。 そして、砂埃を起こしながら地面に倒れ伏せた。 「ウ、ウインディ戦闘不能!バクフーンの勝利!  ユウラ選手、残り4体!」 「まさか・・・・・・見切ったの・・・・!?ランディの攻撃方法を・・・・・・!」 戦闘不能となったランディをボールに戻しながら、ユウラがティナに訊く。 その表情は、ランディの攻撃方法を見切られたことに信じられないといったカンジだ。 「よ〜く考えたらね、わかったのよ。  何でランディは地震を受けても突進できたのか・・・・・・。  ・・・・・ううん、受けてはいない・・・・・・そうでしょ?」 ティナが不敵に笑いながら訊く。 ユウラは押し黙っている。 「攻撃前に辺りの砂煙が消えていた・・・・・・。  何で消えるのか、それはランディが“地面を走らず、瞬発力で低空飛行していた”。  そうとしか考えられないからね」 (全部・・・・・・・気付かれていた・・・・・・!?) 「ボルクの爆裂パンチが呆気なくヒットしたのは、ランディが低空飛行中のため、かわせなかった・・・・・。  そんなトコでしょ?」 「キャノン!」 ユウラが新たなボールを放った。 中から現れたのは、二門の大砲を装備した、カメックスのキャノン。 キャノンはボルクを見るなり、すぐに大砲を構える。 ボルクもすぐに身構える。 「ハイドロポンプ!」 2つの強力なハイドロポンプ。 それを真っ向から受けるボルク。 だが、ボルクは倒れない。 『ウオオオオ!!』 「!」 ボルクはハイドロポンプを受けながらも、飛び出した。 苦手なハイドロポンプをものともせずに。 「うそ・・・・・!?」 「ボルク!爆裂パンチ!!」 ハイドロポンプの中を走りながら、ボルクが右腕に爆裂パンチのエネルギーをチャージしだした。 キャノンは慌ててハイドロポンプの威力を上げる。ボルクがこちらに来るのを防ぐためだ。 が、その努力は無駄に終わった。 大きな鈍い音が、スタジアムに響き渡った。 キャノンの目の前まで到達したボルクが、キャノンの頬に爆裂パンチをヒットさせた。 ハイドロポンプが中断される。 が、キャノンもそのまま倒れるわけにはいかないとばかりに、お返しにパンチをボルクの頬に叩き込んだ。 2度目の鈍い音。 スタジアム全体が、息を呑んだ。 お互いに頬に拳を叩き込んだまま、動かないボルクとキャノン。 すぐに、1匹に変化がおきた。 ボルクだ。 ボルクの体がぐらりと傾き、その場に倒れ伏せた。 ランディの神速。キャノンのハイドロポンプ。 この2つの大技を立て続けにくらいながらも、ボルクはキャノンに一撃を入れた。 そして、倒れた。 「バクフーン戦闘不能!カメックスの勝利!  ティナ選手、残り4体!」 審判の判定。 盛り上がるスタジアム・・・・・・。 「ボルク!オーバーヒート!!」 『ウ・・・・・・オオオオオオオオ!!!!』 ボルクが倒れ伏せた状態から、残された最後の力を振り絞り、オーバーヒートを発動させた。 ボルクの背から巨大な火の手が上がり、油断していたキャノンを包み込んだ・・・・・。 丸焦げになったキャノンは、口からぶすぶすと煙を出しながら、倒れた。 「て、訂正します!  バクフーン、カメックス、共に戦闘不能!  ティナ選手、残り4体!ユウラ選手、残り3体!」  つづく  あとがき クロ「つまんねぇな」 YAN「いきなり失礼だな」 コウ「手抜きだな」 YAN「ケンカ売ってんのか?」 クロ「とっととリーグ終わらせろよ、話が進まねぇだろ」 YAN「う、うっさい!」