「まずは・・・・・だ」 カイの眼前に広がるのは、炎のフィールド。 炎は未だに勢い良く燃えており、消える気配は無い。 「とりあえずジン。この暑苦しいフィールドをどうにかしねぇか?」 炎の向こうで、ジンはボソリと呟く。 「・・・・・・・・いいだろう」 同時に、ボールを投げた。 *********  リベンジャー  第77話「水芸」 ********* 「渦潮!」 あっという間に、炎のフィールド全体が巨大な2つの渦潮に包み込まれた。 ゴウゴウと水の流れる音がする中、炎が消える音も聞こえてくる。 水は、静かにに炎を消し去った。 少しずつ、水が消えていく。 大きな水溜りの上に立っていたのは、ゴルダックのクーラルと、ギャラドスとジード。 (ゴルダック・・・・・・) ジンはこの前のバトルを思い出した。 カイとコウの試合で、カイのゴルダック、クーラルは半分暴走しながら戦っていた。 だが、今のクーラルは打って変わって冷静だった。 右半身を前へ出し、いつでも攻撃できるように構えている。 「お、何だクーラルのヤツ、今日は冷静だな」 あの時間近でクーラルの異変を見たコウは、クーラルの様子を見て、心なしか安心したようだ。 「相手はギャラドス・・・・・・ジードか。私のギーバを一撃で凍らせたヤツ・・・・・・」 ティナはジードを見て、下唇を噛む。 いいか?お前は強い。冷静ならな。 平常を保て。平常心が、お前を勝利へ導くはずだ。 クーラルの頭の中に、カイの言葉が木霊した。 構えたまま、ジードを睨んだまま、少しばかり安心する。 「ジン・・・・・・・1つだけ、言っとくぜ」 「・・・・・・・・・」 鎌首をもたげ、ゆらゆら動くジードの体の後ろに見え隠れするジン。 ジンは腕を組み、鋭い眼でカイを見返す。 「冷静になったクーラルはな・・・・・・・マジで強ぇぞ!ハイドロポンプ!」 撃ち出されたハイドロポンプ。 体をくねらせそれを避けると、すぐに攻撃態勢に入るジード。 「ジード、10万ボルト」 お返しとばかりに、ジードが10万ボルトを放った。 「ヤベ、電気系か」 舌打ちするカイ。 指示無しでそれを避けるクーラル。 「吹雪」 ジンの静かな指示。 それを静かに実行するジード。 ジードの口から放たれた吹雪は、広範囲に空間を支配し、クーラルを襲う。 「サイコキネシス!」 クーラルが右手を吹雪に向かってかざす。 衝撃波が吹雪の軌道を無理やり曲げ、フィールドの壁に叩きつける。 (あの程度の威力か・・・・・) 「破壊光線」 エネルギーを即座に収束させ、破壊光線を撃ち出すジード。 「クーラル!こっちも破壊光線だ!」 クーラルも、負けじと破壊光線を放つ。 が、それは無謀すぎた。 ジードの破壊光線は、クーラルの破壊光線を軽く貫いたのだ。 確かのゴルダックとギャラドスでは、攻撃力に差がある。 クーラルは反動で動かない体を無理やり動かし、横っ飛びで破壊光線を緊急回避。 ジードの破壊光線は凄まじく、一撃でフィールドの地面をえぐる。 まるでそこに隕石でも落ちたように穴が開く。 「ゲッ、あんな破壊光線一発でもくらったら痛ぇじゃ済まねぇな・・・・・」 カイが次の指示内容を考えていると、そこへさらに破壊光線が飛び込んできた。 「ウソォ!?」 主人が驚いているのを尻目に、クーラルは再び破壊光線を回避する。 ジードは攻撃の手を緩めない。 カイはジードの体から電気が放電しかかっているのに気付いた。 「また・・・・・・」 「10万ボルト」 ジンの指示は、どこか不気味な雰囲気を持っていた。 静かな指示で、ジードはのどから唸り声を上げ、10万ボルトを放つ。 クーラルはまたも回避し、的を失った10万ボルトは地面をえぐった。 「バカみてぇな威力だな・・・・・・。  シャレにならねぇ・・・・・・・」 「どうしたカイ。逃げるだけか?お前らしくない」 「う、うっせぇ!これからだよ!これから!」 腕組したまま静かに聞いてくるジンに、カイは唾を飛ばす勢いで返した。 (だーけどどうすっかな・・・・・・。ジードの放つ技はどれも危険だ・・・・・・。  真っ向勝負で勝てるとは思えねぇ・・・・・・) そこで、カイは何か思い付いたかのように「あっ」と声を上げる。 (何考えてんだ俺は・・・・・・・。今までだってそうだったじゃねぇか。  クーラルはパワーで勝ってきたんじゃねぇ。クーラルの器用さと、その頭脳で勝ってきたんだ!) カイは顔をほころばせながらジードをちらりと見た。 すると・・・・・・・。 「うわっ、また・・・・・・」 ジードの口を中心に、空気が螺旋状に揺らめいていた。 「クーラ・・・・・」 「破壊光線」 ―――指示が遅れた!――― カイは反射的に眼を閉じてしまった。 何かが発射される音。 それが何かにあたり、爆音が轟いた。 きっと、クーラルに破壊光線がヒットしたに違いない。 そう思いながら、カイは恐る恐る、ゆっくり目を開けた・・・・・。 「ヘ?」 現実は、カイの予想を大きく裏切っていた。 現状はこのようになっている。 手をかざし、無傷のクーラルがサイコキネシスを放っている。 そのサイコキネシスの影響だろう。ジードの体が空中に持ち上がっていた。 そのジードの格好が奇妙だった。 空中で頭を無理やり自分の体に向けていた。 そして、体には謎の傷跡。 「クーラル・・・・・・まさかお前・・・・・・・・」 クーラルはサイコキネシスを解いた。 体を支えるものが無くなり、ドオンという音とともに煙を舞い上がらせながら、ジードは倒れた。 「ジードの破壊光線を・・・・・・・無理やりジード自身に・・・・・・・!?」 「ジードの体を無理やり捻じ曲げるとは・・・・・・・・。  破壊光線の軌道をジードに向けることが出来ないと踏んで・・・・・・か」 ジンは相変わらず腕組したまま、倒れているジードを睨む。 「ジード、立て」 ジードがのそりのそりと起き上がった。 やはり至近距離から破壊光線を受けたためか、顔をしかめて痛がっている。 (あの素早さを何とかせねば・・・・・・・これ以上避けられたらジードが先にダウンする・・・・・) 「ジード!10万ボルト!」 ジンが声を張り上げる。 電撃は真っ直ぐにクーラルに迫る。 が、今度は避ける素振りも見せず、迫り来る10万ボルトを睨みつける。 「光の壁!」 クーラルが作り出した、光の壁。 右手の掌を中心に出来上がった四角形のその壁は、見事に10万ボルトを遮断する。 「何!?」 「ジン!俺のクーラルのとっておきの技、見せてやるぜ!」 クーラルはダメージで思うように動けないジードを睨みながら、両手をジードに向けて突き出した。 クーラルは目を瞑り、精神を集中する。 そして、カッと見開かれると同時に、フィールドに異変が起きた。 フィールド全体に散らばっていた水が、浮かび上がったのだ。 水はすぐさまジードを取り囲むように浮遊し、さらに円を描いて回りだす。 「これは・・・・・!?」 「行くぜ・・・・・クーラル」 カイの右手の親指が、ビシッとジードを指差した。 「“水撃”!」 ジードを取り囲んでいた水が、一斉に鉄砲水のようにジードを襲った。 まるで全身にハイドロポンプを受けたかのような感触に、ジードは悲鳴を上げる。 「うっし!一気に決めるぜ!クーラル!吹雪!」 クーラルが両腕をぐるりと回す。 猛烈な吹雪が発生し、ジードを襲った。 吹雪はジードの体に付着した水を凍らせる。 全身を覆った水が凍ったのだから、その中にいるジードは当然動けない。 「うっしぁあ!いっちょ上がりィ!」 「すご・・・・・」 ティナが目を見開いて呟いた。 ユウラはギャーギャー五月蝿いクロを叩きながら、言う。 「水ポケモンは氷タイプの技に多少ながら抵抗力を持ってる・・・・・・。  だからってこんな方法で相手を凍らせるケースは初めて見た・・・・・」 「おおおおおお!いいぞカイィィ!!とどめ刺しちまえェ!」 「あのジードを凍らせるなんて・・・・・」 「ウグ・・・・・・ウオオオオ!」 ジードは氷を割ろうと全力で暴れるが、氷に割れる気配は無い。 むしろ密閉された氷の中で、ジードの体力はどんどん奪われていった。 その内動かなくなり、気絶した。 「戻れ・・・・・ジード」 ジンが凍ったジードをボールに戻すと、審判の声が轟いた。 「ギャラドス戦闘不能!ゴルダックの勝利!  ジン選手、残り4体!」 観客が歓声を上げた。 「行け」 ジンは考える素振りを全く見せずに、次のボールを投げた。 ボールから現れたそのポケモンは・・・・・・・・。 瞬時に飛び出し、クーラルに一撃をかました。 力なく跳ね上がるクーラルを見て、カイが 「クーラル・・・・・!!?」 と、呆然と呟いた。 クーラルの体がドサリと落ち、動かなくなったのを見て、審判が再び声を上げた。 「ゴルダック戦闘不能!プテラの勝利!  カイ選手、残り4体!」  つづく  あとがき コウ「俺達の出番が最近少ねぇぞ!どーゆーこった!バカ作者!」 クロ「そーだそーだ!納得のいく説明2秒でまとめろゴラァ!」 YAN「100%ムリ。何だお前ら、今はカイとジンのバトルだぞ?何でお前らが出る必要がある?」 コウ「どーにかしてでも出させろ!乱入でもいいから!」 YAN「だからムリだっつの。・・・・・・・そーだな、考えてやらないことも無い」 クロ「何!?マジでか!?」 YAN「レギュラー全員の署名・・・・・・」 コウ「いや、それ絶対ムリだろ!カイ達は土下座で済むし、キキちゃんは優しいから書いてくれそうだけどよ!」 クロ「あいつはぜってー書かねェぞ!あいつは!」 YAN「あいつ?」 コウ「ジンだよジン!」 クロ「あいつ軽〜く聞き流すに決まってるぜ!」 YAN「じゃ諦めろ」 コウ「・・・・・・・・何かハラ立つな・・・・・・・」